江戸窓翔也の怪異譚   作:小説太郎DAZE

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【第6話:神隠し(mysterious disappearance)】

某市。『とある場所』に広がる森があった。そこは都市開発により『失われた』森。

しかし、ある出来事が多数発生している。その出来事とは、すでに『失われたとある場所にある』森の中におり、『謎の声』を聞く者が多数いた。その声に導かれ、『謎の声』を聞いた人達は『居なくなる』いわゆる、『神隠し』である。

古来から伝わる神隠しとは、日本では天狗が人を攫い隠すというものである。そして、神隠しにあったものは『戻ってこない』。

だが、違いがあり、某市で起きている『神隠し』は"人が戻ってきている"。起こる場所は不定。いきなり、家の中で行方不明になる人間もいる。

その『神隠し』にあった人間は『謎の声』を聞いて"1点の場所で戻ってくる"。

警察が事情聴取をすると、必ず皆同じ答えである。

警察は調査するも全く進まない。そもそもな話し都市開発して以降、そんな森は存在しない。そして、都市開発した時にはそんな話しは『存在していなかった』

調査は難航し、解明不能な事件として事実上幕を閉じるが、清美が特別調査部。通称『特調』に所属している為、この事件は裏で清美が担当することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー某事務所

 

「それで?清美。僕にその事件を解決しくれと?」

「正確には『調査協力』ね」

2人はカップに入った紅茶を飲み対談をしていた。

「もう一度、言うわね。翔也、この事件解決に協力しなさい」

そう言った女性はカップを小皿にカチャと音を鳴らし置く。

そう。この女性は翔也の幼なじみであり、警察の警部でもある。

「……協力しなさい。ね。『調査協力』はあくまで任意で行う協力であって、命令されてやるものではないよ」

翔也は飲んでいた紅茶のカップをソーサラーに置き、足を組み直しながら言った。

「それに、今日は僕の『妹』が上京してくる日でね。残念ながら調査協力をしている暇はないんだよ」

そう言うと、翔也は早く帰ってくれないか?という空気を発する。それに対して清美も引かずに条件を出す。

「……もし、協力してくれたら、私が桜子ちゃんの観光とか協力するわよ?車も出すし、連れて行きたい所には"私が協力"出来る範囲で足になって協力するわ。貴方は車以前に免許すら取ってないでしょ?」

清美がそう提案すると、翔也は少し考えた素振りを見せる。

「……分かった。その条件で協力しよう。でも、妹の桜子も着いてくると思うが大丈夫かい?」

翔也がそう言うと、清美は「何も問題ないわ。夢美ちゃんと一緒な感じでしょ?」と言う。

「あぁ。そんな感じだが、桜子は『とんでもない』力を持っている。恐らく今の状態も、『既に』把握していると思うが……」

翔也がそう言うと、翔也のスマホが着信を知らせてきた。翔也はスマホを胸ポケットから取り出しその着信に出る。

「もしもし」

『あ、お兄様ですよね?状況は把握しております。もちろん、私も清美さんの調査に協力しますよ。いえ、むしろ協力させてください』

「……近況はやり取りしているものの、桜子の力には舌を巻くよ」

『ふふふ。お兄様が私の為に清美さんの条件を呑んでくださったのですから、私が協力しない訳にはまいりません。それに、護衛役も必要でしょうし。本日は夢美さんは大学の講義でいらっしゃらないのでしょう?ならば、私がフォロー致します。ふふふ。腕が鳴ると言うもの』

「……ありがとう。それでもう桜子は事務所の入口かな?」

『あら。バレましたか。流石はお兄様です。いきなり、ドアを開いて、ババン!と登場し協力するなんて空気を読めない事はいたしません。いえ、あえてそう行動することによって牽制……強烈なインパクトを与えられた?……まぁ、良いです。とにかく、協力はしますので、入ってもよろしいでしょうか?』

「あぁ。入ってくれて構わないよ」

『それでは。今から入らせて頂きますね。愛しのお兄様』

桜子はそう言うと、通話を切り、翔也の事務所兼自宅のドアが開かれる。

「……いらっしゃい。桜子。久しぶりだね」

「……えぇ。13年振りですね。お兄様」

ここに、久しぶりの『兄妹』の再会が果たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『初めまして』お兄様の友人、累月清美さん?」

桜子は清美に向かってお辞儀する。その姿は優雅で正しく大和なでしこのようだった。

「えぇ。『初めまして』翔也の妹の桜子さん」

清美も席を立ちお辞儀する。

「「…………」」

二人はしばし、目線を合わせるとどちらともなく、握手をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、今回の件、説明してくれるかい?清美」

翔也がそう言うと、清美は机にある紅茶に再び口をつけ飲んだ後話をする。

「今回の事件は『行方不明』事件。被害者は何だかの条件でいきなり『居なくなる』その条件は不明なのだけど、共通してるのは『ある場所』から戻ってくる。『ある場所』とはもう存在してない『森』その森の中から『声』を聞いて戻ってこれるらしいわ」

清美がそう言うと、翔也はある質問をする。

「その『森』とは"何年前"に存在したんだ?」

そう、被害者、行方不明者に共通するのは『森』と『声』である。もう存在していない『森』と言う事は、少なくとも昔は存在していた事になる。それが一昔前なのか、それとも何百年も経っている伝承の中に存在した森なのか。

「行方不明者から聞いた情景を元に調べていたら、10年前以上に存在した森らしいわ。そこは都市開発によってもう存在していないのだけれど」

清美はふぅっとため息をつく。

「その森とは『普通』の森なのですか?」

翔也の隣に座っている桜子が清美に質問をする。

「『普通』とは?」

「いえ、ありえないとは思うのですが、その森……『禁足地』だったりしないかなっと」

禁足地。文字通り、『足を入れる、侵入するする事すら禁忌』である土地の事である。禁足地はちゃんと理由が存在する。例えば神の土地であったり、呪いが強すぎる忌み地であったり。だから、破れば『祟り』がある。

桜子のその言葉に清美は「……特にそんな話しは無かったはず……」と呟く。

「ふむ。とりあえず、その行方不明になる"条件(トリガー)"を探ろうじゃないか。清美。被害者たちは他になにか話してなかったかい?例えば、行方不明になる前に『ある音』が聞こえたり、『ある声』が聞こえたり、そうだな。感覚として『夢の中に居る』ようだったり」

「いえ。被害者達は『気が付いたら森の中』に居たらしいから。多分起きていても寝ていても変わらないと思うわ」

「では、『一瞬』で『森の中』に移動するという事だね?」

「えぇ。事情聴取をした者から上がってきた報告によるとそうみたい」

(あるいは、"絶対に感知"出来ない空間に飲み込んでいる……)

翔也はそう思考する。話の概要は掴めたが、まだ"引っかかる点"がある。

「お兄様。引っかかってる点がありますね?」

「……あぁ。"ある一点"だけ引っかかっている」

「一点だけ引っかかってるって…:どこ?」

清美が聞いてくる。

「それは、"拐う者と救う者"の存在だよ」

「それって……」

「お兄様はこう仰りたいのです。『この行方不明事件』はどのような意図があって発生しているのか……これは『普通の神隠し』ではありませんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古来より、『神隠し』とは土着信仰に元ずく。山の神に供える生贄の事だ。よく、『神隠し』の舞台は山の中が描かれる事が多い。これは、土着信仰から派生している山の神や天狗等の存在があるからである」

翔也は清美にそう語る。

「そして、『神隠し』は"ほとんど戻ってこない"つまり、神秘の存在による行方不明事件だ。現代では原因不明な行方不明事件として扱われる」

「私達の様な専門家に言わせれば"原因"なんて存在しない。多少乱暴ですが、『神隠し』とは本来その様なものです。ただ現象として在るだけです」

桜子がそう言う。

「今回は『拐う者と救う者』が存在しているから被害者達は戻って来れている。問題なのは『拐う者』の存在だ。その存在がどのような意図があるか分からない限り、無理矢理介入する事は避けたい。何故なら共通しているのは『存在しない森』だ。この森の空間に呼び込むと言うことは何だかの意味があるはず。まぁ、いっそ無い方が楽なのだが、『救う者』が存在しているのであれば『森』自体に意味があるはずだ」

「そうは言っても、一応調べてみたけど特段気になる事は無かったと思うけど……いえ、話を聞いて一つだけあるわね。その森の中心部に社があったはず……朽ちていたからというのもあるのでしょうけど、工期を早めるために何の対処もしなかったと言う情報があるわ。しかも、潰したと言っても何も起きなかったから全く気にされてなかったはず」

清美は顎に指を当てながらそう説明した。

「恐らくというか、それが原因ですね。全く。朽ちているとは言え、神の住居を破壊して何も対処しないとは……お兄様、どう致しますか?もう神の住居は存在しません。しかも森自体無くなっているのであれば土地の再現も出来ません」

桜子は少し怒っているようだ。本来であれば自業自得。手を貸すまでもない。しかし、『救う者』が存在し、恐らく『迷っている』。その存在を救う道理はあるはず。

「……桜子。お願い出来るかい?桜子が術を施し、『私』を媒介にしてこの事務所に、ミニチュアな形だが『神の住居』を用意する。そこで説得すれば何とかなるはずだ」

「……確かに私とお兄様なら可能ですわ。しかし、お兄様がそこまでする必要……愚問でしたわね。今回は人間側を救う訳ではなく、『被害者』である神を救う。分かりました。神の住居を用意し、どうにか鎮まってもらいましょう」

桜子はそう言うと、術の用意をし始める。翔也は事務所の奥に入り、『神の住居』の準備をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これより、『神降ろし』の儀を行います。結界は張ってありますが、念の為清美さんは私の側から離れないで下さい。お兄様が、どうにかして下さるので余計な事はしないように」

桜子は清美に注意をする。それに対して清美は「分かってる」と言う風に頷く。

円上に杭を等間隔で打ち、白くて細い綱を貼り結界とした。その結界の中心に翔也が立っている。

「では、お兄様。始めますね」

「あぁ。頼んだ。桜子」

翔也の様子を確認すると、桜子が小さく呪文を唱え印を描く。すると、結界の内側から空間が歪みナニカが翔也に向かって襲いかかる。

「……『私』が相手をしよう。気の済むまでぶつけてもらって結構。貴方方の住居は用意はしたがね」

翔也がそう言うと、翔也の中に居る存在がナニカの攻撃を弾き返す。そして翔也に憑いている存在が怒ったように、ナニカに向かって攻撃を仕掛ける。

ガキ!バキ!ビシ!とナニカが弾ける音が結界内に響く。

 

1時間は経っただろうか。音が弱くなっていく。

「ふぅ。気は済んだかな?では『私』に従ってもらう」

翔也がそう言うと用意した神の住居にナニカを押し込んだ。

「……貴女は良いのですか?『救う者』よ」

『……ありがとうございます。ようやく夫が自我を取り戻し、戻ってくれたみたいです。私は力を使い過ぎました。後は消えて無くなるのみ。夫をよろしくお願いしますね。その者に宿る『ーーー』よ』

「おっと。そうはいきませんよ。貴女も社に住んでもらうのですから。『天に在す力よ。我が言ノ葉に従いて、宿れ』」

桜子がそう唱え右手に目に見えないエネルギーを貯め、『救う者』に向かって放射する。

『……ありがとうございます。あなた方に感謝を。それでは少しの間引き込まさせてもらいます』

『救う者』がそう言うと、社に向かって行った。

場は鎮まり、どこか厳かな雰囲気をかも仕立てている。

「終わったな。ありがとう『私』よ。桜子もお疲れ様」

『私』はふっと優しい雰囲気を出して翔也の中に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談。

行方不明事件は見事鎮まり、解決した。

清美は報告書を書き上げ、上層部に提出した。上層部は説明要求をしてきたが、清美は「報告書に纏めましたので、そちらを読んで納得して下さい」と冷ややかに返した。

 

清美は署を出ると車に向かいつつスマホで翔也に電話をする。

「待たせたわね。今から迎えに行くから、桜子ちゃんと行きたい所決めておいて。私も2週間は(無理矢理)休みを取ったから。その間で良ければ何時でも協力するわ」

清美はそう言って通話を切る。空を眺めると絶好の観光日和の様に、よく晴れていた。

 

 

江戸窓翔也の怪異譚 第6話:神隠し(mysterious disappearance)終

 

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