再就職先は百合百合ですか?   作:政影

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小説二冊読了、百由様のマッドっぷりと壱盤隊のギスギスが癖になりますね。
本作は一応ラスバレ世界線()ですが。


振り向けば尊死(後編)

??? 御台場

 

 

「……撃て」

 

 私の合図で発射されたロケット弾がスモール級ヒュージ「グンタイアリ」に直撃し四散させた。

 そして爆発の余波で動きの鈍った数体の関節部を部下と共に対物ライフルで打ち抜き進軍を遅らせる。

 ここに至るまでに何度かリリィの援護はもらえたものの民間人の避難は未完了でありこうして遅滞戦闘を継続していた。

 

 弾薬の残りは心許ないが補給を受ける暇はない。

 手持ちで何とかするしかないわけだ。

 

「敵の群れが富士見橋へ!」

 

 部下の報告に最悪の想像が頭をよぎる。

 富士見橋のその先にあるのは東京都をヒュージから守る光壁システム、もしそれが破られたとしたら?

 

「……橋を爆破するだけの火薬はあるか?」

 

「それは――」

 

 

「あら、そんな相談無意味ですわよ?」

 

 

 突然の少女の声に振り向けばそこには見たことのない三人の……リリィ?

 CHARMらしきものを持っているのでそう判断した。

 都内からの新手な助っ人……そんな連絡は受けていないが。

 

「お二人とも行きますよわよ」

 

「わーい、らんいっぱいやっつけるよー」

 

「ちょ、純様に藍さん!? あーもう、防衛軍の皆様は避難誘導よろしくお願いしますね!」

 

 駆けだしていくリリィたち。

 突然の出来事過ぎて意味が分からないが呆けている暇は無い。

 守るべき民間人はまだ多数、こちらも給料分は働かないとね。

 

 

 

****************************************

 

 

 

「……凄くご都合主義な夢を見た気がする」

 

 気が付けば朝、今日も一日元気に頑張っていきましょう。

 何故か眠っている藍ちゃんに抱き着かれているので朝からウルトラハッピーですね。

 

 ……安心しきって眠っているようでいつもより更に幼いそのお顔。

 人差し指で頬っぺたを押すと凄くプニプニ……意地悪したくなっちゃう恋花ちゃんの気持ちもよく分かります。

 まあこれ以上は全力で我慢しますけど。

 

「んっ……おねえさんおはよう」

 

「おはよう、藍ちゃん♪」

 

 ちょっとプニプニし過ぎちゃいましたかね、反省。

 さあ折角のスイートルームなので豪華なお風呂でも……あれ、昨日寝る前に入った記憶が……。

 

 寝惚け眼の藍ちゃんに気を付けながら体を起こすと横に純ちゃんが楓ちゃんの胸に頭を埋める形で眠っていました。

 

 

「姉様♪」「梨璃さん♪」

 

 

 ……幸せな夢を見ているようなので良しとしましょう。

 そしてテーブルの上にはトランプやらボードゲームやらお菓子やらジュースやら……そしてお高そうなワインの空瓶も何本かありますね。

 床にはツイスターゲームのマット、えっ、凄く大事な記憶が抜け落ちてませんか!?

 美少女リリィが三人でツイスターゲーム、どう考えても天上の光景でしょうが!

 全く覚えていない自分が憎いです。

 

 それはさておきさっさとお風呂にでも入りましょうか。

 美少女に悪臭は嗅がせられません。

 

「らんも入るー」

 

 持ってくださいよ、私の自制心。

 

 

 

 

「はーい、流すよ」

 

「うん」

 

 上から下まで隅々までしっかり洗った藍ちゃんをシャワーで洗い流します。

 落ち着け、落ち着け、相手はただの天使ですよ。

 イヤらしい目で見てはいけません。

 

 ……ふぅ、すっかり奇麗になりましたね。

 実験痕と思われる傷もすっかり治っているので一安心です。

 人類の未来の為とは言え幼気な少女に人体実験なんて……楓ちゃんには偉そうなことを言いましたが正直はらわたが煮えくり返っています。

 もし叶うのであれば――

 

「おねえさん、顔こわい。らんいけないことした?」

 

「あ、あはは、ごめんね。藍ちゃんはとっても良い子だからそんなことないよ♪」

 

 いけませんね、藍ちゃんを不安にさせたら。

 つまらないことを考えるのは一人になってからにしましょう。

 

「そうだ、らんが体あらってあげる!」

 

「えっ」

 

 言うが早いかボディスポンジにたっぷりとボディソープを含ませ泡立てる藍ちゃん。

 そして十分に泡立ててから私の体を擦ります。

 てっきりハードな洗い方だと予想していましたが意外や意外、優しくて繊細なスポンジ使いです。

 

「藍ちゃん上手だね」

 

「いつもヘルヴォルのみんなの体をあらってるから」

 

「それは凄いね♪」

 

 一瞬、千香瑠ちゃん瑤ちゃん一葉ちゃんの裸体を想像しかけましたが色即是空で打ち消しました。

 精鋭ヘルヴォル何するものぞ、です。

 

「おねえさん、傷たくさん」

 

「気持ち悪いかな?」

 

「ううん、いたそうだなって」

 

「藍ちゃんは優しいなぁ。でも大丈夫、昔の傷だからもう痛まないよ」

 

「よかった」

 

 天使の様な言動に目頭が熱くなりました。

 ……私の心の傷の方も何とかしませんと。

 

 

「お二人だけで朝風呂とは感心しませんわよ?」

 

「お邪魔いたしますわ」

 

 

 何も身に付けずバスルームに現れた純ちゃんと楓ちゃん。

 まあ私と藍ちゃんも全裸ですが……これが「狂乱の姫巫女」と「百合ヶ丘の至宝」の破壊力!

 湯気が多めで助かりました。

 

「藍ちゃん次は二人を洗ってあげて」

 

「はーい」

 

 洗い場が少し手狭になったので浴槽に避難します。

 流石スイートルーム、浴槽まで巨大ですね。

 そしてボタン一つで泡とかミストとか出てくるなんて羨ましいです。

 ……スーパー銭湯には電気風呂がありますけどね!

 

 

 

 

「楓さん、感謝いたしますわ」

 

「いいえ純様、元はと言えばわたくしの我儘。付き合ってくださりむしろこちらこそ感謝しておりますわ」

 

 ちらりと純ちゃんと私の間に座っている藍ちゃんに目をやる楓ちゃん。

 同じルナトラ持ちだからなのか純ちゃんに懐いているみたいですね。

 純ちゃんがいてくれたから安心できたのかも知れません。

 

「それに……お姉さんの裸を見ることもできましたし」

 

「そう言えば一緒にお風呂に入る機会なんて無かったからね……えっ、見たかったの?」

 

 流石にその発想はありませんでした。

 だって梨璃さん第一主義の楓さんがまさか私をつまみ食いなんて……。

 

「か、勘違いしないでください! 自己紹介の時に話された戦歴が本当かどうか確かめたかっただけですわ!」

 

「普段見える部分にはあまりないからね」

 

 改めて自分の体を見ると……傷のせいで女子力マイナスかも。

 

「……武人の誉ですわね」

 

「んっ!」

 

 純ちゃんの長くて美しい指が私の古傷を優しくなぞります。

 こそばゆいので思わず変な声が漏れちゃいました。

 でも褒められて嬉しいです。

 

「疑って申し訳ございませんでした」

 

「いいよ別に。というか最初から脱げって言えば脱いだのに」

 

「それではわたくしがまるで変態ではございませんか!?」

 

「えっ?」

 

「『えっ?』じゃございません! 全くわたくしを何だと」

 

 怒らせちゃったみたいです。

 普段から梨璃ちゃんのお尻を撫でまわしているからてっきり……認識の修正が必要ですね。

 梨璃ちゃん以外には常識的な言動をする、っと。

 

 うんうん、裸の付き合いって大事ですね。

 

 

「あ、そう言えばらんゆめの中でヒュージたくさんたおしたよ。きいたんよりも楓よりも!」

 

「!」「!」

 

「そっかぁ、私も藍ちゃんたちに助けてもらう夢を見たよ。ありがとう」

 

「えへへ」

 

 嬉しそうに笑う藍ちゃん、このまま百合ヶ丘に連れて帰りたいレベルですね。

 今は無理なので頬っぺたをなでなでするだけですけど。

 

 

「……御台場迎撃戦、楓さんも未参加でしたわよね?」

 

「ええ、あの場にいたのは当時の一年生のみでしたからわたくしのいる筈のない戦場、っと失礼いたしました」

 

「別に……遊学中でいなかったのは事実ですわ。それよりもその反応、あなたも御台場迎撃戦の夢を?」

 

「おそらくは。資料で見たグンタイアリそっくりでしたし富士見橋も健在でしたわ」

 

「四人同時に同じ夢、少し気になりますわね」

 

「それには同意しますが……はしたなくも少し興奮いたしましたわ」

 

「ふふっ奇遇ですわね。――ピンチに駆けつけ救援からの反撃」

 

「そして鮮やかな逆転劇。たとえ夢の中だとしても一人の女性を悪夢から救えましたわ」

 

「リリィとして昂るのは当然ですわね」

 

 

 何だか楓ちゃんと純ちゃんが楽しそうにお話していますね。

 部分的にしか聞こえませんでしたが私も昂ってきました。

 是非二人の対談記事をリリィ新聞に載せてみたいですね。

 帰ったら二水師匠に相談してみますか。

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました! ほら、藍も」

 

「ありがとう、きいたん、楓、おねえさん」

 

「別に構いませんわ。お礼なら戦場でお返しなさい」

 

「はい、血反吐を吐いて精進いたします!」

 

 おー、一葉ちゃんが燃えていますね。

 バリバリの体育会系同士ウマが合うんでしょうか。

 

 まさかのリムジンでのエレンスゲ女学園までの移動、降りたら注目の的で少し気恥ずかしかったです。

 他の三人の堂々とした振る舞いは格好良かったですね。

 そしてわざわざ付き合ってくれた純ちゃんに感謝です。

 

 ……一葉ちゃんには昨日のお泊りについては藍ちゃんの体調不良と伝えてあります。

 治りの遅かった傷についても藍ちゃんが気にしてるから本人には言わないでと念押ししましたが、もし同様の実験が続いたら……。

 

「お姉様」

 

「千香瑠ちゃん……ちょっとお節介が過ぎたかな?」

 

「いいえ。お姉様はお優しいですから……」

 

 心配そうな表情の千香瑠ちゃん。

 大事な妹分にこんな顔させちゃうなんて駄目ですね。

 いつもの元気だけが取り柄の食堂のお姉さんに戻らないと。

 

「可愛い子限定だけどね♪ 今度みんなで遊びに行こうか?」

 

「は、はい!」

 

 私のやれることは今のところこれくらいですかね。

 後は帰って梨璃ちゃんにお土産を渡して――

 

 

「あっ、隊長じゃん」

 

「おっ、日の出町の」

 

 

 聞き覚えのある声に振り向けば日の出町で世話になったリリィがいました。

 あの時のマディック三人娘も一緒ですね、無事で何よりです。

 

「あれ、雰囲気変わった?」

 

「防衛軍辞めて今は百合ヶ丘の学食で働いてるから。そっちこそ可愛くなったね」

 

「臆面もなくそんなこと言う? ……あれ、除隊したってことはリリィと個人的な付き合いしても問題ないんだよね?」

 

「守秘義務に違反しなきゃね。あの時のお礼に四人まとめて今度飯でも奢ろうか?」

 

「マジ!? とりま連絡先交換しよ♪」

 

 あの惨劇を乗り越え立派に成長した彼女、生きてこそですね。

 自分が何かしたわけではありませんが嬉しくなります。

 

「…………」

 

「どうしたの千香瑠ちゃん、私の腕なんか握って」

 

「さぁ?」

 

 にっこりと笑う千香瑠ちゃん。

 何でしょう、軽く圧を感じますが……そんな千香瑠ちゃんも可愛いですね。

 彼女のほっそりとした指が腕に食い込んでドキドキします。

 

 

 

 まあなんにせよ、帰ったらまたバリバリ働きますか!

 リリィたちが少しでも頑張れるようにお料理頑張っちゃいますからね♪

 

 

 

 

 

 

○世紀中救世主伝説(新潟奪還戦の章)

 

 

****************************************

 

 

 2052年、ファーヴニル討伐を最終目的とする新潟奪還戦は最終局面を迎えていた。

 

 佐渡ヶ島においてファーヴニルに肉薄する百合ヶ丘、柳都の精鋭リリィたち。

 

 一方その頃郭神琳はというと相澤一葉の操縦するガンシップに王雨嘉、ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス、丹羽灯莉、定盛姫歌と共に搭乗していた。

 

 

 

 

「ごめんなさい、ひめひめ。これでは間に合いそうにありませんね」

 

「め、滅相も無いです!」

 

「落ち込まないでよ、定盛。今度おにぎり百個あげるから」

 

「いらないわよそんなに! それにひめひめよ!」

 

「まあ、ひめひめは小食なんですね。余りはわたくしがいただきますわ」

 

「神琳は五百個食べることもあるからね」

 

「油断したらわしらの分も無くなってしまうからな」

 

「…………えっ!?」

 

 和気あいあいとガンシップ内で話に花を咲かせる五人、だが会話しながらもCHARMの整備を行っていた。

 次の会敵に備えて。

 

 

 神琳、雨嘉、ミリアムの三人が百由特製マギカノン五丁と共に百合ヶ丘から姿を消し、数時間後に一葉の操縦するガンシップがテスト飛行コースを外れ三人を収容。

 そして神庭女子にて飛び降りた神琳が灯莉と姫歌を小脇に抱えて跳躍し再びガンシップへ。

 現地にて奮戦中の百合ヶ丘、柳都、御台場の邪魔にならないようあえて迂回して日本海側から佐渡ヶ島へ。

 鮮やかな無断外征の手際に対し後に「疾風神琳」「神風定盛」の異名が付けられたという。

 

 ただ敵の妨害が予想以上に激しかったのは計算違いだったが。

 

 

『敵第十波来ます!』

 

「了解ですわ、一葉さん。次はわたくしと雨嘉さんの番ですわね」

 

「今回も撃墜数は負けない」

 

 操縦席からの一葉の通信にハッチを開き翼の上に寝そべる神琳と雨嘉。

 襲い来る飛翔型ラージ級ヒュージの大群。

 それでも神琳の表情は変わらなかった。

 

「大事なデートの前だというのに、しつこい殿方は嫌われますよ?」

 

 

 

 

『無線傍受、ファーヴニル討伐完了したようです。申し訳ございません、神琳さん、姫歌さん』

 

「いえいえ、一葉さんこそ長時間の操縦お疲れ様でした。謝るべきはわたくしの判断ミスですわ」

 

「とんでもないです! 結果的に誘引の役割を果たしたのでひめかたちの勝利ですよ!」

 

「まぁ、ひめひめったら♪」

 

「きゃっ!」

 

 自分を気遣ってくれる姫歌を優しく丸太の様な腕で抱きしめる神琳。

 憧れのアイドルマッスルリリィに抱きしめられ満更でもない様子の姫歌。

 多少骨は軋んでいるが。

 

『ま、待ってください。佐渡ヶ島に再び暗雲が!』

 

「一葉さん、急行してください」

 

『了解です!』

 

 妙な胸騒ぎを感じた神琳。

 それは十数分後に現実となった。

 

 ファーヴニルの討伐されたと思われる場所に生物のように集まっていくファーヴニルの破片。

 そこには生きているヒュージも集まり同化していく。

 

 

「……まるでゾンビですわね」

 

『中禅寺湖にいたジャイアントゾンビの影響でしょうか? キヴァタテオがその死体を取り込んだという情報も上がっています』

 

「そんな……神琳さん!?」

 

 姫歌の悲鳴のような問いかけに目を閉じた神琳は六秒後ゆっくり開いた――闘志を今まで以上に漲らせて。

 

 既に激戦を終えた百合ヶ丘、柳都のリリィたちは撤収済み。

 ならばやることは一つ。

 

「北欧神話のファフニールは金を抱擁するものでしたか」

 

「っ! そうだね神琳、そしてゲヘナの研究所は金山跡地」

 

「つまり……どういうことじゃ?」

 

「山ごとふっ飛ばせばいいってことだよね?」

 

「はぁ!? そんな単純じゃ――」

 

「灯莉さんの言う通りですわ。三途の川の渡し賃には多いと思いますがとっとと現世からご退場願いましょう」

 

「そういうことなら百由様のマギカノンの真価を発揮する場面じゃな」

 

「ふふっ、百由様とミーさんは本当に美味しい所を持っていきますね」

 

「これをこうして……こうじゃ!」

 

 ミリアムの手により五つのマギカノンが一つの超兵器――フンフヴェルトデラックスメガカノン――になった。

 

「ぼく昔特撮番組で見たよ。カッコイイね、定盛!」

 

「ひめひめよ! もう何でもいいわ、風穴開けるわよ!」

 

 

 こうして新潟奪還戦最後の戦いの幕がひっそりと、いやド派手に上がった。

 

 

****************************************

 

 

「その時期はまだひめひめと面識がありませんよ!?」

 

「ほら、月刊チャームマガジンのサイン会で知り合ったって設定で。姫歌ちゃんの故郷の新潟奪還の手助けなんて神琳ちゃんにピッタリじゃない?」

 

「……その言い方はずるいです。まあ娯楽作品としては良いのではないでしょうか、関係者に怒られなければ」

 

「ちゃんとフィクションって明示してあるから大丈夫だよ」

 

 雨嘉ちゃんが描いた漫画の感想を神琳ちゃんに聞いたらそこそこの評価がもらえました。

 みんなでワイワイやりながら「わしの頭の中の物語」を作品にするのは楽しいですね。

 さーて次はどんなお話にしようかな?

 

 

 

 

『――次のニュースです。ファーヴニル討伐後に突如できた佐渡ヶ島の佐渡森湖ですがトキの生息が確認され――』

 

 

 




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。


<備考>

楓・J・ヌーベル:お使い完了で梨璃に褒めてもらいご満悦。

船田純:富士見橋を爆破した菱田治にカレーを振る舞い困惑された。

佐々木藍:何故か恋花が優しくて警戒した。

定盛姫歌:愛読者。

丹羽灯莉:ユニコーン定盛のイラストを寄稿。

登場人物の紹介は端折ってるけど必要?

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