江戸窓翔也の怪異譚   作:小説太郎DAZE

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【第7話:子取箱(kotoribako)】

とある伝承。子供を生贄にした"呪いの箱"。通称コトリバコ。呪いの対象は子供、女性。この呪いは生贄にされた子供の年齢や人数で呼び名が変わり、強さも変わる。一時期流行った都市伝説である。昔、とある部落が強い差別を受けていた。とある庄屋が物をその部落に対してかなりの高値で売っており、かなりの怨みを買っていた。強い差別を受けていた部落はその庄屋に復讐を果たすため、当時育てる事が出来ない子供を間引いてその子供達の血や指、臍の緒を複雑な寄木細工を作りその中を満たす事で"呪いの箱"を完成させた。そして、その箱を庄屋の庭に埋めて呪いをかけた。その埋めた日から女、子供が"内臓をねじ切れて"死んでいった。庄屋は不審に思い、差別をしている部落に問い詰めた。部落の人々は庄屋に対して、子孫が残らないよう呪いをかけた。解いて欲しければ差別を止めろと要求し、庄屋はそれを了承し、今までの事を詫びた。村人は庄屋の庭に埋めた"呪いの箱"を回収し、丁重に浄化の札を貼り、部落から離れた場所の地面に深く穴を掘り埋めこれを封印した。部落の人間はこの呪いの箱を家系を絶やす呪いから、女性と子供に影響する為"子取箱(コトリバコ)"と名付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーとある家の蔵から複雑怪奇な寄木細工の箱が発見された。箱か発見された家族は物珍しさから蔵から運び出し、家に持ち帰った。その日から女の人や子供か血を吐き出し倒れて病院に運ばれた。病院で検査した結果、"内臓に多大なダメージ"を負っていると言うことで緊急入院という事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーとある事務所にて。

「ふむり。それが件の"箱"か」

翔也は、机に置かれた"箱"に視線を落とす。依頼主の男性。翔也が向かい側に座っている『咲島 紀之(さきじま のりゆき)』に声を掛ける。

「えぇ。我が家の蔵で発見された箱です。この箱を家に持ち帰ってからその日の夜に、母や祖母。それに姉や妹がいきなり血を吐き出しました。慌てて病院に運び一命を取り留めました」

そう説明し咲島は溜め息を吐いた。

「……この箱は一体何なんでしょう?」

「ーーーコトリバコ」

翔也の隣に座っている女性がそう呟く。

「桜子。お前は大丈夫なのかい?」

「えぇ。大丈夫ですお兄様。この"コトリバコ"は"イッポウ"ですのでまだ呪力は低いです。そして、"未完成"なようです」

桜子は机に置かれた箱を見てそう言った。

「こ、コトリバコ?何ですかそれ?」

咲島は唾を飲み込み尋ねてきた。翔也は説明する。

「コトリバコとは家系を絶やす為、女性や子供を呪い殺すものとして、間引いた子供を生贄に使いその子供の血や指、臍の緒で箱を満たして完成させる呪いの箱だよ。犠牲になった子供の数や年齢によって呪いの強さが変わる。最大で"ハッカイ"と呼ばれる。ハッカイともなれば一瞬で即死するだろう。いや、コトリバコは本来、女性と子供にしか影響を与えないが、ハッカイまでいけば男にも影響し即死させるだろう。しかも、地面に埋めればもう人が住めない土地。"禁足地"にもなり得る」

本来は都市伝説として語られていたもの何だけどねと翔也は紅茶を飲み言った。

「このコトリバコは未完成であり、"オリジナル"の要素が入っているみたいなので死なずに済んだのでしょうね」

桜子は咲島に向かって言った。

「で、でも何でそんな物が蔵にあったんでしょうか?」

咲島は翔也達にそう尋ねた。

「ふむ。それは実際に足を運ばなければ分からないね」

「で、では我が家にいらして下さい。お願いします」

咲島は翔也にそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー咲島家

「ここが例の蔵か 」

「お兄様。この蔵には"呪いの残滓"が残っています」

翔也達が咲島家に到着し、コトリバコが発見された蔵を見ていた。

蔵の中は少しジメッとしていて薄暗く、埃っぽい。

「さて、咲島さん。このコトリバコがあったのはどこですか?」

翔也が右手でコトリバコを持っている。

「……その前にその箱を持っていても大丈夫なんですか?」

咲島が尋ねる。

「ん?問題は無いよ。この"コトリバコ"は未完成であり"オリジナル要素"が含まれている。それにコトリバコは封印しているから問題は無い。もう、このコトリバコは用をなさない」

「お兄様。呪いの気配からいって、あの奥の棚かと」

桜子は蔵の奥を指差し翔也に言う。

翔也と桜子は蔵の奥まで進む。そこには、コトリバコがあった形跡がある。

「桜子。この気配からコトリバコを作った作成者を探すことは可能かい?」

「……薄いですが、気配は残っていますので、追跡は可能ですが……お兄様。はっきりと言わさせて頂きます。このコトリバコは"少なくとも5年以内"に作成されています。つまり、現代でコトリバコを作成したという事は、100%外道です。どんな狂気を孕んでいるか分かりません」

桜子は翔也に向かって安易に危険人物に近づいて欲しくないと目で訴えていた。

「ふむ。桜子が心配してくれるのは嬉しい。しかし、僕は怪 異蒐集家だからね。こんな珍しい事象は蒐集しておきたいんだ」

「……分かりました。ただし、夢美さんも一緒に連れて行ってください。術の防御は私が担当して、物理面は夢美さんにお任せしたいと思います。この条件なら、このコトリバコを作った外道を追跡します」

それ以上は絶対に譲らないという意志が桜子から伝わってくる。

「ーーー分かったよ。今から夢美くんに連絡を取ろう」

翔也は胸ポケットからスマホを取り出し、夢美に連絡をする。

「ーーーーーお願いできるかい?あぁ。迎えに行くよ」

翔也はスマホの通話を切り、桜子に言った。

「協力してくれるらしい。今から夢美くんを迎えに行く。桜子は一応咲島さんと一緒にいてくれ」

「分かりました。コトリバコを作成してわざわざ咲島家を呪い殺そうとした人間が何かしてくるかもしれませんからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろですかね。先生が来るのは」

夢美は霊剣ムラクモを持ち立っていた。夢美の近くにタクシーが止まった。

「……すまないね。夢美くん」

タクシーの中から翔也が出てきた。

「いえ。問題ありませんよ。お話を聞いた所、"コトリバコ"が発見され被害も出ているご様子。その事件解決の協力はさせて頂きます」

「頼むね」

夢美は翔也と一緒にタクシーに乗り移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー咲島家。

「ここですか」

「そうだよ」

翔也と夢美はタクシーから降りる。

「お兄様おかえりなさい。夢美さんご無沙汰しております」

「桜子さんもお元気そうでなによりです。お話しは聞きました。私が物理的に守り、術的守りは桜子さんが。まぁ、あまり心配はしてませんけどね。先生の中に"いる"存在が先生を傷付けるなんて許しはしないでしょうから」

「確かにそうですが、極力お兄様が力を使うことの無いようにしたいのです。お兄様の中に"いる"存在はお兄様以外は興味を示しません。しかし、お兄様が危険に陥れば問答無用で危険要素を排除される事でしょう。大きい力を使えば使うだけ、お兄様は"ムコウ"の存在に近づいてしまいます。怪異を蒐集するだけの力なら問題は無いのですから」

「……そうならない為にも、私も協力致しますよ」

夢美と櫻子は真剣な表情で見つめ合い握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、箱の作成者の痕跡を辿ります。『陽なる力、天照大神の名において命ず。用意されし型に宿りて、我が式として力を貸せ』」

桜子が机の上に用意した人型の紙に手をかざし、呪文を唱える。すると、人型の紙が淡いオレンジ色に光り、宙を舞う。

「……用意は出来ました。それではこれより追跡を開始します」

桜子が人型の紙に『行け』と命じると、人型の紙は空を走る勢いで飛んでいく。

「……あ、あの……追い掛けなくても良いんですか?」

咲島がそう言った。

「あぁ。別に問題はありません。あの人型の位置は自動的に私が把握できますので。コトリバコを作成した者の元に辿り着けばあとは転移術式でその場に移動すればいいだけですので」

桜子はなんでもない事のように説明した。転移など普通は出来ない。それこそ創作、ファンタジーの世界だ。しかし、桜子は『天才 』である。空間座標を認識する事により、位置を把握。そうしたらその座標に、今存在している空間座標とリンクさせ、座標を繋げる。そうする事で転移を可能とする術式を創り出した。

「しかし、コトリバコを本当に作る者がいるとは……咲島さん。心当たりはあるのかい?」

翔也は咲島にそう尋ねる。

「……そんなの心当たりなんてありませんよ。そもそも、コトリバコの存在すら知らなかったのですから。しかし、コトリバコの呪いの条件とは何なんですか?」

「何もコトリバコは中身を用意する以外に然程難しくは無いんだ。要は形が重要でね。中身を満たせる形ならどんな形でもいいんだよ。ただ、安定した形が立方体であるだけでね。都市伝説の様に何も複雑な寄木細工でも無くていいんだよ。さて、コトリバコの呪いの条件だったね。事務所でも話した通り、コトリバコには呪いの強さがあってね、それに応じて必要な中身を用意する事が難しくなるんだ。イッポウ、ニホウなら触らなければ呪いの効果はあまりない。サンポウから視界に収めるだけでも呪いは発動する。呪いの効果は説明した通り、子供と女性に効果を発揮する。ハッポウだったら最悪だ。その日のうちに一族は全滅するだろうね。このコトリバコは作成者には効果は発揮されない。そもそも、男が作るからね。そして、呪いの正体は、言わずもがな……生贄にされた子供達の怨念だよ」

翔也はそう説明した。

「で、では我が家にあったコトリバコは……」

「イッポウですよ。まぁ、オリジナルの作法と言うか要素が使われていましたが……そのお陰か箱は未完成であり、中途半端な呪いを発動したのですが……言葉は悪いですが、そのおかげで死者が出なかったんです。普通のコトリバコならイッポウでも触ってしまえば死にますからね。コトリバコの怖い所は、その呪いの強さと"解呪"出来ない呪いなんですよ」

桜子は補足説明を入れる。

「……そうだったんですね」

咲島は下唇を強く噛む。普通は呪いなどと非科学的なものなど信じず、また関わり合う事などないと考える。しかもコトリバコなど特別な呪物に関わる事なんて絶対にない。そもそも、現代でコトリバコなど作成される方がおかしい事なのだから。

「……お兄様。作成者を発見しました。どう致しますか?」

桜子は閉じていた瞼を開け、翔也に視線を合わせる。

「ふむ。それでは作成者に会いに行こうか」

翔也はそう言うと、立ち上がる。夢美と桜子も同じように立ち上がった。

「……あ、あの!俺も着いてっても良いですか!?こんな物を俺の、俺たち家族の蔵に置いた人物を知りたいんです!」

「……良いだろう。君は知る資格があるしね。今回の報酬は"無し"でいい。桜子、苦労をかけるが彼もよろしく頼むよ」

「分かりました。お兄様の望むままに」

そう言うと桜子は転移術式を発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー??

あぁ。今頃あいつの家族は大変だろうな。く、くくく!お前が俺に与えた傷のお返しだ!せいぜい苦しめ!目の前で自分の家族が死ぬのを見て絶望しろ!

"俺"はとある屋敷の広間にいる。箱が発見されたのは生霊を通して分かった。だから俺は満足して意識を元に戻したんだ。あいつは俺の好きな人を奪ったんだ!当然の報いだ!箱の作り方はネットの都市伝説で知った。本当の箱の中身は子供の血液や指だが、用意するのには無理があった。だから、猫や犬で代用して、"俺"自身の血と怨みを込めた。効果があるかは自信が無かったが、無事発動して良かった。

「くくく!はははは!!これで、これであいつは彼女に構ってる暇はないだろう!その間に俺が奪ってやる!」

「……ちっ。本当に外道ですね。貴方みたいな人間を好きになる女性なんていませんよ」

「!?だ、誰だ!!」

俺は凄く気分が良かったのに、酷く水を刺された気分になった。

声のした方を振り向くと、複数人の人影が見えた。

「は?な、なんで?誰だよお前ら?そ、それになんでお前がここにいるんだよ!!!」

俺は大声で叫ぶ。そこには知らない人間が3人と怨みの対象のあいつがいた。

「さて、咲島さん。この人に見に覚えはあるかい?」

「……お前、同じ学部の鹿島か。お前が…お前がコトリバコを置いた張本人か!!」

あいつ、咲島は俺に向かって襲い出そうとするが、"胡散臭い"男に止められる。

「君が犯罪を犯す必要はないよ。鹿島といったかな?君は何故、コトリバコを彼の家に置いたんだ?」

「お、俺の好きな人をそいつが奪ったんだ!彼女を言葉巧みに騙して俺との仲を邪魔した!だから、箱を作って、蔵の鍵を壊して箱を置いたんだよ!」

「……お前何言ってんだ?俺は彼女に相談されてたんだ。ストーカー被害にあってて困ってるって。お前だったんだな。彼女をストーカーしてたのは」

「は?ストーカー?お前こそ何言ってんだよ!俺と彼女の仲は良好だった!それなのにお前が彼女を騙して奪ったんだろ!!」

俺はそう叫ぶ。

「……お前頭おかしいよ。彼女は確かにお前と話しはしてたけど、少し一線を引いていた。彼女は薄々お前がストーカーだと感じてたみたいだが、確証は持てて無かったし、俺も証拠はないから何も出来なかったけど……それに彼女は元々俺の事を気にしてくれてたらしく、相談に乗っているうちに告白されたんだ。俺も気になってたし、告白を受け入れた。お前の言っている様な事は一切ない!全部お前の都合の良い妄想だよ!逆恨みも甚だしい!お前のせいで俺の家族は重症を負った。幸い死にはしなかったが」

「は?死んでない?どうして?どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は狂った様に頭を掻きむしりながら叫んでいる。

その姿に夢美くんも桜子もドン引きしていた。かなりの嫌悪感を感じているみたいだ。早々に終わらせた方が良さそうだ。

「……君はこれから報いを受ける。人を呪わば穴二つ。このコトリバコの呪いを今から君に返す。『私』よ。今回の怪異は"蒐集"不可能だ事象として記録は残すが『私』に喰わせる事は出来ない。申し訳ないが、呪いを返すだけにしておくれ」

僕の中に"いる"『私』が気にしなくて良い。むしろ喰いたくないから丁度いいと言っているようだった。その瞬間、僕が持っているコトリバコが黒いモヤを出し始めある程度塊を作ると、鹿島に向かっていった。

「は?な、なんだよ!これ!……ぐっ!い、痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!イ``ダイ``!!!!!」

彼は苦しみ出し、叫ぶ。自分が作った呪いを返され血を吐き出し苦悶の表情を浮かべている。

「ーーーさて、このままにしておくと彼は死んでしまう。自業自得だが、死なすのは不味い。もう、彼は今までの生活は出来なくなるだろう。君の家族は時間はかかるが、無事回復するように桜子に祝詞を唱えてもらう。これで手打ちにしてくれないか?」

「……納得は出来ませんが、俺にはどうしようもありません」

「桜子。座標が分かっているのならここの住所も知っているよね?救急車を呼んでもらえないかい?呼んだ時点で桜子にはまた転移してもらう」

「分かりました。結果、夢美さんに来てもらった意味は無くなってしまいましたが、私が心配し過ぎたようです。夢美さん申し訳ありません」

桜子は申し訳なさそうに夢美に頭を下げた。

「気にしないで下さい」

夢美も桜子の謝罪を受け入れ、桜子に頭をあげさせる。

「さて、帰ろうか」

僕がそう言うと、桜子は救急車を呼んだ跡、転移術式を発動して僕たちはその場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー後日談。

「今回の件は、収穫は無かったが、珍しい事象を記録できた。コトリバコも手元に置けたし良しとしよう」

「でも、お兄様。今回の件は非常にレアなケースでしたね。本来ならこのコトリバコは"本物のコトリバコ"の呪いを発動しないはず。なのに、同じような呪いの効果を発揮しました。余程彼の念が強く込められ、小動物の犠牲もかなりのものでしたし、呪いの指向性が本物のコトリバコに似た効力を持ったのでしょうね」

「そうだね。しかし、このコトリバコは都市伝説に登場する精巧な寄木細工が行われている。この技術はどこから得たのか」

「彼、鹿島の家はそれなりに裕福なようです。なので、箱の形だけ職人に作らせ、中身を満たした後に蓋だけ閉じれるようにしたのでしょう」

桜子は紅茶を飲みながらそう補足した。

翔也は手元に残ったコトリバコを棚に置き今回の件を纏めた資料をファイルに入れ保管した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー子取箱(kotoribako)終

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