タガラシ短編集   作:タガラシ

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提督物語とはまた別に思い付きで思い浮かんだシチュを書き殴りました。

短編はとっても書きやすくていいですねぇ、製作時間が長くても数時間で書き終わるのはデカいですよ…(短編自体の長さにもよりますが…)

それでは、良ければ楽しんでいってください。


とある鎮守府の朝

8月下旬!!

 

世間一般では晩夏、暦上では秋と言われるこの時期であるが、近年の残暑は凄まじい!

 

基本的には真夏よりは涼しくなるが、日にちと場所によっては真夏よりも暑い場所がある始末!

 

この気候の様相に、一部の層からは「もはや日本の月の数え方を1つ前にずらせばいいのでは?」という声も挙がる程であった!

 

そう、気温差がある分、真夏よりタチが悪いのである!

 

そして運悪く気温が真夏よりも暑くなってしまった地域に、とある鎮守府が存在している。

 

 

 

そこに所属する提督と、ある艦娘との、そんな1日の朝のことである。

 

 

 

 

 

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「あ"ち"~~~……マジに朝の気温かよ…昼になったらどうなっちまうんだオイ…昨日はもっと涼しかっただろ…!」

 

提督の朝は早い。

 

任務更新や書類更新の時間である早朝5時には、既に身支度や仕事の準備をして、艦隊指揮の前準備も朝のうちにある程度済ませなければならないからだ。

 

現在時刻は朝6時。この時点で外の気温計は27℃を記録している。残暑というにはあまりにも謙虚が過ぎる数字である。

 

加えてこの提督はケチであった。

 

艦娘たちが提督室に来る時間までは、執務室のエアコンをつけないのである。

 

 

「っと…そろそろあいつらが起きてくる頃だな…昨日の出撃は20:00には全工程終了したし、夜襲もなかったのは幸いか…」

 

 

ピッ、とエアコンのスイッチを入れた音が響く。

前日はまさに晩夏の気温と言った感じで動きやすかった。

 

故に朝の仕事は滞りなく進み、朝6時には既に1日の準備ができた上に艦隊運用は滑らかであったが、今朝の不快指数はすこぶる高く、提督のケチも手伝って仕事の効率が平時より落ちていた。

 

ヒトの能力とはかくも状況に左右されるものである。

 

 

「ちくしょ~、湿度も高いしマジでやってらんね~ぞ…艦娘たちはこういう気温とか湿度でも平気だから羨ましいぜ…」

 

 

ぶつくさと文句を言っているがこの提督、本来なら朝8時には終わらせておけば上々、という仕事量を既に佳境まで進めている。

 

この調子なら7時には余裕をもって準備が終わり、出撃任務や演習任務へとシフトしていくだろう。ケチであるが故に、この男は「面倒なことは前倒し」にするのである。

 

そして時が過ぎて朝7時。ちょうど朝仕事を終えた提督は伸びをして備え付きのソファに寝転がる。

 

これが毎朝の日課であった。

 

提督はこの朝の独特の雰囲気が好きであった。外が静かで、環境音のみが響く提督室の雰囲気が好きなのだ。

 

そうやってしばらく寝転がっていると、不意にコンコンコン、とノック音が響いた。この時間に来るとなれば誰であるかは明白であった。

 

提督は寝転んだまま「あいよ~~」と返事をし、そこから体を起こす。

 

 

ガチャ、という扉を開く音に続いて、多くの艦娘が所属しているこの鎮守府で提督が一番見慣れた姿が見える。

 

 

「おっす、おはよ~」

 

 

提督はその艦娘に挨拶をする瞬間も好きであった。

 

 

これがあると何故か気の引き締まりを感じて1日がうまくいくのだ。今日もきっと大丈夫という安心感が生まれる。

 

さて、今日も頑張りますか!という気持ちになれるのだ。

 

こうしてこの鎮守府の提督の朝は今日も始まるのであった。

 

 

 

 

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「うわ…今日ヤバいわこりゃ…」

 

この艦娘の朝は早い。

 

鎮守府で唯一、生活習慣を提督に合わせているからだ。

現在時刻は朝6時である。

 

空母寮内の一室に備え付けてある鏡の前にてパジャマ姿で唖然としている艦娘の名前は「飛龍」。

この鎮守府で第二航空戦隊の主力を担う、その1人である。

 

 

「ん~~~…相変わらず早起きねぇ飛龍…」

 

 

そして布団からのそりと上半身だけ起こし、寝ぼけ眼を擦っている艦娘の名前は「蒼龍」。

飛龍と同じく二航戦の主力を担っており、この2人はこの部屋ができたときから相部屋である。

 

なお、駆逐艦娘「巻雲」と「風雲」も同室だ。

尤も、この2人は昨日出撃任務が終わった後も自主的に訓練をしていたので、まだすやすやと寝息を立てて寝ている。

起きる気配は一向に感じられないほどの熟睡っぷりである。

 

最初は飛龍と蒼龍だけであったのだが、この2人が着任してから巻雲、風雲本人たちの希望で相部屋となった。

原則、「空母寮に駆逐艦娘が所属する」ということは管理体制上やりにくくなるのでしないというのが一般的だが、ここの提督は「あ~りょ~かい、りょ~かい~上に話通してみるわ」と非常に軽薄な二つ返事で受け入れた挙句、すんなりと本営の承諾を貰って帰ってきたのである。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

そして飛龍が鏡の前で唖然としているのは、この日の気温と湿度で髪がうねって波打っている上にボサボサだからである。梅雨以来の大爆発に唖然としているのだ。

 

尤も、程度で言うと蒼龍の方が酷いのだが、蒼龍は特別急ぐ理由もなかったので暢気なものであった。

 

 

飛龍は髪の毛のセットを早々に諦め、服の着替えのみを行う。

 

その間、蒼龍は髪のスタイリングに必要な道具を揃える。

 

 

「蒼龍~~~お願いしてもいい~~~…?」

「はいはい、ちょっと待っててね~」

 

 

言われるでもなく準備を進めていた蒼龍はもちろん承諾した。

 

提督との2人きりの時間を作りたいがために、毎朝早起きしている健気な相方の頼みをどうして断れようか。

 

 

飛龍の髪のセットを髪が爆発している蒼龍が行う。この空母寮の一室ではありふれた光景である。

 

 

「それにしてもほんと今日は暑いみたいね~、髪もこんなになってるし、季節詐欺にもほどがあるわ…」

「確かにそうね…今起きたとき一瞬で察したもの…こりゃ立ち呆けになってるってね~」

「いや~まったくもってその通りですわ…いつもありがとね~ほんと…」

「いつも出撃で助けられまくってるしこのぐらいはさせてよ~」

 

あはは、と笑い合いながらとりとめのない雑談を続ける。

申し訳なさそうな顔でにへへ、と笑いながら片手で「ごめん」のポーズをとり、笑い合って許すのもこの2人の間では何回も行われてきたやり取りだ。

 

2人はお互いに、この朝のなんてことのない平和な時間が好きであった。

 

そうこう話しているうちに工程は進み、手慣れている蒼龍ですらやはり時間はかかったが、飛龍の髪のセットが完了した。

現在時刻は朝7時。飛龍曰く「提督のソファ寝転び時間」の時間帯には間に合ったようである。

 

 

「はい!これで大丈夫!いってらっしゃいな!」

 

「ほんと助かったよ~蒼龍~!ありがと~大好き~!」

 

 

飛龍は蒼龍に向き直りハグをする。

蒼龍には毎回こうである。

何回目など関係なく、いつも「お願い」と「ありがとう」、そして好意をいつも素直に伝える。

 

蒼龍はこれをされるといつも照れ臭くなるのだが、自分にしか見せない飛龍の姿に「ふふん、この姿は提督も知らないでしょうね~」と、少しの優越を覚えていた。

 

 

「それじゃ、行ってくるわね!蒼龍!」

 

 

はいはい~、と手を振って蒼龍は飛龍を見送る。 

飛龍の姿が見えなくなったところで蒼龍は部屋に戻り、すやすやと寝ている巻雲と風雲に目をやる。

そしてこのかわいい2人の髪の毛の爆発具合を見てふふっ、と少し困ったような、それでいて包み込むような微笑みを零したのであった。

 

 

 

 

 

そして飛龍はというと、ルンルンで提督室に向かっていた。それはもうウッキウキである。スキップもしているし表情は満面の笑みである。

 

蒼龍に髪をセットしてもらった日はいつもより気分が上がる。より自分に自信が持てるような、そんな気分になるのだ。

そういう気持ちで向かっていたからだろうか、飛龍はあっという間に提督室前に到着した。

 

折りたたみ型の手鏡を開き、前髪をちょいちょいと整えて問題ないか確認。そして1つ深呼吸をしてから、コンコンコン、とノックをする。

 

あいよ~~、という軽い返事が返ってくる。飛龍は提督が日常のシーンで見せるこの気軽さが好きであった。

 

扉を開けると提督と目が合う。そして目が合うとすぐに提督は「おっす、おはよ~」と、左手を挙げて気さくな挨拶をする。

飛龍には、この提督の心を凝りを融かすような暖かさが、挨拶だけで伝わる。それほどまでに通じ合っていた。

 

この瞬間、いつも飛龍は「ああ。やっぱり好きだなぁ。傍に居たいなぁ」と、強く思うのだ。

 

挨拶だけでこんな気持ちになってしまう私は重傷だなぁ、と飛龍は自覚しつつも、提督も自分のことを特別に想ってくれているのだということは、お互いの左手の薬指が証明している。

 

 

「おはよっ提督~!今日も1日よろしくね~!」

 

 

飛龍も左手を挙げて挨拶に明るい笑顔で応える。

 

こうしてこの鎮守府の飛龍の朝は今日も始まるのであった。

 

 




最後まで見てくださった方、ありがとうございます。タガラシです。


本編に書ききれなかった補足おば。(入れると蛇足かもしれないなぁと思ったので)

艦娘の設定は提督物語のものを流用しています。(下手に変えると書きにくくなってしまうので…)

冒頭で提督が文句で言っていた「艦娘はこういうの平気」というのは、艦娘に「艤装の装備時も不装備時も人間が物理的に「不快」と思うものに、精神的な影響を受けない(通常人間が不快と思うものを不快と感じない)」という性質があるからです。

音、匂い、湿度、気温、などの変動があっても、コンスタントに能力が発揮できます。(能力が周囲の物理的環境に左右されにくい)

しかし、精神的な影響は受けませんが、艤装不装備時においては物理的影響を受けます。(短編にあった髪の毛爆発がそうです。

ちなみに髪が爆発したまま艤装を装備すると、そのまま爆発した髪型が維持されます。艤装装備で都合よくボサボサの髪も元通り!とはならないんですねこれが

ですが、こういった艦娘たちにも感情の動きは勿論あるので、状況によっては「躊躇い」や「後悔」、「恐怖」といった感情は普通に生まれます。




それではまたどこかで。
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