この愚かな悪魔に寵愛を!   作:有機栽培茶

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ちょっと長めです


亡き友の黒歴史「まじで何やってんの?」

窮地に陥った美少女(?)の前に颯爽と現れるイケメン(?)。

ラブコメならば“トゥンクッ”などと言う擬音がつきそうな場面だがそれはラブコメの場合。

 

「邪悪な悪魔め!覚悟しろ!」

「セイクリッドエクソシズム!!」

 

さすがはエリス教徒。そして似非女神といったところだろう。殺意が高い。

 

「エリス様の名の下浄化されるがいい!」

「ちょっとダクネス!?そこはアクア様でしょ!?ねえ!?」

「うぐっ!なかなかやるな!」

「待って!なんであんたもエリスの名前が出た途端当たってんの!?ねぇちょっと!私を信仰しなさいよ!?」

 

侮れないがやかましい。

それがヴェストの正直な評価であった。

今まで置いてけぼりにされていた他の冒険者たちも次々と再起動し戦闘に参加して行く。

いわゆる裏ボス戦の開始である。

が、アクアのある一言によって事態はさらになる混沌へと導かれることとなった。

 

「せっかくデストロイヤーやったのに!いい加減浄化されなさい!」

「おいアクア。知ってるか?”やった“は”やってない“の裏返しなんだ。さらっとフラグを立てるんじゃない。」

 

 

 

ーーこの機体は機動を停止いたしましたーー

 

ーー排熱及び機動エネルギーの消費ができなくなっていますーー

 

ーー危険レベル上昇中。搭乗員は速やかに避難してくださいーー

 

ーー繰り返します。この機体は.....

 

 

「ね...ねえ、コレちょっとヤバいんじゃないかな?」

「ホラ見た事かーーー!!」

「待って待ってコレ私の所為じゃないからーー!!」

 

ヤバい。はっきりいって”マジやば“である。

カズマ少年が「大体この場合この後本体がボンってなったり...」と言っていたが確実にそうなるだろう。機体から現在進行形で増幅しているエネルギーを感知したヴェストは冷や汗を垂らす。

自分一人が生き残ることは容易だ。だがこの街はこの冒険者たちはタダでは済まない。

そう、あのエリス様の友人とその仲間たちが、だ。

エリス様との契約上、ヴェスト自らが危害を与えたわけではないためこのまま放置してもなんの問題もないがエリス様を悲しませるようなことはあってはならない。

それにあくまでついでだがノイズに関する物である以上友人の遺した物もあるかも知れない。

ヴェストに行かないという選択肢はなかった。

 

 

「ちょっと!あの悪魔いっちゃったんですけど!?ねえカズマさんどうs....「行くぞお前らぁぁぁ!!」...へあ!?」

 

 

何故かそれに続く冒険者たち。妙に気迫があり先ほどまで逃げ越しだったカズマまで加わっている。

 

「レインコートに続けぇぇぇぇぇ!!」

「きっとあいつもあの店を!同族を守るために!」

「今まで安くお世話になってきた分ここで恩返ししないと男が廃るぜ!!」

 

「「乗り込めーーーーー!!」」

 

鉤爪を引っ掛け次々とデストロイヤーに乗り込んでゆく彼らの勇姿を女性陣は冷めた目で見ていた。それはあまりの熱量に呆気に取られているのか。はたまたその理由を知っているからなのか。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

破壊された防衛用ゴーレムが散らかるデストロイヤーのその最奥。動力源であるコロナタイトが輝く中、ヴェストは椅子に座る亡き友の亡骸に黙祷を捧げ、一冊の手帳を手に取った。

ヴェストは手帳を開く。

どうか友人がこいつに関わっていないでくれ。ついでに自分が原因である可能性も思い当たりがありすぎてヤバいのでそれも違うと言ってくれ。そう淡い希望を抱いて。

 

 

ーーある時、友人にちょっと英雄になってみたい。と言った。勇者としてこの世界に来たんだしそれらしいことしたいじゃん、と言う軽い考えから言い放ってしまった言葉だったが今では後悔しかない。

 

ーーそれは友人が暴れ俺が彼を一時的に封印すると言う完全なマッチポンプな計画だった。で、成功した。計画自体は。

そう、彼が暴れた規模が問題だった。

結論から言おう。首都が半分吹っ飛んだ。

 

ーーなんでぇ?国のお偉いさんからチヤホヤされるのは嬉しいけどスッゲー胃が痛い。

ほんとすみませんでした。

しかも忙しすぎて友人の封印を解く暇がない。というかもう解かなくていいかなアレ。

 

 

ヴェストの目が死んだ。まるで死んだ魚の目のようだ。

 

 

ーー国力が下がった今、魔王軍に攻め込まれることを恐れたのか国のお偉いさんが無茶を言い出した。こんな予算で機動兵器を作れと言う。

無茶だ。抗議してみても「お前ならできる」の一点張りで話にならない。恥を捨てて泣いて謝ったり拝み倒してみたがダメだった。

バカになったフリをしてパンツ一枚で走り回ってみたが女研究者に早くそれも脱げよ。いや脱いでくださいと言われた。この国はもうダメかもしれない。

 

 

ヴェストは顔を覆った。

そしてうーうー唸りながらも読み進めて行く。それはまるで大人になって中学生時代の黒歴史ノートを読み返す姿そのものだ。

 

 

ーー〇月×日

目が覚めたらなんか酷い揺れだった。何だろうこれ二日酔いかな?いや、そもそも昨日の記憶が無い。あるのは動力源のある中枢部分に行ってコロナタイトに向かって説教したところまでしか覚えていない。

いや待てよ。その後お前に根性焼きしてやるとか言ってコロナタイトに煙草の火を.....

 

ーー〇月×日

現状を把握。そして終わった。現在只今暴走中。どうしよう。間違いなく俺がやったと思われてる。今更泣いて謝ったって許してもらえないだろうな。やだな...機動兵器から引きずり出されて死刑だろうか。クソッタレめ!

 

ーー〇月×日

やべぇこんな国滅んじゃえばいいのにとか思ってたら滅んだ。国滅んじゃったよ!国民とかお偉いさんとか人はみんな逃げたみたいだけど。でも俺国滅ぼしちゃった!ヤバイなんかスカッとした!満足だ俺。決めたもうこの機動兵器から降りずにここで余生を暮らすとしよう。だって降りられないしな。止められないしな。これ作った奴絶対バカだろ。

 

ーーおっと。これを作った責任者、俺でしt

 

「ほんっとすみませんでしたァァァァ!!」

 

 

ヴェストの叫びは手帳を勢いよく閉じた音とともに機体内に響き渡る。

希望は砕け散った。粉々に。

このアホみたいに傍迷惑な機動兵器に友人が関わっていたどころか自分がそれを作らせる原因になっていたとは。

今なお輝きを増すコロナタイトとは対照的に彼の周囲は暗く沈んでいる。

 

「なあベルディア...どうしよう...」

「知るかぁ!!」

 

ベルディアにも見捨てられたヴェストは地に突っ伏す。完全に力尽きたようだ。

 

「やっと着いた!」

「見つけたわよ悪魔!覚悟しなさい!あと3億エリスよこしなさい!」

「おいあれってここの責任者か?」

「天誅!!」

 

タイミングよくというべきか、ちょうどその時冒険者たちも扉を蹴破り突入してきたようだ。

 

「お、おいレインコート...だよな?そんな落ち込んでどうし...ひっ!?こ、これミイラか?」

「すでに成仏してるわね。未練のかけらもなくそれはもうスッキリと。てことはあんたがやったわけじゃないのね。まあそれはそれとして退治するけど!」

「待て待て!というか未練くらいあるだろこれ...どうみても一人寂しく死んでいったみたいだし。ん?な、なんだよ?手帳?」

「手記かしらこの責任者の....えーと?」

 

ヴェストは手記をアクアたちに投げ渡す。自分のことも少し書いてあるが知ったこっちゃない。今はそれどころじゃないのだ。

この心の傷は深い。容易くは治るまい。まあエリス様をもう一度、一眼でも見れたら復活するのだが....

 

「........お、終わり。」

「なめんな!!」

 

そうこうしているうちに彼らも読み終えたようだ。あの黒歴史ノートを。あ、やばい傷が広まった。

 

「なぜか傷心中のレインコートは置いといて....これがそのコロナタイトか?これを取り出せば暴走は止まるんだよな?」

「おそらくは...」

「おいとくなって言いたいけど今はそれどころじゃないものね。」

 

流石はカズマ少年だ。

瞬時に現状を理解し解決しようと行動し始めるとは。

他の冒険者たちを避難させたのもいい判断だ。あの烏合の衆ではこれをどうにかすることはできないだろう。ヴェストは死んだ目で彼らを観察しながらそう思う。

何やら首ディアの入った袋が騒がしいが放っておくことにした。

しかし人間と(認めたくないが)女神とリッチー。随分と珍しい組み合わせだ。

 

「スティール!!」

 

訂正。やはりカズマ少年もバカだったか...?

先程の賞賛を取り消したくなった。

あまりの熱さに悲鳴をあげるカズマと今なお光力を増しているコロナタイトを見てヴェストはそう思った。

 

「ちょっとウィズ!あんた何とかできないの?」

「で...できない事はないですがそれには魔力が...」

「魔力?......な、なあウィズ?アレって使えないか?」

「ちょ、ちょっとカズマ!?まさかあんた悪魔に手を借りようとしてんじゃないでしょうね!?」

「いや、一応アイツゴーレムを破壊してくれたようだしコイツを止めようとはしてたんじゃないか?だから協力してくれるんじゃないかと。」

「だからって...!」

 

何やら自分の話をしているようだ。

協力ならしよう。喜んでしよう。これは僕の過去の失態だ。ヴェストはそう考え顔をあげる。

ようやく話がついたのか栗色の一人の女性、リッチーとその少し後ろにカズマ少年が向かってくるのが見えた。

 

「あ、あのっ!すみません....レイン...コート?さん?少しご協力いただけないでしょうか...?」

「すまん、俺からも頼む。一応あんたもコレを止めようとしてくれたんだろ?ちょっと魔力を吸わせてくれるだけでいいからさ?」

 

なるほど。おそらくテレポートか何かの魔法で解決しようにも魔力が足りなかったのだろう。そんな事だったら喜んで協力しよう。

ヴェストは黙って手を差し出した。

流石に返答する気力はない。

 

「いいってことか?」

 

頷き一つ返す。

 

「で、では遠慮なくっ!ドレインタッチ!」

 

魔力がぐんぐん吸われて行くのを感じる。本当に遠慮がない。だがこのくらいの責任は取らねばならない。黙って吸われることにした。

 

「お、おい!もう良いんじゃないか?」

「あ!すっすみません!でもコレでテレポートの魔法が使えます!」

 

案の定テレポートを使うようだ。

だが話を聞くと彼女(ウィズと言うらしい。どっかで聞いた名前だな...?)の転移可能な地点は王都などの人が多い場所らしい。ヴェスト自身のテレポート地点も大昔に設定したものばかりで今どうなっているかは分からない。

故にウィズは“ランダムテレポート”を使うようだ。

転移先を指定しない危険な魔法だがこの際致し方あるまい。

 

「だっ大丈夫だ!世の中ってのは広いんだ!人がいる所より無人の場所に送られる可能性の方がずっと高いはずだ!」

「全責任は俺が取る!こう見えて俺は運がいいらしいぞ!やってくれ!」

 

さすが。その決断の速さは素晴らしい。

だがヴェストは考えた。

カズマ少年よ。それは俗に言う“フラグ”と言うものではないのだろうか?

そんな彼の思考をよそに眩い光と共にテレポートは実行された。

 

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