他のレギオンも暴露してほしいものです。
一周年おめでとう、実装おめでとう、舞台orz
○世紀中救世主伝説(序章)
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2XXX年、台湾はヒュージの炎に包まれた。
喪われた祖国、多くの国民、そして肉親。
少女は誓った……いつかヒュージを駆逐して祖国を奪還すると。
「神琳様申し訳ございません!」
「今日の焼き加減は及第点ですね」
同級生の土下座を一瞥もせず中等部の校舎の自席で早弁(豚の丸焼き)をする神琳。
取り巻きにより切り分けられた肉をスナック菓子のように骨ごと咀嚼し飲み込む。
注意しなければいけない筈の教導官は見て見ぬ振り。
それだけの凄味が彼女にはあった。
彼女に物申せるのはアールヴヘイムクラス、それがここ百合ヶ丘女学院の常識である。
半分ほど食べ終えたところでナプキンで口を拭い土下座のままの同級生を見下ろす神琳。
「あら、わたくし気にしてませんよ? 聖メルクリウスごときの後塵を拝したことなんて」
「申し訳ございません!」
笑顔とは裏腹に言葉の端々から滲む怒りの感情が取り巻きたちの胃痛を悪化させ今日の昼飯を諦めさせた。
それもその筈、先日行われた中等部予備隊格付けにおいて、百合ヶ丘の指定席である世界一の座を逃したという驚愕の事実。
そして予備隊の司令塔である神琳に批判の目が向けられたからである。
その批判に対し神琳は真摯な謝罪で返し、予備隊には今までの三倍の訓練を課した。
厚さ5mの岩も割る神琳の鉄拳を前に反論できる隊員はいなかった……彼女を更迭できる人物も。
「ふふっ、楓・J・ヌーベルさんに石川葵さんですか……優秀なリリィは何人いても構いませんからね♪」
その時の神琳の表情を見たリリィは晩年にこう語った。
『アレに比べたらどのヒュージも可愛く見えたさ』
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「って、何ですかこの漫画は!?」
「え、私と二水師匠とミーちゃんでお話を考えて雨嘉ちゃんに漫画にしてもらったんだけど。軽く受賞レベル♪」
「神琳、わたし頑張った」
ふん、と両手でガッツポーズを取る雨嘉さんはとても可愛らしいのですが……それとこれとは話が別です!
いくら普段温厚なわたくしでも納得いきません。
「そもそもなんでこんなガチムチなプロレスラーみたいな体型なんですか! それに絵も今時見ないような劇画調ですし!」
「神琳ちゃんって暗殺拳とか中国拳法とかが似合いそうだし」
「数値にすると身長:185cm、体重:100kg、スリーサイズ:バスト132cm・ウエスト90cm・ヒップ105cm、楓より爆乳」
「そういうのは爆乳と言いません!」
「ちゃんと二水師匠にチェックしてもらったから、多少脚色はしたけど事実と大きな違いは無い筈だよ」
「ちょっとやんちゃな神琳もわたしは好き」
「雨嘉さん嬉しい……じゃなくて、教室で同級生をいびりながら豚の丸焼きを食べるのが多少ですか!?」
食堂のお姉さんと雨嘉さんの不思議そうな顔に頭が痛くなってきました。
ここが一柳隊の控室で良かったです……叫んでばっかりですので。
まぁ……過去のことは今では乗り越えたつもりですので、書籍化されてふーみんさんのお小遣い稼ぎにされてもなんとも、なんとも思いませんが流石にこれは酷いです。
何で今は亡き兄さんたちよりごつく描かれるんですか!?
せめて美少女に描いてもらえれば……いやいや根本的に間違ってますから!
「大丈夫だよ神琳、どん底スタートは鉄板」
「そうだよ神琳ちゃん、早く続き読んで♪」
お二人の真剣な表情に溜息をつきながらも製本された漫画を手に取りました。
……なんで表紙は普通に美少女な雨嘉さんが美少女なわたくしに押し倒されているという素敵なイラストなんでしょうね?
表紙詐欺もいいところですわ。
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「さて、わたくしのルームメイトは果たして来られるのかしら?」
高等部の入学式当日の朝、神琳は食堂のテラス席でTボーンステーキを骨ごと食べながら未だに入寮していない王雨嘉を待っていた。
彼女が乗った飛行機が消息を絶ったのが一週間前、通常であれば生存は絶望的である。
通常であれば。
「ここ空いてる?」
「……ええ、どうぞ」
クマノミの塩焼きが山のように積まれた皿をテーブルに置き早速食べ始めたのは……まさしく王雨嘉その人であった。
特注の白い制服は鍛え上げられた筋肉ではち切れんばかり、太長い四肢も傷一つ無く新品のコンクリート柱を思い起こさせる。
さらに顔が良い、良すぎる、そのまま撮影会ができそうなほどに。
行方不明になっていた人物とは思えないその風貌に神琳の興味が高まった。
「わたくしの名は郭神琳。あなたは王雨嘉さんですか?」
「そう、よろしく」
「何故高名な王家三姉妹の次女がわざわざ極東の日本に?」
「あっちはあの二人で十分。腕を磨くなら最前線の日本が最適」
「大した信頼と自信ですね」
そっけない返答に神琳は――
「食後の運動に少し付き合ってもらえますか?」
「いいよ」
力比べをしてみたいという欲望を抑えきれなかった。
「百合ヶ丘の『手合わせ』はご存じで?」
「うん、知ってる」
マッスルマリア像が鎮座する噴水前に場所を移しプロレスのように互いの手と手を組んだ手四つの体勢。
いつの間にか周りには人だかりができていた。
百合ヶ丘生は基本的に戦闘民族であるので私闘・乱闘・決闘は大好きだ。
「さあ、張った張った! 中等部時代は三姫様より危険と言われた郭神琳と王家最悪の戦略兵器の異名を持つ王雨嘉の『手合わせ』ですよ!」
「二水ちゃん、『手合わせ』って?」
「手合わせというのは互いに組んだ手からマギを流し合って勝敗を決める百合ヶ丘の由緒正しい決闘方法なんですよ、梨璃さん」
「けっ、決闘!? ちなみに安全なんだよね?」
「うーん、力の差があればすぐにギブアップして終わりなんですけど、もし拮抗していてどちらも負けを認めないと」
「認めないと?」
「弾けますよ。服とか肉とか骨とか♪」
「えーっ!?」
一柳梨璃の絶叫を合図に始まった『手合わせ』は見た感じ静かな始まりだった。
「……やりますね、雨嘉さん」
「神琳こそ」
互いに涼しい顔で組み合っているが実は激しいマギのぶつかり合いが起きていた。
足元の石畳には亀裂が走り、風に吹かれて飛んできた葉っぱは瞬時に消炭になる。
スキラー数値の低い生徒などは気を失ったり足元に水溜りを作ったりしていた。
だが二人ともこのやりとりを楽しんでいたため止める気は無かった。
その結果が共倒れであったとしても。
互いに譲らずこのまま二人とも弾けるかと思われたその時――
「今年の一年生は元気だな」
「「!?」」
組み合った二人の手の上にしゃがみ込む一人の少女。
瞬く間に荒れ狂うマギの奔流を霧散させた。
「そういうのはヒュージ相手にやってほしいゾ。梅が楽できるからな」
「……お手数おかけしました」
「タック」
「うんうん、素直なのは良いことだゾ」
二人の言葉に満足したのか現れた時と同じように一瞬で姿を消す。
「き、消えた!?」
「あれは梅様のレアスキル縮地ですね。あ、引き分けに賭けていた鶴紗さんの総取り、もしかしてファンタズムで未来を見ましたか?」
「ノーコメント」
「ううっ、お菓子代が。百由様に借金するかのう……」
「ありがとう梅。わたしには真似できないわね」
「夢結は不器用だからな。サボりを見逃してくれるならいつでも手伝うゾ」
「それとこれとは話が別よ」
「あら、もう終わりですか。茶番にしては短かったですわね」
その様子を漆黒の愛馬の上から眺めていた少女が一人。
優雅に傾奇者が持ちそうな長大な日傘を持つがその目は獲物を狙う猛禽類。
その目はある一人の少女の臀部に狙いを定めていた。
「あの桃色の髪の少女は興味深いですわね」
「…………」
またご主人様の女癖の悪さが。
呆れつつもグランギニョル号はこれからご主人様のセクハラの被害に遭うであろう少女の無事を願った。
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「いやいやいや、何故雨嘉さんも一柳隊の皆さんも筋肉ムキムキですの!?」
「やっぱり雨嘉ちゃんの画力はリリィ界随一だね」
「えへへ、嬉しいです」
わたくしのツッコミを無視して和気あいあいなお二人、少しイラつきますね。
戦闘に学業に訓練に夜戦と忙しい日々の間にコソコソと何を描いているのかと思えば……。
「雨嘉さんはもう少し体を労わるべきです」
「神琳だって撮影とかインタビューとか忙しいでしょ?」
「それは……」
雨嘉さんに返す言葉もありません。
だってそれは――
「故郷奪還のための国際世論醸成でしょ?」
「……そういう狙いもありますが」
小賢しい自分が見透かされているようで目を合わせられません。
仕方がないので雨嘉さんがここに至った原因であろうお姉さんを睨みます。
「色々な層に興味持ってもらった方が良いでしょ?」
「そうだよ神琳。無名より悪名だよ」
お二人の気持ちは嬉しいのですが……百パーセントの善意って性質が悪いですね。
果たしてこれが故郷奪還の役に立つのか……漫画のページをぺらり。
ちびっ子一号:172cm&88kg、ちびっ子二号:173cm&80kg、でもこの辺はギャグですよね?
「ちなみに次回は『佐渡島に風穴開けます♪ 新潟奪還戦の裏でうっかり定盛』をお送りするよ。これが雨嘉画伯の予告絵」
「……なんでひめひめと灯莉さんを小脇に抱えてガンシップに飛び乗ってるんですか!? しかもお二人は普通に華奢な美少女に描かれていますよね!?」
「私にだって分別はあるから」
やっぱりこの人苦手です!
○リリィ風邪
闇の中に沈んでいくわたくしの体。
結局何も成せないまま兄さんたちの元へ。
ああ……ごめんなさい、わたくしが、わたくしが。
叫びは声にならずただ沈んでいくだけ……。
最後の悪あがきに伸ばした手を取る人は誰も――えっ!?
「――――っ!」
聞いたことのあるような声がわたくしを呼びます。
その声に向かって手を全力で――届きました!
力強く引き上げられていくわたくしの体。
ああ……ありがとう、ございます。
「大丈夫?」
「……なんだ、お姉さんでしたか。失礼つい本音が」
「雨嘉ちゃんだと思った? 残念でした」
「雨嘉さんに謝ってください……あれ、わたくしは一体?」
自分の置かれている状況が分からず辺りを見回すと見知らぬお部屋、とりあえずベッドに寝ているみたいです。
お姉さんに乱暴されたわけでは無さそうですが気怠さがあり軽い頭痛も……。
「リリィ風邪で倒れていたから隔離中なの」
「ああ……なるほど」
リリィ風邪、正式名称は別にありますが長いので通称の方がよく使われます。
原因は不明ながらも風邪と似た症状とスキラー数値やマギの一時的低下というリリィにとっての大敵です。
罹ってしまったら念の為隔離されますし。
今日は雨嘉さんや仲間たちと会えなそうですね……。
わたくしが心細そうな表情をしているからなのかお姉さんがじっと見つめてきます。
大丈夫ですからあまり見つめないでください。
「ヨーグルト食べる?」
「はい」
こうして影響を受けない、受けても影響が少ないスキラー数値が低い人にお世話をされるのが一般的ですね。
この歳になってお世話をされるのは少し恥ずかしいですが、体を起こすのさえ怠いので仕方ありません。
「はいお口開けて」
「はむ」
冷たくて美味しいです。
台湾は気候的に面積的に乳製品が高くて毎日は食べられませんでした。
日本に来て感動した記憶もあります。
あの頃は一人で寂しくて……ましてや寝込んでしまったら。
駄目ですね、あれから何年も経ったというのにとても不安になってきました。
まるで自分以外がいなくなってしまうような……。
……こういう時こんな人でも近くにいると安心できますね。
雨嘉さんや樟美さんという引っ込み思案な方々と妙に仲良くなるのが上手いという安心できないお姉さん。
その点だけでも警戒を要すというのにたまに見透かされるような恐怖を覚えます。
考えすぎでしょうか?
今はボーっとしてされるがままですけど。
「体温計脇に挟むよ」
「んっ、つめたっ!」
「…………まだちょっとあるみたい。横になる?」
「……うん」
「その前に口ゆすごうか」
そう言うとお姉さんは水の入ったコップと洗面器を持ってきてくれました。
言われるがままに口をゆすぎ洗面器に吐きます。
……自分の排出したものを見られるのは仕方のないこととは言えちょっと複雑な気分ですね。
それが終わり再び横になります。
はぁ……先程より少し楽になった気がします。
「はい、濡れタオル」
「ふぅ……」
額から熱が吸われていく感じがこの上なく気持ち良いです。
ふと家族が誰一人欠けていなかったあの頃を思い出してしまいます。
私が熱を出した時には必ず誰かが付き添っていてくれて……。
「さてと、私はそろそろ――」
「いかないで……あっ」
思わずお姉さんを引き留めてしまいました。
普段邪険に扱っているというのにこんな時だけ……。
何て我儘なんでしょう。
「――と思ったけど神琳ちゃんの可愛い寝顔を独り占めできるんだからまだいるよ」
「……いじわる」
声に出さずに「でも嬉しい」と付け加えます。
病気のせいで心が弱っているから仕方ありませんね。
「おはなしして」
「じゃあ、昔々あるところに――」
お姉さんのお話はどこかで聞いたような昔話でした。
故郷を逃れた女の子が新天地で友や強敵と出会い成長して再び故郷に戻るというお話。
わたくしもそんな風になれたらいいですね……。
優しくわたくしの頭を撫でるその手に次第に意識は薄れ…………。
「ご心配おかけしました」
「神琳!」
一柳隊の控室に入るなり抱き着いてきた雨嘉さんを優しく抱きしめ返します。
ああっ、これですよこれ!
やはり神琳×雨嘉こそ至高です!
隔離部屋での出来事はあってはならない気の迷い、ということにしましょう。
「おめでとうございます、神琳さん。食堂のお姉さんからお祝いが届いてますよ」
「まあ、なんでしょ、う!?」
梨璃さんが指し示したのはフルーツヨーグルト、使われているのはマンゴーやパイナップル等何れも台湾の名産品だった物です。
わたくしの記憶が確かなら近場で入手できないものまでちらほらと。
まさか看病されていた時に「食べたい」とか「美味しかった」とか余計なことまで口走ってしまったのかも……。
それに今思えばあの時のわたくしの態度は肉親に甘える子供そのもの――
「神琳、顔赤いけど大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫です! さあ皆さんでいただきましょう。乳酸菌でリリィ風邪予防です!」
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
<備考>
郭神琳:黒歴史を克服した貴重なツッコミ枠。
王雨嘉:天の秤目を応用した複原稿同時インク飛ばしベタ塗りも可能。
二川二水:胴元の取り分は半分。
世紀中救世主伝説:各ガーデンに愛読者がいる。
グランギニョル号:でかい。
読みたい視点(LGグラン・エプレ編)
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今叶星
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宮川高嶺
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土岐紅巴
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丹羽灯莉
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定盛姫歌