この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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うちのクラス何個分だこれ...


過去のトラウマは思いもよらぬところでやってくる

「その腕どうしたんだ?」

「...気にしないでくれ」

 

翌日、ヴェストはその腕に明らかにヤバそうな血文字の呪文が書かれた包帯を巻き付けてゆいゆいさんが用意した朝ごはんを食べていた。

勢いだけで昨晩握りつぶしてしまった媚薬は手に染み付いてしまいなかなか落ちない。

一度手だけ再構成し直そうとも匂いは残ったままだった。

このままでは非常にまずい。特にカズマ少年のカズマ少年のが。

彼は普段ヘタレだが媚薬にやられた、などの大義名分があったら堂々と手を出すタイプの人間だ。間違いない。悪魔の勘がそう囁いている。

しかし常時結界を展開し続けるわけにも行かない。そこであの瓶に巻き付けられていた封印具を模倣したこの魔道具を作り上げ、巻き付けているというわけだ。

非常に厨二臭い格好だが、一般的な服装が厨二臭いこの紅魔の里では逆にしっくりきている。コレで髪を白髪から黒髪にしたら完全に紅魔族だ。なんか嫌だな。

そんなこんなで朝食を食べ終え、めぐみんの提案で里を回ることとなった。なんでも御神体やら聖剣やら面白そうなものがあるらしいが...

 

「...なにこれ」

 

なんだこれ

それ以外の言葉が出てこなかった。

昔親友が故郷の神殿と言って再現していた”神社“らしき建造物に丁重に祀られた...

 

「どう見ても猫耳スク水少女のフィギュアなんですけど」

 

もう、なんというか、訳がわからない。

めぐみんもこれを御神体だと言い張るし、これを崇め始めた理由も昔助けた旅人が”これはこれの命よりも大切な御神体なんだ“と言っていて、なんの神かは知らないけどなんか御利益ありそうだったからという適当すぎる理由。

ふざけんな。そんな適当な理由で存在しない神(神かさえもわからない)を崇めるくらいだったらエリス様を崇めろや。

ヴェストは怒り....というか呆れた。

 

次に訪れたのは岩に刺さった大剣。

聖剣などと大層な名前を付けられているそうだがヴェストの得物である墓標よりも小さく細く薄く弱そうだ。いつぞやのヨツルギ?少年が持っていた魔剣グラムのような神聖さも全く感じられない。

 

「これは観光客寄席として鍛冶屋のおじさんが作ったもので丁度一万人目に抜ける魔法がかけられています。ちなみに挑戦料もかかります」

 

ここまでくるといっそ清々しい。

刺さっている岩ごと抜くなり突き刺さっている刃先を折って取ったことにしてやろうか。

 

「ミラーはやめてくださいね」

「え?どうして」

「折る気満々じゃないですか」

「...チッ」

 

そして次はなんの変哲もない池....な訳がない。

 

「ここは願いの池と呼ばれる泉です。斧やコインを捧げると金銀を司る女神を召喚できるとか」

 

まあただの噂なんですけどね。

一瞬でも期待した僕が馬鹿だった。

投げ込まれた斧やコインは女神の元に召し上げられるのではなくそのまま鍛冶屋のおじさんに鉄の山にされるそうな。

いい性格してるよ鍛冶屋のおじさん。

 

「わ、ちょ、アクア水かけないでくれないかい?」

「へっへっへ、悔しいならやり返してみなさいよ!」

「あ?やんのか?」

「次行きますよー」

 

そして最後は....

 

「ここは世界を滅ぼしかねない兵器が封印されている近い施設です」

「いきなり物騒なのきたな」

 

うん、すごい見覚えある。

というかこれ僕と親友が作ったやつだし。

国に国家予算使ってゲーム作ってることバレたくないからって作り上げた秘密基地の一部だもん。そりゃー見覚えありますよ。

でもおかしいな。この中にはゲームと彼の作り上げた数個の兵器が入ってるだけ。そのどれもが殴れば停止するようなもので世界を滅ぼしかねないものなんて入っていないはずなんだが。

あえてあげるのなら「魔術師殺し」か?

あれなら魔法を一切通さない性質から紅魔族に取っては天敵となり得るからな。と言ってもアレはコストがかかりすぎたせいで廃棄された失敗作だったはずなんだけど...

 

他にも「邪神が封印されていた霊」だの「なもなき女神が封印された土地」なんてものもあったそうだが二つとも色々あって解けた...らしい。

ザル封印すぎないか?僕もここに封印されていればもっと早く目覚めれたかも知れないまである。

というかアルカンレティアで出会ったウォルバクって確かこの辺に封印されてたはずだったような...

 

「おい!その世界を滅ぼしかねない兵器とやらは大丈夫なのかよ」

「だ、大丈夫ですよ!あそこの封印は誰にも読めない古代文字で書かれていますから!さ、さて、観光はこれくらいにして行きたいところがあるのですが...」

「ほんとかよ...」

 

これがのちのフラグになるなんて、その時の僕たちは思いもしなかった...

 

 

「不吉なこと言うな!」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「昔ゆんゆんにもらったローブなのですがこれ一着だと何かと不便でして...これと同じものはありますか?」

「ああ、そのタイプのローブならちょうど染色が終わったやつがあるよ」

「とりあえずここにあるもの全部ください」

「おお!あのめぐみんがずいぶんブルジョワに...冒険者として成功したんだね?」

「ええ、そろそろ私の名が里に聞こえてきてもおかしくないくらいに...と言うことでお金持ちになる予定のカズマ、お金を貸して...カズマ?」

 

成功しているにはしているのかも知れないがそこまでお金は持っておらずカズマにたかろうとするめぐみんを放ってカズマ、アクア、ミラーの3人は皆が皆一つのものに視線を送っていた。

洗濯物を干す物干し竿がわりにかかけられた黒く金属光沢を帯びた所々凸凹している細長い筒状の何か。

 

「どう見てもライフルなんですけど...」

 

ライフルである。

地球に存在するあの長距離から敵を射抜くことのできる兵器、ライフルである。

なんでこんな物騒なものが物干し竿がわりにかけられているのか。2人の疑問は尽きない。

しかしヴェストはそれどころじゃなかった。

 

「な、なんでレールガン(仮)がここに....!?」

 

顔面蒼白冷や汗ダラダラ。

声を押さえているため二人にはバレていないが明らかに異常である。

 

(レールガン(仮)....初代紅魔族がバッテリー不足でうんともすんとも動きもしない「魔術師殺し」の対抗策として作ってほしいとか言ってごねて作らされる羽目になった化け物兵器...!)

 

ちなみにレールガン(仮)は(仮)までが名前である。

 

(そして親友が「お前どうせ簡単には死なねぇし人体実験しよ(笑)」とか言って僕の体を半分吹き飛ばしたクソ兵器ッ!!)

 

そう、ヴェストはこの兵器で一度殺されそうになっていたのだ。

レールガン(仮)から放たれる超高密度の魔力で体の半分以上を吹き飛ばされた挙句、弾道上に残留した魔力によって体を再構成する自分の魔力を阻害されて死にかけた。本物の肉体を持たないヴェストにとっての天敵とも言える兵器だった。

ちなみに封印前の首都決戦でも容赦なく使われた。

あの時は本気で命の危険を感じたものだ。

 

「おや?お客さんそれが何か知っているのかい?それはうちに代々伝わる由緒正しい物干し竿でしてね、錆びないから重宝しているんですよ」

 

なんつーもん物干し竿に使ってるんだよ...

ヴェストが紅魔族に少しの恐怖を覚えた瞬間であった。

 

 

「ふう、あらかた名所は回り終えましたかね」

「見晴らしのいい場所ねぇ。風が気持ちいわ」

 

めぐみんのローブの会計を済ませた後、アクアの「ムーディーな場所に行きたい」と言う提案でむかったのは里を囲む山々の緩やかな草原。カズマ少年も言っているが弁当を食べたくなるような場所だ。風が気持ちいい。

 

「もっといい景色が見たいなら山の頂上に展望台がありますよ。超強力な遠見の魔道具が置かれていますから魔王の城とか覗き見し放題です。おすすめの監視スポットは魔王の娘の部屋らしいですよ」

「お前ら魔王の城ですら商売にすんのか」

 

そんな紅魔族の恐ろしさを垣間見える会話にまたしてもヴェストが顔を顰める。今度は恐怖、と言うよりも不快感のようなものを感じ取れた。

 

「お?どうした?」

「いや、ちょっとね...」

 

彼女は少し苦手だな。

ヴェストは心の中で小さくつぶやいた。

 

「ん?あのあたりめぐみんの実家の近くだよな?魔王軍の連中が入り込んでるぞ?」

 

おっとこれはこれは、あんな目に遭ってもまた来るなんて懲りないな。

ヴェストは自慢の”でびるずあい“で魔王軍の姿を確認する。

相変わらず下級悪魔もどきで構成された雑兵ばかり。

 

「早く行くぞ!」

「りょーかい」

 

掃除の時間だ。

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