アンケート現在一位の一柳梨璃さん視点です。
「う~ん」
わたし一柳梨璃は今とても困っている。
元お嬢様学校の百合ヶ丘女学院の購買部は紅茶の種類も豊富なんだけどついに全種類制覇を達成。
アールグレイ、セイロン、アッサム、ダージリン……定番も良いんだけどお姉様には新味も楽しんでもらいたいなぁ、って。
でも駅前の茶葉のお店も大体回っちゃったし。
遠出しないと駄目かなぁ?
「梨璃ちゃん何かお困り?」
「あ、お姉さん!」
いつの間にか横にいた食堂のお姉さんにびっくり、ちょっと集中し過ぎてて周りが見えてなかったかも。
リーダーとしてもっとしっかりしなくちゃ!
「実はお茶の葉を全種類制覇しちゃいまして」
「美少女にティータイムは必須だからね」
「はい! って美少女はわたし以外ですから!」
「はいはい、まあそれはそれとして。新しい茶葉が欲しいの? 購買アンケートに要望を書いてみるとか」
「その方法もありますね……でもわたしの我儘ですし」
もし入荷しても売れ残ったりしたら……。
そう考えると二の足を踏んじゃうなぁ。
「だったら今度の休みに車出すから一緒に行かない?」
「えっ、いいんですか!?」
「勿論♪ あ、もう一人買い物したい娘がいるから楽しみにしててね」
「う~ん、誰かな?」
お姉さんの悪戯っぽい表情から多分わたしの知っている人だと思うけど……。
聞いたら教えてくれそうな気もするけど、ここは当日まで我慢してみるかな。
誰なのか想像するのも楽しいからね。
「ところでお姉さんは購買部に何の用ですか?」
「何が売れているのか軽く調査をね」
そう言うと手に持った紙の束を見せてくれた。
ふむふむ、やっぱり甘い物とかお菓子は人気だなぁ。
意外と化粧品類が少ないのは自分で取り寄せているからかも。
「正確な情報はいくらあっても困らないからね。まあそれを生かすのが難しいんだけど」
「なるほど……」
「一柳隊には二水師匠も楓ちゃんもいるから安心だね」
「そうですね。二人は私の知らないことをたくさん知っていますから」
「そうそう、耳は大きく口は小さくってね」
「ふふっ、まるで兎さんですね♪」
リーダーとして判断を誤らないように……うん、しっかり覚えておこう。
「あ、やっぱり鶴紗さん!」
「梨璃だったか」
次の休日学院の駐車場に行くと車に寄りかかるレギオンメンバーの安藤鶴紗さんがいた。
「って、やっぱりって何?」
「だってお姉さんと一番仲が良いのは鶴紗さんか二水ちゃんだからね」
「……別に車の方が便利だからってだけ」
ぷいっとそっぽを向いちゃった鶴紗さん、本当に分かりやすい。
でもそんな様子がとても可愛くてホッとする。
もう出会った時みたいな悲しい顔はさせたくないから。
「二人ともお待たせ」
「今日はよろしくお願いします!」
「……よろしく」
「張り切ってエスコートしちゃうからね♪」
普段より楽しそうなお姉さん。
何だか私もワクワクしてきたかも。
この三人ならきっと楽しいドライブに――
「梨璃、覚悟しておけよ」
「えっ?」
鶴紗さんの真剣な表情の意味を知るのはそれから数分後のことだった。
「舌噛まないでね」
「えっ、えっ」
「梨璃大丈夫だ、多分」
「いっくよー♪」
お姉さんの掛け声と共に道路と呼ぶにはあまりにもボロボロな山の中の道を車が駆けていく。
時々車体が宙に浮いたりスリップする以外は平気……平気なのかな?
少なくても今までの人生の中でこんなドライブは無かった。
あ、河原で石を積んでいる子供たちが――見えてない、見えてない!
「ごめんね、この旧道が近道なんだけど全然整備されてなくて」
「百由様特製のこの車じゃなかったら事故ってるからな」
「あ、あはは……」
冷静な二人の言葉にわたしは何故か車内にあった猫さんのぬいぐるみを抱きしめて無事な到着を待つしかなかった。
「はい、到着♪」
「梨璃、大丈夫か?」
「う、うん……ちょっとフラフラするくらいかな」
何とか目的地――アウトレットモール――に着いたわたしたち。
……動かない地面のありがたさを今ほど感じたことは無いかも。
シートベルトとても大事、安全運転もっと大事。
落ち着いたので辺りを見回してみると駐車場にはたくさんの車。
ヒュージとは無縁の光景に何だかほっこりしたり。
と、そこに入ってきた一台のバイク。
それに乗っていたのは――
「一葉さん!?」
「あれ、梨璃さん?」
エレンスゲ女学園LGヘルヴォルのリーダーの相澤一葉さんだった。
バイクに乗る一葉さん格好良いな。
「ちょっと、一葉ちゃん!」
「は、はい!」
ちょっと怒った様子のお姉さんが一葉さんに詰め寄ります。
えっ、お二人って仲が悪かったとか?
「その恰好は何なの?」
「エレンスゲの制服ですが」
「そんな短いスカートでバイクに乗って事故でも誘発する気?」
「い、いえ決してそんなつもりは……」
「私だったらブレーキ踏み忘れるレベルだよ!」
「申し訳ございません!」
「それに美少女の太股に飛び石でも当たったらどうするつもりなの? 人類の損失だよ!」
あの一葉さんが凄い勢いでお辞儀を……。
確かに今のお姉さんは並のヒュージ以上に怖いかも、言っていることもよく分からないし。
仕舞いにはあのエレンスゲ序列一位の一葉さんが飼い主に叱られたワンちゃんみたいにしょんぼりしちゃうし。
「と、いうわけで最初の買い物は一葉ちゃんのバイク用の服ね。二人ともいい?」
「ああ」
「は、はい」
「ええっ!?」
瞬時にいつもの優しいお姉さんに戻ったと思ったら驚きの提案。
鶴紗さんとわたしは咄嗟に承知するも一葉さんは困惑、そのままお姉さんに引っ張られて行っちゃった。
「あの積極性と行動力は見習った方が良いかな?」
「いや、梨璃は今のままで大丈夫だ」
少しげんなりした様子の鶴紗さんに褒められちゃった。
「このピンクのいかにも新なデザインのとかどうかな?」
「私にピンクは似合いません! それに何故サーキットを走るようなレーシングスーツなんですか!」
「じゃあこっちの女スパイが着てそうなピチピチの黒いの」
「そっちも公道で着ている人見たことありませんけど!?」
激しい議論を繰り広げる二人、それを少し離れたところから鶴紗さんと一緒に眺めている。
他のガーデンのリリィとも仲良しだなんて凄いなぁ。
わたしももっと交流しないと。
「梨璃もバイクに乗りたかったりする?」
「……冬の山梨は自転車でも命がけだったから」
「何かごめん」
「ううん、でも鶴紗さんが後ろに乗せてくれるなら大歓迎だよ♪」
「そ、そう? 気が向いたら免許でも取るかな」
「うん!」
何気ない風を装っても耳が少し赤い鶴紗さん。
本当に可愛くて抱きしめたくなっちゃうな。
「結局無難なやつに……ごめん千香瑠ちゃん」
『いいえ、お姉さまのせいではありませんよ』
「ウケたいわけではないですから! あと電話までして千香瑠様を巻き込まないでください!」
あ、買う物が決まったみたい。
これで一葉さんの太股は守られたね。
「半分は私が出すから」
『残り半分はヘルヴォルの活動費から出しますね』
「自分で払いますよ!」
今度は支払いで揉めてるね。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いいえ、お二人の仲の良いところを見せてもらえましたから♪」
「一葉、強く生きろ」
「ううっ、優しさが痛いです……あ、美味しい」
俯きながらクリームシチューを口に運ぶ一葉さん。
お騒がせしたお姉さんの奢りということでモール内のフードコートでのお昼ご飯。
そこに地元山梨名物のほうとうがあったので思わず頼んじゃった。
「美味しい?」
「はい、意外と本格的で美味しいです。少し食べます?」
「ありがとう♪」
取り分けのとんすいがあったのでみんなにも食べてもらおうっと。
「鶴紗ちゃんは猫舌だから冷ましてあげてね」
「了解です、お姉さん」
「おい!」
お姉さんと一葉さんに取り分けた後の鶴紗さんの分。
汁が飛ばないように人参を優しくふーふー。
そのまま鶴紗さんのお口へ。
「はいどうぞ!」
「え、自分で食べれるけど」
「はい!」
「だ、だから!」
「どうぞ!」
「分かったから……」
観念して目を閉じ可愛いお口を開ける鶴紗さん。
いつもの凛々しい顔も素敵だけど今の赤ちゃんみたいな顔も可愛い!
「……美味しい」
「やったあ! 次はゴボウだよ」
「えっ、まだやるの!?」
いつか鶴紗さんやみんなで山梨に観光で行けたらなぁ。
素敵な場所いっぱい案内できるのに!
お姉様ととっておきの隠し湯に浸かったり……きゃっ♪
「……百合ヶ丘女学院ではいつもこんな感じなのですか?」
「割とこんな感じだよ。お陰で食堂の仕事が楽しくて楽しくて♪」
「なるほど……これが世界レベルの強さの秘訣か」
なんだか一葉さんが真剣な表情で考え込んでるけどどうしたんだろ?
やっぱりリーダーだと普段から色々考えることが大事なのかな。
「それ以上貰うと梨璃の分が無くなるぞ」
「あ、本当だ」
「仕方ないからわたしのハンバーグをあげる」
「やったぁ! あーん」
「え」
「あーん」
「……」
鶴紗さんが根負けするまで口を開け続けちゃった。
「一葉さんも鶴紗さんと同じコーヒー派なんですね」
「はい。でも藍は苦手だというので今日は茶葉を買ってみようかと」
「フルーツとかお花で香り付けしたフレーバーティーとかは苦くないのもあってお勧めですよ」
「参考になります」
次はわたしの買い物ということでお茶屋さんに来た。
専門店だけあって凄い品揃えだなぁ……多過ぎてどれにしようか迷っちゃう。
「鶴紗さんはどれが良いと思う?」
「…………お茶は詳しくない」
「と言いつつ静岡茶以外は認めない鶴紗ちゃんであった」
「変なナレーションを入れるな!」
「えー定年後は静岡で一緒にお茶農家やるって約束したのに」
「してないしてない」
相変わらずお姉さんと鶴紗さんの掛け合いは息がぴったり。
私も見習わないと!
「ふふっ」
「あ、一葉さん笑ってる」
「失礼、あまりにも仲が良さそうなのでつい」
「勿論です! でもヘルヴォルの皆さんもまるで家族みたいですよ?」
「……そう言っていただけると嬉しいです」
一葉さんのどこか陰のある笑顔、きっと今のヘルヴォルになるまでに辛いことがたくさんあったのが分かってしまう。
そう思うと手が勝手に――
「これからも一緒に頑張っていきましょうね!」
「は、はい!」
彼女の手を取り思わず口に出してしまった言葉。
でもそれはわたしの本心だから……絶対にみんなで幸せになりたいから。
変えられない過去、辛い現実、でも絶対に未来だけは守りたい!
「……梨璃さんの眼差しは本当に力強いですね」
「えっ!?」
「今日は勉強になりました」
「えーっと、こちらこそありがとうございます」
何故かお礼を言われたので反射的にお礼の言葉を。
やっぱり一葉さんは可愛くて格好良いなぁ。
「次はわたしの番か」
「鶴紗さんの目的の物って猫さんのご飯なんですね」
「陥落地域が多いと流通が滞る上に人間の食料生産が優先されて値上がってるからね」
「なるほど、こんなところにも影響が」
鶴紗さんはカートに買い物籠を載せるとどんどん大袋サイズの餌を入れていく。
何を買うか最初から頭に入っているみたい。
流石『猫耳総大将』の二つ名を持つだけあるなぁ。
「はい、終了。このままカートで車まで運ぶから」
早いっ、でも迷いの無いその姿は少し憧れちゃう。
……カートが重さで軋んでるから早く車に置きに行かないと。
「そう言えばお姉さんは何を買いに来たんですか?」
「ん……アイスクリームかな」
「アイスですか?」
「わたしたちの倍近く生きてればそんな気分になる時もあるんだろ、多分」
「言ったね~」
「止めろ髪の毛が乱れる!」
鶴紗さんの髪の毛をわしゃわしゃするお姉さん。
笑顔の裏に隠れた悲しみの一端に触れたような気がした。
「それでは私はこの辺で」
「まったね~♪」
「千香瑠ちゃんたちによろしく」
「また今度」
結局支払いが三等分になったバイクウェアを早速着て走り去る一葉さん。
今度会う時も戦闘以外の時が良いな。
二水ちゃんが言っていた叶星様との関係も聞いてみたいし。
「それじゃあ私たちも帰りますか」
「あのー、できれば帰りは遠回りでいいので……」
「大丈夫、鶴紗ちゃんが重たくなったから帰りは整備された安全な道を通るよ」
「わたしの荷物な!」
「それに――」
「わぁ、奇麗な夕焼けですね!」
「でしょ。どうかな、見慣れてる鶴紗ちゃんとしては?」
「別に……何度見たって飽きないから」
まるで海に沈んでいくような夕日、そして赤く照らされた海。
とても奇麗……奇麗な筈なのに。
思い浮かんだのは海から来て海に消えていった大切な仲間のこと。
あれ……涙が勝手に……。
『…………』
「えっ!?」
耳元で聞き覚えのある優しい囁きが聞こえた気がして急いで見回すも、傍にいるのはわたしを心配そうに見つめる鶴紗さんだけ。
もしかして今のって……。
鶴紗さんから手渡されたハンカチで涙を拭いながらしばらくの間奇妙な幸福感に浸っていた。
「丹桂百合ですか」
「はい、流石神琳さんは詳しいですね」
次のお茶会で私が出したのはモールで買った丹桂百合、百合と桂花を緑茶の茶葉で縛ったもの。
お湯を注ぐと優雅にお花が咲く……考えた人凄いなぁ。
「ありがとう梨璃、遠くまで買いに行ったと聞いたわ」
「えへへ、まだあるんですよ」
夢結お姉様の好きなダージリンに乾燥させた百合の花を入れてお湯を注ぐ。
花の香りがダージリンと喧嘩しないように量は控え目にしてあるから大丈夫。
色々教えてくれた楓さんには改めて感謝しないと。
私一人の力は小さいけれどみんなと協力すればこのお茶のように色々なことができる筈。
「梨璃のリリィティー、どうぞご賞味ください♪」
<おまけ>
○恋花様、お覚悟!
「ちょ、ちょっと一葉流石に冗談だよね?」
「いいえ、恋花様。これもヘルヴォルの戦力アップに必要なことですので」
「恋花暴れちゃ駄目」
瑤様に羽交い絞めにされた恋花様のお口に青汁ソフトクリームを近付ける。
栄養満点のこれなら野菜嫌いの恋花様でも不足分は補える筈。
仲間に手づから食べさせることで信頼関係も強化、百合ヶ丘はやっぱり凄いな。
少し失礼な言い方になってしまうけど百合ヶ丘のトップレギオンではない一柳隊+αですら勉強させられることが多く自分の未熟さを痛感した。
ヘルヴォルももっと高みを目指さなければ。
喪うのはもう終わり、これからは取り戻すだけ。
「ドヤ顔のところ悪いんだけど逆に信頼関係崩れるから! それに毒々しいほど緑なんですけど!」
「大丈夫ですよ。苦いのは一口目だけですから、多分」
「おい!」
「大丈夫、恋花はできる子」
「大丈夫よ、毒物は入ってないから」
「大丈夫、恋花はどんかんだから」
「え、あたしの扱い酷すぎない!?」
暴れ疲れて動きの鈍くなった恋花様に近づく。
じっと目を見つめつつ柔らかな頬に手を滑らせ親指で開口を促す。
そして開かれた可愛らしいお口に蕩け始めた先端を――
マギジュエル×30を獲得しました。
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
アンケートは読者層が気になったものでして。
二次創作とはいえ説明端折り過ぎ感が……。
<備考>
一柳梨璃:サブスキル『撃墜王』
安藤鶴紗:サブスキル『天邪鬼』
相澤一葉:サブスキル『イケメン』
芹沢千香瑠:サブスキル『聖母』
飯島恋花:サブスキル『純情』
アサリリ履修状況(世界線)の確認
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