せや、始終コナン側視点にすればええんや!
ということで、今回のトリックの元ネタは『逆転検事』(漫画版)です。
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某日未明、米花市の歩道橋で若い男性が転落死しているのが発見された。
目撃者はなく、争った形跡はない。被害者からアルコールが検出されたことにより、酒に酔って階段から足を踏み外した事故かと思われた。しかし、被害者が直前に立ち寄った居酒屋で連れの男性がいたとの目撃証言が確認されたため、警察は被害者と共にいた男性の捜索を開始した。
被害者の名前は、
彼の死は、奈落の底で起きた殺人事件の序章に過ぎなかったのだ。
「結婚式の立会人?」
「はい」
その日、『毛利探偵事務所』にやって来た男性は、
彼が小五郎に依頼したのは、未解決事件の捜査でも誰かの身辺調査でもなかった。
「来週、山形県で私の娘、
「山形県ですか」
「ええ。是非とも……花嫁も花婿
新郎新婦が眠りの小五郎のファンなので、結婚式にゲストとして参列してくれ。という依頼は少なくない。だから、今回の依頼もそれと同じだと思い小五郎は二つ返事で納田の依頼に頷いた。
が、何かがおかしい。特に、コナンが手に取った娘の写真。納田が置いて行った花嫁の写真がおかしかったのだ。
「ねえ、さっきの人、何だかおかしくない? 何で、娘さんの写真が絵なんだろう?」
納田が持って来た娘の写真は、花嫁姿の女性が描かれた油絵の写真だったのだ。
純白のドレスに身を包んだ花嫁は、同じく白いヴェールを被っている。微かに俯いた視線はどこか微睡むように抱き締めた白い花のブーケへと注がれていた。赤いルージュの塗られた唇の端をぽつんと飾るホクロが印象的な、美しい花嫁の絵だった。
「色々事情があるんだよ。娘さんが写真嫌いとか」
「でも、招待状に新郎側の名前がないのはどうして? 普通、結婚式の招待状って、新郎新婦の家の名前が入っているよね」
「そんなの、結婚式の多様化だって! 身内だけって言ってたから、伝統とか型に嵌らない式にしてんだよ。ちゃんと会場になるホテルの名前も書いてあるんだ、おかしいところなんて一つもねぇよ」
「ええと、『ホテル大森の底』? 不思議な名前のホテルね」
納田から渡された結婚式の招待状には、式場となるホテルの名前と住所が書かれていた。
蘭が気になってホテルの名前をネットで検索してみるが、公式HPが見つからない。それどころか、山形県が紹介している宿泊ホテル一覧の中にも名前がない。やっと見つけたのは、キノコ狩りが趣味だという人物のブログ記事……10年前、キノコ狩りの最中に道に迷い『ホテル大森の底』に宿泊したという記事だった。
ブログの主は助かったという感想を写真と共に投稿していたが……その写真というのが、薄暗い森の中に建つ今にも崩れ落ちそうなボロボロで錆びついた、鉄筋コンクリートのホテルだったのだ。
ブログのコメントには、「本当に実在しているんですか?!」「別世界に迷い込んだのでは?」「生きた人間はいましたか?」など、その実在を疑うようなものばかりであった。
「え、本当にこのホテルなの?」
「10年前の写真だろ。きっと、今は改装されて綺麗になっているはずだって!」
「みんなで参列してくださいって、ボクと蘭姉ちゃんにも招待状もくれたよ」
「……あ、思い出した。結婚式の日、園子の家でパジャマパーティーだった。世良ちゃんとオルタちゃんも誘って、お泊まりの約束してて」
「さっき、予定ないって言ってたよね」
「残念だな~お父さんとコナン君でお祝いして来てね」
いかにも“出そう”な雰囲気のホテルが会場という、不可解な点が増えてしまった。
目が泳いだ蘭が辞退したことにより、小五郎とコナンの2人が結婚式へ参列するために山形県へと向かった。招待状に書かれた住所は、市街地から遠く離れた森の奥。バスを乗り継ぎ、最終的にはバスも通っていない道をタクシーで向かえば、木々の合間から姿を現したのは10年前の写真より更に劣化した『ホテル大森の底』だった。
「……場所、間違えてないよな?」
「だから言ったのに」
「いや、見た目はボロボロでも中は綺麗な可能性がある。折角山形まで来たんだ! 地酒の一本も味わわずに帰れるかよ。行くぞコナン!」
「ええー!」
これまたボロボロで傾いた案内看板に従ってホテルに近付けば、何故「底」という名前なのか理解できた。ホテルは盆地のような凹んだ場所に建っており、コナンたちがいる高地には橋で三階部分に繋がっている。
橋を渡った先には、依頼人である納田が彼らを待っていた。
「いらっしゃいませ、毛利さん。お待ちしておりました。古びた場所で申し訳ありません。このホテルは従弟が経営していましてね。式場として借りたのです」
「は、はあ」
「どうぞ。三階がフロントになっています」
「頼みますから、部屋を変えてください!」
納田に案内された『ホテル大森の底』のフロントは、見た目に反してとても綺麗……なんてことはなく、見た目と同じで劣化が激しい内装だった。タイルは砕け、壁紙は汚れ、電灯はチカチカと点滅している。
フロントには先客がいた。何やら揉めているようで、震えた声で汚れが目立つカウンターの向こうの男性へ訴えかけている。
「お願いします。俺、高所恐怖症で……六階は無理なんです」
「で、ですが。建物の老朽化もあって、客室として用意できるのが六階しかないんですよ」
「汚れていても良いので、一階にしてください!」
「毛利さん、ご紹介しましょう。彼が花婿の1人、指原君です」
細長い印象を与える若い男性。
ん、
「今、花婿の1人って言ったよね」
「そうです。本日は、結以子の花婿として3人の男性をお招きしています……しかし、残念ながら1人は来られなくなってしまいました」
「3人の花婿??」
何やら雲行きが怪しい。納田の言葉を聞いた指原が顔を真っ青にして震え出す。
納田が小五郎とコナンを招いた結婚式は、やはりただの結婚式ではなかった。
絵画の花嫁と、3人の花婿……もう1人の花婿が、このタイミングで『ホテル大森の底』にやって来て、やっとその異常性を理解することができたのだ。
「ニャー」
「あれ、毛利さんにコナン君?」
「立香さんと、エドモンさん!」
「あんたたちまで、どうしてここに?」
「俺たちは、探偵の依頼を受けたんです」
「ようこそ、白群君」
プルートーを先頭にしてホテルのフロントへやって来たのは、立香とエドモンという『カルデア探偵局』の2人だった。
彼らは、納田に出迎えられた白群という男性……もう1人の花婿の依頼でここまでやって来たのだ。
「白群!」
「指原! お前、来たのか?」
「彼女に、謝ろうと思って……」
「これで、花婿が揃いました。結以子も喜んでいることでしょう」
「納田さん、これはどういうことなんですか? 花婿が3人って、一体どういう式なんですか?!」
「毛利探偵、事情を聞いていないのか」
「……これは、冥婚だ」
ふわりと、嗅いだことのない煙草の臭いが迷い込んで来た。
低く、心地の良い声に紡がれた『冥婚』というワードに白群が肩を震わせ、指原は小さく悲鳴を上げて白群に縋り付く。
立香たちよりも少し遅れて『ホテル大森の底』を訪れたのは、ブルネットを長く伸ばした痩身の男性と、彼に付き従うマントの少女。深く被ったフードで少女の顔は見えなかったが、隙間からは綺麗な碧い瞳が垣間見えた。
「Ghost Marriage……死後婚や、幽婚とも呼ばれる。若くして亡くなった子供を弔うため、冥府で添い遂げるための伴侶を用意する儀式だ。それが、このホテルで執り行われる」
「死者の結婚って、まさか娘さんは」
「花嫁、納田結以子は8年前に亡くなっている。8年前、湾岸地区のショッピングモールで起きた火事を知っているだろうか」
「え、ええ。火事自体は大したことはなかったけど、パニックになった人たちが我先にと避難したため、階段での転落事故や雑踏に踏まれて事故死した人の方が多かったって」
「結以子は、その事故で亡くなりました。生きていれば今年で18歳。冥府の底で1人では寂しいでしょう。娘のために花婿を見つけてやりたいと思い、此度の結婚式を開催いたしました。死の直前に助けてくれた青年たちが夫となれば、結以子も喜ぶはずです」
フロントの電灯がチカチカと点滅し、納田の表情を怪しく照らした。
連休は、増上寺に行って、劇場版コナンを観てきました!
降谷さんが人間やめてる……!
で、帰ってきたら備え付けの冷蔵庫が壊れていました。
元気です。