なんか区切り的にまたまた上下です。
激動の夜を超えた。余りにも色々ありすぎて、頭が追いつかない。
解ることは嫁が出来たということ。書類を提出してない為、嫁【予定】だが。
人生で彼女なんて出来たことないのに嫁が出来る。これは中々珍しい事例なのではないかと思う。
あの後は疲れて帰宅後、直ぐに寝てしまった。
久しぶりに熟睡出来た。夢さえ見なかった。
いつも疲れていたのに寝れなかったが、今回は何故か寝れた。恐らくだが、
彼女を幸せに出来ていることを、教えてもらったからだと思う。
告白とはとても価値のある物らしい。
好きだけじゃなくて、抱えている物を吐き出す。
この行為に、敬意を持つことにした。
さぁ朝だ。お姫様の朝食を作らなければ。
隣に眠る高崎を起こさない様にベッドを出た。
朝食を準備を終えてテーブルに広げた辺りで高崎が起きてきた。
「・・・お、オッハナー」
小さな声でモジモジとしおらしく挨拶してくる。
顔色が赤い。風邪か?そんなことは無いだろう。
単純に照れているらしい。昨日の行動で照れない癖に妙なところで照れている。
「フフっ。おはよ。」
おや、いけない。吹き出してしまった。こんな行動したらお姫様は多分・・・
「なんで笑うのよー!てかなんで普通でいられるのー!!」
ほら怒った。やはり失敗でしたか。ご機嫌取らなければ。
「新鮮でつい、ね?まぁ可愛かったからいいんじゃない?」
「んー。・・・可愛いなら今回は許します。」
やや不満な表情だが、溜飲は下がってくれた。チョロQです。
「冷めんうちに、食べよか。」
「うん!頂きます!」
そうして朝食を食べ始める。まぁ、パンとウインナーしかないが。
「実際先生、なんで普通なの?あたしは昨日のこと思い出してドキドキだったよ?。」
パンにマーガリンを塗りながら質問される。
「どうしてって言われても・・・」
自分でもわからない。
「なんか悔しい・・・。あたしだけ浮かれてるみたいじゃん。」
パンを嚙み締めるながら、こちらを睨んでくる。
おお、こわいこわいかわいい。
「浮かれることが悪いわけじゃないでしょ、高崎さんや。」
「あ!」
何か思いついたのか、そそくさと朝食を食べ始める高崎。ちゃんと噛んでるか?
「ヌグっ。先生!あたしお嫁さんになるわけじゃん?」
パンを飲み込んで、意気揚々と確認をとってくる。
「え・・・そうだけど。」
「じゃあさ!名前!名前でよんで欲しい!」
「花。」
「ほら?苗字変わるからさ?周に誤解が・・・あれ?呼んだ?」
困惑気味にこちらを見つめてくる。どうやら呼んだことに気がつかなかったらしい。声が小さかったかな?もう一度呼ぶ。
「花。」
「・・・」
口を開けて動かなくなる。どうした?
「花?」
確認の為に、もう一度声を掛ける。
「はっ!なんで簡単に呼べるのー!もぅっー!!」
口調と声は怒こってる風だが、口元がだらけているせいで、よくわからない表情になっている。怒ってるの?笑ってるの?どっちなの??
「呼び方で照れるとかあんの?」
疑問に思ったことを聞いてみる。
「あたしは恥ずかしいよ!!」
変なの~。よくわからん。
「漫画とかでさぁ、よくあるシチュエーションじゃん。男女の距離が縮まる時とか?同性でも名前で呼び合えば友達的なのあるじゃん。」
ああ。そういうのか。それについては自分の中で偏見を持っている。
「タメ口は親愛の証的なやつ?」
「そう!それ!」
「ボクには余り響かんかった考え方で、興味なかったわ。」
「ええー。なんでー?」
ご不満な高崎に自分の意見を言う。
「敬語だろーが、仲いい奴は仲いいでしょ。名前で呼び合っても、仲は進展しないでしょ。
名前呼びの、ため口バンザイな方々の方が仲いい振りしてることが多かったんだよ。」
俗に言う上辺の付き合いね。社会出たら当たり前のように行うが。
恨むんなら今までのボクの人生を恨んでください。それのおかげさまでこんな偏見が生み出されています。
「それなら、あたしも恥ずかしくないはず!」
息を吸い気合いを入れる動作を行う高崎。
「か・・和・・よ・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「カズくんってよんでいい?」
顔を赤くして上目遣いをしてくる。
こいつは強烈な可愛いさだ。こんなんされたら、
「一番好き」
YESマシーンになっちまうよ。
少しだけ呼び方が変わった。
その後はリビングでまったりと時間を過ごした。
まったりしてたのはボクだけで、たかさ・・・花は配信関係なのか、配信室で作業している。
何もすることが無い。これはこの一か月において始めてだ。大体何かしていた。次に泊まるホテルの予約や、食事関連の下調べ。あとは花のご機嫌取りに、お喋り相手。
工場長には、酒を飲めば何とかなると言われたが、実際に飲んで助かったのはエナジードリンクである。
不眠症に近い状態になってからは、カフェインが親友だった。基本運転中は眠気と集中力低下が難敵だ。
毎日親友を体に取り込むことで、無事故無違反でいま生きてる。助かったぜ。
まぁ、運転中は違う緊張感があったから飲まなくても大丈夫だった説はあるが。
量の少なくなった親友、通称コーヒーを飲んでいると、インターホンが鳴る。
来客なんてあるんだ。少し驚く。
夢は作業中の為、ボクが出るしかない。
親友をテーブルに置き、立ち上がる。
「はい。どちら様ですか?」
「坂口です。お久しぶり?です先生。」
嫁さんの親友が来ちゃったよ。一昨日は久しぶりじゃないでしょ。坂口さん。
作業中の夢に声を掛け、二人で坂口を出迎える。
「響ちゃーん!会いたかったよぉー!」
坂口に抱きつき、再会を喜ぶ夢。あんま激しく動かないでよ?病人さん。
「私も会いたかった。夢ちゃん。」
強く抱きしめ返す坂口。良い光景ですね。
「ずーと、何処かにお出掛けしてたから、会えなかったじゃない。」
「えへへ~。ごめんってー。」
そういえば、余命宣告から会えてなかったのか。そりゃ全力ハグもしますわ。親友がそんな状態なのに会えないなんて。それら込みで精神的に参って、Vtuberを辞めようとしたのかもな。
この女、花の親友だけあって大分図太いから、アンチ程度でどうこうしないだろうし。
「元気・・・そうではないけど、幸せそうで良かった。倒れたって聞いて、面会しようとしたらもう居ないし。電話出ないし。」
少し恨めしそうに夢に視線を送る坂口。そいつはボクのせいだな。心配させたボクの・・・。
その後はデートしたりしてたから、電話に出るタイミングが無かったしな。
「ごめんね~。色々あって~。」
両手を合わせて謝る花。
「フフっ。いいよ。夢ちゃんに振り回されるのはいつものことだしね。」
優しく夢を抱きしめ直す。壊れ物を扱う様に。
「笑ってくれてる。生きて笑ってくれてるだけで、嬉しいよ。」
背中をゆっくりと叩きながら、言葉と行動で思いを伝える。
「ごめ・・・、ありがとう。響ちゃん。」
謝罪じゃなくて感謝を述べる花。それがこのタイミング出来る、キミは本当にいい人間だよ。
坂口がハグを終えて、こちらを向いてきた。第三者で鑑賞していたが、ここから当事者らしい。
ボクの目の前に立つ坂口。近い。え?何処までくんのキミ?
そのまままじまじと顔面調査された後に、手を掴まれる。何故か花と同じく壊れ物扱いで。
「先生も、少し元気になられたみたいで、良かったです。」
夢程では無いが、しっかりと美人な女性に手を握られている。
罪悪感って凄いな。まるでときめかないぞ。単純に気まずい。自分の状態を知ってからだと。
「心配させてごめん。」
”心配してくれてありがとう”なんてボクには言えなかった。弱いボクには言えない。
だから誤魔化す様に、笑ってみる。心配させない為に。
「っ!。無理に笑わないで大丈夫ですよ?どんな顔していてもちゃんと心配するんで。」
ボクの事を確かめる様に、手を強く握られる。
どうやらボクは笑顔が下手くそらしい。そんなに心配せんでも・・・。
「ムーっ!」
横を見ると、なんか饅頭みたなのがいるがどうしたのか。珍しく可愛くない顔をしたがボクと坂口の間に割って入る。
「なに人の旦那に色目つけてんじゃーい!!」
ボクに抱きつきながら、坂口をどかす夢。突然の行動に坂口は・・・
「え?旦那?」
呆然と口を開けていた。これもまた珍しい。いや新しい顔だな。
「そーですー!カズくんはあたしの旦那さんなんですー!!
もう決定なんで響ちゃんにもぜーーーったいあげない!!」
子供っぽさ全開で威嚇する花。まぁ可愛い。それと自分に入れ込んでくれている事が嬉しい。
「・・・おめでとう!。お似合いだよ。」
少しボクを見た後にお祝いの言葉を頂く。今の視線は一体どうしたのか。
「えへへー、ありがと!。お似合いなんて決まりきってるけどね♪」
考えごとは一度置いといて、ボクもお礼を言う。
「ありがとう、坂口。」
「カズくん。お似合いだってさ!お似合い♪ウププ。」
肩をぺしぺししてくる夢。なんか変な声出始めたぞ。大丈夫か?
「フフっ。本当に嬉しい・・・。お祝いしなくちゃね?」
誰がどう見ても嬉しいそうな坂口。ならさっきの視線は一体・・・?
「わーい!!パーティーだー!!」
部屋を飛び回る勢いで元気になっている。本当に走るなよ?
「婚約してから二人でどんな話をしてるの?」
「うーん。あんまりいつもと変わらな・・・、あ!呼び方が変わったよ!」
「カズくん呼び?」
「そう!で、あたしのことは・・・」
期待している目でこちら伺ってくる。名前一つで何が変わるんだい。
「花。」
「ウププ♪」
変な声出てますよ?花さん。
「先生照れないですね・・・。」
こやつもそこが気になるらしい。みんな初心なのかい?ボクが馬鹿なのかい?
「呼び方が変わっただけで、照れる要素ある?」
「親密度とかで普通は変わるかと・・・。」
困惑気味に返される。誰の普通ですかね?それ。後ろで花も頷いている。
「なるほどねー、親密度か~。」
嫁さん予定の花は確実に親密度が高い。なら坂口は?どれくらいの親密度だろう。
度重なる八つ当たりを気にせずに、ボクを救うと約束してきた彼女に、どんな気持ちを抱いてる?
感謝だ。心からの感謝しかない。
なら彼女にもかなり高い親密度を感じているのではないか?
・・・彼女らの普通に乗っといて呼び方変えるか。
「じゃあこれからは、響さんかな?」
「へっ!?」
「なっ!!?」
驚愕の声が重なる。言われた通りにしたのに、ダメですか。
「コラーっ!!なんで嫁の前で他の女に手を出してるんのー!?てかそんなに仲良しだったっけ!?
裏でなんかあっただろう!!吐けっーーー!!」
アッハッハッハ。怒髪冠を衝くとはこれのことだろう。物凄い面白い。
「何が面白いんだーっ!!」
その後、花を宥めるのに30分かかった。
花の怒りをどうにか宥め、要約パーティーの準備となった。しかし三人分の食材が無い為、スーパーに買い出しに行くことに。花は部屋着だった為、外出準備中。坂口と二人で待つことに。あ、名前呼びはちゃんと禁止にされました。
「先生は・・・。」
二人になったのを見計らった様に、重い口調で話しかけられる。
「先生は、この先どうなるのですか?」
少し抽象的過ぎるが、何を問いたいのか何となく理解している。
「結婚は入れ込み過ぎたかな?」
あの時の目線はこれのことだと?坂口。また心配させるな、こりゃ。
「とても尊いことです。実際お似合いで、お互いが支え合っている。今の先生の顔を見れば、それがよくわかります。では、夢ちゃんが居なくなった後どうなるのでしょう?」
「それはボクも思っている。だから入れ込まない様にしていた。
でも、それ以上に花が好きになってしまった。止まれなかったんだ。」
その返答を聞き、苦しそうな顔をする。
「・・・折角、顔色良くなったのに。」
「彼女がいい女過ぎたね。どうなるかは、解らない。花が死んだ時に解るよ。」
現実は基本出たとこ勝負だからね。花が死んだらどうなるか。
入れ込まない様にしてた状態であのザマだ。髪の毛なくなりそうだなぁ。
「っ・・・。私!ちゃんと救い切りますから!だから、安心してください!!」
いつもより、やや大きな声で宣誓される。少し驚き、ちゃんと顔を見ると。
何処かで見た顔だ。いまにも泣きそうなのを我慢して、口元だけ笑っている顔を。
顔が良い分醜くも気持ち悪いわけでもない、ただ必死さを感じる。
「ボクらは笑顔が下手くそだね。」
「上手く笑えないですよ。こんなの・・・」
そうだな、無理だよな。解るよ安心させようと笑うって難しいよな。
最後は笑ったもん勝ち。この文字は本当かもしれない。
「カズくーん!響ちゃーん!おまたせ。」
お姫様の準備が整ったようだ。雑談は終わりだ。先ずは目先の事を考えよう。
パーティー楽しまないとな。
その後、スーパーに到着した直後に、人生で一番目にした顔があった。
「親父?」
「・・・和義?」
普通【下】に続く。