グレンジャーが去った後、俺は再び扉に呪文を掛けて読書に没頭した。先ほどよりも強く呪文を掛けたからか、グレンジャーの様な少女が稀に見る頑固だったのかは分からないが、その後に訪れてくる人間はいなかった。
奇麗な景色を見ながら読書をして、たまに持参したお茶を飲む。そんな孤独でありながら充実した旅行気分を味わっていると汽車が減速し始めた。
完全に停車した汽車から降りると、汽車の天井よりも背の高い大男が灯りを持ちながら新入生たちを先導していたので、新入生の波に身を委ねついて行く。
汽車の移動時間が長かったからすでに日は落ち、辺りが真っ暗になっていた。そんな中先頭を歩く大男のランタンしか光源が無い、と言うのはいかがなものかと思い俺は杖を取り出した。
「我導く光よ、闇夜を照らせ。」
俺が呪文を唱えると俺の杖の先からビー玉くらいの光の玉が数個飛び出し、俺の周りを照らす。その様子に周りの生徒たちは驚きと感謝を含めたような声色で何かを言っていたが、英語が苦手なうえに聖徳太子でもない俺は何も聞き取れなかった。
明るくなった道を歩くこと10分、大きな湖に着いたようで、前に居る生徒から岸に停まっているボートに乗りこんでいった。
ボートに乗ると、ボートが勝手に動き出し湖の中を進んで行った。少し進み橋の下を潜ると思わず息をのんでしまうような光景が目に入った。
水面に反射するホグワーツ城はとても幻想的で、壮大だった。おそらく俺はこの光景を一生忘れないであろう、と思うほどに感動した。
岸に着き、またしても大男の後をついて行くとホグワーツ城の入り口に着いた。城の中に入り少し歩くと大きな扉と厳格そうな魔女が目に入った。
「マクゴナガル先生、いっちねんせいをお連れしました」
「ご苦労様ですハグリット、ここからは私が。」
ハグリットと呼ばれた大男がマクゴナガル先生と呼んだ魔女が今から新入生を先導してくれるようだ。マクゴナガル先生はハッキリとした声で生徒たちに次の行動を説明しだした。
「いいですか、この扉の向こうには全校生徒と教員が居ます。そこで寮の組み分けの儀式を行うので、それ相応の態度で挑んでください。」
マクゴナガル先生がそういうと扉が勝手に開き、生徒たちが入っていく。中に入ると、あるはずの天井がなくきれいな星空が浮かんでいた。どこかで、これは魔法よ!なんて声が聞こえた気がするが今は奇麗な星空に免じて聞こえなかったことにしよう。
―――――組み分けの儀式。
生徒たちが全員扉を潜ったことを確認したマクゴナガル先生は生徒たちの前に椅子と、古ぼけた三角帽子を置いた。
何が始まるのかと、生徒たちが緊張した様子で身構えていると椅子に置かれた帽子が歌い出した。どうやらあの古い帽子は、魔法道具であれを被ることで生徒の適正な寮を選んでくれるらしい。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組み分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組み分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
優希ある者住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん!恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
帽子が歌い終えると、マクゴナガル先生が生徒の名前を呼び始めた。呼ばれた生徒が椅子まで進み帽子をかぶる、すると帽子が4つの内のどこかの寮の名前を叫ぶ。
「ハチマン・ヒキガヤ!」
そして、俺の名前が呼ばれた。日本名なので、聞きなれない言語に生徒たちは首をかしげていたがそこまで気にしてはいない様子だった。
椅子に進み、帽子をかぶると頭の中に声が響いた。
「ふむ、君は日本人かね?ほう!あの2人の子供か、これはまた楽しい7年間になりそうじゃの。」
「え?俺の両親のこと知ってるんですか、てかなんで俺がいると楽しくなるんだ。逆だろ。」
「はっはっは、あの2人の子にしては捻くれておるのう。あの2人はホグワーツ校長であるダンブルドアと友人なのでな、普段校長室に居るわしもよく見かけるのじゃよ。」
「父さんと母さん何者だよ...」
「さて、雑談はここまでにして組み分けを行っていくかの。...ふーむ、11歳にしては発達しすぎている理性。それに日本のではあるが、多くの呪文をすでに会得している優秀さ。...ほう、過去に妹を身を挺して危機から救ったこともあると。なるほど、君は優しい心を持っているようじゃ。それでいて自身の身を顧みない自己犠牲の精神。
これは...グリフィンドーーール!!!!!」
帽子がそう叫ぶと、赤と金色の制服を纏った生徒がいる場所から大きな拍手と歓声が聞こえた。グリフィンドールの席を見ると、俺よりも先にグリフィンドールに選ばれたグレンジャーがこちらを見ていたので何となくグレンジャーの横に座った。
「ハチマン!あなたもグリフィンドールになったのね、私はてっきりレイブンクローになるんじゃないかって思ってたわ!」
「お前も、レイブンクローになるかと、思った」
「えぇ!グリフィンドールかレイブンクローの二択だったの、最終的にはグリフィンドールに決まったけど。」
「ふーん...」
その後、英国で有名な眼鏡の少年がグリフィンドールに入ったり。その少年の話をグレンジャーに長々と聞かされて適当に相槌を打っていたら組み分けの儀式が終わった。
まるごと全粒粉食パンっていうのめっちゃ美味い。