この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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迫り来る夏の終わり。未だ減らない宿題の山。とうに擦り切れた精神。タスケテ(自業自得)


悪魔という皮を被った変態

魔王軍幹部ベルディアの凶行から約三週間。

ヴェストたちは魔王様直々に命じられたアクセルの街の調査を続行するという名目で極めて私的な人探しをしていた。

もちろん髪も比較的目立たない暗めの茶髪に変色させ服も以前買った地味なものに着替えている。

 

余談だが髪は染めた、のではなく変色させてある。彼の性質上、姿を変えるのはお手のものなのだ。

だが「それならいっそのこと変装せずに顔変えれば良くね?」と思うが、そううまい具合には作られていない。

彼は見通す悪魔バニルの仮面のように本体があるわけでもなく、かと言って肉体があるわけでもない。

どちらかと言えば冬将軍などの精霊などのように実態を持たない精神体だ。

だが素の状態の彼には自我がなく、ただ食欲があるのである。

そしてその自我は現在彼がまとっている虚像に依存しており、つまりは現在の虚像、イメージからかけ離れすぎた姿に変えようとすると自我が崩壊する可能性があるのだ。

 

このように彼は他の悪魔とは少し違った存在であり、一体彼の自我の元となった「虚像」は誰が創ったのか。本当に彼は悪魔なのか。

謎が多い彼だがただ一つわかっていることがある。

それは「虚像の悪魔」の存在が確認されるようになったのは古代ノイズ国に某科学者が現れて以降だということだけである。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

彼はベルディア(首)を腰に下げながら街で出会った銀髪の後ろ姿に片っ端から声をかけるというナンパまがいの行為をし、視界に少しでも水色のプリーストが入り込んだら即撤退を繰り返していた。

 

あれはヴェストたちにとって死神も同然の存在。今ではもうその行為が反射的に行えるほどに彼らはアレを警戒していた。

そしてそれを従えるカズマという冒険者に尊敬の意を抱いていたりしていた。

基本職の冒険者だというのにあれほどのプリーストを従えるとは。クズマとかカスマだとか評判は良くないようだが。

 

ちなみになまじ彼の顔がいいせいで相手からあまり悪い反応が返ってこないことにより生じるベルディアの悪感情は実に美味であったらしい。立派な食糧生産機に成り下がっているベルディアである。

 

「あれがお前の探していた勇者とやらなのか?」

「嗚呼やはり輝いておられる...美しい...何故か今はその神々しいまでの力をお隠しになっているようだが私にはわかる....間違いなく彼女だ...‼︎あれの前ではいかなる宝石も美食もくすんで見える...‼︎」

「だめだこりゃ。」

 

そんなこんなでたった今、彼らは銀髪の勇者と思われる女性を発見し....声をかけることなく物陰から様子を見ている。

これでは完全にただのストーカー行為である。

心なしか周囲の目線が冷たいのは気のせいではないだろう。

 

「話しかけないのか?」

「馬鹿を言うな!彼女と私は現在不運な出会いにより残念なことに、とても残念なことに敵対していることになっているんだぞ。」

 

彼は不運な出来事と言っているが悪魔と勇者、いや人間自体が敵対関係にあるのは当然のことでありどのような出会いであってもこのような結果になるのは当然である。

 

「それにな...」

「それに?」

「そんなことをしたら私が緊張のあまりこの街で暴れまわってしまうかもしれない。」

「それは洒落にならないからやめろ。」

 

どうやったらそんなことになるのか。ベルディアはため息をつきたくなった。変態であることを除けば比較的常人であるベルディアは自分よりも変態なこの悪魔に精神的にも物理的にも振り回されるこの状況は非常に疲れるのだ。

ちなみにそこから排出される悪感情のおかげでヴェストは絶好調である。

 

「それにあれを見ろ。あの金髪ドMクルセイダーと話す彼女の顔を。とても美しい...」

「確かに可愛いが近くにいるお前のせいで台無しだよ。」

 

おそらく友人なのだろう茶髪の冒険者、サトウカズマのパーティのクルセイダーと話す彼女の表情は晴れやかだった。

流石の彼もそれを邪魔をしない程度の常識はあったのだろう。だから言ってもこのようなストーキング行為は褒められたことではないが。

 

「む?おい、話終わったようだぞ。」

「っは!?すまない。どうやら見惚れてしまっていたようだ。」

(ほんとにこいつ大丈夫か?あのお嬢ちゃんが可哀想に見えてくるな...)

 

ベルディアが普段虚像ゆえに感情を写さない彼の血の海のような暗く赤い瞳に「歓喜」や「緊張」などと言った感情を幻視するほど今のヴェストはおかしかった。

 

友人と話終わり歩いていく彼女を引き続きストーキングする彼らは明らかに浮いているのだろう。ベルディアは自分たちに集中砲火される視線の雨に今はなき胃が痛んだ気がした。

そのままつけていると彼女は人の気配の少ない路地裏に入っていった。

なんだ?そちらに何かあるのだろうか?それともそこが彼女の目的地への近道なのか?

そのような考えを一瞬考えたがすぐにそれを振り払う。

間違いない、確実に彼女は我々に気づいている。

 

「おいヴェスト。これって....」

「そろそろ出てきてくれないかな?ストーカー君?」

 




某科学者「ヤッベェwwwまじヤッベェwwwボクっ娘メイド作ろうとしたら悪魔っ娘できちゃった!どうしよwwww」

ヴェストは性別不詳外見中世的な悪魔です。なので見ようによっては百合の花が....咲かねぇわ。正確男よりというか男だもん。
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