失踪したと思った?失踪しちゃったって?ぷぷぷー!この私が失踪するなんて.....ちょ!やめて!ごめんなさい低評価で殴らないでぇ!!
すみませんでした。
雑草は駆除する。当たり前なんだよなぁ
「と、いうわけでみんなで紅魔の里に里帰りすることになった。お前も来ない?」
「まじか」
どういった風の吹き回しだろうか。
ヴェストがいつものようにエリス様人形の再現を試みながら“なーんか忘れている気がするなぁ“とか呟いていたその時。
唐突に部屋の木製のぼろっちいドアが勢いよく蹴破られたと思ったらカズマ少年がそのようなことを言いながら入ってきた。
紅魔の里へは昨日の話し合いで行かないことが決定したのではなかったのか。
「どうしたんだい?いかないんじゃなかったのか?」
「めぐみんがどうしても里帰りしたいっていってな。全くこれだからツンデレ小娘は素直じゃねえよなぁ。」
なるほどツンデレ...
「ふーん?毎回イヤイヤ言いながらもなんだかんだ言って彼女たちのために動いている君も十分ツンデレの素質があると思うけど?」
「つつつつ、ツンデレちゃうわ!」
なるほどこれがツンデレ....!
できればエリス様で見たかった....
「はははは...うん、そうだね。僕も同行しよう。」
「悪魔院」
二人はがっちりと固い握手を交わした。
流石にカズマ少年も仲間のためとは言え魔王軍に襲撃を受けている里に行くのは怖かったのだろう、手が少し強張っていた。
そんな意外と覚悟を決めているカズマ少年だが、彼と握手を交わすヴェストはただ単に楽しそうだからという理由なのだったりする。だが、彼は悪魔であって人とは違うためしょうがないとも言える。
少しは心配しているとは思ったのだが実際の彼の頭の中はピクニック気分の気楽なものだった。
◆
「カズマ少年...何故わざわざアルカンレティアへ行く必要があったんだい....?」
ピクニック気分でルンルンとしていたヴェストは一転、ずぅぅぅんとでも効果音が鳴り響きそうなほど気落ちしていた。
せっかくあの魔界顔負けの地獄から(気を失っているうちに)脱出したというのに数日もしないうちに再び訪れることになるとは思っていなかった。
やはりアルカンレティアは狂信者どもに溢れかえっており、石鹸を押し付けられそうになるのを全力で逃走し、なんとか振り切った時には彼の目から光は消えていた。
どこからかかすかに「ちょ....ま....!おいてk.....もう魔力が.....うごけな.......」などと聞こえてきたが気のせいだろう。
ちなみにヴェストがどこかのデュラハンに作った義体に込められた魔力は数日で枯渇し彼本人による供給がない限り半永久的に再び動くことのない置物になるという仕様があるのだがこれは全く関係のない話だ。
「ウィズのテレポートでアルカンレティアに向かってからの方が里には近いからだよ。」
「しかし私ももう二度とあの街の住人には関わりたくないというのは同感です。誰かテレポート使えませんでしたっけ?紅魔の里についたら念のため設定してくれませんか?」
「あ、僕使えるよ」
「なんで使えるんですか!?剣士ですよね?」
「あ!えーーっと......なんか使えた」
「は、はぁ....」
一応剣士としてギルドに登録していたことをすっかり忘れていたヴェストだった。いっそのこと魔法剣士とかにでも転職してしまおうか。
「ねえなんで紅魔の里までわざわざ歩いていかなくちゃいけないのかしら?」
「里までの道中は危険なモンスターが多くて馬車が出せないんです。紅魔族の人たちはテレポートで行き来しているので必要ありませんし。」
「こう考えると紅魔族って随分とやばい一族なんだな。」
「当然だろう?」
「なんでお前が威張ってるんだよ」
しまった...つい!などとバカなやりとりを行いながら話中に出てきたような危険なモンスターの出かねない林の中を歩く中数十分。
向こうの木陰にこんなところにいるはずがないほど小さな人影がチラリと見えた。
紅魔族だろうか。
それにしては里との距離がいささか遠すぎる。
それなら我々のような冒険者か。
それこそあり得ないのではないか。
見えた人影は一つ。しかもめぐみんと同じかそれ以下並みの大きさの子供だと思えるもの。そんな子供がパーティも組まず一人でいるなんてまずあり得ない。
普通なら見間違いかモンスターだと警戒するものだがそれは消えることもなくこちらに向かってきたり林の中に逃げたりするのでもなくただそこに座り込んでいた。
「む、誰かいるぞ」
ダクネスも気づいたようでそれを指差してそういった。
やはり幻覚でも見間違いでもなく実体を持った人らしい。
だがどこかその様子に不快感を覚え、ヴェストは自分でも気付かぬうちに僅かに顔を歪めた。
「あの子ひどい怪我をしているわ!大変!すぐにヒールをかけないと!」
「おいちょっと待て、あれ多分擬態したモンスターだ。敵感知にも引っかかってる。」
その傷ついた姿を見て咄嗟に駆けつけようとしたアクアをカズマ少年が引き止めた。
なるほど、やはりモンスターだったか。
そういえばいつだったかは忘れたが人間の少女に化け、釣られてきた者を養分にして育つモンスターがいると聞いたことがある。
確か....
「安楽少女....その植物型モンスターは物理的攻撃を加えてくることはない....が、通りかかる旅人に対して強烈な庇護欲を抱かせる行動を取りその身の近くへと旅人を誘う。その誘いは抗い難く一度情が移ってしまうとそのまま死ぬまで囚われその死体を養分にし、枯れるまで吸い尽くす。これを発見したグループは辛いだろうが是非とも駆除してほしい....だってさ.....」
人間の情を利用し、栄養を得る。
その策略にまんまとはまった愚か者はもれなく少女の栄養となるわけだ。
しかしあのような幼い少女の姿を利用するのど....何故かは知らないが不快である。
エリス様は悪魔が人間の害になるからだとか仰っていたがその前にこの害悪植物を駆除した方が良いのではないだろうか?
いや、わざわざあの方の手を煩わせる必要もない。
この私自らが滅してくれる。
何故か先ほどから感じていた不快感が拍車をかけ、ヴェストはそれを駆除するため一歩踏み出そうとする、が。
「あの子が泣き出しそうなのを必死に堪えるような笑顔で手を振っているのですが...なんだか居た堪れなくなってきたのでちょっと抱きしめて....」
「だからやめとけって!ああやって人の気を引いて取り入ろうとしてんだよ!」
「だ、だめだ!モンスターとはいえ怪我しているものを放ってはおけん!」
「そうよ!物理的な攻撃をしてこないってなら大丈夫でしょ!」
「こら待てって!」
....ここにもまんまと策略にはまった愚か者が三人
「おい、ミラーもなんか言って、うわなんかすごい顔してる。」
「もう大丈夫よ。今傷を治してあげるからね、ってあれ?これって怪我しているわけじゃないわ?包帯もそれっぽく見えるだけなのね。」
「ほらだから言っただろ?少女の姿も服も血の滲んだ包帯も人を惹きつける擬態なんだって。」
「後ろの木になっている実があるだろ?それもそのモンスターの一部で空腹になった旅人に与えるそうだ。でもその実には栄養なんてなくて、毒によって痛みや空腹、眠気などの感覚も麻痺していき夢見心地になって栄養不足になり衰弱し、死んでいくんだ。」
なかなかにえぐいモンスターだった。
その名称の所以も年老いた老人が安らかな死を求めて奴等の生息地に行くことから“安楽少女”などという名前がつけられたそうな。
やはり滅ぼした方がいいのでは?
ヴェストには人の心がなかった。
だがしっかりと人間の心を持つ彼らはその存在のあり方を知ってなお駆除という選択肢を選ぶことはできそうになかった。
それどころか今にもアレに向かって駆け出してゆきそうだ。
いつもはカズマ少年やその仲間によってあまり感じることがなかったがこの世界のモンスターは本来こう言った害のある存在なのだろう。
だからこそ”
自然界は厳しく残酷なものである。
そんな今にも駆除欲(?)が溢れ出しそうなヴェストとは逆にアクアたちはアレに庇護欲を持ってしまい、どうするか決めかねているようだった。
悪魔である彼のように”そんなの駆除一択だろ?“などという考えに行き着くわけもなく、これが普通の人間がアレに抱く感情なのだろう。
するとそんな彼らの様子を見た安楽少女はその顔に儚い笑みを浮かべた。
目の淵にかすかな涙を浮かべ、まさに完璧なタイミングで。
キュ〜〜〜〜ン
見事アクアたちの心は穿たれたようだ。
それどころかここにキャンプを張ろうなどと言い始める始末。
ダクネスなんかはあの実を食べようとしているがそれに依存性がないとも限らない。というか十中八九そう言った効果があるのだろう。
馬鹿なのか?
「.....なあミラー....」
「.....やれ」
「ってなにすんのよ馬鹿ニート!!」
「ええい邪魔すんな離せ!」
「おおおおお前はこんな少女の姿をしたモンスターにも手にかけるのか!?」
「カズマはなんだかんだで優しいところがあると思ったのに!見損ないましたよ!」
「俺だって好きでこんなことしたいわけじゃねーよ!ミラーもなんか言ってくれ!」
「もう僕がやっていいかい?」
「ちょ!あんたまた悪魔に乗っ取られたんじゃないでしょうね!?」
「また?」
話が進まない。
てか”また“ってなんだ。悪魔に乗っ取られたってなんのことだ。
気になることはたくさんあるがもうさっさと駆除してしまおう。
そう思い、ヴェストが愛用の大剣”墓標“を握ったところで思わぬことが起こった。
「....コロス....ノ?」
なんと安楽少女が口を開いたのだ。
「ゴメンネ....ワタシガイキテルカラダネ....」
そのか弱い声で言葉を紡いで行く。
「ワタシハモンスターダカラ....イキテルトメイワクカケルカラ.....」
泣きそうになるのを必死に我慢しながら絞り出すように。
「ウマレテハジメテコウシテニンゲントハナスコトガデキタケド.....サイショデサイゴニアエタノガアナタデヨカッタ....」
その顔が崩れないよう泣かないよう相手を心配させないように。
「モシウマレカワルノナラ......」
植物が枯れる寸前に素晴らしい花を咲かせるように、少女も儚く、美しい笑みを浮かべながら。
「ツギハ....モンスタージャナイトイイナァ....」
『インフェルノ』
少女の体を炎が覆い隠す。
まさに悲劇。
地獄の業火が少女の骨も残さんとばかりに燃え上がる。
「あ、あんた!ふざけるんじゃないわよ!人の心ってものがないの!?」
「ああ、ああ!何やってるんですかミラー!こんな、こんなのってないですよ!」
「そうだぞお前!モンスターだからって!流石にこれは.....っ!」
「俺も殺さなきゃって思ったけどお前、今の言葉を聞いて何も思わなかったのかよ!!」
その残酷すぎる行為を行ったヴェストへと当然のように非難が殺到する。
何気に先ほどまでこちら側だったカズマ少年も混じっているが仕方がないことなのだろう。
あまりにも見事な
猿芝居でも極めればあそこまで人の心を操れるものなのか。
「あっっっっっつぅぅぅぅぅぅ!?!?!?!?!?!?!?」
突然燃え盛る炎の中から飛び出してきた先程の少女のものとは思えないような絶叫に皆の視線が集まる。
「ふざっけんな!普通あの場面でやる奴がいるかよ!クソが!あっつぅ!!」
そこには先程の儚さなど全くなかったように乱暴な言葉を吐き散らしながら転げ回る安楽少女。
だがその体は一片も焼け焦げておらず、よく感じてみるとあれほど高々と燃え上がっているのにも関わらず一切こちらに熱が届かない。
そう、これは偽物だ。
忘れられがちだがヴェストは虚像の悪魔。
虚像、つまりはありもしない偽物を作り出すのは彼の十八番である。
実際アレはただの魔力の塊。熱もそれによって灰にされることもなんにもない、ただの虚像である。
ただ受けた側はあまりの出来栄えに本物の炎と勘違いし、ありもしない熱を感じてしまう、というわけだ。
「あっつ....あれ?熱くない?........あー......」
「イマノハナカッタコトニ....デキマセンカ....?」
カズマ少年のレベルが3上がった。
安楽少女ビジュアルは可愛いのになぁ。
別にああいう裏のあるけどちょっと残念な子は好きなんだけどさ、ほら、雑草は燃やさないと。