皆さんのおかげでなんとかアニメ二期の時点まで漕ぎ着けました。ありがとうございます!
「石鹸洗剤石鹸洗剤....置いてきやがったなあのクソ悪魔!!」
どこかでそんな幻聴が聞こえた気がした。
◆ ◆ ◆ ◆
がたり、がたりと体を揺らす振動に意識が目覚め始める。
自分が今どのような状況に置かれているのかも理解できず、こうなる前までの記憶も妙に霧がかかったように思い出せない。あとなんか首が痛い。
「ん.....?んー.......」
自らの現状を把握するため瞼を開け、外からの光を取り入れる。
そこに映ったのは視界いっぱいに広がるどこか難しそうな顔をする水色。
それに僕は勢いよく頭突きをかました。
「いったぁーー!?」
よくあるハーレム系主人公が膝枕に驚いて思わず起き上がってしまったなどのお決まり展開などではなく、わざとである。
わざわざ少し貯めてから射出されたその頭部は見事
自らの頭にも伝わった鈍い痛みが意識を完全に覚醒させる。
周りの様子を見るにどうやら馬車のようだ。
自分が寝ている間にあの地獄を脱することができていたとは。何か忘れている気がするが。
しかしこの周囲の様子に疑問が残る。
なぜ皆が皆臨戦体制に入っているのか。
敵が近くにいるのか?
いや、彼らは皆自分の方を向いている。
自分に警戒を向けている。
まさか悪魔だということがバレたのだろうか?
ヴェストは非常に焦った。
そんな時、一人の少年が前に出た。
カズマ少年である。
「ミラー...だよな?」
その声からは怯えを感じる。
普段なら美味な悪感情に喜んでいたところだが状況が状況だ。
本当に僕が寝ている間何があった!?
流れるはずのない冷や汗が背中を伝ったような気がした。
どうもベルディアと共に大量の石鹸を川に投げ込んだあの日からの記憶がない。酒を飲んだりしたような記憶もない。というか悪魔を酔わせられるような強い酒は見たことも聞いたこともないが。
こうして思考している間にも彼らからの警戒は強まるばかり。
とりあえずなんらかの反応をせねば。
「えーと......みんな大好きミラーちゃんだよっ!よろしくね!!(裏声)」
特に何も思いつかなかったヴェストは目の横でイエイ!とでもいうようにVサインをした。警戒をつく目的で行なったもし男がしたらドン引きもののこの行為は彼の中性的な見た目からムカつくも、様になっている。
しかし彼がこの状況が飲み込めないという焦りと混乱から回復した際に猛烈な羞恥を与えることだろう。
「カズマ、どうやらミラーは頭を強く打ち付けてしまったようだ。」
「ああ、残念ながら手遅れのようだ...」
「ちょっと待ってくれないかい!?どうしてみんなそんな可哀想な子を見るような目を僕に向けるんだ!?」
本当にどういうことだ!?
ヴェストは混乱した。僕が寝ている間に何があったのか。
ただ彼らがそんな目で見てくるのはあきらかに先程の行動が原因なのだが彼はそれに気づかなかった。
「ところでミラー、お前昨日のことって何か覚えていないか?」
「昨日?いや、どうも霧がかかったように思い出せないんだ。酒でも飲んだのかい?」
「い、いや。覚えていないならいいんだ。特に何もなかったしな。」
その返答にとてつもなく違和感を感じる。
この返しは絶対何かあった時の反応だ。ヴェスト知ってる。
....!まさかこれが我が親友研究者Aの言っていた“酒の勢いで”という奴なのか!?しかも悶絶しているアクアを除き全員がこの反応....まさか!?
いやいやあり得ないだろう!?
親友の話した通りだとしたら全員といわゆる肉体関係を持ったことになる。それこそあり得ない。悪魔である僕には性別は存在せず、この体も僕の魔力で生み出した作り物のため生殖器も存在しない。親友がこの体の原型となったアンドロイドには雌型の物をつけていたようだが再現する必要がなかったため今は付けていないはずだ。
そもそも悪魔をまともな思考が困難になる程酔わせる酒など存在しないはずだ。少なくとも僕は見ていない。あったら悪魔殺しとかいう名前がついていそうだ。
いや、酒ではなくそう言った魔法が存在する可能性は否定できないか?
そうなると僕がよった勢いで生殖器を作ってしまったという可能性も否定できなくなる。何せ酔いというのは恐ろしいものと聞く。最悪な状況を想定しなくては。
「.....」
「.....」
「にゃー」
非常に気まずい。
たとえ悪感情を喰らう悪魔だろうと、こうも複雑に絡まった感情はあまり好きではない。腹は膨れるが。
さらにはちょむすけが自分の頭によじ登ってこようが気にする余裕がないほどヴェストは精神的に追い詰められていた。
この水色はともかく、仲間である彼らとの関係が面倒くさいものになった可能性が浮上した上、この身をエリス様以外の者に捧げてしまった可能性まであるのだ。
それが可能性から事実へと変貌した時、ヴェストは償いとして魔王とついでに魔界を滅ぼしてから小指を切って焼き土下座をして十字架に貼り付けられて焼かれギロチン台に掛けられて首を飛ばされ電気椅子に座らされ通電した上でなお償いきれない己の罪に押しつぶされてアクセル周辺を巻き込みながら消滅するだろう。
そしてカズマ達はそんなことを考えるヴェストとは別の意味で追い詰められていた。
アクアとウィズがいたため案外あっけなく討伐されたが彼女達がいなかったらアルカンレティアのみならず世界に影響を及ぼしかねない悪魔を宿した本人が目の前で何やら難しそうな顔をして唸っているのだ。
本当に彼にあの時の記憶がなかったのか、本当に彼は悪魔に飲まれていないのか、それを知らないカズマ以外の二人は戦々恐々としていた。
そしてその3人よりも彼の正体に近いカズマ少年のストレスは胃に穴が開くを通り越して胃が爆発、いや、爆裂四散する勢いだった。
何せその
「にゃー」
「.........................」
ねこは気ままな生き物である。
飼い主の子持ちなど考えずに好き勝手行動する。
そこがお猫様の魅力なのだが、時にそれが飼い主に計り知れない負担を与えることもある。
現にめぐみんは顔面蒼白で超振動を起こしている。
空気は悪くなるばかり。
そしてその沈黙を破ったのは....
「いたたたたー....」
「何すんのよ!まさかあんたまだ抜け切ってないんじゃないでしょうね!まだなんか臭いし!!」
「く、臭い!?昨日は一体何があったんだ....」
「アクア!?ちょっとこっちこい!!」
カズマは即座に回復したアクアを鷲掴みし引き寄せる。
彼としてはあまりヴェストを刺激したくないのだ。
(アクア、教えてくれ。ミラーは今
彼が、その場にいるアクアとヴェスト以外の全員が知りたいのはそれだった。
今の彼は仲間として冒険を共にしたミラーなのか。それともあの悪魔なのか。初めからミラーが悪魔ヴェストだと知っていたカズマもアレは明らかに様子がおかしかったことくらい分かっているため今の彼がミラー(ヴェスト)なのか、それとも別の何かなのか知りたかった。
本人は記憶がないと言っているがそれも嘘かもしれない。
(それなんだけどね...なーんか微妙な状態なのよ。アレは完全に浄化したと思ったんだけどなーんかまだ悪魔の匂いがするし....でも昨日みたいな危険性はもうないと思うわよ。)
アクアからの返答にカズマは胸を撫で下ろした。
アクアは微妙な状態と言っていたが元々彼は悪魔であり、それが普通の状態だと知っているからだ。
カズマとウィズを除く二人は少し不安そうだが、彼女達は彼の正体を知らないため仕方がない。
となると先ほどからうんうんと唸っている彼はなにを悩んでいるのか。
記憶がないと言っていたがそのためだろうか。
「..,.ミラー?さっきから唸ってどうしたんだ?」
念のためと思いカズマ少年はそのことについて聞いてみた。
先に言っておくとその選択は間違っていなかった。
いや、ベストアンサーと言ってもいい。
「なあ....カズマ少年.....僕は、君たちと肉体関係を持ってしまったのか....?」
なぜならこの勘違いに気づくことができたのだから。
そして何より、その勘違いによって起こりうる悲劇を未然に防いだのだから。
未然なのでボーイズラブ(?)はつきません。