数多の文字とその定義。   作:あばおじ

3 / 11
感情の消費期限

 結局眠れなかった。

数ある二次元作品においてヒロインと同じ寝床につくと朝まで眠れないという表現を多く見てきたが、実際にその通りであった。

その時の心情は罪悪感で眠れないだ。もし誰か知り合いで漫画家や小説家を目指してい方がいらっしゃるならぜひ朝まで語りたい物だ。

自分の発言行動の後悔、辛いことを強要した結果泣かせ、傷つけた罪悪感。これからの不安感や、同じ境遇でないことからの他人事感。

「んっ・・・」

全てがクソだ。ただ一つ嬉しいことは。

「くあ~っ。・・・おはようセンセ~」

長時間高崎が熟睡できた事実。昨日に比べて確実によくなった顔色。それを見た瞬間いろいろこみ上げてきた。

考えてがまとまらない。感情を言葉に出来ないまま適当になにか言葉を返そうと絞りでた言葉は・・

「ありがとう」

感謝だった。

 

 

 それからは元気に一週間箱根を楽しんだ高崎であった。否元気過ぎた。

まず買い物。馬鹿みたいに金使う。本人曰く貯金を使い切ってやるとのこと。しかしあまり旅行をしてない人には分かりづらいかもしれないが長期旅行というのはお金が掛かるのだ。ホテル一泊にしても一人約五千円だ。それ以外にも美味しいご当地ご飯で一食千円越えを繰り返せば相当掛かる。それに加えて地方は車・バイクでの移動が無ければ楽しめない事が多い。景色巡りなどに必ず無いと困る。それらのガソリン代や高速代など、いろいろお金は掛かるだ。昔北海道に二週間旅行した際は20万近く溶かした。

そんな話を高崎にしたところ、何故かボクが財布を管理することになった。これでは先生ではなく保護者である。

次に車での移動。まぁ~ベラベラ喋る。音楽なんて要らないと体現するように音を出し続ける。その内話題なんて無くなるだろう、と考えていたがそんなこともなく通り過ぎる看板一つで5分は喋る続ける。高崎にとっては目の前広がる物全てが話題の種なのだろう。流石配信者だ。むしろこれが出来ないと始まらないのだろうか?

素晴らしい才能だと第三者視点なら感じる。しかしボクは当事者だ、当事者からすると。

「ヤン車のコールみたいだ」

「なに?急に?ここ茨城じゃないよ?」

「それはただの偏見だよ・・・」

確かに千葉の下とか茨城はそーゆの見かけるの多い気がするけど偏見だよ。珍走団とか友達言ってたなー。

「箱根だってヘンテコなのいるだろ。」

「ん-、スポーツ系の方が多くない?」

そんな他愛ない会話をし続けていると、おもむろにカメラをこちらに向ける。

「はい・チーズ!」

運転中なんで無理です。この車マニュアルなんで。

「なに?急に?」

「今日のSNSに上げる写真~。プフっ、先生数日間同じポーズなのおもしろーっ!」

なんだSNSかー・・・・SNS!?

「ちょいたんまで、ジャスタモーメントプリーズなんだけど。」

「頭痛が痛いねっ!」

本気でなにこの子頭ウイルス感染くらってんぞ。バスターしなきゃ半年もたねーぞ。

「え?ボク顔面等々全国に晒されてます?そこそこ有名なVtuberに?」

「イエスっ!!」

満面の笑み出すなよ。腹立ちすぎて可愛いじゃないか。許さんけど。

「ファンに殺されちゃうよー。ボクのこと考えてくんない?」

「先生その前に顔面晒してんじゃん。これがボクだって。」

やめろ恥ずかしい死ぬ、思い出させるな矢面苦手なんですボク。

「先生SNS見ない人?初めて通話してる時トレンド入りしてたよ?行動イケメン一般男性って。」

まじかよ、ボク顔バレしてんのかい。とんでもなく気分が落ちる。そうかこれが鬱か。ありがとう高崎許さない高崎。

「流石にそろそろ忘れられてるよね?」

「ぜーんぜんっ?あたし毎日SNSとショート動画上げてるもん。配信者は継続もいのちっ!」

優秀で健全で素晴らしいっ!前ばっかりでミラーが見えてねーぞー?巻き込み確認してくれー?

「あたしは"わたし”として生きて死ぬって約束したからね。

 最期まで曲げないよ」

普段の笑顔が似合う少女から凛とした女性の顔をする高崎。

そんな顔されたら投稿消せと言えないなーずるいなー可愛いは正義。

どうせ投稿を辞めないのであれば逆になにか利用できないであろうか。

まだ熱が残っている内になにか・・

「チャンネル登録者とかって急激に伸びてたりする?」

「そうとうだね、あたしデビュー当初が一番伸びてたけどその時より伸びてるね」

「・・・どんな客層が増えた?」

「ん~っ辛いけど頑張って的な感じがほとんどかな?

 先生風に言うと上から目線の憐憫てやつ?」

そいつは最高の情報だ。

「なぁ高崎。媚売るの得意?」

「別に・・・まぁVtuberだから猫被りは人より得意かも。」

「この前話した金銭面に繋がるんだけどさー

 定期健診もしたいし、一旦家戻って配信してくんない?」

「いいよ。なにかあるの?先生」

「前置きとして高崎が嫌なら構わないんでけど、

 現状の金銭面のお話しをして貰って遠回しにお金せびってほしーんだよね

 多分今現在が一番キミが悲劇のヒロイン状態に見えてるはずだからなる早でね。」

かなり大人げないことを言ってる気がするがお金が無ければ始まらないのだ。

基本的に精神に余裕のある人間はお金に余裕がある。

それくらいお金は大事なものだ、可能な限り手元あった方がいい。大体買えるし。

それに彼女には批判を受けずらい病気という大義名分がある。使える物は使うべきなんだ。

「・・・正直言って見てもらえるだけでなく、お金までせびるのは好きじゃない」

やはり高崎には、優しい彼女には難しいか。

「でもね」

意を決するように言葉を区切る。

「そんなこと言ってる暇はあたしにはない。使える物は使わないとね?先生」

まさか肯定的な意見だがそれ以上に自分と同じ考えをしたことに申し訳ないと思いながら。心のどこかで嬉しかった。

「でもどうしてなる早なの??」

複雑な心境を一旦置いて高崎の言葉に反応する。

「ぁーん~絶対じゃないし絶対はないんだけどぉー」

説明難しいんだよなー半分感半分偏見だし。

「約束破られたりしてー、その時滅茶苦茶イラつくんてソイツのことぶん殴ってやる!ってなってても何日か経つとそこまで怒ってないってこと、高崎はない?」

「あ、めっちゃある。いざ数日後あっても冷静に話すこと」

「つまるところボク的に感情には賞味期限があって時間が経つと風化するものって考えなんだよね。

 だからなる早。新鮮な感情に訴えかけて似非同情を貰おうって魂胆。」

「怒りが長引く人は賞味期限が長いんだね」

嫌な賞味期限だ。とっとと切れろ、どっちかというと消費期限だな。

「そうなるね。別口だと怒ってないといけないっていう強迫観念に乗っ取られた人もいるけど」

割と多い存在なのよねーこれ。

「消費期限切れて怒りなんて大して残ってないのにその人に対しては怒りを示した続けなければならないと自己暗示してしまう。そうゆう人はその人の行動全てに怒りを持つよ。とんでもなく理不尽に怒る。そしてこの自己暗示がから醒めれる人をボクはあまり見たこともないし、ぶっちゃけボクも掛かってると思う。」

面倒くさい生き物だよ人は。どうせなら飼い猫とか愛玩動物として生まれたかった。そーなれば面倒くさいこと考えなくて済む。シリアスにもならない。

「確かにあたしそんな感じの人割と見たことあるかも・・・

 でもね先生。怒りの自己暗示だけじゃないと思う。

 他の人がしてたら嫌なことでも先生がしたならしょうがないなぁーって好意的に感じちゃうもん。

 好意的な自己暗示も現在進行形であるよ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やめろてれる

なんだその自己暗示やばいだろねぇー高崎さんー?

彼女のことをどんどん好ましく思ってしまう。ボクも暗示をかけられたらしい。

でもどうにかしてこの暗示をボクは解かなくてはならないそのままだと多分、

彼女が死んだときボクは立ちあがれなくなってしまう。

「・・・そうかい」

ぶっきらぼうにシラを切り運転に集中する振りをすることしかボクは出来なかった。

 

 

 その後、高崎家に到着。家の外で彼女の配信を見届けたのち久々に自宅で休もうかとしたが・・・

「なんで帰るの?うちに泊まればいいじゃん?」

と無慈悲な一撃を喰らい高崎家にお邪魔する事に。わーい初めての女子家だーっ!・・・

それまで一緒に寝泊まりしてるからなんやねんという話だが。高崎は帰宅早々に配信準備を始めた。切り替え早くない?問いかけに対して「なる早なんでしょ?」と返され、適当な部屋にあてがわれた。

家族用と思わしき家具が数多く見受けられたが、使用された形跡があるのは一人分。綺麗に整頓されているがやや埃が目立つ。そのくせ髪の毛等のごみが落ちてない事が生活感をかき消す。考えてみたら未成年が唐突に一週間お出掛けしたのに高崎は誰かと連絡を取る姿を確認はしていない。それは一般家庭であり得るのだろうか?余命宣告を受けた娘なのに?

「おっはなーっ!!久しぶりっ!元気してた~?」

配信を始めたのか声が小さくだがこちらに届く。高崎のボリュームでここまで小さく感じるとはなかなかいい防音施設らしい。それ程いい防音室的な物を彼女はどうやって用意したのだろうか。嫌な考えばかりが浮かぶ。そして体は答えを求めて部屋を徘徊しだす。

何故彼女は配信にて助けを求めたのだろうか?。

もっと近しい家族に相談をしなかったのか。

そして部屋の奥に特別、清掃がされた仏壇と二つの写真が飾られていた。

「誰にも相談出来なかったのか・・・。」

自暴自棄ではなく最も彼女に近しい人間がファンだったのだ。だから誰も反応しなかったことにあれほど憤りを感じていたんだ。

ボクも今現在に憤りを感じる。

「なんで・・・なんでっ!高崎ばかり・・っ。もう少し別の奴に不幸分けたっていいじゃないか・・・   

 理不尽過ぎるだろ・・。」

「ありがとう」

意識の外からの音に慌てて振り返る。

「ありがとう。あたしの為に怒ってくれて。

 人生で初めてだよ怒ってる人を見て嬉しくなるの。」

本当に嬉しそうに嚙み締める様に微笑む彼女。

彼女がボクの行動にどれだけ嬉しかろうが・・・

「怒っても叫んでも。結果なんて何も変わらないよ。なのになんで感謝?」

「この前の先生と同じだよ。なんでかありがとうが出たの♪

 先生こっちきて?」

こっちきてと言う割にボクの手を掴んで配信部屋に連れていく。

「今からお金せびるから勇気頂戴?先生」

「勇気なんて・・・」

どうやって渡すんだよ。勇気の定義を考え様とした時に突然手を握られる。

「あたしはこれで勇気でるよ?強い”わたし”になれるよ。」

目を閉じて温もりを感じる様に手を握る高崎。その姿勢のまま数秒が経ち・・・

「よしっ!みんなおまたせっ!わたしの今の現状をオハナシさせてねー?」

目を開き夢咲として語りだす。

暗い話なのに暗い雰囲気にさせず飽きさせずファンと交流する。

体の現状・財政状況・自分のやりたいこと。そして

「わたしね、両親とももう死んじゃってるんだ・・・

 お父さんはわたしが小さい時に交通事故で。お母さんは一年前に同じ病気で死んじゃった」

手を握り締める力が強くなる。

「その後わたしも病気になって余命宣告受けて、配信で助けてって言って誰も来なかった。

 その時もう全部嫌になった・・・配信じゃ言えないようなこといーっぱいしようかと思ってた。

 でもそうなる前に先生が声かけてくれた・・・生きる目標をくれたっ!

 バーチャルなんて飛び出してあたしの前に現れたっ!!

 結果だけみたらあたしの私利私欲だよ。

 でもここまでしてくれた先生の為にも・・・あたしはちゃんと助かりたい。

 だからっ!皆様からお金の援助頂けないですか?

 しっかりと助かりに行かせてください・・・。」

誰も見てないのにしっかりと頭を画面に向けて下げる高崎。

釣られる様に頭を下げるボク。この行動までに時間が人間性なのかもしれない。

 

ピロンッ♪

 

何かしら通知音が部屋に響く。それも連続して

 

ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪ピロンッ♪

 

「なんの音?これ?」

高崎は泣きそうになりながら答える。

「ギフトの通知音・・・こんなにたくさんっ!

 ありがとうございます!大事に使います!」

どうやら思惑は成功したらしい。一人一人の名前を呼び上げ感謝をする高崎。

軍資金では無くその名の通りギフトを受け取る。

「ありがとうございます。本当に」

全員分読み上げるのには相当時間がかかりそうだ。

 

 

 

残り日数177日

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。