堕ちろよ、人間(完結)   作:かりん2022

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迷える子羊の牧場主

 

 とりあえず、装備を整える。

 鉄仮面にドレスを纏い、ふわりと浮いて見せれば、彼らは注目してきた。

 

「あんた達、本当に私に仕えたいというの? 得られるものはないというのに? 跪いたまま、私への忠誠の理由を思い浮かべなさい。忠誠の義を取り消したいものから立っていきなさい。元の場所に送還してあげます」

 

 意識をつなげる。

 

『ゾンビだから飲食睡眠抜きで働いても平気だろ』

『生命保険支払われないのよねぇ。困るわあ。悪霊に対して賠償請求なんてできないしね』

『夏油様の為なら、私達、平気ですなんて言われても、私が平気じゃないんだよ』

『お前もう、死んでるんだろ? なんで学校来てるの?』

『この世の中に復讐したい』

『先生だって夢を見るわ』

『魔法! 魔法! 魔法!』

『かゆ……うま……』

『もう一度歩ければ何でもいいや』

『このままニートでいるよりは』

『悪い事したい』

『クラスメイトだし』

『ピコ様はあはあ』

『スパイ命じられたんだよなぁ』

『病気の弟が元気になるためなら、一緒にゾンビになれる』

『人間の進化の先が見たい』

『動画サイトにアップしてイイネが欲しい』

 

 かゆ、うまぁ!!

 ブブブ、ブラックぅ……!! 

 ガチで迷える子羊共に、私はクラリとよろめいた。

 ほんっと無知蒙昧なる人間どもよ!

 

「そう、得られるものがないというのは違うわね。これが欲しいの? 成仏チケット! そうよ、これがあればあんたたちは眠れるのよ」

「それとも健康な肉体が欲しいのかしら? ゾンビの身体で良かったらあげるわよ」

「命を捨てるほど、魔法が欲しいのかしら? 本当に?」

「私は未来をあげられないわ。この先にあるのは破滅のみ。それでもいいのね?」

「命を捨て、魂を捧げ、週6日、フルタイムで私に仕えるというのね? 多くの人を殺すであろう私に仕えると? 私は確かに人に試練を与えるけれど、部下に好き勝手させるつもりもないわ。私程度に膝を折るようなものに、勇者の資格も与えない。文字通り自分を殺して私に従ってもらうことになる。それでもいいのね? 不服なものは立ちなさい! 送還してあげる」

 

 迷って、立ち上がる人が幾人か。彼らは送還されていく。

 設備から離れ、命を落とす病人が幾人か。ゾンビ化ポチポチ。

 っていうか、あんたらよく情報手に入れて一時間も跪けたわね。

 

「後、五分だけ考える時間を与えます。それでも跪き続けたものは、私のものよ。残らずゾンビにして、従えましょう。あと、私にも選ぶ権利があるので、失格者は帰します。成仏チケットくらいは持たせてあげましょう」

 

 きっかり五分待ち、私はパンっと手を叩いた。

 

 力がグラウンドの中央で弾ける。

 ここから私の晴れ舞台!

 

 一応、準備はしておいたのよね!

 

 大きく腕をふるい、空飛ぶお城を創造する。

 イメージは不思議の国のアリス。

 

 氷の螺旋階段が、城から降りてくる。

 

「寝場所。あの階段を登ったら、貴方達は魔法使いよ。とりあえず呼ばれるまで自由。お行き」

 

 わーっと迷える子羊共が階段に群がる。

 

「なー。俺達も階段登れば魔法得られる?」

「お城見たい!」

「……調査は必要と考えます」

「あー、まあ、好きにしたら?」

 

 三人が行くのを見送ると、待っていたようにレイスが私の元へと訪れた。

 

『お初お目にかかる。我が主』

「ん、貴方はゾンビにならなかったのね」

『脳味噌になってた上に、すぐ跡形もなく潰されちゃったからね』

『どうやら、階段も混んでいるようだし、待っている間、少し会話をさせてもらってもいいかな?』

 

 私はレイスを視た。

 

 一見優しそうだけど、めちゃくちゃ人を騙しそうな顔をしているわ。

 騙されてきた私の苦い思いがよぎる。

 

「一見暇そうに見えるけど、階段を登っている間に私は彼らの魂を見て、力を与えているの。邪魔をしないで頂戴」

「了解した」

 

 その言葉に、話したそうにしていた者達も大人しく階段へ向かう。

 

 全員が階段を登った後、城を異次元に補完して、私は帰宅した。

 

 虎杖くん達は明日、開放すればいいでしょ。

 それにしても、派遣業出来るぐらい数増えちゃったわね。どうしようこれ。

 考えるのは明日にしよう。

 

 私は家に帰宅し、シャワーを浴びて眠った。

 

 朝5時、寝ぼけながら虎杖くん達を彼らの住まう家に召喚して二度寝する。

 朝8時。準備をして、玄関を出ると、虎杖くんたちの他に、若い女の子が二人いた。

 

「夏油様を返して!!」

「ああ、成仏を望んでいる子ね」

「夏油様を私達から奪わないで!」

 

 彼の場合、最初から死んでるんだけどなぁ。カルマが多い子だから、悪い人ではあると思うんだけど、まあ、どんな人にも大切な人はいるよね。

 

「これから学校だから、帰ったら話を聞くわ」

 

 学校に向かうと、我がクラスは集団失踪したらしく、騒ぎとなっていた。

 

 やけにクラスメイトがいるなと思っていたけど全員か。

 しかし、素直に帰るとあの気の強い女の子たちと対決だ。

 ただでさえ眠いのにそれは勘弁してほしい。

 私はゾンビ共(一部)に登校を命じた。

 

「はーい、今日から君達の副担任になった五条 悟です! 今日は自己紹介を兼ねて作文を書こうか。君達の目的と昨夜得た魔法について!」

 

 わあっとクラスメイトは大喜びで自慢気に筆を走らせる。

 担任の桃ちゃん、あんた生徒じゃないんだからドヤ顔で作文書かないでよ。

 

 なんだろう。

 一人ハブられる予感!!

 

「械音(かいね)はその間、僕と話そうか」

 

 いらない配慮です。いらない配慮です。いらない配慮です。

 

「君が昨夜、配下に加えた中に、夏油 傑って人がいるんだけど」

「ああ、成仏希望の」

「君が出した条件だと、いつ成仏させるか書かれてなかったけど」

「そうですね。とりあえず、一年ほどでチケットを出してもいいと思います」

「そっか。じゃあ、その一年間、彼をレンタルさせて欲しいんだ。悪いことするのに、運転資金も必要だろ?」

 

 うーん。まあ、いっぱいいるし、夏油さん、カルマ値低い人だし、多少人権に配慮しなくてもいいか……? って、五条 悟って親友殺す羽目になった人か! 夏油さん親友か!

 

「わかりました。でも、他にも買いたがると思う人がいるので、保留させてください」

「美々子と奈々子なら、知り合いだから問題ないよ」

 

 そうして金額を提示される。この金額は……!!

 

「たった一年なのに、そんなに払うんですか?」

「親友を、その間でも取り戻せるなら、妥当な額だと思うけどね」

 

 うーん。取りこぼしたものも、必死に拾おうとするその姿は、勇者には及ばないけれど、共感を覚える。

 

 大体、夏油さんも心配させてばっかりはいけないよね。カルマ値低いってことは絶対悪い事してるし。五条先生には魔術の才能もある……よし!

 

「よし! 超絶対スペシャル服従コースでお売りします!」

「え」

 

 私はピッと五条先生の額に指を指し、召喚魔法を授けて知識を送る。

 

「名前を読んでください、心からその親友を想って。パスを通じて、貴方の使い魔にするので」

「夏油 傑。傑……!! 呼びかけに応えてくれ!!」

 

 そうして、五条先生の前に魔法陣が広がり、気まず気な顔をした夏油 傑が現れた。

 

「悟」

「傑」

 

 思考パスが繋がっているので、もはや言葉はいらない。でも、まあ。

 

「悟……心配させて、悪かったよ」

「本当だよ、傑……! でも、僕も君のこと買ってごめん」

「「本当だよ!!」」

 

 大事なことは言葉にすべきだよね。

 

 堕ちた勇者が、かつて切り捨てざるを得なかったものを拾って、再び勇者となる。

 うん、なかなかいいシナリオじゃないか。

 

 なんか殴り合い始めたから、高専とやらに転送しておこっと。

 

 一時限目の作文は虎杖くん達が回収し、二限目からは普通の授業となった。

 よしよし。

 

 学校が終わって家に行くと、女の子二人はいなかった。

 無事帰ったらしい。

 午後から虎杖くん達は任務とやらに出たし、放課後は一人だ。

 

 さて、勇者選抜試験のイベントについて考えますか。

 

 家に帰ってエゴサーチしてみると、成仏チケットは無事高額転売されていた。

 




ぴゃああああ
UAとPVしゅごいいいいいい

評価もいっぱいの人から貰えて驚いています!
ありがとうございます!!

感想も沢山、ありがとうございます!!
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