過去の短編杯参加作品の続編を投稿しても良いとのことなので、今回はこちらの作品を投稿させていただきます。
前後編です(予定)。
対象:竹嶋○○ 男性
元聖天子付き護衛官
現特殊清掃員
インタビュアー:U.S.氏
記録者:[削除済み]
付記:[削除済み]
[ 録画開始 ]
[前略]
竹嶋氏:[ 5秒沈黙 ] しかし妙ですね。
U.S.氏:妙……とは?
竹嶋氏:今の東京エリアって仙台エリアと一触即発じゃないですか。普通マスコミってそっちの取材を優先すると思うんですよね。なのになぜ今更あの事件のことを聞くんですか? ていうか、そもそも俺が元護衛官だって情報をどこで手に入れたんですか? 結構念入りに記録を消去したはずだったんですけど。
U.S.氏:順を追って説明するのでご心配なく。まず情報元ですが、うちの事務所には優秀で信用できる情報屋がいましてね。貴方が事件に関わっていることは彼が特定してくれました。ただ、
竹嶋氏:つまり情報元は
U.S.氏:はい。で、「なぜエリア間の情勢ではなく今さら狙撃事件?」についてなのですが、これはうちの事務所のモットーである「重箱の隅をショベルカーで掘れ」に照らし合わせた結果としか言わざるを得ないのです。
竹嶋氏:なるほど。巷でもっぱらの話題に興味無しとは変わった事務所ですね。
U.S.氏:[ 笑い ] よく言われます。それでは質問に入らせていただきます。貴方の思う事件の切っ掛けとはなんですか?
竹嶋氏:俺の思う……? [ 7秒沈黙 ] やっぱり大阪エリアの大統領との会談でしょうか。
U.S.氏:斉武大統領との会談……? それはもしかすると極秘の会談ですか?
竹嶋氏:はい。極秘かつ非公式の会談です。思えばかなり急に予定が組まれたような気がします。ただ、政府の人間の内情をそれなりに知っている自分達からすれば、天童補佐官の不在を狙って会談を持ちかけたのは一目瞭然でした。確かその頃はロシアに出向してたんでしたっけ。というかほら、斉武大統領と天童補佐官は仲が悪いって専らの噂でしたし。貴方も聞いたことあるでしょう?
U.S.氏:ええ、まあ都市伝説レベルの話ですが。……となると、狙撃事件の裏には斉武大統領がいた、という可能性も浮上してきますね。
竹嶋氏:まあ、そうなりますよね。情けないことですが、自分ら護衛官も
U.S.氏:言えること?
竹嶋氏:はい。『斉武大統領が持ちかけた非公式の会談の送迎中に襲われた』。これは事実です。
U.S.氏:なるほど。字面だけ見ると凄まじいですね。
竹嶋氏:そうなんですよ。ただ、斉武大統領が関わってるということは政府の一部の人間しか知らないので、変な陰謀論のように世間に出回るようなことはありませんでしたけどね。
U.S.氏:あくまで政府関係者内での話、と。[ 顎に指を当てて約3秒沈黙 ] ──それはそうと、聖天子様は確か二度に渡って狙撃されたのですよね?
竹嶋氏:はい。そうです。
U.S.氏:そして、これは大変失礼な話なのですが、貴方の口振りから推測するに、貴方
竹嶋氏:……認めたくはないですけど、そうでしょうね。それが?
U.S.氏:言ってなんですが、少し違和感を覚えましてね。
竹嶋氏:違和感?
U.S.氏:おかしいじゃないですか。自ら認めるほど無能な護衛官の集団が国家元首を狙撃から守れますか? それも二度。
竹嶋氏:か、かなり辛辣ですね。
U.S.氏:おっと、これは失敬。しかし言いたいことはおわかりでしょう? ひょっとして、聖天子様のそばに、貴方方以外の誰かがいたのではないでしょうか。
竹嶋氏:[ 俯いて口を閉ざす ]
U.S.氏:竹嶋さん?
竹嶋氏:……いましたよ。
U.S.氏:誰がですか?
竹嶋氏:護衛隊長の言葉を借りるなら、成り上がりの民警ってヤツですかね。
U.S.氏:民警……ですか。ちなみに名前は?
竹嶋氏:かの有名な里見蓮太郎ですよ。
U.S.氏:里見……蓮太郎……
竹嶋氏:はい。聖天子が個人的に雇ったそうで、会談2日前に突然紹介されました。
U.S.氏:2日前! 急ですね。
竹嶋氏:まあ、急なのに関しては会談自体が突然決まったので致し方無しではあるんですが……だからといって普通民警を雇うか? と思いましたね。当時は。
U.S.氏:確かに民警はあくまで対ガストレア戦闘のスペシャリストですからね。対人戦闘が想定される要人護衛では、当然ながら対人戦闘に特化した人材が必要となります。今回の場合は民警ではなく
竹嶋氏:え、今でも普通のPMCって存在するんですか? 大体のPMCは民警になったと聞きましたが。
U.S.氏:いるにはいるみたいですよ。ガストレア大戦による混乱の影響で治安が著しく低下した地域も少なくないですし、そういった地域の治安維持にはPMCは必要不可欠でしょう。先ほどお話した通り、民警はあくまで対ガストレアのプロ。人間の扱う緻密で高度な戦術には精通していませんからね。使える民警を
竹嶋氏:東京エリアの民警の年間死亡者の割合が一向に減らないのはそのせいですか。
U.S.氏:まあ、そんなところでしょうね。逆にPMCは某大国の特殊部隊並みの戦術を編みだし、同時にそれと同等以上のレベルの罠を看破する思考力を持ちますが、ステージ3ガストレアの厚く硬い皮膚を貫けるほどの武器を使用することはほとんどありません。使用弾薬も従来通りの鉛弾が多いようです。
竹嶋氏:へぇ。つまり適材適所ってことなんですね。……すいません、話が逸れてしまいましたね。
U.S.氏:いえ。では質問に戻ります。具体的に里見蓮太郎に与えられた役割とはどんなものですか?
竹嶋氏:うーん、実際に任命された現場にいたわけではないのでこれは想像なのですが、多分、天童補佐官の替わりを任命されてたんだと思います。
U.S.氏:たかが民警に補佐官の替わりを任命するとは、聖天子様はその里見蓮太郎を随分信頼していたようですね。
竹嶋氏:そりゃあ、偶然とはいえ仮にもステージⅤの一体を撃滅した民警ですし、信頼するのも当然でしょう。……でも、それを差し引いても、かなりベッタリだった気がしないでもないですね。
U.S.氏:それは興味深いですね。つまり、ただの民警と国家元首の関係ではなかったと? 例えば恋仲とか。確か里見蓮太郎と聖天子様は同世代だったはずですし。
竹嶋氏:うーん、そこまでかどうかは何とも言えないんですけど……。でもイチ民警と国家元首関係以上の何かはあったと思います。
U.S.氏:そうですか。……それでは、次の質問に移ります。今回の狙撃事件の具体的な内容についてお聞きします。まず、聖天子様が狙撃された時、貴方はその場にいましたか?
竹嶋氏:1回目狙撃された時は、聖天子様のお側でお守りすることが出来ませんでした。2回目の狙撃の際は、かろうじて肉壁としての役目を果たすことが出来た……と思いたいですね。
U.S.氏:なるほど、1回目は聖天子様の側にいなかったと。確か1回目の狙撃はリムジンでの移動中に行われたのでしたよね。側にいられなかったのはそれが理由と?
竹嶋氏:まぁ……そう、そんな感じです。なんか……言い訳じめてますけど。
U.S.氏:移動は車列を組んでいたのですよね?
竹嶋氏:はい。リムジン3台を使い、我々の車で聖天子様が乗車された車を前後で挟む陣形を採用しました。
U.S.氏:それはまた何とも目立つ……えっと、今回の会談は非公式且つお忍びなのですよね? それなのに
竹嶋氏:それには俺も違和感を覚えました。でも諸々の決定権を持つ人間が少々……いや、かなりアレでしたので……
U.S.氏:ああ、なるほど。概ね理解しました。
竹嶋氏: [ 小さく笑みを溢す ] もしかして、貴方にもそういった経験が?
U.S.氏:ご想像にお任せします。
[中略]
U.S.氏:それでは、当時の出来事を具体的にお話下さい。
竹嶋氏:それは……1回目の狙撃からでいいですか?
U.S.氏:もちろん。お願いします。
竹嶋氏:分かりました。[ 5秒間沈黙 ] ……その時、俺は縦一列に並ぶ3台の車両の内、先頭の車に乗っていました。よく覚えています。俺はハンドルを握っていて、隣にはあの護衛隊長が座っていました。移動中、件の民警の愚痴をずぅっっと聞かされました。あれほど憂鬱な時間はこの先無いでしょうね。
U.S.氏:続けてください。
竹嶋氏:……一番始めに聞こえたのはガラスが粉砕する音でした。続いて車が硬い何かに激突するような音が車の中にいた自分の耳に入ってきました。バックミラーを覗けば、聖天子様が乗られているはずのリムジンが、側面から壁に突っ込んでいるのです。目を剥くってああいう表情のことを言うんでしょうね。ミラーに映った自分の顔は酷いものでした。
U.S.氏:銃声は聞こえなかったのですか?
竹嶋氏:うーん、それっぽい音は聞こえなかったと思います。 ……俺の足は反射的にブレーキを踏んでいました。車が角度をつけて止まった後、俺はすぐドアを開けて外に出ました。ですが他の護衛官ときたら顔はぐしゃぐしゃ、手は車のドアを開けるのも手こずるほど震えていました。その中でも我らが護衛隊長はそれが一際目立っていましたね。もう、何で隊長なんかやってたんでしょうねあの人は。というか、そもそもどうやって護衛官になったのかすら俺は不思議で──
U.S.氏:竹嶋さん。続きを。
竹嶋氏:……失礼しました。思い出したらイライラしてきちゃいまして。 ──えっと、どこまで話しましたっけ。
U.S.氏:後ろの車が壁に衝突して、その様子を見に車から出たところまでです。
竹嶋氏:そうですか。……はい。震えて動かない仲間を放って俺は駆け出しました。 [ 小さく鼻で笑う ] 一番やる気のないヤツだと笑われていた自分が一番始めに職務を遂行するとは皮肉もいいとこです。ですが、俺が聖天子様の傍にたどり着いた時には全て終わっていました。里見蓮太郎と彼のイニシエーターが俺達の役目を俺達以上の完成度で全うしていたのです。
U.S.氏:なるほど。
竹嶋氏:俺はその時思い知らされました。聖天子様が彼らを選んだ理由はこれなんだなって。会談前に、彼らを無意味に過小評価していた自分が恥ずかしくなりました。もっとも、我らが隊長は、彼に対するあらゆる嫉妬で頭がいっぱいのようでしたが。
U.S.氏:聖天子様が狙撃された時、何か気づいた点はありますか? どんな些細な事でも構いません。
竹嶋氏:気づいたこと……[ 唸りながら5秒間思案する ] あっ
U.S.氏:何か思い出しましたか?
竹嶋氏:はい。音です。聖天子様のそばに駆け寄った時、何かこう……ブウゥゥゥゥンみたいな変な音が聞こえてきたんです。
U.S.氏:「ブウゥゥゥゥン」ですか…… それは単なる騒音ではなくて?
竹嶋氏:いや、違う……と思います。初めて聞いた音でした。はい。
U.S.氏:なるほど。ありがとうございます。 ──よろしければ
竹嶋氏:確かに対策会議は開催されましたけど、あんなの会議だなんて言えませんよ。罵倒大会ですよ罵倒大会。隊長から里見蓮太郎に対する罵倒大会。終始彼が不憫で仕方がなかったですよ。
U.S.氏:それはまた。心中お察しします。
竹嶋氏:どう考えてもあの隊長の無能さに原因があるのに、それを里見蓮太郎以外誰も指摘してませんでしたからね。ああ、聖天子様は怒ってましたね。隊長があんまりにも里見蓮太郎を名指しで扱き下ろすもんで、「里見さんを選んだのは私の意思。その里見さんを疑うということは私の判断を疑うのと同義だ」って。あと東京エリアを救った英雄を疑うとは何事か、とも言ってました。
U.S.氏:聖天子様がお叱りになられるとは相当ですね。
──はい。ありがとうございます。それでは、2回目の狙撃の様子をなるべく具体的にお話下さい。
竹嶋氏:はい。2回目の狙撃……というよりも、2回目の非公式会談が行われたのは、前回から数えて大体1週間後くらいだったと思います。
《裏面に続く》