元トレーナーの育て屋さん。 作:ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ)
「……流石というかなんというか、やっぱり豪華だね…」
わかりきっていた。というか昨日も入っていた為に浴室(今いるのは脱衣所だが)の内装自体は知っている。しかし、それでも…その豪勢な内装には緊張せざるおえなかった。
だって庶民だもの、仕方ないね。
しかし女子として朝風呂は欠かせぬ物。尻込みしてられないとクレハは意を決して扉を開け、脱衣所に入っていった。
「あら、クレハさん。おはようございます」
「あれ、リリィちゃん。あ、そっちもお風呂?」
脱衣所にはなんの偶然か、リリィが居て、クレハに微笑みと共に挨拶をする。
これは緊張していたクレハにとっては僥倖そのもの。
下着姿である事、時間帯からして彼女も風呂に入るのだろうとなんとなく察したクレハは緊張が解けた様子でそう訊く。
「ええ、家にいる時はこうして入りたいと思ってますの。
…緊張してますのね、そう固くならなくて平気ですわ」
「うん、ありがとう。1人じゃしり込みしちゃって…」
リリィの答え共に出た言葉にクレハは礼を言いながら素直に尻込みしていたと告げると、服を脱ぎ始めいった。
「そういうものですか。
…ああいえ、先生も最初は緊張してましたわね」
「よかった。緊張していたのが私だけじゃなくて…」
リリィの言葉にやっぱりと思いつつも同類がいた事に安心すると呟きながらタオルで身を包んでいき、リリィと共に風呂場へと入っていく。
「楽になさってくださいまし。
そうでないと宿泊を許可している私も何だか悪いですもの」
風呂場は広く、銭湯とは異なる豪華さがあるもののシャワーの数は二本程であった。
リリィはタオルを一旦とってから風呂の湯を桶ですくい取り、体にそれを掛けて体を濡らしてからクレハに微笑みかけてそう伝える。
その後体を洗おうとシャワーへと歩き出した。
「う、うん……」
改めて内装を見ると案外普通だと安心するクレハ。よくよく考えたら昨日は疲労していたからか風呂場の内装を気にする余裕もなかったから過剰に緊張していただけなのである。
ちなみに最初の頃はマーライオンならぬマーエンテイが設置されてるようなのは想像していた。そんな事する意味全くないが。
考えても仕方ないと自身もタオルを取り、リリィと同様に掛け湯をすると、そのままシャワーへと向かう。
「昨日のバトル、とても勉強になりました。ありがとうございますわ。
バトルにも多種多様な戦法があるのは把握してましたがデータで見るのと実際に見るのとでは違いますね」
美しささえ感じる身体を洗いながらお礼を言い、それから先生は強かったでしょう? と自分のことのように嬉しそうにクレハに訊くリリィ。
「あはは…それならよかった。…うん、強かったよ、リョウくん」
たゆん、と一般と比べて大きめのそれ(どことは言わない)を揺らしながらリリィを微笑ましいと思いながらも真面目な顔でそう答える。
リリィ「そうでしょう、流石は先生です。あの戦法はイッシュリーグ第二予選の時にした物でして…」
語り出す。それはもう饒舌に、リョウが聞いたらどうして言うのぉ! とツッコミそうなくらいリリィはリョウの事を話し出す。その姿、正しく全力ファンである。
「ほうほう」
クレハはそれに耳を傾ける。どうやら好奇心の方が勝ったらしい。リョウには悪いと多少は思っているが、自分に勝った人物の事は知りたいものなのだ。
「そもそも先生の始まりは14歳の頃、ホウエンにて始まりまして…」
「へぇ…14の時に…あれ、ならリョウくんっていまいくつ?」
遂には経歴まで語り出したリリィに自分と同じか、年下かと思っていたらしいクレハはそう訊く。
もしリョウが居たら体育座りでいじけていたことだろう。この場にいない事が救いである。
「今、17か18位ですわね」
「……私より年上だったんだ…」
きっと本人はそんなに経っていたのかとなるようなものだが、リリィからしたらリョウの誕生記念を屋敷でする程である。
……ちょっと怖いぞ、この子。
まさかの年上という事実にクレハは驚き、目上だったというのに態度が君付けでタメ口だったことを振り返り、申し訳ないと感じた。
「ですが、先生はクレハさんやグレイブさんに敬意を持っているのでそう気にすることはないかと」
「そうかなぁ…私2人と比べるとリーグの戦績が……」
片やチャンピオンをギリギリまで追い詰めた者と異世界の現役チャンピオン。そんな2人に対して自分はベスト6である。
正直見劣りするのでは? と感じてしまうのだ。
「戦績はその人を際立たせますが、それでクレハさんの全てを表すものですか? 先生は、クレハさんのポケモンへの思いを理解して敬意を持っているのです」
そう言ってから身体を洗い終わり、薄紫の長い髪を纏め、湯船に浸かる。
「……なんかそこまで言われたら照れくさいなぁ」
言われたクレハはひたすらに照れくさいと笑いながら言って、体を洗い終えると育て屋を継いでから伸ばしてみせた赤い髪を纏めてから風呂に入る。リリィもそうだが、髪は女の命なのだ。丁重に扱わねばならないのである。
「まあ、かくいう私はまだ旅にも出てないのですが。ラルトスちゃんと勉強中なのです」
「リリィちゃんはラルトスが手持ちなんだ?」
体が温まっていく心地の良さを感じながらクレハは共に湯船に浸かるそういえばラルトスと一緒に居たのを見た事があったのを思い出しながらリリィにそう訊く。
「ええ、先生がくれたんです。
一番似合うよって言ってくださって」
「なるほどね。確かに1番似合ってると思う」
「あら、そうですか?
クレハさんにもそう言って貰えるならより一層ラルトスちゃんとは仲良くなりませんと」
「うんうん、最初のポケモンは可愛くて仕方なくなるよ?」
確かに勤勉で真面目なリリィのイメージにラルトスはピッタリだと思いながらクレハも似合っていると伝える。
その言葉が嬉しいのか、リリィは微笑みながらそう宣言し、クレハも同意するようにそう伝える。今や立派なゴウカザルだし出会い方も風変わりだったが、トレーナーになって最初の頃はヒコザルが可愛くて仕方なかった事を思い出しながら。
「あら、私はただ可愛く扱う気はありませんわ。リベールたるもの、強くあれ。ラルトスちゃんを…そうですね、カロス地方のチャンピオン、カルネさんのサーナイト以上にしてみせますわ!」
「うわ、大きな目標。……それとカロス地方かぁ…」
カロス地方、自分がこれから己を高める為に行く場所だ。
そこのチャンピオンであるカルネはサーナイトをエースとしているのは調べ済みだ。
「カロス地方がどうかなさいました?」
「うん、まぁね…ちょっと理由があってこの旅行が終わったらそのままカロス地方に行く予定なんだ…」
「まあ、そうなんですの?
先生も修行の地に選んだ地方ですから、楽しんで来てくださいな。それがどういう理由であっても、ですよ」
「……ありがとうね」
あ、リョウくんもカロス地方で修行していたんだと思いながらクレハはリリィに例を言って湯船から出る。
まさかカントーのジムリーダーになる為にわざわざ他地方で修行するのが理由とか思っていないだろうなぁ…と内心思ったのは内緒だ。
「ええ、構いませんわ。…さて、長湯する気はありませんし私も出ると致します。朝食もありますし」
そう言ってクレハより少し遅れる形でリリィも湯船から出て、脱衣所へと歩いていく。
「……私も行くか」
昨日の晩ご飯はは当たり前のように豪勢で緊張していたが、学習したのかクレハは朝食に対してちょっと楽しみにしつつ、脱衣所へと歩いていくのであった。
SVたのちい(プレイしながら)