とりあえず、装備を整える。
鉄仮面にドレスを纏い、ふわりと浮いて見せれば、彼らは注目してきた。
「あんた達、本当に私に仕えたいというの? 得られるものはないというのに? 跪いたまま、私への忠誠の理由を思い浮かべなさい。忠誠の義を取り消したいものから立っていきなさい。元の場所に送還してあげます」
意識をつなげる。
『ゾンビだから飲食睡眠抜きで働いても平気だろ』
『生命保険支払われないのよねぇ。困るわあ。悪霊に対して賠償請求なんてできないしね』
『夏油様の為なら、私達、平気ですなんて言われても、私が平気じゃないんだよ』
『お前もう、死んでるんだろ? なんで学校来てるの?』
『この世の中に復讐したい』
『先生だって夢を見るわ』
『魔法! 魔法! 魔法!』
『かゆ……うま……』
『もう一度歩ければ何でもいいや』
『このままニートでいるよりは』
『悪い事したい』
『クラスメイトだし』
『ピコ様はあはあ』
『スパイ命じられたんだよなぁ』
『病気の弟が元気になるためなら、一緒にゾンビになれる』
『人間の進化の先が見たい』
『動画サイトにアップしてイイネが欲しい』
かゆ、うまぁ!!
ブブブ、ブラックぅ……!!
ガチで迷える子羊共に、私はクラリとよろめいた。
ほんっと無知蒙昧なる人間どもよ!
「そう、得られるものがないというのは違うわね。これが欲しいの? 成仏チケット! そうよ、これがあればあんたたちは眠れるのよ」
「それとも健康な肉体が欲しいのかしら? ゾンビの身体で良かったらあげるわよ」
「命を捨てるほど、魔法が欲しいのかしら? 本当に?」
「私は未来をあげられないわ。この先にあるのは破滅のみ。それでもいいのね?」
「命を捨て、魂を捧げ、週6日、フルタイムで私に仕えるというのね? 多くの人を殺すであろう私に仕えると? 私は確かに人に試練を与えるけれど、部下に好き勝手させるつもりもないわ。私程度に膝を折るようなものに、勇者の資格も与えない。文字通り自分を殺して私に従ってもらうことになる。それでもいいのね? 不服なものは立ちなさい! 送還してあげる」
迷って、立ち上がる人が幾人か。彼らは送還されていく。
設備から離れ、命を落とす病人が幾人か。ゾンビ化ポチポチ。
っていうか、あんたらよく情報手に入れて一時間も跪けたわね。
「後、五分だけ考える時間を与えます。それでも跪き続けたものは、私のものよ。残らずゾンビにして、従えましょう。あと、私にも選ぶ権利があるので、失格者は帰します。成仏チケットくらいは持たせてあげましょう」
きっかり五分待ち、私はパンっと手を叩いた。
力がグラウンドの中央で弾ける。
ここから私の晴れ舞台!
一応、準備はしておいたのよね!
大きく腕をふるい、空飛ぶお城を創造する。
イメージは不思議の国のアリス。
氷の螺旋階段が、城から降りてくる。
「寝場所。あの階段を登ったら、貴方達は魔法使いよ。とりあえず呼ばれるまで自由。お行き」
わーっと迷える子羊共が階段に群がる。
「なー。俺達も階段登れば魔法得られる?」
「お城見たい!」
「……調査は必要と考えます」
「あー、まあ、好きにしたら?」
三人が行くのを見送ると、待っていたようにレイスが私の元へと訪れた。
『お初お目にかかる。我が主』
「ん、貴方はゾンビにならなかったのね」
『脳味噌になってた上に、すぐ跡形もなく潰されちゃったからね』
『どうやら、階段も混んでいるようだし、待っている間、少し会話をさせてもらってもいいかな?』
私はレイスを視た。
一見優しそうだけど、めちゃくちゃ人を騙しそうな顔をしているわ。
騙されてきた私の苦い思いがよぎる。
「一見暇そうに見えるけど、階段を登っている間に私は彼らの魂を見て、力を与えているの。邪魔をしないで頂戴」
「了解した」
その言葉に、話したそうにしていた者達も大人しく階段へ向かう。
全員が階段を登った後、城を異次元に補完して、私は帰宅した。
虎杖くん達は明日、開放すればいいでしょ。
それにしても、派遣業出来るぐらい数増えちゃったわね。どうしようこれ。
考えるのは明日にしよう。
私は家に帰宅し、シャワーを浴びて眠った。
朝5時、寝ぼけながら虎杖くん達を彼らの住まう家に召喚して二度寝する。
朝8時。準備をして、玄関を出ると、虎杖くんたちの他に、若い女の子が二人いた。
「夏油様を返して!!」
「ああ、成仏を望んでいる子ね」
「夏油様を私達から奪わないで!」
彼の場合、最初から死んでるんだけどなぁ。カルマが多い子だから、悪い人ではあると思うんだけど、まあ、どんな人にも大切な人はいるよね。
「これから学校だから、帰ったら話を聞くわ」
学校に向かうと、我がクラスは集団失踪したらしく、騒ぎとなっていた。
やけにクラスメイトがいるなと思っていたけど全員か。
しかし、素直に帰るとあの気の強い女の子たちと対決だ。
ただでさえ眠いのにそれは勘弁してほしい。
私はゾンビ共(一部)に登校を命じた。
「はーい、今日から君達の副担任になった五条 悟です! 今日は自己紹介を兼ねて作文を書こうか。君達の目的と昨夜得た魔法について!」
わあっとクラスメイトは大喜びで自慢気に筆を走らせる。
担任の桃ちゃん、あんた生徒じゃないんだからドヤ顔で作文書かないでよ。
なんだろう。
一人ハブられる予感!!
「械音(かいね)はその間、僕と話そうか」
いらない配慮です。いらない配慮です。いらない配慮です。
「君が昨夜、配下に加えた中に、夏油 傑って人がいるんだけど」
「ああ、成仏希望の」
「君が出した条件だと、いつ成仏させるか書かれてなかったけど」
「そうですね。とりあえず、一年ほどでチケットを出してもいいと思います」
「そっか。じゃあ、その一年間、彼をレンタルさせて欲しいんだ。悪いことするのに、運転資金も必要だろ?」
うーん。まあ、いっぱいいるし、夏油さん、カルマ値低い人だし、多少人権に配慮しなくてもいいか……? って、五条 悟って親友殺す羽目になった人か! 夏油さん親友か!
「わかりました。でも、他にも買いたがると思う人がいるので、保留させてください」
「美々子と奈々子なら、知り合いだから問題ないよ」
そうして金額を提示される。この金額は……!!
「たった一年なのに、そんなに払うんですか?」
「親友を、その間でも取り戻せるなら、妥当な額だと思うけどね」
うーん。取りこぼしたものも、必死に拾おうとするその姿は、勇者には及ばないけれど、共感を覚える。
大体、夏油さんも心配させてばっかりはいけないよね。カルマ値低いってことは絶対悪い事してるし。五条先生には魔術の才能もある……よし!
「よし! 超絶対スペシャル服従コースでお売りします!」
「え」
私はピッと五条先生の額に指を指し、召喚魔法を授けて知識を送る。
「名前を読んでください、心からその親友を想って。パスを通じて、貴方の使い魔にするので」
「夏油 傑。傑……!! 呼びかけに応えてくれ!!」
そうして、五条先生の前に魔法陣が広がり、気まず気な顔をした夏油 傑が現れた。
「悟」
「傑」
思考パスが繋がっているので、もはや言葉はいらない。でも、まあ。
「悟……心配させて、悪かったよ」
「本当だよ、傑……! でも、僕も君のこと買ってごめん」
「「本当だよ!!」」
大事なことは言葉にすべきだよね。
堕ちた勇者が、かつて切り捨てざるを得なかったものを拾って、再び勇者となる。
うん、なかなかいいシナリオじゃないか。
なんか殴り合い始めたから、高専とやらに転送しておこっと。
一時限目の作文は虎杖くん達が回収し、二限目からは普通の授業となった。
よしよし。
学校が終わって家に行くと、女の子二人はいなかった。
無事帰ったらしい。
午後から虎杖くん達は任務とやらに出たし、放課後は一人だ。
さて、勇者選抜試験のイベントについて考えますか。
家に帰ってエゴサーチしてみると、成仏チケットは無事高額転売されていた。
ぴゃああああ
UAとPVしゅごいいいいいい
評価もいっぱいの人から貰えて驚いています!
ありがとうございます!!
感想も沢山、ありがとうございます!!