この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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駆け出しの町って...なんだっけ?

ベルディアとアクセルの冒険者たちとの戦いが幕を切ってしばらくの時間がったった今、戦場である城門前の平原に立っているのは多少傷を負い数も少なくなっているがなんとか未だ倒れない冒険者どもと水浸しになったデュラハン、ベルディア。

あの冒険者どもがベルディアをここまで追い詰めるとは思わなかった。いや、主に彼を追い詰めていたのはあの茶髪の少年が率いる4人のパーティーだ。

あの少年の機転がこの戦いの勝敗の分け目となったのだろう。まだ若いというのに立派なものだ。

 

だが、一つ言わせてほしい。なんで駆け出しの町と呼ばれるこのアクセルに爆裂魔法使いがいるんだよ!それになんだあの洪水は!?草原一帯が水浸しになるってどんな魔法だよ。城壁も崩れたせいで危うく巻き込まれるところだったし...あ、そういえばベルディアの攻撃を受けて逆に喜ぶ変態もいたな。ああいう手合いは苦手だ。なかなか悪感情を生み出してくれない。何をしても逆に喜ぶんだもん。

 

(そろそろ助けてやるか)

 

ベルディアのやつも面白いものを見せてくれた。奴の感情が僕に向けてのものじゃないことが惜しいと感じるくらいにいい悪感情を放っていた。

せっかくだし助けてやろう。古くからの友人だからな。失うのは惜しい。

それに腹も減った。

レインコートと仮面をつけて準備完了。

さあ、食事の時間としよう。

 

◆ ◆ ◆

 

いくらか死者は出したがもはや魔王軍幹部ベルディアは満身創痍の状態だった。

さらには逃げようにも頭部はカズマたち冒険者に弄ばれ逃げようにも逃げられない状態。

完全に詰みだ。

 

「セイクリッド・ターンアンデット!!」

 

アクアの浄化魔法をくらいベルディアの胴体は白い光に包まれながら消えていく。

 

「それっ!」

「ちょ.....!まっ!?」

 

それに続くようにカズマによって浄化の光に向け投げ飛ばされた頭部も胴体に続き光に飲まれ消えてなくなる....

 

 

 

 

ことはなかった。

 

「うお!?」

「な!?消えた!?」

 

ベルディアの頭部が光に飲まれる直前に消え去ったのだ。冒険者たちは突然のことに驚きながらも頭部の行方を探す。まさか逃げたしたのだろうか。あの状態で?ありえない。

だがそんな冒険者たちの心配をよそにそれはすぐに見つかった。

 

いつからどこにいたのか、灰のレインコートを深く被った仮面の女性とも男性ともとれる人物が効力が終わり消え去っていく光の柱の前に立っていた。その手には鈍く光るマチェット、そしてベルディアの頭部が鷲掴みにされていた。鎧が少し歪んでいるあたり相当な力で握っているようだ。

 

「だ、誰dーぎゃぁぁぁ!?痛い痛い痛い!?死ぬぅぅぅぅ!?」

『おっと、これは悪いことをした。許せ。』

 

平坦な、感情を読み取ることのできない冷たい声が静かな戦場に嫌に響く。

魔王軍の援軍か?とあっけに取られていた冒険者たちが正気に戻り次々と武器を構え音が再び戦場の静寂を破る。

そんな中水色の髪をしたプリースト、アクアが声を上げた。

 

「あなた、悪魔ね?」

『正解だ。青髪のプリーストよ。』

 

悪魔、それは人間の悪感情を糧とし、神と敵対するもの。

それが発している威圧感というのだろうか。それさえも強大で思わず後ずさってしまうものがいるほどだった。

 

『我のことは...そうだな、レインコートとでも呼ぶが良い。どうせ貴様らはここで終わるのだ。我の名を知る価値もない。』

 

高慢な物言いだった。だがそれに殆どの者は言い返すことができなかった。いやできなかったといった方が正しいだろう。

だが、ただ一人。アクアだけは違った。

 

「ふん。寄生虫風情が随分と偉そうな物いいね。できる物ならやってみなさい。返り討ちにしてやるわ。」

「おいー!?アクア!?お前何挑発してるんだよ!?」

『.....随分と大きく出たな勇者よ。我を寄生虫呼ばわりとはな、いくら神に愛されているからといってあまり調子に乗らない方が身のためだ。』

 

売り言葉に買い言葉。流石の悪魔でも寄生虫呼ばわりはイラついたのか少し口調を強めた。だがアクアは全く気にする様子もなく、むしろたった今生まれた疑問を悪魔に問いかける。

 

「神に愛される?何のこと?」

『他の転生者どもと比べれば一目瞭然だ。その身に纏う圧倒的な神気、神の寵愛と呼ばずしてなんと呼ぶか。』

 

「何いってるの?私が神なんですけど。」

 

悪魔は思わず呆然とした。冒険者たちも何いってんのこいつという目でアクアを見つめる。ただ一人他人のフリをしようと距離を取るカズマを除いて。

 

『...............貴様、虚言癖でも持っているのか?大体神がわざわざこの地上に降りてくるわけがなかろう。』

 

悪魔は怒りも驚き通り越してただただ呆れた様子だ。アクアを見る目も心なしか可哀想な子を見るものに変わっている気がする。

だがその様子が気に障ったのかアクアは声を張り上げる。

 

「このっ!言わせておけば!いいわ!やってやろうじゃないの!今更謝ったって許さないわよ!」

 

アクアがなんらかの魔法を発動させようと詠唱を始めた。先程ベルディアに対して使われた『セイクリッド・ターンアンデット』は悪魔には効かない。ならばあの頭のおかしい水量を生み出す『セイクリッド・クリエイトウォーター』あたりを使うのだろうと考えた悪魔は水浸しになるのは嫌だな、とその詠唱と同時に簡易的な結界を自らの周りに貼る。

だが結果から言えばそれは無駄となった。

 

「セイクリッド・ハイネス・エクソシズム!!」

『は....あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?』

 

アクアが放った青白い光線が悪魔を包み燃え上がる。効果は抜群だ!

※レインコートに大ダメージが入った!あと少しで倒せそうだ!

※ベルディアはターンアンデットと勘違いしたのか気絶している!

 

『き、貴様なんだそれは!?我に痛みを感じさせるなど...ありえん!』

「あら、意外と丈夫ね。安心しなさい次で決めるわ。」

 

アクアは自称神とは思えないほど悪い笑みを浮かべながら指先に再び光を集め始める。

その指先は変わらず大ダメージを負い黒い瘴気を煙のように上げるレインコートに向いている。

 

『クソがぁ!覚えていろこのクソプリースト!ここは引かせてもらう!それとこれは戦略的撤退であり断じて敗走などではない!』

 

「セイクリッド・ハイネス・エクソシズム!!」

 

悪魔の姿が突然湧き出た闇に溶けていく。

アクアの放った聖なる光りがそれを貫くもそこにはもう悪魔はいない。悪魔の負け犬の遠吠えともとれる叫び声がこだまするだけだった。




この主人公はイキリ出すと大体手痛いしっぺ返しを喰らう気がする。
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