George Gregory 拙作集 作:George Gregory
雨は、あまり好きじゃあない。
湿度が高いのは素直に不快だし、洗濯物はロクに乾かない。カビは生えやすくなるし、作った味噌汁の足は速くなる。傘をさしていたって少し風が強く吹けば簡単に足元が濡れるし、何より気分が良くない。どんよりと立ちこめる灰色の天井を見上げていても、爽快感なんて覚えるはずもなく。
あぁ、まるで今の私の気分そのものみたいじゃあないか。
空が泣いている、と最初に言ったのは誰なんだろう。言い得て妙だとも思うし、同時に、余計な事をしてくれたなぁとも思う。詩的表現としては素晴らしいのだろうけれど、一度それを聞いてしまったら、もうそのようにしか見えなくなるじゃあないか。そもそも、誰かが泣いているのを見たら、つられて余計に悲しくなるに決まっているじゃあないか。
ワザと水たまりへ強めに踏み込む。しぶきが跳ねて、大きく波紋が広がる。雨音は耳に心地良いとは思うけれど、気分が晴れるようなものでもない。ほんの少し気は紛れはするけれど、無いよりまし。そんな程度だ。
俯いている私の顔がゆらりゆらりと波打っている。酷い顔だな、と自然と苦笑いをしていた。
歪みに歪んだ私の顔は、たっぷりと苦味を含んでいるとはいえ、見れば笑わせてくれる程度には、面白味があったようだ。仄暗く濁った水面。降り注ぐ雨粒に揺れる。波。波。波。うろこのような、細やかなさざなみ。揺れて。揺れて。また揺れて。
あぁ、もう。
どんな返事になるかは解っていたじゃあないか。最初から勝ち目が無いことだって。それを承知の上で、“当たって砕けろ”という半ば
「泣いたってもう、どうしようもないのに」
止まらない。まるで止まりやしない。声が震えないように抑え込むのが精一杯。きっと家に着いても全く乾いてなどいなくて、部屋に入ってベッドに潜り込んだってそれは変わりはしなくて、下手をすると晩御飯までずぅっとこのままなんじゃあないだろうか。
あぁ、そうか。だからこの天気、なのかもしれない。あの比喩を最初に思いついた人も、こんな気分だったから、なんだろうな、なんて今なら思える。
私の分まで、空が泣いてくれているんじゃあないか、って。
雨空はいつかは晴れる。そんなことは解っている。けれど、だからといって、今雨に打たれている冷たさは変わらないのだ。
だから、せめて。
「明日天気になぁれ」
恨めし気に見上げた空に、私は小さくそう呟いた。