どうやら、この世界には呪霊というホラー要素があったらしい。
いろいろ調べたけれど、未だによくわからない。
ポストが赤いのも空が青いのも全てピコちゃんのせいなんです! と言っていたテレビは、何故か突如として真相を話し、呪術について解説を始めた。今頃、私を敵に回す愚に気づいたのかもしれない。
呪霊に術式。ホラーなのか、バトルなのか。
「カメラに映らないのか。なら、見えなかったのはしょうがないかも」
いや、そんなテレビでやってたようなきもいうにょうにょは見たことない。単純に私に見る力はないと考えるべきだろう。
ゾンビーズは見えるとのことだし、実験にゾンビーズを使えばいいのはわかっている。
けれど。
「逆らえない存在に何かを強要するのはなぁ……」
自分の立場がそうだったからわかる。
支配とは糞である。
逆らえない子に魔王退治とか強要しちゃいけない。絶対。
だから、ゾンビーズには極力命令はしないようにしている。
人様に迷惑をかけない範囲なら、好きにすればいい。それこそ、反乱でも起こしても構わない。
その辺りは、ゾンビーズの自由だし、もちろん、反乱を起こしたゾンビーズに何しても私の自由である。
自由とはそういうものだ。
屋上へ続く学校の階段。お気に入りのジュースを飲みながら、私はむむぅと考えた。
鉛筆をくるくると回す。
既に勇者がいるのなら、彼らをプロデュースするのがいいと思う。
五条 悟とかイケメンだし、強いって言うし、勇者として申し分ない。
だが、見えないのだ。
新たに勇者を作る。潜在能力を開花させる。潜在能力=呪力。
やっぱり、見えないのだ。
つまらん。
何ということだ。
やはり私はフェムト様の足元にも及ばぬ羽虫に過ぎないのか……。
ゾンビーズの眼を乗っ取ることは出来るけど、常に侍らせるゾンビーズが必要になる。
お給料なんて出せないぞ、無理やり言う事聞かせるのは却下だし。
「ここにいたのか、神宮寺」
「虎杖くん」
「一緒に帰らねぇかと思って」
「別にいいけど」
ジュースをゴミ箱に捨て、スケッチブックを閉じて、立ち上がる。
虎杖くん、伏黒くん、釘崎ちゃんは我がクラスへの転校生である。
家族の仕事の都合で三人揃ってうちの近くに越してきた。
私は脳味噌腐ってないので、わかる。
案外突き止めるの早かったな。
私は焦らない。
別に、本名を大声でいうつもりもないが、正体を隠そうとコソコソするつもりもない。
偽名も顔を隠す鉄仮面も全ては全てフェムト様に寄せる為。
「来年のハロウィン、だけど、その……あー! どうすんだよ、神宮寺! また渋谷をスライムの海にすんのか」
「だっさ。二番煎じなんてするわけないでしょ」
直球に直球で返す。
「お、おお……」
「勇者様には素敵な招待状を出してあげるから、グダグダ言わず待ってなさい」
「なんでこんな事すんの?」
「暇つぶし以外に理由なんてないでしょ」
「フェムト様の?」
私はきょとんとして、笑った。
「フェムト様は関係ないわ。私が暇を潰したいだけ」
「退屈って感じじゃねーけど。どっちかってーと八つ当たり?」
地雷を踏まれて、ニコリと笑う。激昂はしない。そんな三下みたいな。
でも、そう。彼らの評価は改めるべきだ。
「何だっていいわ。私は、悪の華として咲き誇りたいの」
「はな」
「何よあんた、私に華が相応しくないっていうの!?」
今度こそイラッときた。今生の私は可愛いのであるぞ!
「いや、あんた、そんな柄じゃねぇなって」
「じゃあどんな柄なのよ!」
「日向ってかんじ」
「ひな……」
「温かい所で微睡むみたいな。なんとなく、だけど。なのに、なんで悪いことすんの?」
「はぁ……?」
「虎杖、あんた神宮寺のこと口説いてんの?」
「ち、ちがくて!」
釘崎ちゃんに言われて、慌てて否定する虎杖くん。
こいつ。
圧倒的陽キャラである。単なる陽キャラではない。まるで、こちらの影にまで光を当てて、隠されたそれを見つけ出して、あまつさえ拾うような。圧倒的踏み込みと洞察力を持った陽キャである。なんだこいつ。
それでも、私の心に、それはささった。日向、か。
私の前世の名前、日向なんだよね。のんびりして、かんたんに担がれちゃうようなアホで、善良と言うよりは、善良という道を外れる勇気のなかった臆病者。
「一回くらい」
ポツリと呟く。
「おう」
「とっても悪いことをしてみたかったなって」
「一回終わったじゃん」
「そーよそーよ」
「確かに」
「煩いわね! あんなのノーカンよ、ノーカン!! これはね、単発イベントじゃなくて、キャンペーンシナリオなの! わかる!? 勇者といえるほどの力を持ち! 高みにまで登りつめた者が堕ちる! その様を私が嘲笑って、それで一回なの!」
「それって例えば、既に高みにある五条先生が堕ちる姿を見れば満足してくれるってことですか」
「堕ちるって何すればいいの?」
「そこ、重要よね」
「そう、ね。例えば、善良なるものを大義のために殺すとか」
「なんだ、簡単じゃん! 俺が五条先生に殺されればいーってことか!」
「虎杖ぃ!」
「自分で善良っていうか。善良だけど」
「何言ってるかわかんないわよ……。なんで解決しました的雰囲気出してんのよ……」
私はドン引きする。先生に殺されればいいって何よ。
「俺さ、器なんだ。宿儺の器。20本の指を取り込んだら、五条先生に殺されることになってんの」
「全然わかんないわよ……」
そこで、私は宿儺の器について講義を受けた。
「ちょっと馬鹿にしてんじゃないわよ。それ、後味悪いだけじゃない。私が求めるのはそういうのじゃないのよ!」
「じゃ、どういうの?」
「助けていれば皆ハッピーエンドだったのに、大義のために安易に犠牲を強いた結果、さらなる犠牲を生み出す……、こう、堕ちたことによる自業自得的な!! 思わず嘲笑っちゃうような!」
「そこに笑う要素はないと思うが……」
「それも後味悪いと思うわよ」
そこで、家についた。
「じゃあ、また明日」
「今日も両親遅いんだろ。俺、料理作ってやるよ。もっと神宮寺のこと知りたい」
「……そうよ、ハロウィンでは見え張ってごちそう用意してたけど、普段面倒臭がって菓子パンでしょ、あんた」
「俺ら、全員多少は料理できますよ」
「私だって出来るわよ、出来ないような言い方しないでよ」
「でも夕食菓子パンなんだろ」
結局、押されて食事をする事になった。
材料は用意してあるという。
グイグイ来るわね、私といずれは殺し合う予定だろうに、わかってんのかしら?
足りないものがあって、虎杖は買い出しに出る。
家からある程度離れると、虎杖の頬に口が現れた。
「はっ 小僧。鈍いお前にはわからんだろうが、あれは化け物だぞ」
「1000人もゾンビとして生き返らすのが化け物じゃないはずね―だろ」
わかってるっつーの。呟く虎杖の声はどこか投げやりだ。
「いいや、わかっておらん。わかったつもりでいるだけだ。あれは異質だ」
「ビビってんの?」
「……」
「マジで? 俺もだけど」
軽い調子で言う。
あの渋谷事変の折。
力が湧き出た時。
虎杖は、宿儺を一瞬であれ、支配した。
宿儺の力と知識の一部を物にし、呪霊を次々と祓った。
あの、掌握する感じ。自分の深い所に、宿儺が交じる感じ。
虎杖は、もっと上に行ける事を実感した。してしまった。
宿儺を完全におのが力として消化することが、神宮寺の助けがあれば出来てしまう。
ただ、深淵を覗くものは深遠に覗かれる。宿儺だって只者ではない。
虎杖が宿儺を完全に消化してしまえば、宿儺は真の意味で虎杖の一部になる。
その力も、邪悪さも。
悪くすれば、虎杖という人格が乗っ取られてしまうかもしれない。
全く新たな人格を持った呪いが生まれるかもしれない。
最良は、虎杖は虎杖のまま、宿儺を完全な呪力にしてしまうことか。
「神宮寺、俺が堕ちるとこでも満足してくれるかなぁ」
それにちょっぴり魅力を感じてしまうくらいには、力は甘い果実だった。
凄い読まれてる&読み返して頂いてる……。
ありがたい。でもちょっと怖い……。
評価等、ありがとうございます!!
か、感想ももうちょっとほしいなーって……。
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