小説の林堂 二次創作 小説「ソードアート・オンライン この現実世界にて」 作:イバ・ヨシアキ
お久しぶりでございます。
イバ・ヨシアキでございます。
まさか800を超えてしまうとは・・・・・・来てくださった方、お気に入り登録されてくれた方々、感想を残してくれた方々・・・・・・本当にありがとうございます。
これからもがんばって キリアス小説を書いていきたいと思います。
今回の作品は、初期に書いていた作品なんですが、お気に召したらとおもいます。
結構シリアスに書いておりますので。
では、どうぞ。
後、各章を入れ替え並び替えをしました。
ご了承ください。
キリト君と一緒に寝ると、私はぐっすりと熟睡できる。
安眠と言っても良い。
私は、独りで寝るのが怖い。
瞳を閉じ意識を闇に落とし、夢の中に入っていくのが怖い。
もしかしたらまた、あの妖精達が舞う、世界樹の上にある鳥駕籠の内に閉じ込められてしまうかもしれない不安があるから。
ふと、眼を覚ました時、もし、またあの妖精の住まう世界樹の駕籠の中だったらと、あの男のゲームの中だったらと、どうしようもない恐怖がある。
でも、この恐怖は私だけじゃない。
私だけが苦しんでいる恐怖じゃない。
その恐怖に向きあい、前に進んでいる人だっている。
キリト君も私が目覚めなかった間、悪夢にうなされていた。
私が死んで、跡形も無く散ってしまう夢らしい。
そう、私だけじゃない。
他のSAO生還者にも不眠症に悩まされている人もいるのに、私は一人で眠ることを恐れている。
キリト君も悪夢にうなされているのに、私は彼に何もしてあげられていない。
夢の中であの日のこと、SAO時代の事を思い出してしまう人は多く、寝ることによってまたあの世界に入り込んでしまい、再びデスゲームに参加する恐怖に、二度と目覚められなくなりそうな不安から、結果、不眠症になってしまう人が多い。
私もキリト君も、そのうちの一人。
薬による処方やカウンセリングなどその治療方法は多種多様、様々で、多くの人が今も不眠に悩まされている。
私もALOから解放された時も、正直、一人で寝るのが怖かった。
病院で寝てしまえばまたあの檻の内に囚われ……あの男の辱しめに耐えなければいけない悪夢をみてしまう。
死ぬような痛みを与えられ苦しむキリト君の前で、なんの抵抗も無く鎖と枷に吊るされ、彼の前でうすい布地の衣服を破られ、肌をさらし汚らしい手でキリト君以外の男に肌をまさぐられ、頬を汚く舐めまわされ、あの男の欲望で醜く歪んだ顔が、私の視界の全てを覆う悪夢。
抗うように眼を覚まし、身をこわばらせ怖くてどうしようもない恐怖に、私は思わず泣いてしまう。
なんて弱いんだろう。
もっと怖い目に会っていたのに。
もっと怖い事に戦えていたのに。
私は、あの夢だけは絶対に見たくは無い。
この世界に戻り、リハビリも兼ねて入院生活を過ごしていた日々の間でも、脈絡も無く見てしまう、その悪夢に日々うなされた。
──もうこんな夢見たくない。
──お願いだからもっと別の夢を見させて。
──キリト君……助けて……怖いよ……
悪夢が連日、毎夜毎夜、続いたある日。
私はたまらずあの悪夢にうなされている事をキリト君に打ち明けてしまった。
弱い自分を見せたくなかったのに、私は堪えられず、キリト君に甘えてしまった。
たくさん泣いてしまう私を、キリト君は
「大丈夫だよ」
と、面会時間ぎりぎりまで残り、手を握り、私が眠りに落ちるまで傍に居てくれた。
時折、眠る前にキスを交わし、彼がここに居るんだと、もう大丈夫なんだと、彼を感じながら眠りに落ちると、キリト君の夢を見ることが出来るようになった。
彼と、娘のユイちゃんがいる夢。
楽しく、嬉しく、心の底から喜びに満たされる幸福な夢。
そのおかげで悪夢を見ることはなく、彼が傍に居てくれるその心強さのおかげで、私は一人で寝ることが出来た。
正直、子どもだと思う。
お気に入りのぬいぐるみが無いと眠れない子ども。
そんな甘え方だと思う。
子どもの私はキリト君がいないと安眠できない。
不眠症に悩むことは無くなったけど、またあの悪夢が襲ってくるんじゃないかと、不安に恐れている自分がいる。
年下の彼に甘えてばかりで、彼も心にもたくさん傷があるのに、あの世界で背負った大きな心の傷があるのに、その傷を癒せないままの彼に、私はべったりと甘えてしまっている。
もう、あの剣士だったアスナはいない。
弱く泣き虫な結城明日奈が現実の私。
黒の剣士と呼ばれたキリト君──桐ケ谷和人君とは、現実世界で初めて出会い、キスを交わし、恋人になり、彼の家で身体を重ね、初めてを体験し、身も心も深めた愛しい関係を持ったが、この現実の世界では私たちはまだ高校生で色々なしがらみがある。
そのせいで限られた時間、限られた空間、限られた世界で過ごしていかなければいけない。
その僅かな時間の中で、私たちは互いに確実な繋がりがほしかった。
──恋人としての繋がり。
──恋人としての契り。
恋人同士の付き合いとして、結婚もしていないのに身体を重ねることを不純だと言う人がいるけど、私は不純ではないと思う。
好きな人がいれば唇を重ね、身体を重ね、交わりたい、繋がりたいと。
傍に居たいと欲求を持つことは当然のことだと思うし、それに別に毎日をふしだらにしているわけではなく、お互いに求めている時や、どうしても我慢できない日や、お互いの気持ちが高ぶってしまっている時、彼と出来うる限りの逢瀬を過ごしたい。
正直言えば、彼が傍にいないと不安で仕方が無いのだ。
アインクラッドでのキリト君と結婚した二週間の生活は、私の17年に生きた私の人生の中で一番かけがいの無い、最良の想い出。
仮想世界の私達は夫婦なのに、現実世界の私達は、互いに学生で、未成年。
いわば子どもとして括られる。
恋人としての関係だけが許され、それ以外は許されない。この世界ではお互いにまだ結婚はできない。
現実世界では夫婦ではない。
それゆえに愛し合いたくても、時間が限られている。
VRMMOの中で安全に逢瀬を過ごす方法はあるけど、それだけじゃ足りない時がある。
確かな繋がりがほしい。
現実で、私達がいるこの現実で、繋がりたいとお互いに求めてしまう時、私は彼の命の欠片である子どもを身ごもることを許されない。
事に及ぶ際は、薬を飲み、体調を考えてから、彼を求めてしまう。
避妊具をつける方法もあるかもしれないけど、私はありのままのキリト君の想いを受け止めたいから、彼にそれをつけないでとお願いしてしまう。
私のわがままを、ありのままに聴いてくれる彼。
危うい行為をしているのはわかっている。
もし今、キリト君の子を身ごもり、妊娠してしまうと、彼に迷惑をかけてしまうのも知っている。
彼の事だから、もし私が妊娠してしまえば、学校を辞めて働きに出るかもしれない。
そうなれば……私とキリト君でどこか遠くに逃げてしまえる。
私が身ごもれば、キリト君を一生独占できる。
そんな恐ろしい誘惑が私の内に囁いている。
駆け落ち。
時折、それが一番最良な方法のように思えてしまう。
結城の家から逃げ、どこかで生きていく最良な選択。
家を追い出されることになっても、キリト君となら一緒に過ごしていける。
でも私は、彼の可能性と才能を殺したくは無い。
それに彼の事だから中絶するなんて選択肢は絶対に選ばないだろう。
キリト君はその生い立ちのせいか、命に関して深く想いやりを持つことのできる人間で、例え仮想世界であっても人の命を奪うことを極端に嫌う。
中絶なんて絶対に選ばないだろう。
でも、それでキリト君の全てを、今を奪ってしまってもいいわけがない。
お母さんやお父さん、結城の家に認めてもらう為に、必死に頑張っているのに、それを奪ってしまうのは嫌。成績も驚くほどの伸び率で、あんなに頑張っているのに、私のために頑張ってくれているのに、私は彼を独占するために恐ろしいことを考えてしまっている。
彼の将来の夢を奪って言い訳が無い。
私は、彼の足枷になりたくない。
彼の事を支えられる人間になりたい。
キリト君も私と家族を持ちたいと、そしてそれをちゃんと認めてもらいたいと今、一生懸命に勉強を頑張ってくれているのだから、それを邪魔するようなことをしたくはない。
それなのに私は、彼に甘えてしまっている。
確かな繋がりが欲しくて、避妊具をつけないで行う行為。彼の思いをこの身の内に受け、私だけのものとして込めるあの暖かさは、私だけのもの。
矛盾していることはわかっている。
それなのにリスクを犯してまで逢瀬と情事を望む私のわがままを受け入れてくれる彼の気持ちに甘えている。
わかっている。
こんなこと、ダメだって。
でも、彼に甘えたい。
桐ケ谷和人──キリト君が欲しい。
彼にすがる心地よさは抗いがたい快楽で、私はその快楽に犯され、キリト君にさらに異存してしまっている。
彼に愛されていないと不安で、嫌われたらと、失ってしまったらと、彼がいなくなることが怖くて仕方が無い。
私──アスナ、結城明日奈の人生にキリト君、桐ケ谷和人君を傍に置きたいと、どうしようもない独占欲がある。
……離したくない。
なんでこんな不安を抱いてしまうんだろう。
こんなにも愛してもらっているのに。
たくさんキスをして。
たくさん内に注いでもらっているのに。
たくさん彼を身近に感じているのに。
私は満足できていない。
常に先に行き、まっすぐ進んで行ける彼。
そんな彼にもっと甘えたい。
でも、私はついていけているのかなと時折、どうしようもない不安を抱いてしまう。
君に置いて行かれるかなと、不安を抱いてしまったせいで私は、最近、悪い夢を見てしまう。
最悪の悪夢と言っても良い。
君がどこか遠くに行って、私が追い付けなくなってしまう夢。
追いかけても君はどこかに行こうとする。
私は必死に手を伸ばして追いかけているのに、君は止まることなく先に行ってしまう。やがて追うことも叶わず、私は泣いて君の名前を呼んで止めようと抗う。
──キリト君、行かないで。
──お願い。
──待ってよ、キリト君。
必死に叫んでいるのに声が出ない。
君の姿が完全に見えなくなった後、私は眼を覚ます。
夢で良かったと私は泣きそうになってしまう。少しだけ泣いて、少し泣いて落ち着いた後、いつものようにキリト君のお昼ごはんを作り、学校に登校し、放課後に彼と共に彼の家に立ち寄った。
そして……その……キリト君と事に及び、終えてからしばらく眠り、懐かしい良い夢を見た。
アインクラッドの夢。
キリト君に結婚を申し込まれた日の夜の夢。
私とキリト君が初めて結ばれた日の夢を見ることが出来た。
互いにまだ馴れない不器用なキスを交わし、お互いに身体を求めたあの日の夢。
不器用な慣れていないキスを交わし、不慣れで手探りな逢瀬を終えた後、とても綺麗な彼の瞳で見つめられ、
〝結婚しよう〟
と、恥ずかしがり屋な彼が精一杯に真摯なその想いを言葉にした最愛の問いかけに、私は嬉しく涙を流しながら、
〝はい〟
キリト君の申し出を受けた、幸せな夢。
キリト君に想いを遂げ、結ばれた日の夢。
その返事の後に、私は眼を覚ます。
ぐっすりと眠り込み、熟睡し、携帯のアラーム音で起き、身を起こし、ぼうっとしながら部屋を見回す。
携帯のアラームを止め、キリト君の心音の表示が、リボンを巻いたハート付きの画像と一緒に映し出され、バイタルが安定している事を確認し、今日も健康に問題なしと安心してから、ディスプレイの彼のハートにキスを交わし、緩みそうな頬をごまかすようにシーツの上に敷いたバスタオルに再度身をぽすっと預ける。
バスタオル……彼のベットにバスタオルを敷いているのには理由がある。
それは……その、事に及ぶとシーツを汚してしまうから……終わった後に洗濯すればいいかもしれないけど、それでは彼に迷惑をかけてしまう。
それにキリト君の御家族に、何をしているかがばれてしまう可能性がある。
翠のお母さまに、性にふしだらな子だと思われたくはない。
だから事に及ぶ前は、事前にバスタオルを敷くことにしている。私はこのバスタオルが大好きで、身を預ける気持ち良さを心地よく、安心している。
キリト君の優しい匂いがするし、とても気に入っている。
そんな彼は隣でぐっすりと寝ている。
無防備な顔を撫でながら、キリト君の存在を再確認し、これがまぎれもない現実だと認識して彼の部屋を見回す。
綺麗に畳んだ制服。
その隣に脱いだ私とキリトくんの下着……じゃなくて。あ、お風呂で使ったバスタオル畳んでなかった。うう、キリト君……お風呂なんか入らなくて良いって言うけど……女の子は、色々気にするんだよ。
最近じゃ……二人でお風呂に入るようになっちゃったし……それにお風呂から出て来るなり押し倒しちゃうし……でも、君にそうされると私は何も拒めないから、そのまま身を任せてしまう私もだけど。
バスタオルを剥がされ、キスをして、身体中に君を感じながら、君を受け入れていく中で、私は幸せな気持ちになれるし、心地よく深い眠りに落ちることが出来る。
キリト君の背中まで手を廻して、身体全てをぎゅっと抱きしめて、彼に身をすりよせて甘えると、すごく幸せになれる。
彼は柔らかくて暖かくて、離し難い安息感がある。
ずっと、彼とこうしていたいな。
もっと甘えていいよね。
彼を起こさないようにそっと傍による。肌を擦り寄せ、息を殺して、起こさないようにそっと身を寄せる。
彼の腕に触れ、胸にそっと手を乗せ、起きないことを確認してから、ぎゅっと抱きしめた。
……幸せ……
キリト君の身に自分の身体を預けているだけで、なんで私はこんなにも安心できるんだろう。
好きな人とこうしていることが幸せになれるんだろう。
彼の身体に頬を寄せて数字ではない、彼の胸奥でトクンとトクンと心地よい心音を一回、もう一回と何度も聴き入ってしまう。キリト君の心音がまるで私だけの子守り歌のように安息を与えてくれる。
そう、私は甘えん坊なのだ。
このさい泣き虫な娘で良いもん。
キリト君がいないと不安で仕方が無いもん。
現実に戻って、学校に通って、あれだけ戻りたいと思っていた日常なのに、私は強がってばかり。
キリト君がいないと、その強がりも維持できないほど、私は弱くなってしまった。
でも昔の方が強かったというわけでもない。
無理をして強さを押し出し、自分は強いと見せていただけでしかない。
本当の私は弱い。
弱くて。
すぐに泣く。
それに変に強がってしまう。
閃光様。
バーサクヒーラー。
色々な不名誉な通り名はあるけど、私はそんなに強くはない。
どうしようもない娘なのだ。
傷つくことを恐れ、人となるだけ距離を置き、優等生である自分を演じていた私──結城明日奈は、人の目を常に気にしているところもあるし、いまだに他人に評価されることにどうしようもない不安と抵抗感がもあるし、何よりキリト君に嫌われるんじゃないかと言う恐怖が私を常に苦しめている。
キリト君は私の事を強いと言うけれど、別にそんなことはない。
私は弱いのだ。
とても弱くて、寂しがりやで、独占欲が強くて、甘えん坊なのだ。
ユイちゃんの母親なのに、キリト君の妻なのに、私は彼に甘えている。
でも甘えたいこの気持ちを抑えることはできない。
甘えないと不安になってしまう。怖い夢を見て、眠れなくなってしまう。
学校の帰りを利用してキリト君の部屋で情事を終えて、彼のベットの上で抱き合って眠るのが、今、私の一番の幸せで、ぐっすりと私の隣で寝ている彼を見て、私はもっと幸せになれる。
夕暮れ時。
茜色に染まった彼の部屋のベットの上で目を覚まし、キリト君をじっと観察するのが、私の大切な時間。
やわらかい黒髪、白い肌の綺麗な顔、うすい色をしたやわらかい唇。夕日の色の染まってすごく綺麗。
本当に綺麗だなぁ。
ねえキリト君、知っている。
君は、ほかの娘から〝黒の剣士さま〟って言われているんだよ。
私が男子から〝姫〟とか〝閃光さま〟なんていわれているけど、SAOからみんなを解放した君は、女の子にすっごく人気があるんだから。
時々、君の好意のある噂を聴くと不安になってしまう。
君が誰かにとられちゃうんじゃないかって。
キリト君。
君はとても魅力的なんだよ。
君の恋人。
妻。
隣に居ることのできる立場なのに、私はもっと君を独占したいって気持ちに駆られてしまう。
嫉妬。
独占。
占有。
そう、キリト君は私のもの。
誰のものでもない。
誰にも渡したくない。
顔をそっと触れる。
彼の髪の感触と頬の感触と肌の感触を楽しむ。
やわらかいなぁ。
それにすごく綺麗だよ。
本当に君は男の子なのかなぁ。
湧きあがる恥ずかしさをごまかすように、私はキリト君の胸元に手を当ててみる。
本当に綺麗な肌をしているよね君は。
男の子でこんなに綺麗なのはずるいよ。
なんかやだなぁ。
君は鍛えているみたいだけど、まだ細いよね。
私としては、あんまり鍛えてほしくはない。
別に、このままでいいのに。
お腹に触れてみると、鍛えているおかげか腹筋がしっかりしている。
このお腹がムキムキに割れたら嫌だな。
キリト君はやっぱり今のままで良いよ。
このままでも十分魅力的なのに。
これ以上、魅力的にならなくてもいいんだよ。
あんまり無理をしなくても良いんだよ。
君は今のままで十分格好良いんだから。
そう言えば、身長も伸びたよね。
やっぱり男の子は成長が早いのかな。
アインクラッドの時は同じくらいの身長だったのに。
君とキスをする時、少し背伸びしなきゃキスが出来なくなっちゃったんだよね。
前まで私と大して変わらないほどの身長だったのに。
もっと大きくなるのかな。
腕を組んで歩く時、君を見上げるのも悪くないかも。
でも、君とキスをするときに背伸びをするのは……悪くはないけど、ちょっとなんか悔しいなぁ。
これ以上伸びちゃだめだよキリト君。
そんなお願いを込めて彼の黒髪を触ると、ふっくらとした髪の感触が心地良い。
やわらかいなぁ。
ああ、ふにふにして本当にかわいい。
そして、かっこいいんだよね。
それに、本当に綺麗。
ずっとこうして見ていたいなぁ。
すごく格好良くてすごく可愛くて、君は色々な魅力にあふれている。
ふふ、やっぱりだね。
わたしは本当に君のことが大好きなんだ。。
もっと抱き締めちゃおう。
ぎゅって。
キリト君は私のものだもん。
これくらい……いいよね。
「……んん……」
え。
キ、キリト君。
ええ、ええ! ちょ、ちょっと。
も、もしかして起きてるの。
あたふたしていると、むずっと力強くキリト君が私を抱きしめてくる。
い、いきなり抱きつくなんてぇ!
準備できてないよぉ。
ひゃあぁ!
耳元に息がかかるよぉ。
……んんん。
だめぇ……だめだよぉ……や、やだぁ……おしつけちゃだめぇ……
ドキドキする。
やだぁ。
準備できてないのに。
「……アスナ……」
……むぅ。
何をするの?
もう一回なの?
でも、もう時間がぁ。
でも。
でもキリト君がしたいなら──いいよ……
……あれ?
キリト君?
……眼をつむっていた。
すやすやと寝息を立てている。
ぐっすりとお休み中。
……うう、顔ちかいよぉ。
じゃなくて。
もう、キリト君のばかぁ!
いきなりギュって、そんなに強く抱きしめたらびっくりするじゃない。
……それに……またって期待しちゃうじゃない。
ああ、じゃなくて。
うう、もうキリト君ったらスヤスヤ寝ちゃって、君も十分甘えん坊さんなんだから。
あ、こらギュってしすぎだよ。
か、顔近いよ。
やだぁ。
むぅ……ドキドキさせたくせになにもしないってヒドイよ。
本当に君って……でも、顔、近いなぁ。
本当に目を覚ましていないのかなぁ。
まだ寝ているなら、キスしても良いよね。
そっとキリト君の顔に近づいてみる。
眼を覚ます気配はない。
……これならキスをしても大丈夫だよね。
桃色の綺麗な唇。
吸い込まれてしまうって、この事かな。
無意識に顔が近づいていく。
キスをしたい。
そんな欲情に身を任せてしまう。
いつのまにか、キリト君の唇に私は口付けようとしている。そのままこの欲情に身を任せてみよう。
彼のやわらかい唇のふにっとした柔らかさを口に含み、キスをする。
舌も入れた濃い口づけをしたいけど、そんな事をしたらさすがに起きちゃうから、そこは我慢しよう。
……んん……んんん……
漏れてしまいそうな声を内に押し込め、キリト君の唇の感触を甘く味わい、私の好きを込めてキスを続ける。
彼の顔を抱きしめたい衝動に駆られそうになる。
我慢しなきゃ。
そろそろキスを止めなきゃ。
キリト君、起きちゃうかも。
もっとしていたいけど、そっと唇を外し、キスを終えようと思ったら、キリト君が私の背中を押さえてくる。
彼の両腕に掴まれ、身動きが取れなくなってしまう。
……え? ええ?……
離そうとした唇を奪われるようにむぐっとキリト君の唇に押し込められ、そのまま彼にキスをされてしまう。
無論、それだけではなく、舌を入れ込んだ濃いキスだった。
「……キ、キリト……くぅん……ちょ、ちょっと、し、舌……んんん」
声を出そうとするも、声をキスでふさがれてしまう。
とろとろした優しいキリト君のキスがあまりにも甘くて強くて、身を任せてしまう。
抵抗できないよ。
やだ、こんなキスされたら。
力が抜けていく。
抵抗や羞恥が奪われていく。
やだ、唾液がこぼれちゃう。
え、キリト君。
やだぁ、そんな、吸いこんじゃ嫌だ。
もう、無理……
四肢の力が抜け、彼の身体にもう全身を預けてもいいかなと、意識がまどろみかけた途中で、まるでそれを見計らったかのように、彼がキスを終える。
離れてほしくなかった彼の唇が離れ、名残惜しそうに唾液が線を引き途絶えてしまう。
真っ赤になってしまった顔を隠すように、ぽすんと彼の胸に顔を埋める。ドキドキが止まんない。
キリト君……
「おはよう……アスナ」
うう、やっぱり起きてた。
小さな欠伸をしながら、潤んだ寝ぼけた眼を瞬きで乾かしているキリト君に、
「……寝たふりなんて卑怯だよぉ……」
起きてるなら、起きてるでちゃんとキスしてほしかったのに。
「いや、本当に寝てたんだけど……何か柔らかいなって眼を開けたら、アスナがキスをしてくれていたから、このまましようかなって……おもいました」
恥ずかしそうに口ごもる彼。
「……むぅ……」
そんな風に言わないでよ。
逆に恥ずかしいよぉ。
「でも、寝込み襲うなんてずるくないかな♪ アスナさん♪」
「……べ、べつに……襲ってなんか……」
無邪気に笑う彼にまたドキッとしながら、そしてその笑顔の後にする彼のいたずらに、
「これおかえし」
すっと早くキリト君が私の首筋にキスをする。
「ひゃん」
キ、キリトくん?
や、やだ。
こ、こんなのダメだよぉ。
「ちょ、ちょっと。首筋は駄目だよぉ! や、やだぁ。そこまでキスしちゃやだぁ」
キスで甘噛みするなんてないよぉ。
ぺちゃぺちゃといやらしい音が聞こえてくる。
もう、
「こっちだって……まけないんだからぁ」
キリト君の首筋にキスをする。
肩と首の間に、吸血鬼みたく、強く彼の肌を吸い込むように、首筋にキスをする。
アスナ……それ、くすぐったい……」
甘噛みが止まってしまう。
少し残念だけど……よし。
このまま、攻め込んでやるんだから。
「あ、し、舌は駄目……んん」
キリト君の甘くあえぐ声にドキリと興奮しながら、私は彼の首筋に舌を這わしていく。彼の肌に私の痕を刻みいくなか汗の味があまりにも甘美で、とても興奮してしまう。時折舐める舌を止め、首筋に強めにキスをし、強い幾つもの痕を彼に残す。
「……んん……アスナ……それ……だめ……ん……」
うう、その声は反則だよキリト君。
余計に興奮しちゃうから、押さえがきかなくなっちゃうよ。
もっと聴きたい。
もっと聴かせて。
気持ちいいの。
キリト君。
彼の胸元を、心臓の部分に強いキスをし、舌を這わせ、彼の鼓動を速めていく。
「……そのつもりなら……」
キリト君が負けじと私の耳元にキスをしてくる。
「……ひゃう……むぅう」
思わずやらしい声が出そうになって、私はさらにキリト君の胸元に強いキスをしてしまう。耳たぶを甘噛みし、舌で耳をくすぐってくる。
逃れられないようにギュっと私の背中を抑えてくる。
キスが止まりそうになる。
でもここで止めたらキリト君のなすがままにされる。
こうなった意地の問題だもん。
これはキリト君と私の決闘。
リザインなんかしない。
彼の胸元に舌を這わせ、胸のくぼみにそってキスをしてやるんだから。そこが弱いのを知っているんだからね、絶対キリト君をリザインさせてやるんだから。
「ひゃん……んんん……」
ダメ。
キリト君。
耳の内に舌は反則だよぉ。
あ、耳、噛んじゃダメェ。
おかしくなっちゃうよぉ。
もう、キスできない……ほんと、おかしくなりそう。
「キ、キリトくん……」
「な……なに……アスナ……」
キリト君も熱そうだった。
息も途切れ途切れで、甘い息を漏らしている、
どうやらお互いにもう限界が近かったみたい。
「……か、からだ……あつい……もう、だめ……」
切なそうなキリト君の声に私も、
「……こっちも……なんか……へんなきぶん……」
お互いに息がとぎれとぎれになりながら、ぐったりとしてしまう。
……相打ちになっちゃった。
「……ごめん……悪ふざけしすぎたかな……だいじょうぶ」
申し訳なさそうに言葉を紡ぐ彼に、
「……そんなこと……ないよ……」
……わたしこそ……
「……ごめんなさい……」
泣きそうになってしまう。
また甘えてしまった。
彼とこうして愛撫をし合う行為はきらいじゃない。
とても嬉しいし、とても幸せになれる。
でも、寝ている君にキスをするのは……やっぱり卑怯だったかな。
また彼に甘えてしまっているんだと、反省してしまう。
意地になって強気に見せても、私は弱い。
私の涙がキリト君の胸に落ちてしまう。
その涙に気付いたのか、彼は私を強く抱きしめてくれる。
「……なんで泣いているの?」
グスグスと子どもみたく泣いている私に、キリト君は優しく声をかけてくれる。
「……また……キリト君に甘えちゃっているから……なんか……」
なんで言っちゃうんだろう。
嘘をつけない。
見栄を張ることも、強がることも、なんで君の前では私はこんなに子どもになっちゃうんだろう。
……君に甘えたい。
その欲望に逆らえない。
さっきだって私は欲望のままに甘えてしまった。
キスをし合う。
お互いに肌を求めあう。
その欲望に逆らえない。
「……オレだって、アスナに甘えちゃってるよ……」
慰められてしまう。
なんて心地の良い言葉なんだろう。
髪をなでられると、ポロポロとまた泣いてしまう。
なんでこんなに泣いちゃうんだろう。
また甘えちゃいそうだよ。
「……アスナがいなきゃ……オレも辛いんだ……」
涙をキリト君のキスで拭われていく。頬を口づけ、眼もとまで濡らしていた涙の痕を拭ってくれる彼の優しさに抗えない。
受け入れてしまう。
「わたし……君にあまえてもいいのかな?」
彼の顔をちゃんと見れない。
でも言葉は出てしまう。
「……キリト君がどこか、遠いどこかに行ってしまう怖い夢を見て……不安になって……キリト君とつながりたい……キリト君を感じていたい……そんな気持ちをどうにかしたいから……私……君に甘えちゃうんだよ……」
離されたくない。
この暖かさを独占したい。
誰にも渡したくない。
「……私、君よりお姉さんなのに……君にもっと甘えたがっている……ぜんぜん足りないって、もっと甘えたいって……自分でも怖い独占欲があるの……こんなの怖いよね」
でも甘えたい。
……君は私のものだもん。
だから絶対に離さないよ。
逃がさないように彼を抱きしめ、胸に顔をうずめる。
拗ねた子どものように。
「怖くなんかないさ。それに恋人としては、もっと甘えてくれなきゃ困るよ」
そんな私をあやしてくれるように、キリト君は私のおでこにやさしくキスをしてくれた。
「……え? ええ? んん……」
そして、そのまま彼と口づけ深いキスをしてしまう。彼の唇の柔らかさに身を任せ、私の中にあった強張りが和らいでいく。
息を交換し合うだけの柔らかいキスをして、
「オレだって君とこうしたい……そんな気持ちを抑えたくないし、怖い夢だって……オレも見るんだ……アスナと離れてしまう夢……」
その告白に驚いてしまう。
君も私と同じ夢を見ていた事に。
私を抱きしめる力が強くなる。彼も私を離したくないんだと、心奥の恐れが伝わっていく。
「アスナが必死に叫んでオレを呼んでいるのに、オレは君を見つけることが出来ず、どこか遠いところに……その、落ちていくんだ……良く解らないけど、たぶん、俺とアスナおなじ不安があると思う……」
キリト君の不安を癒してあげたい。
知っているよ。
この不安の癒し方。
癒してあげるね。
彼の口元にそっと近づいて行く、彼は拒む様子を見せず、私のキスを受け入れてくれる。愛情を込めた口づけを交わし、そっとキスを終える。
もっとしたい。
舌を絡めたい。
そんな欲情を押さえながら短いキスを終えると、
「……だからかな、オレもアスナも……依存が強いんだ……いまさら甘えすぎているなんて遠慮はいらないんじゃないのかな……」
笑顔を見せてくれた。
私の大好きなキリト君の笑顔。
「……甘えれるときには……たくさん甘えよう……オレももっと、アスナに甘えたいしさ……それに……」
恥ずかしそうにしながら、
「……恋人なんだしさ……甘えてもらえないと」
やっぱりだ。
やっぱり君は優しいんだ。
「……うん……じゃあ、遠慮なく甘えます。キリト君♪」
大好き。
大好きだよ。
心の底からそう思える。
もっと君に愛されたいなぁ。
それに……キスのせいでたりなくなっちゃった……でも、もう……うごけないよ……え? きゃあ!
「……じゃあ、もういっかいだけ……良いかな? とてもじゃないけど……さっきので我慢できそうにないから……がっついてごめんだけど……」
頬にキスをしながら意地悪してくるキリト君。
そんな彼からのお願いを断れるわけない。
それにここでやめたら……
「……うん、もう一回だけなら……いいよ」
……しなきゃ、今夜、眠れなくなっちゃうし……ちゃんと……責任とってね。
「そのまえに……アスナ……キスして良いかな? その……口の方で……」
キリト君がねだるように訊ねてくる。
「……うん……わたしも……キリト君にキスしたい……しよう……」
自然と私とキリト君の顔が近づいていく。
彼の吐息が私の唇が触れ、私の吐息も彼の唇に触れる。
互いの呼吸が混じり合い、彼の吐息が私の内に入ってくる。また身体が熱くなっていく。思考や羞恥心が削れ、本能が、欲望が、私の理性を明滅させていく。
ふにっとキリト君の唇が触れる。
身体が熱くなる。
大好きな君とキスをするんだと思うと、すごく興奮してしまう。
そして彼の舌が私の舌に触れ、それを合図に互いの口内をなめわしていく。
唾液を互いに吸い取り、互いの身体にためた空気を吸い取り、私の舌の感触がキリト君の舌に触れ、互いの感触を確認しながら、口内をなめまわしていく。
唾液がとろりと糸を引きこぼれそうになると、また同じような激しいキスを求めてしまう。
もっとしたい……
もっとキスをしよう……
黒曜石のような深く透き通ったキリト君の視線にねだってしまう。
そのまま、その熱にうなされるように、私たちは何度もキスを繰り返しながら2回目の情事をはじめた。
その後。
2回目の情事を終えると、外はすっかりと夜になってしまっていた。
お母さんが大学の仕事で出張、お父さんと兄さんが仕事で不在じゃなかったら、さすがに危ない時間帯だったけど、キリト君のバイクで送ってもらい、なんとか事なきを得た。
別れ際、キリト君がヘルメットを脱ぎ、私にキスをしてくれた。
おやすみのキスと、また明日も逢おうねのキス。
また熱くなったらいけないので、少し短めでちゃんと好きだよと想いを込めたキスをし終え、彼が去るまで見送り、私は家に戻った。
……ありがとう今日も良い夢が見れそう……
……おやすみキリト君。
またあしたも……ううん……夢でも逢おうね。
end
いかがでしたか?
無事に恋愛小説のテイストは守られていたか不安はありますが、呼んでくださり感謝します。
一応現実世界でも二人は肉体的な関係を持っていると、設定の上で書かせてもらっています。
ウェブ版でも結構赤裸々でしたからね。
こんな二人の関係が、小生は大好きです。
R-15の範囲内だと思うのですが・・・・・・どうなんでしょうね?
ご意見お待ちしております。
では、また。
最後まで読んでくださってありがとうございます。