ある日、鎮守府、間宮食堂にて。
ここは兵庫県南部に位置する「淡路島鎮守府」。
穏やかな波、豊かな自然に囲まれており、周辺地域は観光スポットとしても人気が高い。ある1日の昼下がり、執務室でキーボードを叩いているのは、淡路島鎮守府の指揮官、瀬名聡一郎(せな そういちろう)である。
「今日は七駆と天龍・龍田を遠征に出して、それから…」
キーボードのカタカタという音に混じって、モーターがウィンウィン駆動する音が聞こえてくる。この部屋に似つかわしくないその音は、彼の左肘から生えている真っ黒な筋電義手による物である。
しばらくして、時計の針が12時を指す頃…
「Heーy!テートクゥ!lunchの時間だヨ!」
執務室のドアを勢いよく開けて入ってきたのは、秘書艦の金剛だ。瀬名にとっては頼れるパートナーであり、心の支えでもある。
「今日の日替わり定食はなんだっけ?」
「今日はたしか…間宮特製ハンバーグだったネ」
「オーケー。じゃあ売り切れないうちに行こうか」
2人がやってきたのは「間宮食堂」
ここは鎮守府の中でも1番賑やかな場所で、今日も艦娘達の喧騒に包まれている。
「あっ!提督じゃん!ちーっす!」
「やあ提督。こんにちは」
「こんにちは、瀬名提督」
食堂に入った俺はみんなと挨拶を交わしつつカウンターへ向かう。
「間宮さん、日替わり定食を1つ」
「了解です。金剛さんは何にします?」
「ワタシも提督と同じモノをお願いしマース!」
出てきたのはデミグラスハンバーグにポテトサラダ、そして白米。
どれも地元でとれた新鮮な食材で作られており、食べた者を悉く笑顔にしてしまうのだ。
「やっぱり提督と食べるlunchは最高ネー!」
「俺もそう思う。それにしても美味いな…」
しばらくすると、駆逐艦達が何人か俺の左隣へやってきた。
「司令官、ボクたちも隣、いいかな?」
「もちろん。」
皐月に長月、そして文月だ。
ここでは睦月型の仕事は哨戒・遠征・出撃と多岐に渡り、とても頼りになる娘たちである。
「確かみんな午後からは鎮守府正面海域の哨戒だったよね?」
「はい〜、今日もいっぱい頑張りますよ〜」
「うーちゃんも頑張るからぁ〜、いっぱい撫でて欲しいぴょん!」
「わ、私も撫でてほしいな…頭…」
「みんなズルい!ボクも撫でてー!」
「ワタシも撫でて欲しいデース!」
俺は一旦食べる手を止め、両手で優しく撫でようとしたが_____長月が左腕を抑えて言った。
「司令官、左手で撫でられると痛いんだ。できれば右でして欲しいな」
瀬名の義手はいわゆる筋電義手であり、明石謹製の高性能な一品なのだが、その材質はチタン。つまり、血も通っていなければ撫でた感触を感じる事もできないのだ。
「よしわかった。でも順番は守ってくれよな」
「「もちろん!」」「of course!」
どういうわけか、ここの艦娘達は頭を撫でてもらうのが好きだ。
元々は遠征から帰ってきた駆逐艦たちへの労いを込めてやっていただけなのだが他の娘達にも広まったらしく、
今でも任務から帰投した駆逐艦を始め、巡洋艦や一部の大型艦まで来るようになってしまった。
「よしよし…いつもありがとうな〜長月」
「んっ…また明日からも頑張るよ司令。」
「よし、次は皐月「あーっ!みんなズルいっぽい!夕立も撫でて欲しいっぽい!」
そう言って駆け寄ってきたのは夕立。彼女は人一倍撫でられるのが好きで、その甘えぶりはみんなから「ぽいぬ」なんて渾名を付けられるほどだ。
夕立の声に釣られてか、食堂にいた他の娘達まで集まってきた。
「提督…その…私も撫でて貰えないでしょうか…」
「私も私もー!」 「みんなちゃんと並んで!次はボクなんだからっ!」
「あれっ、提督まだ食べきってないの?じゃあ…はい、あーん」
今度は鈴谷がハンバーグを俺の前に差し出してきた…
「NOーッ!それはワタシの役目デース!」
なんてこった…こりゃ暫く動けないぞ。そう思いつつも瀬名はみんなとの時間を楽しんだ。
こうして、淡鎮の平凡な1日は過ぎて行くのだった…