と思ったら本誌で登場?!
これは神奈川県警恋物語が始まるのですね(ゲス顔)
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「余は納得がいかん!」
食堂のど真ん中でネロが頬を膨らませながら叫んだ。
「数多に咲き乱れる薔薇を愛でながら、美しい調べに耳を傾ける花と音楽の饗宴は余にこそ相応しい! 否! 余のための催しではないか! なのに、なのに……!」
「それはこちらも同じこと。我らも王妃も、抽選に漏れたのです!」
「ぐぬぬ……幸運Aの余が、幸運Dに負けるとは」
ネロとデオンが未練を込めて見つめるのは、特異点内で行われるイベントのチラシ。ベルベッドのような紅色の薔薇と、淡い桃色の薔薇に囲まれた園の名は『横浜ロゼ・ガーデン』。多様多種なる薔薇が咲くこのガーデンにて、有名ピアニストのリサイタルが開かれる。
リサイタルを行うピアニストがかつての『カルデア探偵局』の依頼者であった縁で招待され、いただいた招待券が一枚余った。その残り一枚を巡り、自分も行きたい!とネロやマリーを始めとした多くのサーヴァントたちが手を挙げ、結果的に抽選となったが……残念ながら、彼女たちは招待券を手にすることができなかったのだ。自分が当たったらマリーに渡そうと思っていたデオンもサンソンも、抽選に漏れてしまった。
「聞けば、依頼人の伴侶が咲かせた新たな薔薇も目にすることができるというではないか。良いな~余も行きたかった」
「あの青い薔薇ね! とても美しい薔薇だったわ。わたしも見てみたかったけれど、仕方がありませんね。彼のお土産を待ちましょう。ご一緒にお茶はいかが?」
「うむ! 王妃の誘いは断れんな」
「……しかし、彼は何故またこの催しに? よもや、ピアニストに惹かれて? 否、そんなはずはあるまい」
「あら、綺麗な花を見たいと感じるのは、何ら不思議ではないわ」
ネロを招きサロン・ド・マリーのお茶会が始まるが、いつものメンバーが約1名、不在である。
不在の1名が、どうして此度の抽選に応募したのかとサンソンは訝しんだ。『カルデア探偵局』に彼が出向くなどトラブルしかないのに。
「何で当たっちゃったの?!」と絶叫していたマスターの声が、今でも耳に残っている。
***
神奈川県横浜市に位置する『横浜ロゼ・ガーデン』
ここでは、広大な敷地内に咲く多種多様な薔薇を1年中楽しむことができる。園内にはカフェもショップも、子供用の遊具も、コンサートや演劇を行うホールも完備されており、多くの人々で賑わっていた。
「オルタちゃーん、こっちよー」
「お待たせ」
「待ってないよ。でも、凄い偶然だね。『カルデア探偵局』のみなさんも招待されていたなんて」
コナンと蘭は、園子の誘いで『横浜ロゼ・ガーデン』で行われるイベントにやって来ていた。残念ながら世良は探偵の仕事のため来ることができなかったが、ジャンヌを始めとした『カルデア探偵局』も此度のイベントに招待されていたのだ。
施設内にあるカフェの前でジャンヌたちと待ち合わせると、以前も遭遇したことのある赤いフードの少年――立香の友人である、アンリも一緒に遊びに来ていた
「今日は、アンリ以外にももう1人、遊びに来ている知人がいまして……あれ、いない?」
「何……!」
「ニャー」
プルートーが鳴く方向へ視線を向けると、そこにいたのは背の高い細身の外国人。薔薇の花弁の色によく似た淡い桃色のスーツを着て、カフェ正面にある薔薇の花時計の前で自撮りする女の子たちと一緒に写真を撮っている。
サリエリが人間とは思えない速さで駆け寄った。
「ダンケダンケー。じゃあね~」
「貴様! 何をしていた……!」
「女の子たちに一緒に写真撮りませんか~って、誘われてさー。見ろよサリエリ。あの子たちからこのアプリを教えてもらったんだけどさ。この盛り具合! 目の大きさとか色白機能とか、極端すぎてウケるんだけど。あ、このコーヒー代払っといてくれる? 電子マネー、チャージするの忘れちゃった」
「早速やりやがったなこのクズ!」
今度は立香がカフェのカウンターに走った。サリエリに詰め寄られている彼が持つコーヒーの料金は、立香が払うと言って買ったらしい。
で、誰?このクズ呼ばわりされた人。
「Guten Tag.僕はヴォルフガング・アマデウス・ペルトル。仕事で来てみたら、面白そうなことやってるって聞いてさ~。日本好きだよ。特に、ニ短調トッカータに付けた歌詞、最高! ご飯も美味しいし」
「みなさん、彼には何も奢らないでください」
「酷いな立香。まあ、クズは否定しないけど。アハハハハハ!」
立香に払ってもらったコーヒーを片手にアマデウスの背後で、サリエリがわなわなと震えて今にも殴りかかりそうだ。ヘシアンに羽交い絞めにされて何とか堪えていた。
奇妙な光景だ。「アマデウス」と「サリエリ」が揃っている。しかも不穏な空気が漂っている。
「何だかサリエリさん、いつもと違う?」
「おじ様、アイツが関わると荒れるのよ。昔、色々あったみたいで」
「色々って、何があったの?」
「さあ。音楽に関わることみたいだけど」
モーツァルトのフルネームは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだ。かの天才作曲家と同じ名を持つ男と、彼と同時代を生きたアントニオ・サリエリと同じ名を持つ男の間に因縁があるというのか。
「落ち着け」
「むがっ!」
「コレの荒ぶりは麻疹とでも思っていただきたい」
「……(サクサク)」
「我々はホストである芳野氏と会うが、往けるか楽長。オーナー」
「……承知した」
「サリエリ先生大丈夫ですか? 無理しちゃ駄目ですよ」
「ダックワーズをもう一つ」
エドモンがサリエリの口にローズジャムのダックワーズをズボっと突っ込んだ。本当に、妙な光景である。
「芳野さんって、今日のコンサートを行うピアニストの芳野真夜さんですか?」
「はい。以前、探偵の依頼を受けまして」
「それなら一緒に行きませんか? わたしも、真夜さんへ挨拶してこなくちゃ」
かつて『カルデア探偵局』の依頼人であった、ピアニストの
鈴木財閥は薔薇のブリーダーである彼女の夫に資金援助をしており、真夜自身も鈴木財閥が主催するパーティーで何度もピアノを披露しており、園子とは顔馴染だそうだ。
カフェから2分ほど歩くと、本日のコンサートが行われるホールがある。真夜とは、そこのロビーでアポイントメントを取っているとのこと。
「芳野真夜。「十代の頃にショパン国際ピアノコンクールで優勝。以来、多くの国際コンクールでも入賞し」うんたらかんたら……って、チラシの裏に書いてあるね。えー何々、「繊細な指捌きで奏でられる重厚な音色で様々なファンを魅了してきた」って、誰が書いたんだろうコレ」
「方々でアーティストと
「そう言えば、前に沖野ヨーコさんとコラボしていたような。うちの父もCDを買っていました」
「
園子が声をかけると、ホールロビーのソファー席にいた女性が立ち上がる。どうやら誰かと話をしていたようだ。
スレンダーな体型に色の濃いワンピースが良く似合う美女が、ピアニストの芳野真夜である。
「園子さん、お久しぶりです。そして『カルデア探偵局』さん、本日はようこそお越しくださいました」
「お招き感謝する。ミス芳野」
「カルデアさんは初めてでしたね。こちら、夫です」
「芳野正雪です。先日は、本当にどうもありがとうございました」
「芳野さん……じゃあ、貴方が青い薔薇を作った人ですか?」
蘭が尊敬の視線を向ける男性。穏やかで人の良さそうな雰囲気の彼が真夜の夫であり、薔薇のブリーダーでもある
「ええ、何年も時間がかかってしまいましたけど。園内にも咲いています、見てやってください」
「うわ~楽しみだね、コナン君」
「うん!」
「ほお、お宅らが探偵……ですか?」
「失礼だが、貴殿は?」
「これは申し遅れた。私、敷島です」
真夜と話し込んでいた男性だが、随分と香水がキツい。オマケに整髪剤の臭いも濃い。名刺を受け取ったサリエリが微かに不快感を表した。
「ん、サリエリ……この名前、どこかで聞いたような? ああ、思い出した! モーツァルトを殺したとか言う」
「―――っ!」
「殺したって」
「天才モーツァルトへの嫉妬に狂って毒殺したっていう作曲家の名前が、サリエリでしたね。映画で観ましたよ」
「それは……」
「それは、根も葉もないデマですわ」
立香の言葉よりも早く、敷島に苦言を呈したのは真夜だった。
「モーツァルトの死因は病死です。サリエリに殺されたという噂は悪質な病原菌のように人々に
「……」
「面白半分にデマを吹聴するのはやめていただけますか? サリエリさんにも失礼です。敷島さん、貴方は信用なりません。お話は、何もかもなかったことにいたします」
真夜がきっぱりと宣言した。敷島は小さく謝罪の言葉を告げた後、居心地わるそうにそそくさとその場を退場したのだった。
イカれた弟子たちを紹介するぜ!
ナポレオンはクソ!ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン!
窓が欲しいからって壁に穴(賃貸)開けて強制DIY!
嬉々として友人に振舞った料理が生煮え!
字が汚すぎて後年に誤読される!
フランツその②!フランツ・シューベルト!
自分で作曲した曲が難しすぎて弾けなくてブチ切れる!
サリエリ先生が好きすぎて讃美歌作って他の弟子たちと大合唱!
しかも邦訳すると「おじいちゃま」って呼んでたって!
フランツその③!フランツ・リスト!
モテすぎてステージに上がると絶叫からの気絶者多数!
モテすぎて飲みかけの紅茶や風呂の残り湯が転売される!
モテすぎて合鍵預かってた友人(ショパン)の家に女連れ込む!
その他大勢!(シューベルトと大合唱)
ちなみに、フランツその①はアマデウスの息子……だけどフランツいっぱいいる!
これだけの弟子をまとめた真サリエリ、強い(確信)