中央歴1636年9月某日 フェン王国
この日、フェン王国では軍祭と呼称される国際観艦式の様な物が開かれていた。
(ロデニウス大陸のロウリア王国は、当時の国王が融和派であったため、クーデターにより処刑された。そして、クワトイネ、クイラ等に宣戦布告した。
だが、僅か数時間程度で降伏となり、現在は議会制民主主義の国家として再出発している。また、ロウリア王家は国家の象徴として残っている(これは子供等が処刑されなかった為)。)
これに参加した国家は、日本国を始めとした転移国家群や、第四文明圏連合の加盟国等23カ国を数えた。
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フェリペ王国より派遣された空母、グラハム・ハインリッヒは沖合に停泊していた。
だが、その様な場所からでも各国から派遣された艦艇が目に入るのだ。
「壮観ですね。ここまで集まると。」
そう言っているのは、日本より派遣された自衛官だ。
「確かにな。だが、今回は一波乱起きそうな気がする。」
そう言って、自衛官に紙を渡したのはグラハム・ハインリッヒの艦長だ。
「パーパルディア皇国が、この軍祭に乱入する可能性あり。
恐らく、正規戦力で持って仕掛ける筈だ。だが、我々には悪魔がいる。」
艦長はそう言って、飛行甲板に存在するSu33を見る。
その機体には、悪魔の紋章が描かれていた。
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所変わって、ここはフェン王国から200キロメートルほど離れた海上。
ここには、パーパルディア皇国海軍の艦艇が存在していた。
「艦長、時間です。」
下士官がそう言うと、艦長はカッと目を見開いた。
「…竜母からワイバーンを発艦させろ。作戦開始。」
旗艦は俗に言う戦列艦で有り、備砲の数は片舷25の計50門である。
後続の艦には竜母と呼称される物も在り、エアカバーに関してはほぼ完ぺきといっても良いだろう。
件の竜母から、ワイバーンが次々と発艦していく。
その数合計30。
攻撃目標は、フェン王国軍祭に参加している各国の艦艇だった。
(この攻撃は間違いなく成功する。相手はただの鵜合の衆。混乱している間に、蹴りを付ける。)
結論から言えば、彼らのワイバーン部隊はたった一機に手も足も出ず撃墜される。
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不明機接近の一報が入ったのは、グラハム・ハインリッヒから一機の戦闘機が放たれた直後だった。
「…了解した。総員対空戦闘用意。不明機接近中。
デアデビル隊が出た後は、AECを出してくれ。」
艦長がてきぱきと指示を出している。
そうしている内に、上空に黒点が見え始めた。
それは間違いなく敵機だった。数は30。
10はフェン王国の首都に向かったらしく、姿は見えなかった。
だが、残りの20はこちらに真っ直ぐ突っ込んでくる。
それぞれ散開し、そして。
「”ゆうなぎ””メリクリウス”炎上を確認!ディアナは回避に成功した模様です。」
「”むらさめ”が対空射撃を開始しました。」
フェリペ海軍の”メリクリウス”が被弾し炎上。箇所は後部飛行甲板だった。
日本国海上自衛隊の”ゆうなぎ”も後部飛行甲板に被弾。
しかし、”ゆうなぎ”の40㎜砲が火を吹いている所を見ると、どうやら動く分には問題ないらしい。
「デアデビルは。」
「もう既に動いています。」
飛行甲板から飛び立ったその機体は、ランディングギアを格納すると、直に上昇していった。
鮮やかな軌道でワイバーンの後ろにつくと、機銃を数発当てて落とした。
失速しつつ機首を別方向に指向すると、その先にはまたもワイバーン。
再び撃墜する。
機銃の発射音がコンマ5秒すると、ワイバーンは次々に落ちていく。
艦隊上空に貼りついていた敵機を全て落とすと、その機体は一気にフェン王国上空に向かっていった。
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そのころ、パーパルディア皇国海軍は大混乱に陥っていた。
「たった一騎だぞ!なぜ手も足も出ない!」
そう声を荒げている指揮官に、通信担当の下士官はただうつむくばかりだった。
それはそうだろう。
彼らの認識では、この周辺にそのような国家などないはずだったのだ。
「しかし、報告によればミリシアルの飛行機械らしき音を発しながら飛行を行っていたらしいです。」
司令官はその情報に固まった。
ミシリアル、すなわち神聖ミリシアル帝国は世界最強とも呼称される帝国だった。古代技術の解析を行い続けて、その座を勝ち取った努力の国家でもある。
その近辺にあるムーという国家も同様に飛行機械を実用化しているが、ミリシアルの足元にも及ばない。
「まさか、フェン王国はミリシアルから技術供与を受けているのか。」
指揮官の推測を聞いた要員たちは、ぎょっとして声の主を見た。
「とりあえず、本国に連絡を入れろ。」
指揮官が通信担当にそう言った直後、遠雷を引き延ばした様な音が聞こえてきた。
「フェン王国方面より飛行物体接近!数1!」
すぐに望遠鏡で飛行物体を確認する。少なくとも友軍ではないらしい。
漆黒の、扁平な体躯を持つそれは、怖気を感じさせた。
「司令官!」
「対空戦闘用意。」
「なにを、仰いますか。あれはミリシアルの…。」
「馬鹿者!あれはミリシアルの物ではない。」
各艦より矢などが放たれたが、到底届きそうにない。
その黒い何かは、矢が放たれたことを認識すると、一気に上昇を始めた。
「何をするつもりだ。」
そのつぶやきは誰の口から洩れたものだったか。
漆黒のそれがこちらに向いた直後、その翼らしきものの付け根がチカチカと発光した。
刹那、ばらばらになる友軍艦。
「何だと。」
誰もが信じられない光景だった。
次々に粉砕される船、それの元凶は強さを誇示する様に咆哮している。
「こんなことが、まかり通ってたまるか!」
指揮官がそう自棄になって叫んだ直後、その船も粉砕された。
かくして、パーパルディア公国海軍の一部隊は壊滅したのである。
♢
「デアデビルリーダーより入電。攻撃してきた艦隊を全滅させたとのことです。」
通信担当が艦長に報告を上げると、艦橋要員はそろって安堵のため息をついた。
「そうか。状況終了、対空戦闘用具収め。」
艦長がそう言うと、隷下の艦隊も同様に戦闘態勢から警戒態勢に移る。
「その、大佐。」
気まずそうに声をかけるのは、乗り込んでいた自衛官だった。
「何だい。飯縄二佐。」
艦長はその自衛官に聞き返した。
「今回の件は、外交問題に発展する可能性があるのでは。」
そう言うと、艦長はこう返した。
「ああ、その事か。こちらは攻撃を受けているから、正当防衛を主張できる。
それに、その手の交渉は外交官の仕事だ。我々が杞憂する必要はない。」
艦長は外に視線を転ずると、丁度今回の功労者が着艦しようとアプローチしているところだった。
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数か月後、パーパルディア皇国と交渉を行った各国だったが、逆切れしたパーパルディア側に宣戦布告を叩きつけられる結果となった。
護衛艦”ゆうなぎ”
排水量7500トン、全長145m、全幅17mの中型護衛艦。
武装配置はむらさめ型護衛艦に準じる。
また、ファランクス2基のほか40㎜連装機関砲を2基装備している。
速力は最大35ノット。機関出力馬力は46000。
同型艦6隻。ゆうなぎ、きよなぎ、はるなぎ、しきなぎ、あやなぎ、とよなぎ。
準同型艦12隻。つきかぜ、ほしかぜ、やえかぜ、たちかぜ、ぬまかぜ、かわかぜ、たにかぜ、なぎかぜ、よどかぜ、なだかぜ、あらかぜ、あやかぜ。