元トレーナーの育て屋さん。 作:ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ)
──前回から早1時間。
2人の熟練者にリリィの疑問という弾丸が襲いかかっていった。その結果……
「もうやめよう?なぁ、もうやめよう!?干上がってるみたいだからぁ!普段の俺じゃん!」
もう見てられなくなった先生ことリョウがリリィをストップをかける。しかしもう既に遅い。何故なら……
「まなーまなーまなーめざめるまなー」
クレハは既に壊れかけてるからだ。
うつ伏せで謎過ぎる言葉を人形のように繰り返し、時折陸に打ち上げられたコイキングのようにびくんと跳ねるという年頃の娘がなっていいような状態じゃなくたっていた。
「おーい大丈夫か?クレハさんや〜ひとまずサーナイトや精神の安定化を頼む」
しかしグレイブの方は見る限りは平気そうで、手持ちのサーナイトにいやしのはどうをクレハに掛けるように指示をしていた。
随分とタフなやつである。
「ああ…リリィさんの被害者が…クレハさん、大丈夫ですか?」
癒しの波動とはいえ、ぶちかまされた常識までは消せない。それを日常的に受けているから故に心配そうにクレハの肩に手を置いて訊いたりしてくるリョウ。
──本当に良い奴である。
「まなーまなー……はっ!?う、うん、なんとか大丈夫……」
癒しの波動を打たれ、リョウに声を掛けられた事でなんとかクレハは正気に戻り、グレイブとリョウに「ありがとう」と一言、礼を言うも少しだけ体が震えていた。
ぶちかまされた常識によるダメージは相当深かったようだ。正しく(トレーナーにとっては)こうかはばつぐんだ!である。
ちなみにリリィはリョウが必死に答えたりクレハが頑張って考えてくれたのもあって満足した様で、それを確認したクレハは内心ほっとしていた。
「はぁ…危なかった。…それにしてもある意味おっそろしいな〝常識〟は……」
グレイブは小さく、されど周りに聞こえる程度にそう呟く。
…どうやら一応ダメージはそれなりにあった様である。
「いやまあ…どっちかというとそういうのを忘れ去っていた俺達がおかしいのかもしれない…」
「?どうかなさいましたの?…あ、そうですわ!グレイブさんは分かりましたが、クレハさんはどれほどの戦績をお持ちなので?」
「あー、確かに。メンバー的に上級者の面子だし…気になるな」
グレイブの言葉にもしかしたらおかしいのは自分達の方では?と思いつつも、その直後にリリィが発した質問に同調する。
リョウの見立てではクレハはリーグ戦はしたことがあると見ている様だが、実際の所はリョウ自身の経験による勘なので宛てにはならない。
──だからだろう、リリィの質問は渡りに船であったようだ。
「えーと、私はですね……シンオウリーグベスト6でした、はい。」
当のクレハはちょっと気まずそうに2人の質問に
答える。無理もないだろう、比較対象が異世界のガラルチャンピオンのグレイブで、ベスト6とか正直パッとしないのでは?と思ってしまったのだ。
「ほぉシンオウリーグでね・・・なるほど」
「まあ!シンオウのリーグも厳しいと聞きますわ…それのベスト6だなんて凄いと思います!」
「シンオウリーグ…か…」
「先生はシンオウリーグでは予選敗退してましたわね」
グレイブの静かな呟きを他所に純粋にクレハの実力を称えるリリィにシンオウリーグに何か思うところがある様子のリョウ。その理由はリリィの暴露によってすぐに判明した。
どうやら意外な事ににリョウは過去、シンオウリーグを予選で敗退していたようなのだ。
「いや…だってあれは反則だろ…明らかにほら…ヤバイポケモンだったじゃん、ダークライってやつ…」
しかし当の本人はすぐに弁明するように、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら予選を敗退した理由を語る。
それは偶然にもクレハのシンオウリーグでの忘れられない苦い記憶を連想させるものだった──
「……うっ…ダークライ…」
──リョウくんが語った予選敗退の理由に思わず自分の体から怖気が出るのを感じた。
ダークライ。何を隠そう、そのポケモンこそ私がシンオウリーグでベスト6止まりだった最大の要因だ。
〝ダークホール〟という〝さいみんじゅつ〟の上位互換みたいな反則…もとい強力な技でねむり状態にさせられた挙句ナイトメアという眠っている相手の体力を徐々に削るという特性に私はいいようにやられ、私はラムのみを持たせたガブリアスが出るまでの手持ち4体をまんまとやられてしまったのだ。
──今思えばなんで私はあの時ガブリアスを早期に繰り出さなかったのか…その前に対戦していたリリカとのバトルでの疲労で頭が回っていなかったのかなぁ…
というか何より1番恥ずべきなのはあのバトルの後負けた悔しさのあまり大泣きした事。
……タクトさんめっちゃ困ってたし、会う機会があったら謝りたい…
「あ〜ダークライね・・・確かに眠り対策とか色々面倒だろうな」
そうなんだよね。しかもやたら速いし。
「ですが、先生はイッシュリーグにてチャンピオンアデクさんへの挑戦権を獲得し、あと一歩のところまで行ったのですよ!」
「いやお前が自慢するんかいっ。
落としてから上げるなぁ!?」
「チャンピオンを追い詰めたの!?それは凄いねっ」
熱心に話すリリィちゃんに私も思わず声が出る。
いやだってイッシュ地方のリーグがかなりハイレベルだっていうのはネットでちょっと調べて知ったから。
その頂点に立つチャンピオンをあと一歩まで追い詰めたリョウくんは本当に凄い。……私もシロナさんに挑みたかったなぁ…
「へぇ、あのおっさんか・・・そりゃ2人ともかなりお強いことで」
「いやその…あー、はは…ありがとうございます…」
あ、お礼言いながら顔を背けちゃった。……照れちゃってかわいいなぁ…
「これは、つまり…三人の強者がこの屋敷に集ったということですわね。
となると、トレーナーであれば、やることは一つですわ!
言うではありませんか、目と目が合ったら?」
ポケモンバトル!
「……ああ、まだ旅をしていた頃によく挑まれてたなぁ」
懐かしい…自転車でシンオウ中を駆け回ってたあの頃…偶にムクホークで飛んでたけど。 なんならホウエンにおばあちゃんの故郷のジョウト、今の住まいがあるカントーにも行ってたけど。……リクトちゃんと店番できてるかなぁ?
「ふーんいいんじゃねえか?腕が鳴るぜ!」
わぁ…グレイブくんもやる気十分って感じだ。……私もだけど。
「では、そうですわね…ここは公平にバトルを致しましょう。三人がそれぞれと戦う、というのはどうでしょう?」
「あー、どうかな…ポケモン達の負担もあるしな…連戦、それもリーグレベル…かは整ってる訳じゃないから分からないけど、な?」
「──、───」
「いやそんなやる気になられましても」
…つまりそれは誰が相手でも負ける気は無いってわけだ?……リョウくんもすごい自信だね。
…あ、リッター(だっけ?)もめっちゃやる気だしてる…こう、なんとなく「やるのですか??早くやりましょう!」的な事言ってる気がする。…いや私の予想でしかないけども。
「リョウ君。そっちの…リッターだっけ?やる気十分みたいだよ?私の手持ちもだけど」
…うん。実の所私の手持ちもやる気十分、早くやろう!って感じなんだよね。…ゴウカザル達5匹はともかく普段は大人しいバンギラスまで…あれかな、船の時のバトルの熱が残ってるのかな?
「こっちも準備万端だ。やる気ならそっちのギルガルドやゴウカザルに負けていないぜ」
おお…!後ろのグレイブくんの手持ちもやる気十分だ…!
「…あー、分かった。でも、流石に全員は駄目だ。ここは、3VS3で行かないか?」
「フルバトルではいけませんの?」
「まあ、いいんだけど、長引くとヒートアップしすぎて良くないだろ?
で、一戦が終わったら回復も兼ねて少し休憩、OK?」
なるほど…確かに総当たり戦をフルバトルでやるのは厳しい。それにヒートアップし過ぎて良くないっていうのも一理あるし、何より…
「私もそれに賛成。フルバトルはポケモンは勿論、トレーナーの方も疲労半端じゃないから……」
フルバトルはポケモンは勿論、指示を出すトレーナー自身の疲労も凄いんだよね。戦術の組み立てや技の指示を出スタイミングとか…まぁ色々やるから終わったあとどっと疲れが出てくるんだよね。……それが1人あたり2回。それも連戦。だからリョウくんの提案には全力で賛成しますっ
「ハーフでの対戦か・・・俺としてはフルが良かったがまぁいいか。」
……わぁ、凄いギラついた目。グレイブ君ってばフルがよかったって言っておいて手持ちの選別してるし、本当にやる気満々だね君。
「よし決めた」
「早くありませんか!?」
ほんとに恐ろしい程早い選出…私じゃなきゃ見逃して…すみません。ふざけすぎました…
「──!」
「…悪い、リッター。いつも切り込み隊長してくれてるけど、お前は今回見学だ」
「──…。──!」
あ、リッターは下がるんだ。…おっと私も誰を出すか決めないと。…無難に得意の〝おいかぜ〟でのサポートを使ったスピード戦法にするかな?…いやせっかくだから別の戦法も試してみようかな…よし、決めた!
「……私も決めたよ。残りは今回は見学ね」
「ガブブ、ガブ!」
「ホー、ムクホッ!?」
「……リュオン」
ごめんね。ガブリアス、ムクホーク、カイリュー。
今回はやった事ない戦術を試してみいんだ。バトルはまた、ね?
「……ガブ」
「ムクゥ…」
「りゅん、りゅおん」
ガブリアスは静かに頷いて、ムクホークは片翼だけ拡げてやれやれって感じでカイリューは私の方を優しい手付きでぽむぽむと叩いて了承してくれる。…ありがとう。
「俺も決まった。残りはじっくりと見学だ」
グレイブ君も決まったみたいだね。
「っと…他は出してやらないとな」
……あ、リョウ君が2匹の手持ちを出してきた。…なにあのどう見てもほのおタイプな赤いダルマみたいなの。もう1匹は…ブラッキーだ。見た目によらず凄くタフなのが特徴のポケモンだ。
「では、僭越ながら私が審判を務めさせて頂きますわ。
まずは、誰と誰がやりますの?」
あー…誰からやろうかなぁ…正直順番はどうでもいいし。…だって……
「私はどんな順番でも構わないよ。──負けるつもりないからね」
そう、誰が相手でも負けるつもりは全くないから。
祝ポケモン完全新作!
わぁーーい!わぁーーい!(つるぎのまいならぬよろこびのまい)