この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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私はクリぼっちじゃない。家族がいるからクリぼっちじゃない。
そうだよねーアレキサンダー(金魚)?

ん?クリスマスに用事があるかだって?
それ以上は聞いてはいけない。

追記
お気に入り登録数が1000を超えて、UAが50000を超えていました!なるほどこれがクリスマスプレゼントか!本当ありがとうございます!


蛇足編(おまけor後日談)
めりーくるしみます!!


 

「さて、みんなは“くりすます”という言葉を知っているだろうか」

 

ここは暖炉にくべられた薪がパチパチと音を立てるカズマ邸の居間。そこではいつものカズマさん一行とヴェスト、そしてウィズとバニル、ゆんゆんなどが各自寛いでいた。

ちなみにこたつはカズマ少年とちょむすけによって占領されている。

 

「そのくらい知っていますよ。確か真っ白なお髭を生やした真っ赤な不審者が煙突から不法侵入してきて良い子にはプレゼントを、悪い子には石炭をプレゼントする日ですよね」

「ああそうだ....一般的にはな」

 

所々悪意のある言い方の混じっためぐみんの説明をヴェストは両肘を机の上に立てて両手を口元で組む諸相ゲンドウポーズをしたまま否定した。みょうに神妙な空気を纏っている。

 

「幸せいっぱい頭お花畑な一般ピーポー共には知れ渡っていないようだが、実はクリスマスにはもう一つの側面がある」

「それは...?」

 

 

 

「苦離酢魔酢」

 

 

 

 

「つまりは街中でいちゃついているカップルにお酢をぶっかけて別れさせてやろうという行事であり...」

「あーはいはいもういいです」

「待て待て待て待て」

 

何が来るのか期待して見守っていたカズマ少年もみかんを剥いて食べ始めた。ちょむすけが欲しがっているが猫ってみかん食べれたのだろうか。

 

「外を見ろ!こんな寒い中!奴らは!一人ぼっちで温まることのできない我々に見せつけるように!イチャイチャしてやがる!一つのマフラーを共用したり!わざわざ手袋を外してまで手を繋いだり!わざわざ我々に見せつけるためだけに!あのような非効率的な行為をしているのだ!ああ!あの脳内真っピンクどもめ!これでは聖夜ではなく性夜ではないか!かーっぺっ!甘い!甘い!甘すぎる!こんな暴挙を許してはなるものか!そうだろう?めぐみん!そしてカズマ少年!......ハァ...ハァ」

 

「...長文お疲れ様である」

 

息を切らすヴェストにバニルが剥かれたみかんを差し出した。所々理不尽なものもあるが確かにその気持ちはわからんでもない。カズマ少年は彼に同情し、そして自分はあんなふうにならないように気おつけようと反面教師にした。とりあえずみかんうま。このままじゃあ肌が真っ黄色になっちまうよ。

 

「確かにその気持ち、わからんでもない。クリスマスは少々甘ったるい感情が多すぎるのである」

「でぇすよねー!さすが先輩!わかってらっしゃる!」

「しかしな、周りを見てみるのだミラー」

「周り?ですか?」

 

ヴェストは周囲を見回した。

そこにいたのはこたつに食われたカズマ少年や暖炉前を占領する駄女神。ダクネスと共にホットミルクを飲むウィズなど、各自がそれぞれの方法でくつろいでいる光景だった。

しかしそれは表面上の話。内面は...

 

「そう!貴様の周りにはこんなにも独身であることにコンプレックスを抱き極上の負の感情を生み出す人間がいるではないか!」

 

「私は今の生活に満足しているからな。特に感じないぞ?」

「そ、そんなことありませんよ?」

「確かにカップルはむかつきますがそこまでイライラしているわけでは...」

「今は一人じゃないですから別に...」

 

「そそそそそそそそ、そんなことねーし!?別にリア充爆発しろとか思ってねーし!?」

 

「...特にこの男からな」

 

まんまと釣られたカズマ少年だった。

逆に全くと言って負の感情を感じないアクアは暖炉の前で溶けていた。女神って溶けるんだな。

 

「べ、別に俺もリア充滅びろとか思ってねーし!?」

 

そしてバニル先輩の言葉に過剰に反応したものが一人。

 

「...さっきから思ってましたがその大男誰ですか?」

 

そこには黒色のロープを纏った男性がヴェストの横で作り上げたトランプタワーを盛大に崩していた。

 

「ん?ああ、こいつはベ.......ベルさんだ。僕の下僕の」

「そうだ。俺の名前はベルさ...ってお前!下僕ってお前!」

「だって事実じゃん」

 

ベルディアであった。

根城とした廃城に目の前の小娘自慢の爆裂魔法を打ち込まれ、嬉々としてカズマ一行をで迎える準備をしたにも関わらず無視され、かけた呪いは駄女神に解かれ、カズマ少年のスティールで頭部を奪われ、挙句の果てにサッカーボールにされ、胴体を浄化され、それでも終わらず今度はヴェストの悪感情生成装置にされ、やっと失った胴体を作ってもらえたと思ったらアルカンレティアに忘れられて狂信者どもの餌食になったベルディアさんである。

まあとりあえずかわいそうなベルさんは置いておいて...「おい」

 

「そういうわけじゃないんですよ先輩。確かにこの部屋には極上の負の感情が充満し...んん、している“かも”しれませんがそういうわけじゃないんです。あと僕は別に人間の悪感情目当てじゃないんですよ。僕悪魔じゃなくて人間なんで」

「そういう設定であったな」

「せ、設定じゃないです」

 

自分の正体を隠していることをギリギリ思い出したヴェストは否定する。

だが実際彼の目的は人間の悪感情ではなかった。というかそれなら悪感情食べ放題なこの部屋で満足している。

 

「そんなことより!僕はカップルが!リア充が苦しむ姿が見たい!とくに修羅場が見たい!もう悪感情とかどうでもいいんですよ!!」

「えぇ...」

 

誰が放ったつぶやきだったのか。呆れを含んだそれはヴェストの欲望にかき消された。

よくみると例の瘴気が少しだが漏れ始めている。

最近ゆるゆるすぎないか?ちゃんとガス栓は閉めてほしい。

 

「あのように幸せの絶頂にいる人間を見るとどうしても抑えられないこの衝動!ああああああああああ!あの方との契約がなければ今すぐにでも....」

「今すぐにでも?」

 

 

「...............へぁ?」

 

 

ギギギギ、と音が鳴るようにヴェストの首はゆっくりと後ろを向いてゆく。まるで壊れたブリキのような動きで向いた先にいたのは...

 

「今すぐにでも....なにかな?」

 

満面の笑みを浮かべたクリスが立っていた。

 

「あ、え、いや、ちゃうんすよクリス様。決して悪いことをしようとしていたわけじゃぁ」

「じゃあなんでそんなに戸惑ってるのかな?」

 

いつもは女神(事実女神なのだが)のような彼女だが今は一転して凄まじい恐怖を感じた。愛しの女神クリスに問い詰められるなど普段ならその尊さから即成仏√let's goなのだが、今は嬉しさを「クリス様に嫌われてしまうのでは」という恐怖が飲み込み、一歩後退りしてしまうといういつものヴェストならば考えられないような行動をとってしまっていた。

「悪魔のくせに契約すら守れないなんて最低ですね」という幻聴まで聞こえてきてた。

なに?元々好感度はゼロ何だからこれ以上減らないだろって?

そ、そんなことないかもしれないじゃないか!

たとえ可能性が1%未満でも希望を捨ててはいけない。

え?1%も0.1%もないって?ゼロだって?

...そんなこと言わなくてもいいじゃない

 

「ユルシテ...ユルシテ...」

 

一人勝手にダメージを負ったヴェストはついに最終奥義DOGEZAを繰り出すまでに追い詰められていた。気のせいか頭身も縮んで弱々しくなっている。

 

「はぁ、わかったよ。次からは気をつけてね。少し殺気と瘴気が漏れ出てたから」

「アリガトゴザイマスモウシマシェン」

 

カズマ少年は思った。この二人はどのような関係なのだろうかと。

やはりペットと飼い主だろうか。ペット側はもちろんヴェストで。

 

「ところでクリス、突然訪ねてきてどうしたんだ?」

「ふっふっふ...よくぞ聞いてくれたねダクネス!」

「ヒィ!?」

 

そう言うとクリスは背中に背負っていた大きな袋を床に置いた。

小型化しているヴェストのすぐ横に重量のありそうなそれをドスンとおいたのはわざとだろう。

 

「サンタさんからのプレゼントだよ!」

 

「な、なんだってー!?」

「プレゼント!?」

「しゅわしゅわ!?」

 

その一言に縮んだヴェストと溶けかけていたアクアまでもが瞬時に復活した。

プレゼント、その一言はそれほどまでに魅力的なものだった。

 

「はいはい落ち着いて!めぐみんにはこれ!」

「マナタイト!?」

「ダクネスには....」

 

次々と袋から取り出されていくプレゼントに歓声が上がる。

そのどれもがマナタイトや新しいチェストプレート(ミスリル使用)など、大変値の張るものばかりだ。

クリス曰く「銀髪盗賊団で手にはいっ...こう言う日ぐらい贅沢しないとね」だそうな。

ちなみにバニルとウィズにはなかった。

ウィズが少ししょんぼりしていたので彼らには後で僕がプレゼントを持って行こう。ゴブリンの剥製とかどうだろうか。

ヴェストのセンスは致命的に悪かった。

 

「よし、みんなに配り終えたかな....」

「クリス様」

 

全てのプレゼントを袋から取り出し終わりふぅ、吐息をついたクリスの足元から声がかかった。

 

「この私にもどうかお恵みを...」

 

視線を向けてみるとそこには主人から褒美を受け取る騎士のようなポーズをしたヴェストがいた。

それは物語の一場面を切り出したようにムカつくくらい様になっていた。

これなら悪魔嫌いのエリス様でもきっとプレゼントを与えてくださるはず。

 

「いやないよ?」

「へ?」

「だからないって」

 

 

そんな儚き希望は打ち砕かれヴェストは灰になった。

 

ああサンタよ!どうかこの哀れな悪魔にプレゼントを!

メリークリスマス!

 




翌日ヴェストの止まっている宿屋に彼宛になぜかラップングされた短剣が送られていたのだとか。
明らかに殺意だとかそう言うものがこもってそうなそれを彼はもう一本の短剣と共に祭壇に飾っているのらしい。
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