あまりにもエリス様との絡みが少なすぎ!!ということで。
なんでオメェタグにエリス様の名前つけつけとんじゃわれ。全然出て来んやんけ、ってわけです。
このままじゃベルディアかカズマくんがヒロインになっちゃう!♂
やめろ!はなせ!私はノンケだぞ!!あ、でも百合は好き...男の娘も可...アーーーー↑
失礼しました
参上!銀髪盗賊団!!
「貴族宅の警護ぉ?」
いかにも嫌そうな声と顔を向けられた受付嬢はなんとか笑みを保ちながら目の前の期待のルーキーこと“冒険者ミラー”に向かい合っていた。
貴族に少なからず悪印象を抱くものがいるのは周知の事実だがここまで露骨な反応を返されるとは思っていなかったのだろう。
それも冒険カズマとその仲間たち以外とはパーティを組まず、セクハラまがいな
形だけの笑顔を保ち続けているが少しほおがひくついている。
「え、やだよ。貴族ってあれでしょ?可愛い子を金と権力に物を言わせて手篭めにしてイヤーンなことするブタ野郎どものことでしょ?」
しかも思ったよりも口が悪いことにも驚きだ。
「まあまあ...貴族と言ってもそう言う人だけじゃないですし...それにせっかくの指名依頼ですよ?報酬も弾むそうですし...」
「えー...やだよ」
「お願いしますよ、ここのギルドもその方に結構な金額支援してもらってるんです。」
「えぇー....僕には関係ないし....」
「どうか!この通りです!」
机に頭がぶつかるほど深く頭を下げても彼は“えぇーやだよー”と拒否し続けていた。
やばい、どうしよう、このままじゃ仕事が増える。
受付嬢の頭が焦りに支配されかけたその瞬間、天啓が舞い降りた。
(確かこの人は狂信的なエリス教徒だったはず....!)
以前酒の席で他の冒険者にエリス様をかたどった精巧な人形をもって熱弁していたのを思い出す。あの時はあのミラーさんが、珍しいな程度にしか思っていなかったが今思えばあれが素だったのだろう。
「ミラーさん、もしこの依頼を受けてくださるのなら特別にこのエリス様像をーーーー
「よし引き受けよう」
ーーーーー即答!?」
◆ ◆ ◆ ◆
私ヴェストさん、今お貴族さんの家にいるの。
冗談はさておき冒険者ミラーことヴェストは以来の貴族の家にいた。
場所は王都。現在時刻は深夜。
お貴族様とのファーストコンタクト、依頼内容の確認兼世間話はもちろんカットだ。彼の名誉のためにブタでも変態でもなく普通に紳士だったとだけ言っておく。ただちょっと胡散臭かったが貴族社会とかいう闇の深そうなところで暮らしている以上仕方がないことなのだろう。
依頼内容は普通に警護。
不審者を見つけたら捕縛せよとのことだ。
そんくらいのことだったら普通に警備雇った方が良くない?とヴェストは思ったがなんでも“例の盗賊”がここと狙っているという情報を仕入れたらしい。
貴族の家に盗みに行っては貧しい人々に金品を分け与える銀髪が特徴的な義賊。別名“銀髪”
そのままである。
しかしその腕は本物で一度の捕縛もなく幾つもの貴族たちが襲撃を受けている。富裕層には恐れられ貧困層には英雄視されているとかいないとか
そんな盗賊がこの屋敷を襲うというのだ。
普通の警備では役に立たないのだからある程度腕が立ち新人のため依頼金も安く済むであろうミラーに声がかかるのは別におかしくない。
ヴェスト自身もそんな盗賊に少し興味を持ち楽しみにしていたりする。
しかし...
「あー....暇だ」
いかんせん暇なのだ。
明かりの消えた屋敷の中1人で魔法のランタンの明かりのもと一人二役のチェスをするのも飽きてきた。多分これで十五回目だ。ちなみに相手として思い浮かべているのはもちろんエリス様。結果は0対15。エリス様の圧勝だ。
警備はどうしたのかって?そんなものは自身の魔力を線のようにし屋敷の中に張り巡らせることで完成している。映画とかでよく見るレーザーの警報装置みたいなものだ。効果が切れるたびかけ直さなくてはならない索敵の魔法よりも効率がいいから重宝している。
「ひーまーだー」
机に突っ伏してみる。
チェスの結果は今負けた分も含め0対16だ。
こんなことになるならあの元生首野郎も連れてこればよかった。
今頃すやすや安眠中であろう仲間(下僕)への文句を言っても届くことはない。まあせいぜい謎のテレパシーを受診して悪夢を見ることになるくらいか。
「はーーーーーひぃーーーーまぁーーーーd
ヴェストが少し顔をあげ、再度同じことを気怠そうに口にした、その時だった。
ゴンと鈍い音を立て机の上に崩れ落ちる。
その衝撃で机の上に置かれたランタンが床に落ち光が消えるがヴェストが反応することはない。それどころかピクリとも動かない。
「よし!警備の人はもういないかな?初めて使ってみたけど意外と便利だねこの吹き矢」
明かりも消えて静かになった部屋に1人の白髪の人物がやってきた。
その顔は布に隠され、手には吹き矢と思われる筒が握られている。
「うん、ちゃんと寝てる。体に害はないはずだから、ごめんね?」
規則的な呼吸と背中の動きを見て盗賊、銀髪の少女はつぶやいた。
おそらく即効性の睡眠薬の塗られた針を刺されたのだろう。
警備員は起きることはないが死んでいるわけではないようだ。
「よし、多分神器は向こうの部屋に....え!?」
そう呟きながら奥の扉に向かおうとした少女の腕が突然強力な力で引っ張られ、体勢が崩される。
突然のことに驚きながら振り返ろうとするも、そのまま腕を背中に回して押さえつけられてしまう。
「なんで!?」
「あいにく僕は毒物の類が効かない体質でね」
先程眠らせたはずの警備員の力はその細身に似合わず異常なほど強く、少女の力では抜け出せない。
「さーて、噂の盗賊さんの素顔ご開帳と行こうか」
「つ....!」
まずいと思って必死にもがくも逃げ出すことは叶わない。
暗闇の中真っ赤に双眼を光らせながら警備員は少女の顔を隠す布を下ろし....固まった。
「........?」
そして
「ゥゥゥゥェエリィス様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
奇声を上げながら飛び去った。
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった少女は仕方がないと思う。
だって先程まで自分を絶体絶命のピンチに陥らせていた敵がこんなおかしな行動をとったにだから。
そして何より、
「え?...え!?ちょ、なんで知って!?」
「自分です!僕です!私です!ヴェストです!」
「ええええええ!?」
警備員ことヴェストの作り出した魔法の光に照らされ明らかになったその顔を見て少女は悲鳴にも似た声を発することとなった。
思いも寄らぬ人物に出会った驚きと、最も会いたくなかった変態に出会った恐怖(?)の混ざった声であった。
◆ ◆ ◆ ◆
「落ち着きました?」
「う、うん。なんとか...って、誰のせいだと思ってるの!?」
「私だって貴方様が例の盗賊だなんて思いませんでしたしおあいこですよ」
「ぐぬぬぬ....それでもあの抑え方はなかったんじゃない?」
「....申し訳ありません」
やっと落ち着きを取り戻した2人は向かい合って正座をしていた。
あまりの出来事に思わず大声をあげそうになったエリス様ことクリスの口を抑えたのは流石のヴェストでも反省しているようで、少し申し訳そうにしていた。赤く腫れた頰を嬉しそうに撫でているのは気のせいだ。
「それで、エリ....クリス様はこんなところで何を?」
「呼び捨てでいいよ」
「クリ......ぐはぁ!?」
「ヴェスト君!?」
吐血である。エリス様の前になるとこの悪魔は色々限界になるのだ。
いわば限界オタクと同じだ。
「なんでって、ここの貴族が悪徳貴族って聞いてね。悪さをして稼いだお金を苦しんでいる人たちに分けてあげようと...」
「私に嘘が通じないのはご存知でしょう?クリ.......ィス。あ、私のことはミラーとお呼びください。もちろん呼び捨てで」
「あ、うん......はぁ、仕方ないか。君には言いたくないんだけどな。実はこの屋敷に神器があるって聞いたんだ」
「神器ですか」
神器。それは地球からの転生者、いわば勇者が女神アクアから召喚時に授けられるチートアイテムのことだ。
その種類は多岐に渡り天すら切り裂くものから持ち主の癖に特化しすぎたおかしなものまで。しかしそのどれもが使い方によっては恐ろしい効果を発揮する代物だ。
「しかしあれらは転生者本人にしか使えないはず。別に在庫がなくなったわけではないんですよね?なら放っておいても問題ないのでは?」
そう、神器は転生者本人にしか真価を発揮することができない。
あの魔剣グラムガカズマ少年の手に渡った瞬間鈍に早変わりし、即刻質に入れられたように。
だが....
「でもそれは真価を発揮できないだけで使い用があるんだ」
「というと?」
「たとえば岩盤とかでも溶かしちゃうような業火を出すアイテムがあって、それが本来の持ち主から別の持ち主へと渡ったとする。」
「はい」
「するとそれは本来の持ち主が使ってた時みたいな炎は吐けなくなるんだ......でも、ファイヤーとかの魔法で出せるような炎は生み出すことができる」
「.....つまり?」
「効果が弱体化するだけで完全になくなるってわけじゃないんだよ」
驚きの新事実だ。
ヴェストはこれまで何度かチートアイテムを持った転生者を倒し、そのアイテムを手にしたことがあったがそのどれもが本人にしか使えないと思ってポイ捨てしてしまっていた。なんと惜しいことをしていたのだろう。
「しかも今回ここにあるって聞いた神器が結構厄介な能力持ちでさ。悪用される前に回収しなきゃいけないんだ」
「なるほど」
確かにいくら弱体化しようとも元の効果が『効果範囲内の生物死亡』なんてとんでもなものなら弱体化しても『範囲内の生物が病気になる』とかただ単に範囲が縮小するだけだったりと危険なままの可能性がある。
ならば放っておくわけにはいかないだろう。
「よし!私も手伝いましょう」
「遠慮しときます」