この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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久しぶりですお茶です。
誕生日を迎えたので初投稿です。
いえい



恋は戦争

ここは数々の男たちが、時にストレス発散に、時に癒しを求めて、時に最後の希望に縋るように、さまざまな思いを抱いて訪れる幻の秘境。

朝まで営業していることで有名なこの喫茶店は、しかし『本日閉店』の看板が架けられ、その扉を閉ざしていた。

その原因は従業員の不調や社員旅行など、簡単な物ではなかった。

 

 

「さーあ!始まりました!第一回サキュバス喫茶店修羅場論争!!」

 

「司会はわたくし受付サキュバスことレベッカと〜!」

「ロ、ロリーサとぉ〜」

「アルベルト〜....って巻き込まないでくれませんか!?」

 

 

彼の悲鳴に似たツッコミももっともである。

何せたった今この空間には、悪魔にとって天敵である女神エリスから発生したてほやほやの聖なるオーラが、彼女の内心を言い表すかのように、嵐となって吹き荒れていたのだから。

 

 

「おおっと〜!!結界がミシミシなっています!アルベルト様限界か〜?」

「少し黙っていてください!あなたそんなキャラじゃなかったですよね!?変なスイッチ入ってますよね!?ああもう!前話で退場する予定だったのに!くそ!こうなったらやけくそだやってやラァ!!!」

 

 

ヴェストが幻術及び暴力。バニルが心理掌握を得意とすると言うならアルベルト・ヴィンターハイムは結界術に精通した悪魔だ。

故に彼の作り上げる結界は最高級。

最上位の悪魔や神々だろうとそう簡単には突破できないほどの代物。

そんな彼の潜伏結界及び対聖魔法用不浄結界はミシミシと音を立てて崩れ去ろうとしていた。

ちなみに元々は10層構造だったがこの数分で2枚残すまでに減った。

 

 

「というかなんであいつはこの嵐の中平気なんですか!?というかそもそもどうしてこうなったぁ!?」

「質問が多いぞ〜アルベルト様〜!!」

「いえ、待ってください!もっとよく見てください!」

「はい!?」

 

「すごい冷や汗かいてます!!」

 

「いやそれだけで済むのも相当すごいと思いますよ!?」

 

 

たしかによく見ると仁王立ちするクリス姿の女神エリスの前で正座して俯いている彼の顔は青ざめ、体は高速バイブレーションを起こし、大量の冷や汗が滝のように流れ出していた。

 

 

「おおっと〜!?ここまで振動が伝わってくるぞ〜!!」

「あれは...武者震いですね!さすがヴェスト様です!」

「んなわけあるかぁ!!」

 

 

実のところ、アルベルトを含む高位悪魔は神や天使と対等に張り合うことができるほどの力を持っている。厄災とまで称された大悪魔、ヴェストもそうだ。

だが、現実はどうだろう。

たった一人の女神に、こうして威圧され何もできないままでいる。

つまり、あれだ。

女怖い。

 

 

『ねえ、ヴェスト君』

『ひゃい....』

 

「おっとぉ〜!ついにエリス選手が動いた〜!!」

「あ、え、えーと....結界外の会話は二重鉤括弧でお送りします?」

「どっから出しましたそのカンペ!?」

 

 

エリスが一歩前へ足をすすめると同時にヴェストが変な声と共に萎縮する。気のせいか物理的に小さくなっている気がするが特に気にすることではない。そういうものだ。

それよりも外の嵐がさらに強くなったことの方が問題だ。

 

 

「きゃ!?パリンって!パリンってなりましたよ!?先輩!アルベルト様がもう限界です!早く逃げましょう!!」

「ダメよ!かの大悪魔ヴェスト様と忌々しいエリス教の信仰対象女神エリスの一戦!見逃せないわ!」

「ファーーーーーーーwwwwwwもうやってやりますよ!持ってくれよ魔力!不浄結界三倍だーーー!!!」

 

 

『ヴェスト君さ、君、なんでこんなところにいるの?』

『いや、その....友人と.....』

『友人と...なに?友達とだったらこんなところに来てもいいの?』

『そ、そういうわけでは....』

『ダメだよね?』

『あ......』

『ダメだよね?』

『...はい』

 

 

「押されているぞヴェスト様!押し返せ〜!!」

「が、頑張れー!」

「いや無理でしょ....ってウぉぉぉぉぉ!?結界パゥワァァァァァァ!!」

 

 

『ねえ、わかってる?』

『はい』

『これ、浮気だよね』

『は....い?』

『愛してくれるって言ったよね?ずっと私だけを見てくれるって言ったっよね?』

『エリス....様...?』

『なのに....なんで君はこんな汚らわしい場所にいるのかな?』

 

 

「修羅場だァァァァァァ!!!!!!」

「アーーーーーー↑アーーーーーー↑」

「頑張ってくださいアルベルト様!」

「アーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

『毎日のように言ってくれた愛の言葉は嘘だったの?昔はあんなにも沢山言いに来てくれたよねでも今では会いに来てもくれないよねなんでかな忙しいのかなそんなわけないよねカズマ君から聞いてるよ?なんでなの?もうあきちゃったの?ぜんぶ一時の気まぐれだったの?それともアレかな?記憶が戻っちゃったからかな?そっか。それなら仕方ないよね。前のヴェスト君に直さなきゃ。私を愛してくれたヴェスト君に。ほら、逃げないでよ。これでみんな幸せになるんだからさ。私を愛してくれないヴェスト君なんていちゃいけないんだ』

 

 

「怒涛の言葉責め〜!!これがヤンデレか〜?そこんとこどう思いますかアルベルト様!」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「なるほどそういうことですね!」

「もうやめてください先輩!アルベルト様のライフはもうゼロですよ!」

 

 

『そんなわけないじゃないですか!!』

 

 

「おっとヴェスト様の反撃か〜!?」

「ア、ア、ア、ア、ア」

「アルベルト様ーーー!!!!」

 

 

『僕はずっとあなたのことを愛しています!それは昔も今も変わらない!』

『あ、愛して』

『愛しています!』

『ピッ!?』

 

 

ガシッと肩を掴んでのゼロ距離反撃。

普段なら恥ずかしさのあまりオーバーヒートしてしまうところだが、今この場所はエリスが放つ極寒0度のオーラによって包まれている。

よって湧き上がる熱も全て即座に冷却されるのだ。

 

 

『私が貴方の元へ向かうことができなかったことは謝ります。しかしどうか許してください。これには深いわけがあるのです』

『......言ってみなよ』

 

『貴方が!眩しすぎるのです!!』

 

『へ?』

『前まで会う度に向けられてきた嫌そうな顔!それだけでも相当な尊さがあるというのに!最近の貴方は私を見るたびに花が咲いたような美しい笑顔を向けてくる!こんな!こんな尊さ!耐えられるわけがないじゃないですか!!!』

 

 

「惚気だーーーー!!!!」

 

 

『ここに来ていたのは貴方にこの思いを伝える方法を考えるためでした。この貴方への愛を。でも、今なら伝えられる』

『ヴェスト...君?』

 

 

 

 

 

 

『貴方のことを、愛しています。どうか付き合ってください』

 

 

 

『ひゃ、ひゃい....』

 

 

 

「決まったァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 

キュウと煙を上げて倒れるエリス様を優しく受け止めるヴェスト。

決まった。ついに!この戦いに決着がついたのだ。

 

 

「勝者は!ヴェスト様だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ヒュウ......ヒュウ......ア....ア.......オワ....ッタ.........?」

「はいっ......終わりました....やっと....終わったんですッ!!」

 

 

吹き荒れる嵐はもう治まっていた。

全てを使い果たしたアルベルト(犠牲者)はミイラなように干からびながらそのまま倒れ込み、ロリーサはそれを支えながら静かに泣きながら自分の命があることに感謝した。

ちなみにレベッカは興奮冷めやまぬ様子で雄叫びをあげていた。

マジで何やってんだこいつ。

 

 

 

 

 

「キュウ.....」

 

 

 

 

「あ、ヴェスト様も倒れた」

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