買い物を終えた2人が昼食をとったのは、デパートにある洋食店だ。
「テートク、今日は本当にthank youネ♡」
「礼を言うのはまだ早いぞ、金剛。まだ午後がある」
「デモ…服、高かったデショ?」
「確かにそうだな…クレカが無ければ即死だった。
ただ、日頃使ってない分、貯金はたっぷりある。遠慮は要らないよ。」
しばらくして、頼んでいた品が運ばれてきた。
提督はケチャップのかかったシンプルなオムライス。
金剛は神戸牛の使われたハッシュドビーフだ。
「「いただきます!」」
手を合わせ、2人はご馳走に舌鼓を打つ。
ケチャップライスを包む卵にスプーンを入れると、いい香りと共に湯気が立ち込める。口へと運ぶ手が止まらない。
ふと、金剛がスプーンを突き出してきた。
「ハイ、テートク、あーん。」
提督もオムライスを載せ、彼女へ差し出す。
「あーん。」
提督と金剛は互いの料理を口にし、
幸せを噛み締めていた。こういった光景は鎮守府では日常茶飯事なのだが、今日の金剛の笑顔は一際輝いて見えた。
「テートクがそんな顔するなんて珍しいネー。
いつもそうやってsmileだったら、良かったんですケド」
「別にどんな顔してたって良いじゃないか。
君が居れば、俺はそれだけで幸せなんだよ」
「テ、テートク…///そんな急に言われても照れマス…♡」
++++
レストランを出た2人は、次の目的地へと足を進めていた。
「所で金剛」
「what?」
「
「そうデスよ。よく外出届を出して、皆とsweetsを食べに行ったり、ティーセットを買いに行ったりしてまシタ。
テートクがテートクになってからは行けてなかったカラ、
今日は本当に久しぶりデース」
「そうか…今度は妹達も一緒に来ようか」
「oh!テイトクもplay boyネ〜?」
「うっせ____見えた、あの建物か」
2人がやってきたのは、商業施設の一角に建っている小さな映画館だった。
「テートクにはワタシとこれを観てもらいマース」
そう言って彼女が差し出したのは、恋愛映画のチケット。
テレビのCMでよく目にするため、提督もタイトルだけは知っている。
売店でLサイズのポップコーン、メロンソーダにピーチスカッシュを買えば、準備は完了だ。
係員にチケットを渡し、2人は真ん中辺りの席へ座る。
予告編、コマーシャルが終わり、ついに本編が始まった。
その内容は、1人の艦娘と一般人の青年との恋愛模様を描いた物だった。
最初、提督はつまらなく思っていたが、
立場故に会うことすらままならない切なさ、苦悩を伝える緻密な心理描写に、段々と感情移入していった。
話は進み、主人公とヒロインがようやく再開出来る、というシーンになった。
スクリーンの中の2人は抱き合い、愛の言葉を口々に囁く。
金剛と提督はお互いの手を求めた。奇しくも、考えていた事は同じらしい。
指を絡めあい、恋人繋ぎになった2人は、そのまま体を寄せ合い_______
初めての、小さな、甘いキスをした。
++++
「シちゃいましたネ…ファーストキス…///」
「う、うん…」
日も沈み、行き交う人も少なくなった神戸港を2人は歩いていた。
その手は硬く握られており、一方で義手は、今日一日分の買い物を待たされ、抗議の悲鳴をあげている。
「テートク、今日は一緒にいられて、とてもhappyでシタ」
「こちらこそ、今日はステキな時間をありがとう。」
他愛の無い会話をしながら、2人は船着場へと足を進める。
だが、桟橋に着いた時、2人は気づいてしまった____
荷物がスキッパーに積みきれない事に。
「_______という訳なんだ。頼めるか」
『了解しました。少し時間が掛かると思いますので、暫く時間を潰していて下さい』
「分かった。2人で気長に待ってるよ。」
『司令!金剛お姉様に変なことしたら、許しませんからね!』
「2人きり、か」
通信を終えた提督は、1人呟いた。
「どうでシタ?」
「比叡達が来てくれるらしい。暫く時間を潰してろってさ」
「okay.じゃあテートク、一緒に座りまショウ」
近くのベンチに腰掛けていた金剛が、そう言って隣をポンポンと叩く。
提督は彼女の隣へ座ると、そっとその手を握った。
すると金剛は彼の首へもう片方の手を掛けると、顔を一気に引き寄せ、本日2度目のキスを交わした。
ただし、今度は口内を舐めとるように。貪るように。
やがて唇が離れると、腰を抜かした提督は金剛の膝へ倒れ込んでしまった。
「テートク、今日は本当にthank youネ♡」
そっと提督の頭を撫でる。
「にゃあこんごぉ…もう少しだけ、このままでいてもいいか?」
「of course♪偶にはテイトクもワタシに甘えて下さいネ〜」
少し寝てしまおうか。そう思い始めた時、海から声が聞こえてきた。
「お姉様ーッ!」
どうやら、2人の時間はここまでのようだ。
++++
「3人ともすまないな。今思えば、こうなる事は予想できたハズなんだが…」
「いえいえ、気にしないで下さい、提督。」
「そうか。じゃあ皆、鎮守府へ帰ろう。荷物の幾らかはスキッパーに括り付けるから、残りは____」
「ダメです、荷物はいいですから、司令は金剛お姉様を乗せて下さい。」
「でも金剛は艤装出せば、海の上を走れるんじゃ…」
「もう…テートクも乙女心の分からない人ネ。ほら、ハヤクハヤクー!」
「分かった分かった。それじゃあ…しっかり捕まってろよ!」
「YEーーS!!!」
こうして、2人の幸せな1日は幕を閉じた。
金剛の抱きしめる力が、行きの時より力強く感じられた。