George Gregory 拙作集 作:George Gregory
懺悔室。自らの罪を告白し、神に許しを希う場所。薄い壁1枚を挟んで神父と罪人が言葉を交わす狭い部屋のこと。
今日もまた、自らの罪を悔い改めるため、顔色を蒼白にした罪人が独白の為にこの場所を訪れた―――
「だぁ~かぁ~らぁ~っ!! 私を罰して下さいよぉっ!!」
「だぁ~かぁ~らぁ~っ!! その必要は無いって言ってるでしょおっ!?」
―――そのハズだったのだが、今は何故か神父と舌戦を繰り広げている。
一体何故こうなったのだろうか。少し時間を遡ってみるとする。
懺悔室に入るやいなや、その青年は静かに語りだした。
『拳銃で人を撃ってしまった』
少なくとも数日は悩み苦しんだのだろう、顔は痩せこけ、足取りもおぼつかないほど憔悴しているようであった。彼には幼い妹がいるのだという。両親を早くに亡くし、彼が必死に稼いで彼女を養っているのだそうだ。そんな彼女が暴漢に襲われているのを見て、威嚇のつもりで撃った弾丸が偶然当たってしまったのだと、彼は言う。
これだけを聞けば、そこまで罪もないのでは、と思うだろうが、問題は彼自身にあった。そもそも何故、そんな場面に都合よく拳銃を持っていたのか。答えは簡単である。彼が、日頃から思っていたからだ。
拳銃を、撃ってみたい、と。
そんな獣のような自分の存在に気づいており、いつかそれを抑えきれなくなる時が来る、だから自分を罰してくれ、と。青年の言い分を纏めればこういう事であった。対して、この神父の回答であるが。
『それの何が悪い?』
獣のような阿呆は何処にだっている。知的動物の要たる理性を明後日の彼方へ放り投げ、己が思うままに力を振るい欲を満たすド阿呆。そんな奴らに効く薬など、同じ”力”以外にあり得ない。この神父もまた、上品な生まれなどではなかった。孤児院育ちで他に生きる術もなく、仕方なく”この道”に入った者。生きづらいと感じた事こそあるが、つまらないと思った事はない。むしろ、選んで良かったとすら思っている。
だからこそ、この青年のような者を見ると、思うのだ。
『こういう奴は、この世に必要だ』
「え、ちょっ、なっ!?」
突然、2人を分かつ壁がはじけ飛び、ぬぅっと伸びてきた太く腕が青年の襟元をわしづかみにして引き寄せた。白黒の修道服。しかし、その下に覆われた体躯は余りに大きく、頑健だった。何より目を引いたのは、その背後。壁にもたれかけられた巨大な剣であった。
「し、んぷ、さま?」
「あぁそうですよ。神父様ですよ」
一気に砕けた言葉遣いに、少々戸惑う。
声が若いから、歳が近いのだろうな、と青年は思っていた。そしてその予測は当たっていた。自分と同じ、いや、少し上か、と伺う。痩身の自分と違い、実に逞しい巨躯。斧1本でそこらの大木を切り倒し、片手でかつぎ上げる事すら出来そうな、木こりのよう剛健さ。まるで、神職につくような人間には見えなかった。
「いい加減うざってぇし、そこまで罰を欲するならくれてやらなくもない。が、後で後悔しても知らねぇからな?」
「え、あ、はい」
「ったく、熱心な信者ほど有り難くもメンドクセェものはねぇってんだよ」
「えっと、それで、私は一体、何をすれば」
「あぁ、簡単だよ」
そういうと、神父は青年を座っていた椅子へと放り投げ、懐から取り出した煙草をくわえて、ニヤリと笑ってこう言った。
「ゴミ掃除さ」
つづかない