この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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アンデットについての解釈は独自のもので間違っているところもあるかもです。
いつもお気に入り登録等ありがとうございます!


アクシズ教の総本山?魔界の間違いでは?

その後は走り鷹鳶を蹴散らしたりアクアに引き寄せられたアンデットを蹴散らしたり順調な旅だった。あとついでにアクアのターンアンデットでベルディアが死にかけたりと。ほぼあの水色のせいだ。

順調とはなんなのか。

あ、マッチポンプで食べる飯は美味しかったです。

とまあ色々あったがカズマ一行はなんとか目的地であるアルカンレティアに到着した。

しかしいざ観光と意気込んだのも一瞬。

彼らは唖然としていた。

平然としているのはアクアくらい。ヴェストまでもが呆然としていた。

というのも...

 

「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!入信ですか?冒険ですか?洗礼ですか?やっぱり入信ですか?」

 

勢いが強いのである。

ヴェストは半ば停止しかけた思考をフル回転し思い出した。

そうだここ、アクシズ教の総本山だ。

その答えを導き出すと同時に頭痛を感じ頭を抑える。彼は知っていた。ここは魔王軍であろうと魔道大国ノイズであろうと悪魔であろうと近寄ろうとはしなかった真の魔境。

過去のヴェストも興味本位で近づきその洗礼を受けたことがあった。

随分と昔のことだったとはいえこんな重要なことを忘れていたなんて。

変わり者が多いなんてそういう次元ではないのだ。

口を開けばアクシズ教。差し出されるのは入信書と石鹸洗剤。女子供までアクシズ教の素晴らしさ(笑)を説くのに精を出す魔界が裸足で逃げ出す真の魔界。

 

「カズマ少年。帰ってもいいだろうか。」

「やめろ俺を置いていくな。」

 

彼らはウィズを宿屋に寝かせアクアとめぐみんと別れカズマ、ダクネス、ヴェストの三人でこの街を観光していた。

もちろん手に持つのは石鹸洗剤に入信書。

ヴェストに至っては最近装備を新しくして「より冒険者らしい格好をしよう!!」とポーションなどさまざまなものが持てるようにポーチやポーション入れつきベルトなどを身につけていたせいで衣服の隙間、ベルトの間にまで挟まれていた。

 

「っ....すまないカズマ少年本当に僕はもう限界みたいだ。先に帰らせてもらうよ...」

「ミラー...ごめんな、俺が無理に外に出ようと言ったばかりに...」

「もう戻るのかミラー。もったいない...」

 

同じく憔悴しきったカズマ少年となぜかツヤツヤしているダクネスを置いて宿に進路変更する。魂を削られたことはあるが(なお本人の記憶にはない)ここまで彼の精神が削られたのはこれで二度目だった。ちなみに一度目は某科学者とアルカンレティア観光に来た時だ。

つまりアルカンレティアはヴェストの第1の天敵というわけだ。第2はカエル。

 

「もがもが、大丈夫かヴェスト。あとできれば、もが、この袋に突っ込まれた入信書をとってくれもが。」

「....ああ、すまんいたんだなベルディア」

「いるも何もお前が無理矢理連れてきたんだろうが!!」

 

最近空気が薄くなりつつあるベルディアの入った袋から入信書を抜き捨てつつそろそろこいつに体作ってやろうかな、と考えていると進んでいる先から耳障りな悲鳴と足音が聞こえてきた。ヴェストはまたかとため息をつく。

 

「きゃぁぁ!助けてくださいそこの方!あの凶悪そうなエリス教徒と思しき男が私を無理やり暗がりへ引き摺り込もうと...っ!」

「おいそこのお兄ちゃんお前はアクシズk...」

 

 

「薄切り輪切り半月切りにみじん切りぃ....好きなのをぉぇらぇらばせてぇあげるよぉぉぉぉ!!!」

 

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 

黒光りする山刀(墓標は宿屋に置いてきた)を抜き放つと同時逃げ出すアクシズ教徒。

ヴェストは色々限界だった。

精神的にも、エリス教徒への罵倒への忍耐的にも。

 

「エリス教をぉ、エリス様を馬鹿にするのは許されざる大罪ぃぃぃぃ!!!エリス様は人が死ぬのを嫌われなさるから極力避けてきたがもぉう限界だァァァァァァ!!滅ぼそう!滅してしまおうこんな場所ぉ!!」

「やめろヴェスト落ち着け落ち着けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

ヴェストたちは一悶着二悶着と言わず二十悶着くらいありながらようやく宿屋にたどり着いた。最後の方では疲労したベルディア入り袋と何よりヴェスト本人から“話しかけたら斬る”とばかりのオーラから話しかける人が激減していたためこれでも早く到着した方である。

 

「あ、ヴェストさん。お帰りなさい。」

「ん?ウィズさん?なんで僕の名前を?」

「バニルさんから聞きました。まさか同じ魔王軍幹部だったなんて気づきませんでしたよ。今は元でしたっけ?あ、私のこと知ってます?」

「いんや?こんなふわふわしたやつが魔王軍幹部だとは思わなかった。」

「ふわふわ!?」

 

リッチーというのは知っていたが魔王軍幹部だとは思わなかったヴェストは多少驚くも疲労からかそっけない返答しかできない。

というかこれで幹部が務まるのか。話に聞く限りポンコツだというし本当に大丈夫なのだろうか。

 

「まあ、私は結界の維持に関わっているだけのなんちゃって幹部なので...」

 

なんちゃって幹部。なるほど。そう考えると封印されている間結界の維持だけしかしていなかった(できなかったがする気もなかった)自分もなんちゃって幹部なのだろうか。

なんか嫌だ。今はもう結界の維持すらやめたので幹部ですらないのだが。

 

「そういえばベルディアさんもいると聞いたのですが..」

「ここにいるぞ。ほら。」

「ウィィィィィズゥゥゥゥゥ!!あいたかったぜぇぇぇぇ!!」

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

袋を開けた途端にウィズのスカートの下に転がり込むベルディア。首だけになってからマシになったと思ったがその変態さは健在である。ただ周りにヤバいやつがいるせいで目立たないだけであった。

ヴェストはそれを素早く足で蹴り上げ鷲掴みから流れるように袋にしまった。そして袋をきつく締め手をパッパと払う。まるで汚いものを触ったかのような対応である。

 

「そ、そんなところに....油断してました、さっさと成仏すればいいのに」

 

さらっと言って退けたウィズのこの言葉からも彼が普段からどれだけの悪事を働いているのか把握できる。

 

「あの、お願いがあるのですが、できる限り戦闘に関わらない人間は殺さないでください。私が悪魔であるあなたに勝てるとは思いません。でもその時は持ちうる全ての力を使ってあなたを倒します。」

「ふーん?」

 

魔王軍幹部のくせに妙なことを言う、とヴェストは思ったがリッチーは元を正せば人間。しかも彼女から感じる敵意は本物だ。

これは本気だ。たとえ勝ち目が薄かろうと彼女は人間を守るために自分に立ち向かってくるだろうと簡単に予想できる。

 

「なぜ我が貴様如きのお願いとやらに従わねばならない?我は悪魔。契約以外に縛られるつもりはない。」

「っ!」

 

ウィズが冷や汗を垂らしながらもうその膨大な魔力を集め始める。ここでやりあう気だろうか。ヴェストは予想を大きく上回りその余裕を崩しそうになるほどの魔力量の多さに若干の恐怖心を抱くもそれを上回る感情を抱いた。

 

「く、ははははははは!」

「え?」

「おかしいにも程がある!リッチーのくせして人類の守護者気取りか貴様?これほどおかしなやつは初めて見た。」

 

アンデットというものは本来生者にあだなすもの。恨み辛み悲しみ怒り等の負の感情から生まれしもの。たとえ意思の残るリッチーなどの高位のアンデットであろうとその思考は生者への憎悪に多少なりとも変質させられているものだ。

それがどうだろう。このリッチーは生者を殺すなと、従わないなら敵対するとまで脅してきた。おかしくないわけがない。

 

「安心してよ。エリス様との契約によってアクセルの人間に危害は加えられない。それに僕はエリス様が悲しむようなことはしたくないんだ。だから君が心配するようなことは起こらない。」

 

アルカンレティアでのストレスが吹き飛ばされるほど笑ったヴェストは笑顔でそう告げた。エリス様を悲しませたくないというのも事実だがウィズと敵対したくないというのもそう言った理由の一つ。あんな膨大な魔力からくる魔法なんてぶつけられたら無事じゃ済まない。

 

「なら良かったです...ふぅ、驚かさないでくださいよもう...」

「ごめんごめん、これからもよろしく頼むよ?」

 

ヴェストは仲直りとばかりに手を差し出す。

若干の恐怖心を抱きながら。ほんとなんなんだあの魔力量。絶対人間じゃないよこいつ。あ、リッチーだったわ。てかリッチーでもありえない。

 

「そういえば先程宿のお風呂をいただいたのですが混浴のお風呂がとても広くて」

「へー?じゃあ僕も入ってみようかな?」

 

そうか、ウィズは混浴に入ったのか....

カズマ少年が聞けば血涙を流して「さっさと帰っていれば!!」とか言いそうだな。と思いながらヴェストはウィズと別れ入浴の準備をする。

彼個人としても混浴があるのは嬉しい。別に下心がどうとか関係なく彼の体は某科学者の友人が作った美”少女“型ゴーレムを原型としたもの。しかし彼の精神は性別がないとはいえ男性より。

つまりはまあ、そういうことだと。

性別:悪魔、なんてないだろうか。

ないな。

 

そうやって準備を済ませついでにベルディアも入れるように不可視化の魔法をかける。ひゃっほぉぉぉい!!と叫びそうなほど喜んでいた。

そんな中聞こえてきた男女の声。

一つは知らない声だが女性の方は知っている。そして微かに聞こえたその内容から察するに...楽しいことになりそうだ。

 

 

 

ヴェストは扉を蹴破った。




キールはいいやつだった。
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