この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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夜遅くこんばんは。不審者じゃないよ?悪魔だよ

夜遅く静まり返ったアクセルの街の路地裏を歩く影が一つ。

レインコートのフードを被り顔には可愛らしいニコちゃんマークが描かれた白い仮面。

明らかに怪しい不審者だーれだ?

そう、僕だ。

 

変装用に買ったレインコートと仮面がかえって怪しさを醸し出し、真昼間から出歩けないような格好になってしまった。

顔を隠せればいいや、なんて安易な考えで買ってしまったばかりに...!僕としたことが、こんな凡ミスをするなんてね。

 

ところで...そんな怪しさ満点の「衛兵さん捕まえてください!」とばかりの格好をすればどうなると思う?

当然こうなる。

 

「ねぇ君。ちょっといいかな?」

 

月明かりに照らし出され光り輝く蒼き鎧に腰に下げられた神聖な気配を放つ大剣。

間違いない。アクセルで冒険者についての話を聞くだけで複数回名前が出るほど有名な魔剣の勇者くんじゃないか。

ふっっっざけんなぁ!?なんだよエリス様僕何かあなたに失礼なことしましたか!?悪魔だからって差別しないでその幸運を僕にも分け与えろください!てか寄越せ!

 

くそ!いつもならWelcomeだが今日は違う。たった今僕は情報収集のため隠密行動中なのだ。あまり大事にはできない。

 

「先ほどからボクの魔剣が邪悪な気配を感じ取っているようでね。だからちょっとそのフードと仮面を取ってくれないかな?」

 

なんだそれ!?邪悪な気配って、その魔剣そんな機能もあったのか!?チートやチート!

てかその神具と思われる魔剣(神具なのに魔剣ってなんでや)からめっちゃ殺意が飛んてくるんですが!?

く...作って1日のアンダーカバーが危険人物認定されるのは惜しいが顔割れには変えられない。

よし!逃げよう。

できるだけ威圧感出してそれっぽいこと言って逃げようじゃないか!

 

「...無言を貫くか。仕方ない。お前を不審人物として捕らえる。」

 

相手を見下すように、確実にこちらが格上だとわかるように...つよつよオーラを放つんだ僕。それができずして大悪魔は名乗れない!

 

『.........神に選ばれし勇敢なる愚者よ。』

 

 

◆ ◆ ◆

 

『.........神に選ばれし勇敢なる愚者よ。』

 

その声を聞いた瞬間背筋が凍りついた。

その男とも女とも取れる声はなんの感情さえ感じられない平坦なもので、それがまた恐怖を煽ってくる。

圧が徐々に強くなり体が鉛のように重く感じられる。

今すぐにでも逃げ出してしまいたい。勇者の使命なんてものをほっぽり出して逃げてしまいたい。

何者...いや、あれは一体なんなんだ。

 

『今宵は良い夜だ。貴様のような強者に会えるのだからな。』

 

瞬時に構えた魔剣グラムを持つ手がガタガタと音を立てるように震える。

ありえない。あんなものがこの世に存在してはいけないんだ。

あの恐ろしい笑顔の仮面から覗く真っ赤な、しかし冷ややかな目に全てを見通されているようで、どこ逃げても無駄だということを本能的に察してしまう。

 

『しかし、残念ながら我は今、あまり目立ちたくないのだ。故に貴様との戯れはまた次の機会にしようと思うのだが、どうだろうか?』

 

アレを取り巻く闇が一層深くなりそれと共に自らにかかる圧が増す。体の震えが止まらない。アレが話している内容すら頭に入ってこない。

本能が悲鳴をあげる。アレは人間ごときが勝てるような存在ではない、と。

ボクはその提案に壊れた人形のように頷くしかなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

はい、無様に逃げ出してきた大悪魔(笑)です。

はあ...あの程度の勇者相手に逃げ出すことになるとはね。まったく...憂鬱だ。

しかし勇者か。また会いたいなぁあの子に。

ああ、会いたい。君に会いたい。どうしたら会えるだろうか。正義心の強そうな子だった。もしかしたら僕が何かしらの悪さをしたならすぐに飛んできてくれるかもしれない。

そうだぁ!この街の住人を全員虐殺して死体を見せしめとして吊し上げるのはどうだろうか?これなら目立つしきっと彼女は見つけてくれるはずだ。思い立ったが吉日!さあ、この街の住人には僕とPrincessのための生贄となってもらーーー

 

「ぐ...ぅ....はぁ...危なかった。」

 

自らの腹にあのとき彼女が置いていった短剣を突き刺す。それ自体はただの短剣だったようで、僕の体に傷をつけることはできなかった。やはりあの子は特別な存在だったのだろう。

だがこの行為によって思い出させてくれる彼女に与えられた痛みが僕を正気に戻してくれる。

 

「くく...くくく...愛、というのは一方的なものであってはならないんだ...双方が等しく愛し合ってこそ成立するものだ。だから...こんな彼女を傷つけるようなこと、はしてはいけないんだ。」

 

自分に言い聞かせるように呟く今の自分は例えレインコートを身につけていなくとも十分怪しくみえるだろう。だがこれは僕自身に必要な行為なのだ。でなければ突如発生したこの感情がどう暴走するかわかったものではない。

 

「ああ...やはり君は特別な存在だ...!!会いたい...早く会いたいなぁ....」

 

 ◆ ◆ ◆

 

ーーー緊急!緊急!全冒険者のみなさんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!....特に冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!!

 

レインコートは怪しすぎる。かといって他の服というと封印前から身につけていたスーツしかない。これでは嫌に目立ってしまう。

ということで僕が昨日の失態を生かし、新たな変装用の服装をそこら辺をふらついていたチンピラ風金髪冒険者を参考に買い揃えていたところ街にこのような放送が鳴り響いた。

 

どうも緊迫した雰囲気だったがどうしたというのだろう。

それにしてもサトウカズマ、ねぇ?

おそらく女神に召喚された勇者の一人だろう。

 

勇者。それは過去に戦ったあいつらのように奇跡とも言える「ちーと」といった能力や強力な神具を頼りに魔物や魔族を狩る者。

どのような能力を使うのだろう?どのような神具を所持しているのだろう?

そしてそれらが一切通じないとわかったとき、彼はいったいどのような感情を魅せてくれるのだろうか。

楽しみだ。

 

 

閑話休題

 

 

しっかし緊急とな?いったい何が起こったのだろう。キャベツの時期にはまだ早いはずだが...

考えてみても仕方がない。ひとまず放送に従って正門に向かってみよう。僕は冒険者ではないが...そこはなんか悪魔的なぱぅわぁーでなんとかしよう。

 

様々な武器を手に走っていく冒険者の後を追い、正門に着いたところで全体を見渡せるところはないかなー、と探し、良さそうなとこもなかったので結局城門の上で見学することに。普通ならアホみたいに目立つ場所だが僕は悪魔だ。普通の奴らと一緒にされては困る。気配の一つや二つ消すことぐらいできるのだ。地味にすごくない?褒めてくれてもいいのよ?

 

さて、ひとまずちょうどいい観覧席に辿り着き、下を見下ろすとそこには戦争でもいくんか?と思わせるくらい多くの冒険者と...向こうの丘の上に見知った顔が一つ。

 

(ベルディアじゃねぇかぁぁぁぁ!?)

 

 え?何やってんの?僕らの任務はアクセルの調査のはずだよね?なんで正面切ってやり合おうとしてるの?偵察任務的なものじゃなかったっけ?あの魔王が注目するほどの不確定要素があるこのアクセルで正面から正々堂々戦おうって?ゔぁかじゃねぇの?

 

「なんで来ないのだ!この人でなしがぁぁぁ!」

 

何やってんだこんの変態デュラハンがぁぁぁ!?




キョウヤとの会話を簡単にすると
「おーこんばんは。君強いねー。でも僕今ちょっと用事あるからまた今度でいい?んじゃ、にーげるんだよぉぉぉ!!」
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