元トレーナーの育て屋さん。 作:ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ)
「ひゅ〜!やるねぇ。ギルガルド〝アイアンヘッド〟だ」
「───!」
モーアに背負い投げをされたギルガルドだったが、グレイブが指示を飛ばした瞬間、体を捻って投げられるギリギリで抜け出して、一旦距離をとってから、モーア目掛けてアイアンヘッドによる勢いを利用した突進を試みる。
「─ブレード出しっぱなのは悪手だなチャンピオン。モーア、受け止めて〝ねっとう〟」
「ヌ、ォ!ぬぉぉおっ!」
しかしそれは悪手だと伝えながらリョウはモーアに指示。
指示通りモーアはギルガルドのその巨体で難なく受け止めてみせ、ねっとうを至近距離で放ってみせる。
たくわえるで耐久をあげたこと、元々モーアこと、ヌオーが受けに優れたポケモンだからこそ出来た芸当である。
「Wow…こりゃ〜さすがに悪手だったか」
「───…、…!」
これはまずい。悪手だったかと反省する。はねっとうをまともに浴びてしまい、ギルガルドは既に満身創痍だが主への忠義か、それともただ主に似ているからだけかは分からないが、フラフラながら、必死で立ってみせた。
「畳み掛けろ、モーア!そのまま〝ねっとう〟!!」
「ヌ、オーーッ!」
フラフラなギルガルドだがリョウとモーアは一切の油断もせず、トドメをさそうとそのままねっとうを放つ。
「回避して〝アイアンヘッド〟」
「───!」
しかしギルガルドの方もフラフラながらねっとうを紙一重で回避。再びモーアに突進をして、攻撃を仕掛けていく。
(──すごい。凄すぎて思わず見入ってしまった…勝てるのか私達…いや、勝つんだ…!)
凄まじい。そんな言葉が真っ先に出そうになる。互いに譲れぬ一進一退の攻防、飛び交う数々の技。トレーナーであったならば誰もが見入ってしまうそのバトルに、クレハは闘志を滾らせながら、勝つんだと意気込んでいた。
「モーア、警戒しながら〝ねっとう〟を続けろ!」
「ヌオー!!」
ねっとうを放ったまま薙ぎ払うようにこちらに突進してくるギルガルドの方へと方向を修正する。ギルガルドは厄介なポケモンだし、リョウ自身それをよく知っている。だからこそ油断はしないのだろう。軽快に警戒を重ねていた。
「(流石にこれをくらえば、ギルガルドはやられるな…)
くっ……〝キングシールド〟」
「───!」
「そうだ、止まるしかない。だから…モーア!〝たくわえる〟をしながらいけっ!」
「ヌオーー!」
流石にこれはやられる。そう思い、止まるしかないと判断したグレイブは苦い顔でアイアンヘッドを止め、ギルガルドの代名詞であるキングシールドを指示し、ギルガルドも盾をかまえ、シールドフォルムとなってねっとうを防ぐも、それはリョウの意図した通りだった。
止まった隙を突くように、モーアはたくわえるでより自身の耐久力を上げながら、ギルガルドの方へとポテポテと走り出す。
リョウとモーアからは、厄介なギルガルドはここで仕留める。そんな意志をありありと感じる。
実際ギルガルドは厄介だから仕方ないが。
(カロス地方に詳しくない私でもギルガルドが厄介なのはこのバトルでわかる…ここで倒しに行くのは当然だね…)
そしてその厄介さはこのバトルを通してクレハにも理解出来ているのだ。
「───…!」
「ギルガルド!ギリギリまで引き付けろ…」
「モーア、見極めろ、お前のタイミングを信じる…!」
「ヌオッ、ぬおーっ!」
「ギルガルド・・・もう少し引き付けてから・・・今だ!残っている力を全て収束させて〝シャドーボール〟発射!!!」
「───!!」
お互いにタイミングを見極めていき、先に動いたのはグレイブのギルガルド。モーアの鈍足では避けることが難しい距離から全力のシャドーボールが迫り来る。
「ヌオ……ッ!?ぬ、ぬぬ…ヌオッ!!」
しかしその全力はたくわえるを2回した上、持ち物がたべのこしであるモーアを仕留めるには足りないようで、受け止められてしまう。
モーア自身もシャドーボールの威力にジリジリと後退していくも腕で無理やりシャドーボールを弾き飛ばして、絶対に倒すという気迫を見せながら、全力の〝ねっとう〟を放つ。
「……ギルガルド〝キングシールド〟からの〝アイアンヘッド〟!!!」
「───!!!」
ギルガルドは既の所でシールドフォルムとなって、キングシールドを展開。ねっとうを受け止めてからアイアンヘッドでまたしてもヌオーに突撃を仕掛けにかかる。
「モーア、受け止めて〝ねっとう〟!」
「ンヌッ…ヌゥゥオッ!」
だが如何にブレードフォルム時のギルガルドの火力が高くとも、モーア…ヌオーは止まらない。姿勢を整え、ギルガルドのアイアンヘッドを受け止めると、そのまま捕まえて、至近距離でねっとうを放つ。
「〝シャドーボール〟!…踏ん張れギルガルド!!!」
「───!!」
しかしギルガルドも手強い。どうにかモーアの手から逃げ出し、ブレードフォルムになると同時に構え、シャドーボールをモーアに放つ。
「よく耐える。けど…モーア、やれ!」
「ヌオーーーっ!!」
「たはは、互いにボロボロでもよくやるもんだな」
しかし先程も言ったがモーアの持ち物はたべのこし。それによる継続的に体力を回復していたのもあって、いまひとつとはいえあれだけの攻撃を受けても健在の様子。シャドーボールにねっとうを放ち、弾けて消して見せた事からもそれが伺え、グレイブはボロボロなくせしてよくやると思わず苦笑い
「ボロボロ?バカ言うんじゃない。モーアはここからガブリアスとだって戦える。距離を離すな、そのまま"ねっとう"を続行しろ!」
「ぬお…!」
(うわあ…あの状態からガブリアスと戦えるとか流石ヌオーというか…怖いなぁ…)
だがリョウはそんな彼の言葉を否定。自分の育て上げたモーアはここからであってもガブリアス相手でも戦えると豪語し、ギルガルドと一定の距離を保ちながら、ねっとうを放ち続ける。
そんな彼の言葉に件のガブリアスを手持ちにしていたクレハは思わず苦笑い。実際あのヌオーなら出来そうなのがよりタチが悪いと感じた。
「だよな。ギルガルド、盾で防げ」
「─────!」
なんとなく言ってみたがあのヌオーの様子から前言を撤回しつつ、グレイブはギルガルドに盾で防げと指示。……キングシールドを使わずに防がせようとしたのだ。キングシールドは連続使用が出来ない。だからこそシンプルに盾で防がせたのだろう、これで時間を稼ぎ、突破口を開こうとしたが…
「…そんな悠長でいいのか?モーア、仕掛けろ!」
「ヌッ!!」
しかしそんな悠長はさせないとばかりに敢えてギルガルドに防がせながらジリジリと接近していき、ギルガルドの盾を持っていない方の腕を引っ掴んでから、グルグルと回り出してジャイアントスイング。遠心力を効かせていき、地面へと思いっきり叩きつける。
「─…──……」
「……しまったなぁ」
(まずはリョウ君が先制したか…でもグレイブ君も黙ってないはず……)
当然消耗し切っていたギルガルドは目を回してダウンし、グレイブは先程までの激しい様子から一変してギルガルドをボールに戻していく。
───あまりにも静かすぎてまるで嵐の前の静けさに思えるのは気の所為だと信じたい。そんな事を脳裏に浮かべつつ、クレハは逃避するように2人のバトルの方にと見入っていく。
「(やっと倒せたか…子供といってもチャンピオン、流石鍛え方がなってる…けど、こっちも負けちゃいない。今ので確信した。…ある意味、互角だ)」
「ぬお、ヌオーー!」
「こら、モーア。喜ぶのは早いっての!しっかりしなさい!」
「ぬ、ヌオッ!」
「ぷっ…」
考察していたリョウだったがまだ早いと喜ぶモーアに注意を入れる。まだあとグレイブのポケモンは2体も残っているのだ、油断は禁物である。
叱られたモーアはそうだったとばかりにシャキッと背筋を伸ばす。
そんな2人のやり取りに観戦していたクレハは思わず失笑。モーアに対してかわいいと感じた。実際ヌオーはかわいいから仕方ない。仕方ないったら、仕方ない。
ゴウくんはここからどうがんばるんですかねぇ…