夜明けの火種達   作:ゲイツ

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『いい、マリア、もし灰燼騎士と戦うことになったら即棄権しなさい、彼は貴方が思っている以上に危険で強大すぎる存在なのよ』


                  ――ゾフィア マリアに騎士競技の選手で誰が危険かと問われて


灰燼騎士 配置国家:カジミエーシュ
灰燼騎士 始まり


 閉じていた目を開ける、そうすると見慣れない光景が目の前いっぱいに広がっていた。それに彼は仰向けに寝ていた態勢から少しばかり背を上げて周りを見渡した。

 そこは自身が寝ていた草原ではなく、見渡す限り鉄と人工物によって囲まれた場所であった。

 

「おいおい、俺が寝ている間に何があったんだ?」

 

 ハァとため息をつき面倒なことになったと思って立ち上がり再び辺りを見渡しながら何かあるか探してみるものの、景色は変わらず動くものも見つかりはしなかった。

 

「チッ、ここだけじゃわかんねぇなぁ」

 

 そう忌々しそうに呟いてから辺りを探るために歩き出す、静寂が辺りを支配しているが故にコツコツと足音だけが響かせながら、左右上下くまなく見渡すが変わった景色と言えば、上に伸びるビルが見えただけであった。

 続くつまらない光景に怠そうにため息を吐き出していつの間にか足を止めた。

 

「あー、クソどこ行きゃわからねぇから完全に迷ってる、しかも代わり映えしねぇしよ」

 

 吐き捨てるように悪態を吐き、人工物として加工され何かしらを構成するような鉄、鉄、鉄に苛立ちを覚えて、思わず拳に力を込めて鉄筋コンクリートを殴る、すると鈍い音が響きパラパラとコンクリートの粒子が落ちて、穴が空いていた。

 

「……やっちまったか、まあいいか、俺を苛立たせたのが悪い」

 

 自身があけた穴を一瞥して、呟き改めてどうするかと思い悩む。

 

「こんな所にぶち込まれて、まったく災難だなおい……だが何か意味でもあんのかねぇ」

 

 自身が知らぬこの場所、まったくもってこの場所に降臨させられたことに対する疑問、しかしそのようなことに悩んだとしても今の状況が改善されるわけでもない。

 

「ああー、考えててもしょうがねぇしよ進んで行くしかねえか、そうすりゃ何か見つかるだろうか」

 

         プルガトリオ

 そう彼は言い――『煉獄』バリエスは夜空を見上げながら再び歩き出そうとして、複数の足音が聞こえてきた。

 

「おいおい、お兄さんこんなところで一人で何してんの?散歩?」

 

「ここじゃ見ない身なりだし観光客じゃね?大方、一人で出歩いてて迷ったんだろうな~」

 

 チンピラだ、その身なりに言葉使いどこからどう見てもチンピラであると主張しており、その姿を見たベルセンツは溜息を吐いた。その露骨な行動にチンピラたちはわかりやすく腹を立てた。

 

「おい、テメェ!なんだその態度はよぉ!せっかく人が人助けしてやろうと――」

 

「御託はいい、金が欲しいならさっさと来い」

 

「なっ、良い覚悟だオラァ!」

 

 挑発するバリエスに対し、一気にキレてバリエスへと向かう。だがチンピラ達の挑戦はあまりにも無謀だった、何故ならバリエスは己の実力を隠してなお強力であり、チンピラ達は数秒のうちに鎮圧されるのであった。

 

 

 

 

 

 ◇────────◇

 

 

 

 

 

「カジミエーシュか、色々と面倒な場所みたいだな」

 

 公園のベンチに身を任せて、手に持った新聞紙を見ながら絡んできたチンピラからカツアゲした金で買ったカジミエーシュ関連の本を横目で覗いた。

 

「まっ、そういうのは人が集まると自然に発生する、驚くべきことでもねぇな」

 

 そう言って、買った新聞紙を横に放り投げこれから何をするのかと言う思考にふける。情報はある程度集まった、ここからは自身がこの国で過ごす方法を考えなければならなかった、この国を出ていくにしてもだ。

 

「俺個人に必要ないがなにをするにもまず金がないとな、とはいえ正規の身分がねぇからなあ」

 

 参ったといった感じに頭を掻きながら、金の稼ぎ方に悩む。正規の身分はない存在にとって金を稼ぐというのは中々に難しいことだと分かっていたからだ。

 だが、こういう国では金こそが全てを決める、無論限度はあるだろうが金さえあればこの国で困ることはない、それが今現状のカジミエーシュに対してバリエスが抱いてる結論だ。

 

「だからすぐにでもってわけでもねぇか、俺の時間は無限だ慌てて結論出さなくてもいいかねぇ」

 

 とは言え、やはりこの国で金は必須であるそれ故に軽く金を稼げる場所を考え、ふとピンときたかのように前を向いた。

 

「裏か」

 

 そしてポツリと脳内に浮かんだ単語を口に出す、どの世界にも表があれば裏がある。裏社会、そこならまだ身分のない自分でも稼げる場があるかもしれない、とは言え新参者が早々に稼げる場所などありもしない。

 

「たく、面倒だなチマチマと働きゃなんねぇとはよ、性に合わねえし」

 

 自身がチマチマと稼いでる姿を想像して、顔をゆがめて嫌そうな顔をする。そういう風に金を稼ぐのは彼の主義に反するのだ。

 

「……そういやこの国には騎士競技って言うのがあったんだったな、ならその裏とか地下の競技なんかもあるかもなぁ」

 

 チラリと再びカジミエーシュの本を見て、適当につかむと自身がいる都市の地図を開きアンダーグラウンドがあると思われる場所をある程度割り出し、目印を付けた。

 

「さーて、当たりは付けたがあるかどうかは未知数……まっ、どうにかなると思っておくかね、外れでもまた別のところを探せばいいしな」

 

 そう言って、本を掴んだまま立ち上がると、自然と笑みが溢れてきた。

 

「戦いこそが我が人生、ああ楽しめる相手がいれば良いんだがなぁ」

 

 この自身が知らぬ未知の大地で、将来相まみえる者達の中に自身と戦えるような勇者がいることを期待するかのように笑みが溢れて溢れて仕方なかった。

 そして、戦いの場を目標としてバリエスは歩き出した。

 

 

 

 

 

 ◇────────◇

 

 

 

 

 

 それからはとんとん拍子で闇市に辿り着き、競技場を見つけることに成功し、その勢いのままにバリエスは選手登録をおこないに行った。

 

「よお、ここで登録できるんだろ?闇市の競技場に俺も登録させてもらおうか」

 

 堂々と闇市に競技場にやってきて開口一番の発言、自信と期待に溢れている一人の男を受付は見て上京したおのぼりが来たと感じていた。

 だが、闇市の競技場は来る者拒まずである、自身の感情を抑え出場に関する書類を記入させ、その全ての書類に同意を確認した。

 

「はい、これで登録は完了です、試合に関しましては連絡端末にて連絡しますがお持ちでしょうか?」

 

「いんや、おのぼりなもんでご覧の通り持ってないぜ」

 

「そ、そうですか……コホン、ではこちらから一時的に貸し出します、返却されるまではこの闇市から出ることは禁止されますが」

 

 まるで受付担当の心情を呼んでいたかのように堂々とそう宣言する男に受付担当は一瞬困惑したもののコホンと咳払いをして、貸し出し用の端末を机に置き、バリエスの方へと動かした。

 

「へー、サービスが良いな、闇市の競技場で貸し出してくれるとはよ」

 

「この競技場を作られたスポンサーの意向ですので、選手に対して不備があってはいけないと」

 

「そいつはまた手厚いことで、そんで俺の試合はいつ組まれるんだ?」

 

「早ければ今日の夜にでも、それまでの間はこの競技場の宿でお待ちください」

 

 そう言って受付担当から指し示された場所に目を向ければ、宿であることが示された場所があった。バリエスがそれを確認して受付担当の方に向き直せば笑顔の中に早く行ってくださいという受付担当の意志を感じて肩を竦めて宿に向かうのだった。

 

 それから数時間が立ち外はすっかり暗くよるとなった、ベッドの上で目を瞑っていたバリエスの耳に端末のアラームが鳴った音が届き目を開けて連絡端末に手を出して確認する、そしてその内容を確認しバリエスはにやりと笑いすぐさま準備を終えて宿を出ていった。

 

「初戦だ、楽しめる相手かどうかは分からねぇが発散できる程度には強くあってほしいもんだぜ」

 

 そして再び受付担当の下へと足を運び、係の者によって競技場の待機室に連れていかれた。そこには誰もおらずまた待たされることに対するバリエスはしばし瞑想を行うことにした。

 

「バリエス選手、試合開始五分前です準備をお願いします」

 

 係員の言葉を受けてバリエスは瞑想を切り上げて持ち込んでいた武器を持った、それを確認した係員が行きますと言って移動を開始すると、バリエスもそれについて行った。

 そして、入場用の通路に立ち、係員が会場に出るように促した。それに従いバリエスは競技会場へと歩き、通路の入り口から出ていけば――熱狂的な歓声がバリエスを出迎えた。

 

『皆様!いよいよ本日最後の試合です!最後の最後まで本日の試合を楽しみましょう!!』

 

 今回の競技のメインMCたる競技解説員の言葉に、更なる歓声が競技場を支配する。その熱狂的な歓声の中、解説員は最終試合の進行を行う。

 

『まずは青コーナー!我らが競技場の有望株!グランキッドだー!!』

 

 黒く塗った全身甲冑に身を包み、解説員の言葉と同時に会場内に入ってくるのはバリエスの対戦相手だ。どこか不遜な雰囲気が漂っている。

 

『そして赤コーナー!今回が初参加!実力未知数、しかし自身ありげにやってきた男!その名はバリエスーー!!』

 

 解説員の盛り上げようとする言動と共に入ってくるバリエス見て、ますます観客は盛大に歓声を会場内に響かせる、その歓声にバリエスは気分を良くしながら対戦相手を見据えた。相手もまたバリエスに死線を向けながらバカにしたように鼻を鳴らす。

 

「へぇ、初参加で俺と当たちまったのか不運な奴だなぁ、お前もなんせ俺にぐちゃぐちゃにされちまうんだからよ」

 

 バリエスを見ながら己が手に持つハンマーを見せびらかし、まるで確定した事のようにキッドは話す。しかしその言葉にバリエスは臆するどころかわざと挑発するかのように肩をすくませた。

 それを見たキッドは不機嫌になったのかバリエスを睨んだ。

 

「おいおい、睨むなよさっきまで自信満々だったのは虚勢だったか?」

 

「テメェ、減らず口もそこまでしておけよそれ以上言うと手加減できなくなる」

 

「へー、ぐちゃぐちゃにすると言ってたくせによ、口だけのビビりか?」

 

「テメェ!!」

 

 自身の挑発の言葉を逆に利用され、それによって更に怒りに火が付いたキッド、今まさに吹き上がらんとするキッドを前にして、場が温まりを感じた解説員はすぐさま開始の合図を送る。

 

『さあ場も温まって来たところで両選手、開始位置についてください!』

 

 解説員に促され、バリエスとキッドは移動し位置に付く。キッドは今にも爆発しそうな怒りを溜めこみ、バリエスはそんなキッドを見据えている。

 何処かピリついた空気が流れる中、今か今かと始まるのを観客も選手の二人も待っている、そしてしばらくした後に――試合開始の合図が鳴った

 

「ウオォ!!宣言通りぐちゃぐちゃの挽肉にしてやるよぉ!!!」

 

 開始と同時に飛び跳ねるが如くバリエスに向かって走り出すキッド、その目には怒りの炎が現れており正しく全身全霊で叩き潰しに行く、それに対しバリエスは何も言わず答えずに剣も構えずジッとキッドを観察していた

 

『開始からいきなりキッドがバリエスに一直線だ!それに対しバリエスは見ているだけか、何の動きもなぞ!キッドの怒りに呑まれたのか!!』

 

「動かねぇ?何処までも俺をバカにしやがってよぉぉ!!」

 

 解説、そしてキッドの怒りを吐き出しながらバリエスの前に走り抜き得手たるハンマーを振り上げ力いっぱいに振り落とした、だがその動きを見ていたかのようにスルリとバリエスは回避する。

 

「おいおい、あの程度でキレてんのかよ、お前、頭の血管大丈夫か?はち切れてバカになってないか?」

 

「ほざけやぁ!!!」

 

 再びのバリエスの挑発するかのような言動に、更なる怒りをのせてハンマーによる振り下ろしの攻撃をキッドは続け、バリエスはそれを観客たちに魅せるような動きで回避しまくりながら思考する。

 

(ふむ、力はあるが技量は荒い、筋はあるが今じゃただのチンピラでしかないな、まっここじゃとうぜんちゃとうぜんといえるが)

 

「なにを考えてぇ!俺との戦いは御遊びってか!!」

 

「うーん、そうかもな?」

 

「ぶっ殺してやる!!!」

 

 瞬間キッドの動きが変わる、怒りと力で振り回していたハンマーに未熟な技量をのせ始める、それによってハンマーの軌道鋭さや洗練される、だがそんなものは付け焼き刃に過ぎず、バリエスにとって当たる事すら難しい物であった。

 

『グランキッド、バリエスに向けてもう攻撃だぁ!!しかしそんな猛攻の中でもバリエスは涼しい顔をして連続して回避している!!だが攻めなければ状況は変わらない、どうするバリエス!!』

 

「そろそろ、回避だけじゃあきられそうだな、ならもっと盛り上げようや」

 

 解説員の言葉に反応し、最後に避けてから少しキッドと距離を開ける、そして挑発するように指をクイクイと動かした、瞬間キッドはたまらずにハンマーを動かして一気に攻撃する。

 

「死ねぇヤァ!!」

 

「興奮し過ぎだ、血管がキレるぞっと」

 

 キッドの猛攻に対し、バリエスはついに剣を動かしてハンマーを逸らし弾く、その行為にキッドは驚き解説員も観客も盛り上がった。

 剣を使ったパリィ、それをハンマーと言う剣よりも重く、パワーがある武器に対して行っているのだ、しかも苦も無くまるで慣れているかのように。

 

「てめ、舐めてたのかよ、俺を!?」

 

「舐めてねぇさ、ただ実力を測ってただけだ」

 

 キッドの吐き出すようなセリフに軽く返し、ハンマーを撥ね飛ばしキッドに向かって剣を振るう、それをギリギリな所で避けるキッド、攻守は逆転した。

 

『ここで見事な防御を行っていたバリエスが反撃を開始したー!!キッドは避けながら反撃を狙っているぞ、これはどうなる!!』

 

 解説員の言葉を聞いて、軽く解説員を睨みたくなったキッドだがそれに労力を費やせばあっという間に自分は負けるという予想が自身の脳内に生まれていた、だから今は回避に専念する、右左上下あらゆる場所から襲い掛かる斬撃から、それも何とかという状態だったが。

 バリエスは意外と驚いていた、を抜いてるとは言え自身の斬撃を回避できている相手にだからだろうか自身の秘剣を見せるのも悪くはないと思ったのは。荒っぽいながらも成長の余地ある相手に。

 

「へぇ、予想以上にやるじゃないのびっくりだぜ俺は」

 

 ニヤリと笑い一瞬斬撃をやめれば、罠と思いながらもキッドは隙を逃さずハンマーを振るうもののバリエスは呼んでいたかのように回避し、後方へと跳躍し距離を取る。

 

「意外と、意外と少しは楽しめたぜお前は才能あるかもな」

 

「……ぬかせや」

 

 キッドはハンマーを力強く握る、距離を取るような行動ならば次に来るのはこの戦いに決着をつける一撃、ならばそこに隙を見出すと言わんばかりにバリエスを見据えた。あれ程に実力差を痛感させられたとはいえキッドに諦めるという文字はなかった。

 覚めた思考を持ったキッドにバリエスはハハッと笑い、この大会で初めて剣を構えた。

 

『おおっと、これはこの戦い!決着が近いようです!!』

 

「見せてやるよ、俺の秘剣をよ」

 

「……!!」

 

 バリエスはのその一言にキッドは目を見開く、余すことなく全てを見てやろうという気概を示した。

 

「ああ、良いなお前」

 

 瞬間、バリエスの姿がブレ、気づいたころにはキッドの目の前へと瞬間的に移動していた。

 【魔界剣士】【無帰の太刀】

 何者よりも鋭く振るえる剣の一閃、それを無心夢想の境地を合わさった一刀はキッドも誰の反応も許すことなく、キッドに致命的な一太刀を与えた。キッドは何も言葉を発せず、あっあっと呻いたのちに地面に膝をついて倒れ、気絶した。

 それに対し、少しばかりの間が空きハッと我に返った解説員がマイクを掴み取り有りっ丈の空気を吸って叫んだ。

 

『決着ゥゥゥゥゥ!!この戦い初参加のバリエスだあァァァ!!未知の実力者バリエスは今回の競技でその実力を示したぞぉ!!』

 

 ワアァァァと観客が沸く、その歓声を背にしてバリエスはキッドを一瞥した後に入ってきたゲートに向かって歩いていく。

 

 

 

 

                         

 ―――これはこのカジミエーシュの地に舞い降りた、魔人『煉獄』バリエスが灰燼騎士と言われるまでの物語、その第一歩である。




NAME:「バリエス」
〇クラス:聖戦士 ミーム:コラプサー ブランチ:宇宙怪獣/魔界衆
経歴:創造主によって作り出され『煉獄』と言う名を与えられた魔人。巨大な力で暴れたものの最終的に魔界に封印された。
   それから年月が経ち封印が自然と解かれると同時にカオスフレアへと覚醒し、創造主が死した世界を見回っている。
   創造主が直接生み出した存在である故、その力は巨大であり魔法だけで敵対者を塵に出来るが剣の扱いも達人クラス、その恵まれた身体能力から繰り出される剣技は強力である。
戦闘好きではあるがある程度の良識はあり、無暗に暴れることは少ないが自身の楽しみを邪魔されるとキレる。

   テラにおいてはカジミエーシュに転移し、只今闇市の裏騎士競技に参加し大暴れしている。
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