小説の林堂 二次創作 小説「ソードアート・オンライン この現実世界にて」   作:イバ・ヨシアキ

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 おはようございます。

 イバ・ヨシアキです。

 えー、色々と申し訳ありません。

 3日遅れで更新しました。

 本当に申し訳ありません。

 この謝罪文も毎度ながらになってしまいましたね。

 本当に色々と改善しなければ。


 桐ケ谷明日奈の幸福。

 

 朝。

 桐ケ谷家で最初に早起きするのは桐ケ谷明日奈と桐ケ谷優衣の二人だった。和人が目覚め間に二人で朝食を準備するのが明日奈と優衣の役目だったが、最近新しいお手伝いが増えたのが、少しの変化の始まりだった。

「優衣ちゃん、コーヒーの準備してくれるかな?」

「はいです」

 学生服に身を包み、黒髪を後ろで結んだ特徴的な、かつての母親譲りの髪形を見せる、桐ケ谷家の長女優衣が、昔と今も変わらない挨拶を返した。

 

 ──そんな娘も、もう高校生なんだと、どこか感慨深いものが湧き上がってくる。。

 木綿季ちゃんも、優治緒ちゃんも、もう中学生と、年月の速さに我ながらに驚いてしまう。

 和人君と結婚し、子どもを産み、母親になった後、和人君の研究を一緒にしていく中で、優衣ちゃんは、二人の実の姉として健やかに育ってくれていた。

 電子の世界から現実の世界で生きることを選んだくれたあの日、優衣ちゃんのその決断を、決して後悔させないようにと決め、母親として精一杯に生きてきた。

 今こうして、優衣ちゃんがかつての私と同じ年齢を迎えているのだと思うと、何故か感慨ぶないものが出てしまう。

 あの頃、私はあのゲームから帰還し、新しい生活を和人君と共に迎え、沢山の出会いと沢山の経験を和人君と一緒に乗り越え、学校を卒業し、大学生活を共に過ごし、彼が科学者になり、私はその助手となった。

 和人君はノーベル賞を取り、世界的にも有名な科学者へと成長し、多くの発明と研究成果を残し、世界の発展に協力している。

 そんな素敵な旦那様の奥さんをできるのはすごく名誉な事で、私を好きになってくれた和人君の運命を、あのゲームと共にあったことを、今あらためて思うと、すごくうれしい事だけど、少し怖い気もした。

 もしあの日、あのナーブギアを被らなければ、私はこうして和人君と過ごし、あの子達のお母さんになることはできなかったのかもしれないと、不安が沸くことがあるけど、もしあのナーブギアを被らなくても、私はきっと和人君と会い、結ばれることが出来るのだと、前向きに思うようになっていた。

 ううん、きっとそうなっていた筈。

 和人君と私は深くつながっている。

 優衣ちゃんも、木綿季ちゃんも、優治緒ちゃんも、そして──

「おはよう、おかあさん、おねえちゃん」

 沙知ちゃんもきっと私と和人君の娘として生まれてくれる運命があったはずだから。

「おはよう、沙知ちゃん」

「おかあさん、新聞とってきたよ」

 ととと、走り、新聞を手渡してくれる沙知に明日奈は笑顔で、

「ありがとう、沙知ちゃん」

 肩で切りそろえた髪を揺らし、微笑む沙知に明日奈は同じような笑顔を返した。

 桐ケ谷沙知。

 桐ケ谷家の四女で、優衣、木綿季ちゃん優治緒ちゃんの妹。

 

 ──丁度、優衣が中学を卒業し、木綿季ちゃん優治緒ちゃんの二人が小学生高学年となった頃に、明日奈は二度目の妊娠をした。

 その時に生まれた子は沙知と名付けられ、かつて和人が助けられなかった人の名前を授かった娘だった。

 恋か、それとももっと特別な想いがあったかもしれない、和人の助けられなかった、女性の名前。

 その人の名前をあの娘は受け継いでいる。

 あの世界で、和人は癒えない傷を負ってしまった。

 和人を受け入れてくれたギルド──月夜の黒猫団。

 小さなギルドながらも暖かく一人ぼっちだった和人を受け入れ、仲間として受け入れてくれたかけがいのないギルド。

 明日奈もあの時、攻略に現実世界の帰還にと、ただ自分の事に躍起になり、大手の攻略ギルド血盟騎士団に入団し、より良い攻略を模索する為に、毎日を過ごしていた。

 和人とキリトと離れ、時折どうしているだろうと心配をしている自分の想いを、あの時もっとなんで早くに気づいてあげられなかったんだろう。

 

 ──一層の頃から、私は和人君……キリト君に特別な想いがあったのに、なんでその想いが恋だったなんて気づけなかったんだろう。

 一緒にいるとすごく安心できるし、初めて頼れる人だって思っていた筈なのに、私は何でそれが恋心だと気づけなかったんだろう。

 気づいていたのなら、私はずっと和人君の傍にいてあげられたのに。

 私は彼の傍にいてはあげられなかった。

 心が温もりを求めていた時に、傍にいて上げなきゃいけなかったときに、私は自分の事に精一杯だった。

 和人君は自分の素性を隠して月夜の黒猫団に入団し、仲間達と一緒にレベル上げ、攻略組になる為に協力していた和人君のその時の想いは、きっと誰かと一緒に過ごしたい渇望を満たしていたのだろう。

 でも、月夜の黒猫団は和人君から失われてしまう。

 迷宮内のトラップに引っかかり、高レベルのMod相手に次から次へと砕け散ってしまう仲間達をただかすめるように見つめることしかできなかったあの時の和人君の心の痛みは、私なら是隊に耐えることのできない痛みなのだろう。

 その失われていくパーティーメンバーの中に、サチと呼ばれた女性プレイヤーがいた。

 あの浮遊城の世界に怯え、理不尽な死を恐れ、怖い気持ちを押さえ、必死にあの世界で生きようとしていた女性。

 私と同じ思いを抱いていたなんてと、そしてキリト君の傍に居れたんだと、その人をうらやましく思う反面、その人は和人君の事をどう思っていたのかなと、もう知る事のできないその日との想いに妬いてしまった自分がいた。

 なんでこんなに気持ちを妬いてしまうんだろうと、和人君とサチさんの二人の中に焼いてしまう私がいた。

 サチさんは、和人君の事をどう思っていたのかな?

 もしサチさんが死なずに、一緒に帰還していたのなら、私は和人君の恋人になり、そして優衣ちゃんと木綿季ちゃん、優治緒ちゃんのお母さんに成れなかったのかなと、不安に駆られてしまう事があったけど、サチさんがいてくれたおかげで、和人君は救われたのだ。

 そう、クリスマスの日。

 和人君は死んでしまったプレイヤーを生き返らせることのできるレアアイテムを求め、ひたすらにレベル上げに憑りつかれるように戦っていたと、私もあの時噂で聞いていた。

 でもそれが、失われてしまった人を助ける為の、自棄に走った行為だったなんて、私は何であの時気づいてあげられなかったんだろう。

 和人君からその話を聴いた時、その話を聴くまで、私は何も知らないまま、キリト君は強い人だと思いきっていた。

 でも和人君は傷つき、最後の望みのアイテムも望みのものではなく、ただ落胆のまま、和人君は打ちしがれていた時、その心を助けてくれたのは、サチさんの最後のメッセージだった。

 そのメッセージがなければ、和人君はどうなっていたんだろう。

 サチさんは、和人君を助けてくれたんだ。

 死んでも、和人君の事を思ってくれた、その優しさに私は追い付けているのかな。

 私と和人君の再び出会わせてくれて、そして生き抜くことを教えてくれた大切な人だから、私はその名前を持った人になってほしいと思い、あの子に沙知と名付けた。

 和人君もきっとこの子も強くなれるよと、微笑みながらあの子の名前を沙知と呼んだ時、ようやくにして、サチさんもこの世界に帰ってきたんだと、私はその微笑みを見てそう思えた。

 沢山の出来事の積み重ねで、私は今をこうして生きている。

 和人君に触れ、そしてその孤独を埋め、一緒に日々を過ごしていたサチさんのような強さが私にも欲しかった。

 いつか私と和人君がこの世界から去るとき、またこの世界に戻りたいと願いながら永く眠る日が来る。

 その時、その想いを残す方法があれば、きっとまた同じように帰って来られる筈。

 だから私と和人君はあの子に、あの子達に、失われてしまった人の名前を受け継いでもらった。

 

 木綿季──難病にも絶望しないで、必死に現実に立ち向かい生き抜いたあの強さをちゃんと受け継いでくれるようにと。

 

 優治緒──苦難に屈することなく、友達の為に、親友の為に、何かをしてあげられる人になってほしいと、その気高き遺志を受け継いでほしいと。

 

 沙知──精一杯の優しさをもって、誰かにその優しさを残し、誰かを守りたい止まらせたいと想いを抱くことのできるその優しさを受け継いでほしいと。

 

 その想いで名前を自分の子どもに受け継いでもらった。

 日に日に大きくなるあの子たちを見ている、その名前を受け継いだ子に育ってくれていると実感できる。

 戻ってきてくれたんだと、今あの子達を見てそう思える。

 きっと沢山の冒険をして、沢山の思い出を作ってきて、旅だった世界を去り、再びこの世界に戻ってきてくれた、私と和人君の大切な人達。

 

 ……私も、いつかこの世界に戻って来られるのかな……

 

 和人君と私がこの世界を去り、別の世界に生まれ変わった時、そこでたくさん生きて、沢山の思い出を作って、その世界を去る日が来て、またこの世界に戻れるのかな?

 

 でも、もし別の世界に生まれ変わったら、私は……また和人君と一緒になりたいな……

 

 次の出会いはどうなるだろう?

 幼馴染になりたいな、それで一緒に人生を過ごしていけるなら、どんなに幸せな事なんだろう。

 この子達も、きっと大切な人と巡り合えてほしいな……

 

 そんな愛しき子供たちのこれからの出会いを想像しながら明日奈は、

「沙知ちゃん、お姉ちゃんを起こしに行ってくれるかな」

「うん、起こしてくるね」

 ととと、二階の木綿季の部屋へと向かう沙知を見送るようにして、廊下へと出ると声が聞こえてくる。

 

「ううぅー、木綿季おねえちゃん、起きてよぉ」

「……眠いよぉ……沙知ちゃぁん……おねちゃんを連れてってぇ……」

「もうぅ、駄目だよ、ちゃんと目を覚まさなきゃ」

「おい沙知、あんまりかまっていたらまた抱き枕にされちゃうぞ」

「あ、優治緒お兄ちゃんおはよう」 

「うん、おはよう。ほら木綿季、もう起きろよ」

「むぅー、おきたくなぁいー、もっとねたぁーい」

「いいから起きろって!」

「木綿季おねえちゃん、起きてよぉ」

 

 大変だね、沙知ちゃん。でも頑張って、優治緒お兄ちゃんも一緒に頑張ってくれるから。

 

 幸せそうな子供たちの声が、今の私の幸せを確かなものだと感じさせてくれる。この子達は私の子供達なんだと、そして和人君と本当に家族になれたんだと、私に実感させてくれる。

 そんな子ども達に私は、

「木綿季ちゃん、もう朝だよ。早く起きて」

 声をかけると、

「あ、お母さん。うん、すぐ起きるよぉ」

「やっと起きてくれたぁ」

「ほら木綿季、早く降りるぞ」

「もう、着替えるから早く出ていってよ」

「おまえなー、まあ、早く着替えろよ」

「あ、沙知ちゃん、着替えるの手伝って♪」

「もう、お姉ちゃん、自分でやらなきゃだめだよ」

 そんな楽しそうな声を後に、

「あ、パパおはようです」

 優衣ちゃんが起きてきた和人君に挨拶をし、

「おはよう優衣。明日奈もおはよう」

 その愛おしい声に私は、

 

 ──「和人君、おはよう」

 

 幸せな朝を今日も感じながら、私は和人君に挨拶をした。

 

 今日も楽しい時間を過ごそうね。

 

 桐ケ谷明日奈の幸福 END

 





 はい、後書きでございます。

 最近色々と生活が不順になりつつあります。

 今日も出勤だよぁ……そんな出勤前に投稿させていただきます。

 人妻明日奈さんの朝の風景。

 ついに末妹の沙知ちゃんが登場しました。

 以前からプロットはあったのですが、登場させようかと色々と悩んでおりましたが、ようやくに出せました。

 死んだ人の名前を付けるのはどうなのよとは思いましたが、やはり色々な意味で和人の心を助けてくれたサチさんの存在は明日奈さんにとってはかけがいのない人と思いますので、二人ならつけるのかなと思いつけ察せていただきました。

 とりあえずは良い子です。

 いつも早起き、お兄ちゃんお姉ちゃん大好きっ娘です。

 無論パパとママも大好きです。

 末の妹として出したかったキャラクターでしたがようやくに出せました。

 サチに対するアスナの気持ちと感謝がうまく出せたかは心配ですが、読んでいただく読者様方にお任せいたします。

 おかげで291名の方々にお気に入り登録され、感謝いたします。

 これからも頑張らせていただきます。

 ここまで本当にありがとうございました。

 では、また。

 ああ、生活改善したいと思いながら、今日も仕事に行ってきます。

 

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