――感染者雇用について ネフィリム社CEO兼会長クラビス・カーバイン
カジミエーシュの大騎士領、高速道路にて行きかう自動車の中にひと際目立つ高級スーパーカーが走っている。
そのスーパーカーに乗る人物が二人、今も注目の的であるネフィリム社の代表取締役会長兼CEOとその護衛で車を運転する人物だ。
「今回の商談中々いい感じでござったなぁ、このまま順調に行けば一気に製造業のシェアを拡大できそうでござる」
「ええ、とはいえやはり油断は禁物でしょう、最近は商業連合会も私達の動向を警戒していますし」
「あちらさんの恨みを多く買ってるでござるからな、社長は」
「まぁ、やり過ぎた自覚はありますがそうでもしなければネフィリム社をここまで成長させることは出来なかったでしょ」
「拙者らがいなければとっくにお陀仏でござったろうな」
ハハハと護衛の人物は笑い、それに釣られて社長と呼ばれた人物も苦笑を返した。少なくとも護衛の人物が言ったことはそう間違いではないという自覚があったからだ。
その自覚があるからこそ、事前に彼のような人材を雇用していたのだった。
「とはいえ、起業から数年でネフィリムを大企業に押し上げられたのはカルカラ副CEOとグレズの彼のおかげではありますよ」
「なるほど、来たばっかりだと人材の当てなんてないでござるからな、いい人と巡り会えたんではござるなクラビス社長は」
「まぁ、人との良縁はカオスフレアとしての特権でしょうかね」
そうして今は会社に残っている副CEOを思い出しながら、カジミエーシュの夜景を見る。高速道路から見るカジミエーシュの夜景はそれなりに美しく思えた、だがこの光景の上にいる連中がクラビスには気に入らなかった。
そのことを護衛の人物が察したのかチラリとクラビスの方を見た。
「何やら気に入らなさそうでござるな」
「……少しばかりこの夜景を見ていると商業連合会の上の人達の事も頭によぎりましてね」
「ハハーン、あれらが自身の上にいるのが気にいらない?」
「否定はしませんよ、彼等を従うべき対象とは思えませんし、何より私が従うのはペテルセン会長ただ一人なのですから」
「なら、どうするでござるか」
「無論、いずれ引きずり落としますよ、大掛かりな準備が必要そうですがね、貴方とは長い関係になりそうですね光正さん」
「りょーかいりょーかい、給料分の仕事はするでござるよー」
光正の軽口な返答を耳に入れながらクラビスは再びカミジエーシュの夜景を見た、商業連合会の上層部を引きずり落とす、即ちこの国の支配者を引きずり落とすと同義、
道のりは困難なものになるだろう、だからこそだろうからクラビスの胸の内は熱く燃えていた、ふとこの胸の熱さはいつ以来かと考えて苦笑する。
(いやはや、どうやら私もこの状況を意外と楽しんでいるようですね、この気持ちはペテルセン会長と争っていて時以来ですか)
そう独白しフッと笑みを浮かべ夜景を見るのを切り上げる、そして前を見据える、高速道路も終わりが近づいてきた頃だ。
「戻ったら次に移るための準備をしておかないといけませんね、商業連合会からの妨害すらも問題にならないようなね」
「それは構わんでござるがな、あんまり無理しすぎて過労で倒れられても困るでござるよ」
光正からの一言に苦笑し、肩を竦めることで答えてから自身のノートパソコンを広げ今集まっている情報を取り出す。
【戦略分析】【エグゼクティブ】
若いながらも企業の戦略を立て推進するCEOであるその頭脳が自身の会社が置かれている状況を分析し始め、戦略と次に出す指示を思考し始める。
(結局のところ商業連合会も一枚岩ではない、そこを突いて行くのが基本となりそうですね、だとすれば――)
そうして彼がネフィリム社を次に進めるための方策を考えている間にも夜は更けていき、車はネフィリム社本社へと向かて最後の加速が行なわれるのだった。
◇────────◇
ネフィリム社本社、その最上階にて一人夜景を肴にしワインを飲む男、ネフィリム社副CEOたるカルカラがそこにいた。
「ふふん、こういった悪の親玉みたいなことをやるのもたまには悪くないものだ」
「……何やってるんだアンタは」
ガラス張りの窓に立つカルカラに対し呆れたように息を吐きながら部屋に入ってくる男、その男にカルカラは振り向いた。
「やあやあ、よく来たねウェッジ・グリンプス君、紅茶でも飲むかい?」
「いらん、そんなことより俺を呼んだ目的を話せ、今何時だと思っているんだ」
「そうだねぇ、もうすぐいい子は寝る時間だからすぐに本題に入ろうか、立ったまま話を聞くのもつらいだろうから座りたまえよ」
そう言ってカルカラは部屋に備え付けられたソファーの対面に手を指し誘導する、その誘導に乗るようにウェッジはソファーに座った、それを満足げな顔で確認したカルカラが口を開いた。
「さて、今年の共同巡回もそろそろだが、部隊の準備は万全かい?」
「ああ、準備の方は終わってる、後は正式な命令を待つだけだ」
「それは重畳、NSSに感染者隊員を増やしていたからねぇ、何かしらトラブルのせいで機能不全起こされては困るから、問題なくて良かったよ本当に」
カルカラはテーブルに用意していた資料を手に取る、それは今現在のNSSの状況が記されておりそれを確認しながらカルカラは会話を続けていく。
「ふむ、感染者の隊員たちは中々努力しているようだね、関心関心」
「この世界において感染者ってのは腫れ物扱いだからな、アイツらを雇おうって奴らはこの国においては俺達以外にいない、だからアイツらも必死にもなるさ」
NSS資料にある感染者の項をカルカラは興味深げに確認する、そこに書かれている感染者の隊員達の評価は良くしっかりと訓練に対しても真摯に取り組んでいると書かれていた。
更に全体的に非感染者の隊員達とも問題なく付き合えてあると記載されていることに、カルカラはうんうんと頷いた。
「非感染者隊員と感染者隊員の連携にも問題なさそうなのは何より、軍隊として不仲なのは致命的なミスを引き起こしかねないからねぇ」
「そいつはアンタが支配してる連中から派遣された奴らの功績だろうよ、アイツらの"教育"は差別者に対しても効果覿面だからな」
「ははぁ、そう言ってくれるのは嬉しいね、協力してこの会社の為に人材を引っ張って来たかいがあったよ」
そう言ってニッコリとカルカラは笑顔を作った、まるで楽しそうだとウェッジは思いこの男の素性を思い出す。
【いにしえの支配者】【大魔王】【魔王軍】
オリジンに存在する魔王、その中でもとりわけ強力な大魔王の一人であり強大な魔王軍を有している有力者。
その様な存在がなぜ自身がトップに立たず、自身の魔王軍を提供しナンバー2の立ち位置にいるのか、それがウェッジには分からなかった。
「んん~?どうしたんだい私を見て、私のハンサムな顔に身惚れてもしたのかい~、いや~私も罪深いものだなぁ」
「なんでもねぇよアンタの面見てても面白いもんなんてないしな、そんで確認したいことはそれだけか?」
確認の声が届くと共に手に取った資料を確認し終えたカルカラは資料から目を離しウェッジに目を向ける。
「いや、あともう一つくらい質問があるね、歩行戦車大隊は境界都市へとしっかり送り出したかい?」
「ああ、今回の共同巡回の先行部隊ってことで送っといたがなんか問題あったか?」
「問題ないと言えば問題ないけど、強いて言うなら国境ラインのウルサス軍を刺激するかも知れないってことかな」
「そうだな、連中はウルサス事変の失態のせいで権威を取り戻すための機会を狙ってるからな、イチャモン付けられる可能性はあるか」
ふむとカルカラは手を顎に当て考える、もしもその件でネフィリム社が不利益を受けるかどうかを無論その事に対する反論は何個か思いついているが、これ以上はクラビスと相談してからと思考を打ち切る。
「まぁ、起きたらその時はその時だねぇ、いい感じの弁明をするさ政府が」
「丸投げすんのかよ、おい」
「政治的なことは政治家が何とかするのが筋だからね、仮にも主権国家体制なんだからさ」
「裏から政治を牛耳ってる会社の組織の副社長がいうことかよそれが」
「ハッハッハ、文句は商業連合会に言ってもらわないとネ、ネフィリム社は国家寄りだし?」
笑いながら首を傾げて平然とネフィリム社は悪くないと言わんばかりの言葉を口に出すカルカラにウェッジは呆れたように溜息を吐いた。
「たく、監査会からまた何か言われたらどうにかしろよ、NSSの軍備増強の件で色々言われたんだからよ」
「分かっているさ、あの時は政府からの依頼を優先的に受けることで決着にしたが警戒されてるのは変わらないからねぇ、今度ウルサスがイチャモン付けてきたら何を言われる事やら」
カルカラが頭を掻いて立ち上がった、それを会談の終わりの合図と言わんばかりにウェッジもカルカラに続いて立ち上がった。
「聞くことはこれくらいだろ、俺は戻るが構わないな?」
「ああ、夜遅くまでありがとねー」
終わった終わったと疲れたように出ていくウェッジに、いつの間にやら部屋に持って来ていたBDレコーダーを弄りながら後ろ姿のまま手を振った。
その姿に少し興味を引き付けられたのかドアノブに手を付けながら、後ろにいるカルカラの方向にウェッジは振り向いた。
「何見ようとしてるんだアンタは」
「これかい?お気にの騎士の試合の録画を見ようと思ってね、昼間は忙してみる暇がなかったものでね」
「ふーん、いったい誰なんだアンタのお気に入りってのは」
その疑問にカルカラはウェッジの方向へ笑顔になりながら振り向いて、言った。
「――灰燼騎士、かの魔人さ」
NAME:「クラビス・カーバイン」
〇クラス:星読み ミーム:ネフィリム ブランチ:コーポレート
経歴:エルダという惑星からオリジンへと渡ったネフィリム・コーポレーションの重役。オリジンでも重要な支社を任せられておりペテルセン会長の信頼も厚い。
元はネフィリム社とは別の大企業のCEOであったが最終戦争の終わりにネフィリム社に併合された、カオスフレアとしては併合された後に覚醒。そのせいでダスクフレア案件を任されることが多々ある。
ネフィリム社においては確固たる地位を確立しており、ネフェリム社のオリジン進出後も多大な貢献をしていた。
テラに自らの率いていたチームと共に転移後はカジミエーシュにおいて株で荒稼ぎした後に、出会ったカルカラとネフィリム社を結成し、自身が率いていた人材とカルカラの人材提供と稼いだ資金によってネフィリム社をカミジエーシュの大企業へと成長させる。
商業連合会とのいざこざはあったもののそれを利用さらにネフィリム社を企業力を強化、カジミエーシュの一大勢力の長として君臨している。
NAME:「荒巻光正」
〇クラス:執行者 ミーム:富嶽 ブランチ:忍者/剣客
経歴:富嶽に仕えている忍者、鵠理忍軍の統領。オリジン進出前からあらゆる任務を熟したベテランであり叩き上げ。
年少の頃から忍者として育てられ、忍者となった後はその腕前から忍軍でも順調に出世し、忍軍の統領へと出世し将軍からも直々に任務を下される身分にまで上り詰めている。
バシレイア動乱の際にカオスフレアとして覚醒し、便利な力として認識して利用している。
テラに忍軍ごとカジミエーシュに転移、しばらくは情報収集に徹していたもののクラビスとカルカラがテラにおいてもネフィリム社を興す情報を入手し自身から忍軍を売り込み無事に忍軍ごとネフィリム社所属となる。
ネフィリム社の諜報機関としてネフィリム社拡大の為の数々の工作を行いネフィリム社拡大に貢献。無冑盟とネフィリム社が対立した際にも個人で大きなダメージを与えた。それによってカジミエーシュの裏で忍軍の名を大きく轟かせている。
NAME:「カルカラ・オリエンス」
〇クラス:星読み ミーム:コラプサー ブランチ:エンシェント
経歴:オリジンでも有数の有力者として君臨していた大魔王。マイペースでありちょくちょく自分の姿を隠してオリジン中を旅をしていた。本名は別にある。
嘗て発生したの古代の大戦から生き続ける古参であり、孤界に宿らず飄々と旅をしていた存在。そしてオリジンに流れ着き魔王を名乗り勢力を形成、拡大していった。
カオスフレアとしてバシレイア動乱時に覚醒、これもまた運命かとそれを受け入れ、ダスクフレアと戦うことを宿命として受け入れた。
テラに自身の魔王軍ごと転移した際、自身の魔王軍を率いて秘密裏にカジミエーシュに入り込み勢力を形成しようとした際、クラビスと出会いネフィリム社を興すことを面白そうという理由でクラビスに協力。人材提供などによりネフィリム社に多大な貢献をした。
そして今はネフィリム社の重鎮として活動し、色々と画策しつつ現状を楽しんでいる
NAME:「ウェッジ・グリンプス」
〇クラス:光翼騎士 ミーム:ネフィリム ブランチ:VIPER
経歴:ネフィリム社の会長直属の傭兵団に所属する傭兵。任務達成率が高くペテルセン会長からよく指定で依頼を出される。
元合衆国の軍人であり特殊部隊に所属していたが最終戦争後にネフィリム社直々の勧誘によってネフィリム社のVIPERに移った実力者。
バシレイア動乱の最中にカオスフレアとして覚醒、それによってペテルセン会長からの無茶ぶりに磨きがかかったのに辟易したものの、報酬は悪くないため何だかんだ依頼を受けている。
テラには率いていた部隊員と共に投げ出されたもののサバイバルでテラの大地を探索し、その中でカジミエーシュでネフィリム社が興ったと聞きつけ、カジミエーシュへ急行、クラビスとは知り合いだったため問題なくネフィリム社に雇用された。
雇用されてからはネフィリム社で設立された民間軍事会社NSSの名目上の社長兼教官兼特殊部隊隊長として活動している。
〇TIPS
「ネフィリム社」
カジミエーシュに存在する大企業、あらゆる分野に進出している巨大コングロマリット。
起業から凄まじい速さで各業者へと進出、カルカラの人材供給とクラビスの卓越した経営手腕、そしてグレズの者の技術と工業力により瞬く間にカジミエーシュの各業種のシェアを奪い、一気に大企業へと成長した。
その事により既存の企業の連合体たる商業連合会に敵対視され、無冑盟から刺客を派遣されるがこれを撃退、これによりネフィリム社と商業連合会の裏の戦いが勃発し激しく殺し合ったが、暫くたった後に休戦しネフィリム社が商業連合会に入ることにより決着した。
今現在はその巨大な企業力で商業連合会でも圧倒的な地位を築いているが、実質商業連合会とは別勢力であり冷戦が続いている。