出オチ丸奇烈伝   作:チャクラコントロールに全振りでござる

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大蛇丸

「歓迎するわ、出オチ丸君、さあ奥へ行きましょう?」

 

秒で歓迎されてしまったでござる。

 

音隠れに潜入ではなく使者として来た拙者でござるが、相手は国の実質的な支配者でござるからもっと待たされるものだと思っていたのでござるが……。

 

門番に誰何すらされずに扉を開けて即大蛇丸殿でござったよ、どうなっているのでござろうかこの国は……。

 

「拙者が来ることを知っていたのでござるか?」

 

「ええ、三代目火影の遠眼鏡の術は知っているでしょう? 音隠れも同じシステムを採用しているのよ」

 

うーん、流石は木の葉の抜け忍でござるな……。

 

大蛇丸殿に案内された先は食堂でござった、内装はVIP仕様でござるが。

 

長方形の机や背もたれがある椅子は火の国産の物でござるな、逆に並べられたお皿は雷の国の物でござろう。

 

こうしてみるとこの国は本当に文明の交流地点でござるなぁ……。

 

「この赤身の魚は何でござるか?」

 

「海の果てに生息するマグロという魚よ」

 

「海の果てでござるか……田の国の船はそんなところまで航路を広げているのでござるか?」

 

「港の拡張を私が推し進めているから長距離航海にも耐えられるような大型船も沢山出せるのよ」

 

「でも海の果てからどうやって新鮮な魚を運んでくるのでござるか?」

 

「雷の国の機械の力と、氷遁冷却による腐敗遅延と水遁風遁系忍術による高速推進の合わせ技よ、ただ……魚介類の鮮度を保ったまま冷凍を行う技術の確立には予想以上に苦戦したけどね……」

 

「確かに単純に凍らせただけではこの味は出せないでござろうなぁ……」

 

「でしょう? でも船の上では電力に限りがあるし、氷遁忍術の使い手はとても貴重だからまだまだ大量生産という訳には行かないのだけどね」

 

そう言いながら箸を走らせる大蛇丸殿と拙者。

 

机の上にはマグロ以外にも様々な珍しい食べ物が並べられていて、見るだけでも楽しいでござるな。

 

というか拙者まだ名乗っていないのでござるが、出オチ丸君呼びでござるし、おむすびまで用意してる辺り、相当拙者に……いや木の葉の暗部に詳しいでござるな?

 

「おむすびまで用意して貰えてもう何と言っていいか分からないでござるな……これは拙者の好物でござるよ」

 

「喜んでもらえて何よりよ、わざわざ用意した甲斐があったわ」

 

うーん、どうやって木の葉の内情を把握しているのでござろうか、間者は皆殺しな筈でござるが……時空間での侵入でござろうか……?

 

流石に教えて貰えそうにないでござるし、拙者の頭でこの話題を引っ張るのは無理でござろうな。

 

空気を冷やす前に話題を変えるでござる。

 

「豪華なお食事をありがとうございましたでござる、さてお腹も膨れたところで本題に移りたいのでござるが……」

 

「ええ、場所を移しましょうか」

 

◇ ◆ ◇

 

案内された先は大蛇丸殿の実験室でござった、よく分からない機械が色々と並んでいるでござるな、雷の国産でござろうか?

 

「おもてなしにはあまり相応しくない部屋だけど、この部屋が一番機密性が高いのよ」

 

「なるほどでござる、さてこれが木の葉から託された巻物でござる、目を通して欲しいでござるよ」

 

手渡した巻物を机の上に広げ、中身に目を通す大蛇丸殿。

 

うーん、中身が気になるでござるがここは我慢でござるな。

 

「大体の事情は把握したわ、まず雨隠れの件だけど、こちらは木の葉が考えるほど深刻な問題ではないわ」

 

「というと?」

 

「今の情勢で大戦を最も望んでいない国は岩よ、木の葉と雲、砂の三里同盟が固い以上、忍界大戦になれば岩が敗戦国になるのは誰の目に見ても明らかだわ」

 

「確かにそうでござるな」

 

「であれば三里同盟を崩すのが岩にとっての目下の課題、そして木の葉と雲は交易によって強固に繋がっているわ」

 

「岩は交易の妨害を狙っているという事でござるか、となると守るべきは水路と田の国でござるな」

 

「重要なのは雲は大規模な戦争を望んでいるという事よ、引き金を引くような口実も一緒にね、それ故に雲に近い水路への妨害は岩も慎重だわ」

 

「問題はここ田の国でござるか……でも田の国は火の国と雷の国との緩衝地でもあるでござるから木の葉が直接守る訳には行かないのでござるよ」

 

「現状は私がいるから何とか防衛出来ているけど、これから先はどうなるか分からないわ……だからアナタのような忍者を抜け忍として寄越して欲しいのだけど」

 

「滅茶苦茶ダイレクトな勧誘でござるな……魅力的な提案でござるがそれは流石に無理でござる」

 

「そう……そうでしょうね、まあ田の国は私が居る限り大丈夫よ、軍事的にも政治的にもね……攻める口実すら与えないわ」

 

「さっきと言ってる事が真逆で大変に頼もしいでござるが、結局雨隠れはどうするのでござるか?」

 

「あの国はまだ見栄えの良い貧困層や孤児が沢山いるから、隠密電撃支配して雨隠れの代表として全世界に支援を求めなさい、人道的支援として物資の輸送に限定すればどの国も文句は言えないわ」

 

「物資だけでどうやって守るのでござるか?」

 

「大国は攻める口実が無ければ動けないの、もしも人道支援を求めて三里同盟とその他小国から支援を受けている可哀想な国に軍事侵略する非人道的な国があったとしたら……雲が嬉々として襲い掛かるでしょうね」

 

「あー……なるほどでござる……」

 

実質的な五大国の保護国みたいな感じにしてしまうのでござるか……その発想はなかったでござる。

 

とにかくこれで何とかなりそうでござるかな?

 

「雨隠れの土地を売ってくれるなら国や里ではなく一企業として高く買うわよ、多分将来は交易の中心地になるでしょうからね……それに孤児も多いから私好みの実験も捗りそうだわ」

 

「承知したでござる、木の葉に伝えておくでござるよ」


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