HAHAHAワタシニホンゴワカリマセンネ
今回からこのすば映画回(?)に突入です。
「カズマさんの子供が欲しい!!」
そんなブッ飛んだセリフが鳴り響き、後に残るのは誰かが浄化された紅茶、つまりは水を吹き出す音とパチリパチリとボードゲームの駒を動かす音だけである。
「チェック」
「ああ!」
あとついでにどっかの駄女神とどっかの愚悪魔の声だけであった。
エリス様が自分の話をしている!?という謎の予感を感じ取ったヴェストは彼女の宿を襲撃もとい訪問したあと、あまりにもやることがなさすぎたためカズマ宅に訪れ、アクアとボードゲームをしていた。
そこにこのゆんゆんの暴挙である。
一見興味ないようにアクアとのボードゲームを楽しみ当たり前のようにチェック(王手)を取っているが実際はその耳に全魔力を集中させ、これから彼女が話す一言一句を全て聞き逃さないようにする準備は万端であった。
(そう、これぞ我が奥義。デビルズイヤーッ!!)
「ううーん...こう行けば取られるし....むむむ」
ちなみにアクアとの戦況は6対0。
圧勝なのだがおそらくこれはめぐみんや他のメンバーがやっても結果は同じことだっただろう。
「....今なんて?」
まさか聞き逃したというのかカズマ少年!?
いや、これは再度彼女に先程の発言をさせることでさらなる羞恥を生み出させる高等テクニック....!
さすがは僕が見込んだ男だ。
ヴェストは真面目にゲーム板を眺める裏側でこんなことを考えていた。
「カズマさんの子供が欲しいって言いました!!」
「....俺としては最初は女の子がいいんだけど」
「だ、ダメです!最初は男の子じゃなきゃ....!」
「いやしかし俺にだって譲れないものがあってだな...」
「私だって男の子じゃないと絶対ダメなんです!」
「聞いてくれゆんゆん。男なら娘にパパとか呼ばれたいもので....」
あ、ゲーム板が取られた。
パリコンとカズマ少年の頭に炸裂するゲーム板。
無常にもめぐみんによってヴェストの作り上げた詰みの陣形は崩されてしまった。
「男の子だとか女の子だとかいきなりなんの話をしているんですか!!」
「おい、ゆんゆんと言ったな!カズマと何があったか知らんが騙されているぞ!!」
「失敬な」
騒ぎ出したらもうとまらない。
しかしカズマ少年欲望に素直すぎないか?
ボブは訝しんだ。
「ミラーも一回やらない?」
「おーけー」
その後ヴェストは聞き耳に全集中しながらアクアに全勝したという。
アクアは泣いた。
◆ ◆ ◆ ◆
「それで?いったいなんなのですか?魔王だの世界だの...」
「そうなのよ!聞いてめぐみん!紅魔の里がなくなっちゃう!」
アクアが泣いたことにより中止されたゲーム板を片付け終わり、浄化されていないちゃんとした紅茶を嗜んでいたその時。
ヴェストのデビルズイヤーがある単語に反応した。
(紅魔の里....?)
ヴェストは脳....というか魂をフル回転させ、記憶の奥底からその単語を掘り起こした。
そして辿り着いたのは古き親友との記憶。
(ああ、思い出した。そーいやそんなん作ったっけな)
紅魔族。
それは親友と共に作り出した最高傑作の一つ。
作成者と被験者のロマンと少しの悪魔的ぱわーを詰め込んだ強化人間。
そんな彼らの子孫である。
強大な魔法を扱うことのできる彼らだがほとんどがロマンで作られていたため、その赤目とレジでピッとやるようなバーコードはただの飾りであり、まったくと言っていいほど意味はない。
元々は高い魔力が仇となり、自然放出が上手くいかず下手をすると自らが爆裂ッしてしまうなどの欠点があったがそこは親友の超頭脳とヴェストの悪魔的ぱわーによってなんとかした。
「これは....」
「そうなのよ!魔王軍が里に攻めてきたのよ!」
ほう、なるほど魔王軍が。
そしてピンチになった紅魔族がゆんゆんにこの手紙を託し、“頼りなく何の力もなくヒモ同然の男”つまりはカズマ少年とゆんゆんの子供がいつの日か魔王軍を打ち破るという予言を残したと。
うんうん、なるほどなるほど。
「おいミラー。お前いま失礼なこと考えなかったか?」
「いんや、なにも?」
しかしこのカズマ少年の子供があの魔王を打ち破る。
それは面白いことになりそうだ。
僕やバニル先輩であれば魔王など余裕のよっちゃんイカなのだがそれをただの人間でありそれもニートとぼっち....(これは失礼か?)の間に生まれた子がそれを倒すとなると随分と難しいだろう。
腐ってもあれは魔族の王。
並の人間如きが相手になるものではない。
まあ?僕がやれば?10秒もかかりませんがぁ?ねぇエリス様?(チラッ
完全に魔王を舐め腐った上にさりげなくエリス様へのアピールを欠かさないヴェストであった。
しかし未だ生まれてさえいない人間の子が魔王を打ち倒すなどという2、3年ではすまないほどの遠い未来を予言するとは何者なのか。
神や悪魔ではないのかそれは。
カズマ少年には悪いがいささか嘘くさい気がする。
「こちらの手紙には最後に“紅魔族英雄伝・第1章 著者:あるえ”と書いてあるのですが...」
「....え?」
うん。やっぱ嘘だった。
めぐみんがいうにはあるえという紅魔族の作家が書き上げたまるっきし嘘の話である、とのことだ。
まあそんな簡単に面白い話に出会えるわけがないのだ。
上げて落とされた気分だ。
カズマ少年、ドンマイ。卒業ならずだ。
ヴェストはズズズズと熱い紅茶を慎重に口に含んでいる。
実はヴェストは猫舌なのだ。
彼の魔力による“虚像”で作られた体だというのに。
いや、しかしよくよく考えてみればその創作は後半のもう一つの手紙だけであり、前半の村長からの手紙は...
「めぐみんさんや?最初の手紙って....」
「ええ、はい。こっちは多分本当だと思いますよ。紅魔族って魔王軍の目の敵にされてますし。」
なんと。
やはり紅魔の里が魔王軍に侵攻されているというのは事実っぽいようだ。
バニル先輩のように見通す能力があればここから紅茶を啜りながらでも現状を把握できるかもしれないが残念ながらヴェストにそんな便利な機能は備わっていなかった。
あえて言えばデビルズアイ(ちょっと目が良くなる)があるくらいだ。
これだから骨董品は使えない....
(なんか理不尽に呆れられた気がする...)
だが手紙の内容が事実だとすると自分も開発に関わった紅魔族。つまりは自らの子のような者達(暴論)が危険にさらされているということになる。
これはうかうかしていられない。
紅茶なんて飲んでいる場合じゃねぇ!
とはいかないのがヴェストである。
最近ではパーティメンバーを助けたり何気に神であるアクアと仲良くなっていたりするのだがあくまで彼は悪魔なのである。悪魔だけに。
(あれ?なんか部屋が寒くなった気がするのだが...気のせいか?)
まあそんなこんなで彼は自身の子供(のような者)が危険に冒されていようと必要があるか何か面白そうなことがない場合は助けに行くことはないだろう。
「めぐみんどうしよう里のみんなが!!」
「ズズズズ」
「我々は紅魔族ですよ?そう易々とはやられません。」
「ズズズズ」
「それにゆんゆんがいる以上紅魔の血が絶えることはありません。こう考えればいいのです。里のみんなはいつまでも私たちの心の中に....」
「ズズズズ」
「めぐみんの薄情者!!」
「ズズズ「ミラー、シャラップ」......ズズ(了解)」
カズマ少年に怒られてしまった。
むぅ、僕は大人しく紅茶を嗜んでいただけだというのに。
いくらDT卒業の機会を逃したからってそう苛立つことはないじゃないか。
ヴェストはいつのまにか眠っていたアクアを真似して自分も一眠りすることにした。
あーそふぁーふかふかー