小説の林堂 二次創作 小説「ソードアート・オンライン この現実世界にて」 作:イバ・ヨシアキ
皆様お久しぶりでございます。
イバ・ヨシアキです。
今年も終わりが近づいてきました。
特に今年を振り返り思い出すことと言えば、やはり「ソードアート・オンラインⅡ」でしたね。
シノンさんの登場に、ユウキの登場。
特に最終回。
泣けました。
泣きました。
ユウキの最後のところを「一番の宝物 ~Yui final ver.~」で、聞くとマジに泣けます。
そんな思いで書かせていただきました。
せめてユウキは生まれ変わって和人と明日奈の娘になってほしいですね。
そんな思いで書いた小説です。
では、どうぞ。
金曜の午後。
冬の夕暮れ時の澄んだ赤い陽射しが差し込む中で、
「ねえ、優治緒にいちゃん。おとうさんとおかあさんと、ユイおねえちゃんのクリスマスプレゼント何をあげるの?」
「秘密。木綿季は何をあげるんだ?」
「ボクはね……って、兄ちゃんが言わないのにボクが言ったらダメじゃん!」
「……木綿季、女の子は私だろ。気を付けないと駄目だぞ」
「ふん、私ってなんか変だから嫌だもん。ボクって言った方がしっくり来るからこっちがいいの!」
「でも木綿季って、こないだの結城のおばあちゃんやおじいちゃんの前では、ちゃんと「私」って言っているよな」
「むぅー、すぐに優治緒にいちゃんはあげあしをとるんだからっ!」
「ほら、喋ってばっかりいないで、ちゃんと飾りつけしなきゃだめだぞ」
「あ、綿は私が付けるんだから、駄目ぇ!」
「ほら、じゃあ早くつけろよ」
12月の始め頃。
ここ桐ケ谷家にもクリスマスの雰囲気が近づいていた。
桐ケ谷家の長男である優治緒と次女である木綿季は、桐ケ谷家のリビングにてクリスマス・ツリーに飾りつけをしていた。
世間では11月の終わりにハロウィンを楽しみ、そのままクリスマスの楽しい雰囲気へとなだれ込み、そのままお正月と行くのが、近ごろの日本人の年末の構図だったりする。
無論、桐ケ谷家もその時流に乗り、ハロウィンが終わり、次はクリスマスと準備に大忙しだった。
桐ケ谷家をクリスマス一色に染めるのは、次女の木綿季と長男の優治緒と長女の優衣の共同作業であり、仕事で忙しい両親を驚かす毎年恒例のサプライズにもなっていた。
両親──桐ケ谷和人と桐ケ谷明日奈はクリスマスから正月の仕事始めの5日まで、しっかりと有休をとってくれる。
科学者である桐ケ谷和人は学会や研究など忙しくてもなるだけ家族との時間を増やすために、日々しっかりとスケジュールを調整し、たとえどんなに遅くなろうとも家に帰り、深夜に帰っても自分の息子と娘の寝顔を見て、朝には必ず見送りをするなど、父親として立派な存在だった。
休みの日は家で一般家庭にありきたりな、座布団を折り曲げ、ビール片手にテレビ前ではゴロゴロとはしようとはせずに、予定を立てて家族と出かけ、木綿季と優治緒と一緒にキャッチボールをしたり、サッカーをしたり、それを見て明日奈や優衣が楽しみ、時には近くのショッピング・モールに行き、買い物を手伝い、一緒に食事をするなど、理想的な家族の休日の過ごし方をしていた。
また連休には必ず遠出をするなど、その家族サービス精神には余念はない。
無論、明日奈との時間もしっかりと取り、夫婦仲は今も新婚と変わらず良好だったりする。
周囲からは「万年新婚夫妻」、「良妻良夫の見本」と言われているのも知らずに、すこぶる程仲が良かった。
まして喧嘩することなどなく、夫婦の営みもしっかりといまだに健在であった。
和人もすでに20を半ばに迎えた頃ではあるが、体格も体型もしっかりとしており、普通なら社会にもまれて、不摂生の日々によって下腹などではじめる年頃ではあるが、そんな事とは無縁であり、いまだに他の女性の気を引くほどの美形だった。
寧ろ、歳相応の大人の貫録も出始め、近所の奥様方や木綿季と優治緒、優衣の通う学校の女性教諭や、和人の仕事場の女性職員などからも人気は高かったが、浮気をすると言った下世話な浮ついた話はなく、それに妬んだ女性がらみのドロドロとした悪評もなく、善意の科学者の見本と言えるような人物であり、現にノーベル賞を受賞してからも、おごることなく、家族に愛情を向けている好人物であった。
そして妻の桐ケ谷明日奈。
良妻を絵にかいたような人物であり、桐ケ谷和人の助手を務め、和人の傍で研究を助ける文字通りの生涯のパートナーとなっていた。
朝に子どもを夫と共に交代で送り迎えし、子どもたちのお弁当をいつも3人分手作りし、夫と自分のおそろいの弁当を作るなど、その桐ケ谷夫人の良妻ぶりはすさまじく、家事も手は抜かずに、夫と協力をしながら家事や仕事などをそつなくこなし、倦怠期と言うものはおよそこの夫婦には無縁のものだった。
また、研究所でも夫婦仲睦まじく、研究所では桐ケ谷夫妻を見ればコーヒーと抹茶が甘くなると言われるほどに、その夫婦仲は堅固で、寝取ろうと、浮気しようと悪意を持つ者のやる気を失わせ、他人が入り込む余裕などはなく、またそんなことをしようとしていた人物の矮小さと自己嫌悪感を湧き立たせるほどに、二人の仲はいまだに健在だった。
明日奈の美貌も歳を重ねるごとに美しくなり、崩れることはなかった。
子どもを二人生んでいても、皮のたるみなどもなく、肌も若く、10代の肌の若さはいまだに健在で、他の奥様方から、あこがれの的で見られていた。
「家の女房が明日奈さんだったらなぁ」
と、嘆く旦那さんの声もあれば、
「家の人が和人さんだったら……」
と、嘆く声があるほどに、まさに理想の夫婦であった。
そんな夫婦の元で育つ、木綿季、優治緒、優衣が拗れることはなく、健やかに理想の子どもとして育っていた。
小学生になり、家の事は両親にまかせっきりにしてはいけないと、家でできることは自分でやると、桐ケ谷家の家訓として出来上がり、長女の優衣を筆頭に、木綿季と優治緒が続くように家事や掃除に手伝いなど、両親の負担軽減に努めていた。
子どもながらに無条件に時間も忘れて遊びたい年頃ではあるが、そこはシフトみたく調整し、時に学校行事で決められた仕事ができないときは決して責めずに、しょうがないなと助け合う立派な兄妹愛に支えられていた。
寧ろ木綿季は、
「おにいちゃんにカリを作りたくないもん!」
と、自分の事は自分でやり、兄が手伝ってくれた時も、頬を膨らましながら、
「……ありがとう……優治緒おにいちゃん」
と、両親と優衣の笑顔の笑顔あふれる場面があるくらい、木綿季は健やかに育っていた。
木綿季は明日奈の容姿も持って生まれた黒髪の少女で、かつて明日奈に勇気を与えてくれた親友の名前をもらい、成長する中でかつて悲運に見舞われてしまった彼女が生まれ変わったかのように、木綿季は成長していった。
少しわんぱくなところもあり、男子顔負けにサッカーや野球などをたしなみ、元気に育っていた。また天性の負けず嫌いで、今の目標は兄に勝つと決めているぐらいに、優治緒にライバル心を抱いていた。
勉強も兄に負けないように頑張り、両親の手伝いなども競い合うように頑張り、その猛烈なライバル心を巧みに兄に操られている事とは気づかずに、木綿季は健やかに育っていた。
また優治緒も健やかに育っていた。
木綿季の兄としてしっかりとしなきゃいけないと、また立派な両親に恥じないように頑張らなきゃいけないと、どこか気負うような雰囲気も最初の頃にはあったが、優しい優衣の存在や奔放な木綿季の存在に触れ、歳相応の子どもとして成長していたが、どこか浮世離れしていたその雰囲気と、父親みたく物静かさの容姿を持ち、小学生ながらにファンクラブがあるくらいに小学校では有名人だった。
しかし、その二人を群を抜いて有名だったのが、長女の優衣だった。
優衣は憧れのお姉さんとして近所でも有名で、小学生ながらにその存在はしっかりとしていたものだった。
黒髪のお嬢様と慕われるほど、礼儀作法などしっかりし、浮世離れした物腰など、一部からは「優衣さま」と、尊敬の念を抱かれるほど、その存在は憧れの人として小学生ながら、男女高学年を問わずに多くの信奉者に信者をと作っていた。
今は亡き大和撫子を鋪沸させる桐ケ谷明日奈の長女として、その大和撫子の精神と物仕草はみごと娘として受け継いでいる優衣。
その長女の元で、桐ケ谷夫妻の愛情にもとに分け隔てなく、共に育った木綿季と優治緒が、素直に健やかに育たないわけはなく、木綿季は学業優秀、健康優良児として育ち、優治緒は学ぶことを楽しむ学業優秀、品行方正な少年として育ち、親が望む理想の子として日々成長していた。
そんな素直な桐ケ谷家の三人の子ども達は、12月になれば毎年ながらに家のクリスマスの模様替えに師走の大掃除を行い、無事に年末を過ごせるようにとするのが、いつしか桐ケ谷家の伝統となっていた。
現在、桐ケ谷家の食の中心となってるこのリビングにて、クリスマスの模様替えをしている木綿季、優治緒の二人。
クリスマス・ツリーを綺麗に飾りつけ、モミの木にサンタクロースのぬいぐるみに、トナカイのぬいぐるみ、真っ赤な靴下に小さな銀色の星々と、クリスマスに忘れてはいけない必需品をいそいそと楽しく樅ノ木の枝に引っかけていく。
綿を雪に見立て引き伸ばし、モミの木のクリスマスの色を深めていく。
そんな中で、先程の木綿季の質問と小さな喧嘩の後、兄の起点を生かした優治緒の再開によって飾りつけはさらに進み、大方の飾りつけは終わった。
「よし、できた♪ うん、上出来♪ 上出来♪」
微笑む木綿季は満足そうにそう言い、
「あとは、父さんと母さんが帰ってきて、星を付けてもらったら完成だな」
「うーん、楽しみ♪ おとうさんとおかあさん早く帰ってこないかな」
「今日はなるだけ早く帰ってくるみたいだけど、研究も大詰めみたいだし、遅くなるかもしれないな」
「もう!」
今の優治緒の何気ないつぶやきに、
「優治緒おにいちゃんは、どうしてそういうこと言うのかな! せっかくの楽しい雰囲気が台無しだよ!」
「別に雰囲気が壊れてしまうようなことじゃないだろ。遅くなるかもしれないって言っただけじゃん」
「むぅう、それが嫌なの!」
プリプリと怒り出す木綿季。
そんな中、
「ただいま」
「あ、優衣お姉ちゃんだ。おかえりー」
と、玄関に真っ先に走り出す木綿季を見て、優治緒は脳裏に何故か子犬を思い浮かべてしまう。
まあ、犬っぽいよなと、思いながら長女である優衣を迎えるために玄関へと向かう。
「おかえりー、優衣お姉ちゃん。重くない。ボク持つよ!」
「ありがとう木綿季ちゃん」
下校途中スーパーで買い物をした手提げ鞄を手渡し、重たそうにしながらも、それを台所へと運んでいこうとするのが、木綿季のいじらしさだったりするのだが、小学校に入りたての子には重たくよたよたと重たそうに運ぼうとすると、
「ほら、俺も持つよ」
と、優治緒が持ち手の半分を持ち、木綿季を助ける。
「いいよ。一人で持てるもん」
「二人でした方が早いだろ」
「むぅう」
「ありがとう、優治緒ちゃん。ほら、木綿季ちゃんもお礼を言わなきゃいけませんよ」
ぽんと、優衣に頭を撫でられて、
「あ、ありがとう……優治緒おにいちゃん」
「どういたしまして」
「さあ、二人ともリビングに行きましょう。飾りつけどうですか?」
「うん、後はお父さんとお母さんが帰ってきて、お星さまをつけたら完成だよ♪」
木綿季が真っ先に言い、
「今日はお父さんとお母さんは遅くなるのかな?」
優治緒が心配そうに優衣に尋ねると、
「先程、お父さんとお母さんから電話がありましたよ。今日は夕食前に帰れそうです。夕食前にクリスマス・ツリーのお披露目ができるかもしれませんね」
「わーい。たのしみだなー、はやくみたいなー」
楽しそうに弾む木綿季に、
「本当に子どもだな」
と、独り言ちる優治緒。
「ん、おにいちゃん。何か言った?」
「んん、全然。あ、お姉ちゃん。これどこに置いとけばいい?」
「テーブルに置いておいてくれますか。着替えたらすぐにリビングに行きますから」
「はぁーい!」
元気な声で木綿季がリビングへと急ぎ、
「あ、待てよ。廊下は走っちゃ駄目だろ!」
優治緒が慌てて後を追いかける。
そんな二人を見て、
「本当に仲のいい二人ですね」
と、優衣はどこか満足そうにしながら微笑んだ。
そして優衣の着替えを終えてリビングにやってくると、
「わぁー、すごくきれいに飾り付けましたね。二人とも」
心からの感想をそう述べると、
「ふふ、すごいでしょ♪」
「木綿季一人で飾りつけしたわけじゃないだろ……」
台所のテーブルに優衣が買ってきた夕食の材料を並べながら呟くと、
「あ、ここは優治緒おにいちゃんがしたんだよ」
「すごく綺麗に飾り付けてますね。さすがはお兄ちゃんですね♪」
褒めてくれる優衣の言葉に、
「あ、ありがとう。優衣お姉ちゃん」
照れている優治緒に、
「あ、おにいちゃん照れてるの」
「て、照れてなんかいないよ。へ、変なことを言うなよ木綿季!」
「照れてるじゃん。お兄ちゃんの照れ屋さん」
「お、お前どこでそんな言葉を覚えてくるんだよ!」
「はい、では今から夕食を作りましょう。二人ともお手伝いをお願いしていいですか」
「うん、手、洗ってくるね♪」
と、木綿季は洗面台へと向かい、
「あ、待てよ」
「えへへ、優次緒おにいちゃん遅いよ」
「な! 遅くないからな! 待てよ木綿季!」
あとを追いかける優次緒。そんな二人を見て微笑む優衣は、調理の準備を始めた。
今日は自分の母親──明日奈に手解きを受けた自慢の料理ビーフ・シチューを作る日でもある。
クリスマスの準備ができた日。
その日は決まってビーフ・シチューを三人で作り、両親を迎える。
それが桐ケ谷家の決まりもでもあった。
優衣は沢山ある桐ケ谷家の記念日の中でも、この日を一番気に入っていた。
幼稚園を卒園し、小学校に上がり、昔に比べて、できる事も増えていった二人の成長をまじかに感じられる12月の末。
こうして一年が経つのだと、どこかさみしい雰囲気があっても、置いていかれるよりも喜びとして受け止めることができた。
これからたくさんの事を一緒にできたらなと、一人微笑む優衣の中、
「優衣おねえちゃん手を洗ったよ!」
「お待たせ! ほら木綿季エプロン! 忘れているぞ!」
「さあ、お料理始めましょうか」
こうしては三人は両親が迎えるためにビーフ・シチューを作り始める。ニンジンを斬り、ジャガイモを剝き、そして切り刻み、鍋にぽちゃぽちゃと具材を入れていき、明日奈秘伝のレシピを施して、味を調えていく。
「優衣おねえちゃんってホント料理上手だよね」
「ふふ、ありがとうございます」
小皿に味見をしている木綿季の無邪気な感想に、微笑む優衣。
優次緒はテーブルに皿とパンを並べていた。
その中で、
「ボクもおいしい料理作れるかな? お母さんみたいなおいしい料理、大好きな人の為に作れるようになると思う?」
木綿季の質問に優衣は、
「大丈夫。木綿季ちゃんはお母さんとお父さんの子ですから、おいしい料理を作ることができますよ」
「でも、ちゃんと料理の勉強もしなきゃだめだぞ」
テーブルの準備を終えて戻ってきた優次緒の言葉に、
「むう、ちゃんとやるもん! そしてお母さんみたいな人になるもん!」
「木綿季には難しいかも」
「そんなことないもん」
はしゃぐ二人を見て、優衣は思った。
いつか母──明日奈みたく綺麗な女性になり、同じ髪形をして、父──和人と同じ人と出会う日が来るのかと、その日がどこか待ち遠しく、そして少し寂しくも思うも、それが生きる事なんだと優衣は素直にその気持ちを受け入れた。
そして、
「ただいま」
「遅くなってごめんね。みんな」
玄関から響く父と母の声に、
「あ、ママ、パパおかえりー」
「あ、待てよ。木綿季」
玄関に向かって走り出す木綿季とそれを追いかける優次緒の後を追うように、
「おかえりなさい。お父さん。お母さん」
優衣は、玄関へと向かった。
END
いかがでしたか?
今年の年末に何とか完成させることができました。もっと色々と仕込んでみたかったのですが、また機会があれば修正をしていきたいですね。
本当はクリスマスでサチ関連の小説で書きたかったのですが、アニメのユウキを見て、やはり幸せになってほしいとの思いで書きました。
ユウキは明日奈の妹みたいなポジションですが、小生は和人と明日奈の娘として見ております。
特にエンディングのユイと一緒に勉強してうなだれている姿。
……最高です。
今後の企画としては、原作未来編としてキリアスを書いていこうかなと悩んでおります。
結婚して、出産して、家族として生きていくキリアス。
とりあえず、今はまだ描けていない作品も多いので頑張ってきたいです。
来年もお付き合いくださいませ。
では、良いお年を。