ウマ娘たちとカップ麺を食べる。ちなみにファインモーションはカップ麺6分理論を提唱した天才。かわいい。
息抜きに書きました。みんなもファインモーションをサポカでつかおうね。
育成ガチャに来ないかな……
その1ーーこんにちは、カップラーメン
カップラーメンの薄く透明なフィルムを学生時代のように雑にビリビリと剥がす。窓からの日光を反射して光るが、ただ悪戯に眩しいだけだった。
午後のウマ娘達がトレーナーの元に来るか来ないかの瀬戸際にレジ袋からカップ麺を取り出す。塩分まみれで、健康と真逆のジャンクフード。ウマ娘が食べる姿を俺は見た事が無い。少なくとも、トレセン学園ではそうだった。
ざらりとした独特の紙質を感じながら、蓋を三分の二まで丁寧に開ける。乾燥した旨味の匂いが食欲を誘った。トレーナーになってからは忙しくて殆ど買った覚えが無い。懐かしいものだ。
「あれ?トレーナー、それカップラーメンじゃない?」
ファインモーションがドアを開けて入ってきた。アイルランドから来たウマ娘で、上流階級の気品漂う麗しい娘。彼女は間違いなく舌が肥えているのだが、何故かこよなくラーメンを愛していた。ラーメンを食べるだけでなく、自分で麺やスープから自作してしまう程の入れ込みようには毎度毎度驚かされてばかりだ。
「ファインか。カップ麺は食べたことあるか?」
目は口ほどに物を言うと諺にあるが、ファインモーションは目よりも尻尾に感情の昂りが表れている。待たせるのも悪いと俺は思い、ポットのお湯を沸騰させる。
「まだ無いよ」
「じゃあ食べる?」
「でも……トレーナーが食べようとしたんでしょ?」
他人の物を、ましてや食べる寸前の物を貰おうとする事はマナー的にもよろしくなさそうだ、と思いながらファインモーションの尻尾を見た。
「いいよ、別の分あるから。お湯入れるところからするか?」
「……うん!」
「正直でよろしい。お湯は線のとこまで入れるんだぞ」
カップ麺を渡し、ファインは慎重にお湯を注ぎ始めた。
「これからどうすれば良いの?麺はカチカチだけど」
「蓋して3分。それで食える」
僅かに疑いながらファインはもくもくと立ち昇る湯気に蓋をした。
「ん、タイマー」
普段使っているタイマーを渡すと少し驚いた顔を見せた。
「いいの?練習用のでしょ?」
「こまけぇ事は良いんだよ。どうせならキッチリ計ろう」
「それもそうだね」
湯気でとれそうになる蓋の上に割り箸を置いて、このインスタントフードを観察することにした。
「知ってるか?カップラーメンは3分待たなくても食えるってこと」
2分半ほどで麺はほぐれるらしい。15分待てば水でも食えるそうだから本当に驚きだ。俺はお湯で食うのが好みなので、たぶん意地でも水を沸かすだろう。
「そうなの?」
「ああ。待ってる時間でワクワク感とか、気持ちを高めるんだと。ほら、3分って何かするには短すぎるし」
常食する者には薄い感覚かもしれないが、カップ麺を食べることはお手軽な非日常の体験でもある。
「へえ、そうなんだ。まだかなぁ」
「あと30秒くらいだな」
30秒後、タイマーは慎ましく音を鳴らした。
「開けていい?」
「勿論」
クリスマスプレゼントを待ち侘びる子供のように、僅かに湿った蓋を開ける。おお、とファインは溜息を漏らした。
「いただきます」
手を合わせて、綺麗に割り箸を割った彼女は麺を食べる。
「美味しいです。スープが縮れ麺に絡んでいるし、ふわふわのたまごとキューブの肉が汁を吸っていて程よい感触」
「6分待ったらもっと美味しいかな……?」
「いや、それはねーよ」
「それもそうかぁ……麺伸びちゃうし……」
名残惜しそうにそう言った。満足度の傘増しになるので学生時代は多用していたが、やっぱり伸びてない麺の方が美味いだろうと俺は思う。
「美味しかったか?」
「はい!今度はカップ焼きそばに挑戦してみます!!」
やっぱり、誰かと食べるのは良い事だとトレーナーは思った。
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その2ーー生真面目トレーナーのストレス発散
美味いカップ麺は煮えたぎる熱湯を薬缶で注ぐに限る。
底が黒く焦げた薬缶をコンロに置き、わざわざ買った高いミネラルウォーターを沸かした。
「〜♪」
トレーナー業は忙しく、久しくインスタントのジャンクな味わいから遠かった。ウマ娘というアスリートに携わっている事も一因であった。
「うし、沸騰したか」
水の煮えた音が一層大きくなった。念のために温度計を挿して確認する。
「100℃だ。完璧……」
コンロの火を止める。未だに湯は暴れているが、構うものか。カップ麺を食いたい欲望のまま熱湯を固く乾燥した麺にぶっかける。その上に小皿で蓋をして、後は待つだけだ。
エキスが湯に溶け出している。微かな旨味の匂いが何よりの証拠だ。
「……我慢できん」
3分も待てない。腹が減っているのだから。水滴に構わず小皿をどかして、苛立ちまぎれに割り箸を乱暴に突き刺し、掻き乱す。
汁がそこら中に飛び散るが、知った事かとトレーナーは我武者羅に割り箸で回転させる。気づけば辺り一面にスープやネギが散らかっていた。
「来る前に片付ければいいか……」
今は食べることが先決だった。
「いただきます」
不愉快で、下品な音を思い切り立てて麺を啜る。ああ、なんと美味いのだろう。酷く下品極まりない光景は、到底中央トレセンのトレーナーとは思えないくらいに最悪だった。
べちゃべちゃの机で、間違いなく彼の担当ウマ娘でなくとも腹を立てるだろう咀嚼音を響かせる。深い、深い絶頂を全身で味わっていた。しかし、それ故に部屋に近づく存在への緊張を失った。
「おい、いるかトーー」
「うめぇぇ、ぇ?え……え、エアグルーヴさん?」
「……!」
無言の怒りをひしひしと感じる。こわい。
「あの、これは……」
必死に釈明してもどうしようもない。どう足掻いても絶望が待っていた。
「このぉ……たわけがああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この後、エアグルーヴにしこたま怒られた……
カップ麺が水で食えるのはマジです。災害時などに活用できます。