堕ちろよ、人間(完結)   作:かりん2022

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堕ちろよ、人間。の前に登れ。

 

「堕ちろよ、人間」

 

 名も知らぬアニメの、悪役の、その言葉だけ覚えてる。その方の、名前だけ覚えている。

 

 ゲームを仕掛けて、人間を惑わせて、言い捨てる。

 いいなあ。とってもいい。

 私だって、悪いこと、してみたい。

 

 それが、最後の記憶。

 異世界召喚されて、勇者として担ぎ上げられて、邪神退治させられて、相討ちした私の最後の願い。そして、邪神の呪いを受けた私はそのまま捨てるかのように送還された。

 

 私は邪神としての力を孕んで生まれ落ちた。

 

「堕ちたわ、フェムト様♡」

 

 邪神のように魔物を生み出し!

 女神のように勇者共を生み出す!

 

 例えその先が破滅だとしても。

 一回くらい、好きにしてもいいよね!

 

 せっせせっせと準備して。

 高校一年生のハロウィン。

 私は、渋谷で事を起こすことにした。

 

 顔の3分の2を鉄仮面で覆い。ごちそうを載せた食卓の前。ドレスを着て、椅子を傾けて座る。お、21:00! 渋谷のテレビとスマホをジャックして、放送開始!!

 

「はぁーい♡ はっぴはーろうぃーん!! 初めまして! 私は堕落乙女ピコ! 堕落王フェムト様に恋する羽虫! 今日は、皆さんにぃ、私とゲームをしてもらおうと思います! 拍手ー!!」

 

 ぱちぱちぱち、と自分で手を叩く。

 

「じゃあ、まずは♡ 力に目覚めてもらおうか♡」

 

 パチン、と指をぱっちん。潜在能力を目覚めさせる。

 めっっっっっっちゃ疲れたけど、そんな姿見せない!!

 

「あっ 気に入った子は力をお持ち帰りさせてあ♡げ♡る♡ せいぜい媚を売ってね♡」

 

 チュッと投げキッス。

 

「ゲームルールはかんたん! 勇者的に! 格好よく! 敵を倒す! それだけ!!」

 

 ぶんぶんとナイフとフォークを振る。敵を切るように。

 

「私ね♡ 人間が堕ちるのを見るのが♡ 大大大好きなの♡ 特に勇者様が堕ちるのなんてキュンキュン来ちゃう♡ でもね、そんな勇者、いないからね。だからね。まず高みに登ってもらわないと♡」

 

 くねくねと身体をくゆらせる。

 

「高ーいところまで、登って登って、はるか頂上に立った後で……堕ちろよ、人間」

 

 決まった!

 

「げーむすたーと♡」

 

 そして、私はスライムたちをドバッと出した。

 配信をストップ。さてさて。料理に手を伸ばしながら、無数の画面を見る。

 

「ん? なんだかギュウギュウ? 人の死体がいっぱい?」

 

 それがなんだか気に入らなくて、アンデットとして復活させながら状況を見る。

 人が見えないなにかに殺されていく。なにげにホラーである。

 

「んー? 何あれ」

 

 人をぽちぽち生き返らせながら、ひとまず、携帯で渋谷で調べてみる。

 あった。五条 悟を呼べと騒ぎが起きていたらしい。

 五条悟誰やん。

 どちらにしろ気に入らない。今日の主役は私だ。

 

 ぽちぽちぽち。私は人をアンデット化させ続けながら、四苦八苦しながら調べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界の人々の潜在能力。それは大体呪力だったりする。

 人々は、呪霊の姿を見てパニックになる。更に足元から湧き出るスライムに驚き、阿鼻叫喚になる。

 非術師のみならず、呪術師達も慌てた。わらわらと呪力を感じないが半透明な球体が襲ってきて、なんだか、身体に力が張ってくる。

 逃げ惑う人々と、戦い始める人々。

 スライムを倒すと、人々の頭の上にゲージが出る。まるで、ゲームのように。

 ゲージが貯まるとレベルアップだ。

 虚空にウィンドウが現れて、スキルが出現し、選択すると取得できる。

 

 そのゲージもウィンドウも見ることが出来る。

 少しずつ、戦う人が増えてきた。

 

 

 

 

「なんだ? これは何なのだ!?」

 

 漏瑚が動揺する。夏油はどうした、と周囲を見回すと、いた。

 夏油が、よろめいて歩いてきて、ナイフで頭をこじ開けて、悲鳴を上げる脳味噌を踏み潰す。

 

「傑!? 一体……!!」

「悟。こんな姿を見られることになるとはね。私の身体は、乗っ取られていたみたいだ」

 

 驚愕する五条に、苦笑する夏油。

 

「馬鹿な!? 脳味噌もなしに、どうやって生命活動をしている!?」

「生命活動、してないよ。完全に死んでる。それで、何かに仮初の命を与えられた」

「傑……!」

 

 その時、電車が来た。

 降りてきた改造人間達が、次々と人間の姿に戻っていく。ただし、生きてはいない。

 

 夏油はニコリと笑う。

 

「『何か』が主役は自分だと怒っている。私も怒っているんだ。八つ当たりさせてよ」

 

 最強コンビが、ここに復活した。

 

 呪霊を取込み祓い、夏油と電車から降りてきた者達と、血だらけになった者達、要するに死人達はしゃがみ込む。スライムは彼らを襲わない。

 

「私達はリタイア組だからね。参加は許されない。悟はイベントを楽しんでおいで。一時間ごとにポップする敵がレベルアップするから、気をつけて」

「そこにいろよ、傑!!」

 

 傑も気になるが、この異常事態をどうにかせねばならなかった。

 スライムを倒すと、ゲージが上がる。

 

『魔眼を習得しますか?

 転移をレベル2に上げますか?』

 

「は、なんだこれ」

 

 魔眼を選択すると、スライムたちや夏油から同じ気配がすることがわかった。

 

 結局、呪詛師と呪霊を片付けた後、警察や自衛隊を投入する事で事態は収束した。

 魔物には普通に物理攻撃が聞いたのだから、仕方がない。レベルが上がると、呪霊も退治できるようになるし。

 

 なお、ハイパー呪術師タイムは24時に消えた。

 得たスキルなどはもちろん、呪霊を見る力も消え失せている。

 ただ、一部の者は力が残ったようだった。

 

 渋谷のテレビやスマホに、堕落乙女ピコが映る。

 

『ああっ もう! 調べている間に終わったじゃないのよ! 誰なのよ、五条 悟! なんなのよ、人が勝手に死んでく現象! ホラーなの? ホラーなの!? 悪霊がやりましたとでも言うつもり!? あーもう! 私のデビュタントが台無しだわ! とにかく! 来年のハロウィンは私以外イベント禁止! もうふて寝する!』

 

 そして、映像は消えた。

 

 ――来年のハロウィンもやるのかよ。

 

 問いかけに答えるものはいない。

 

 

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