出オチ丸奇烈伝   作:チャクラコントロールに全振りでござる

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暗部のお仕事~火影の護衛

砂漠の日差しは厳しいでござるな、地面からの照り返しも合わせて、里に帰る頃には拙者真っ黒になってしまいそうでござる。

 

さて、フガク殿が立案した木の葉と雲との交易同盟は小国等の妨害もあったでござるが、概ね上手く行っているでござる。

 

木の葉・雲・砂の三里同盟を正面から相手取れる里は恐らく存在しないのでござる、この状況に岩はかなり焦っているでござろうな。

 

岩と木の葉は名目上は和平条約を結んでいるのでござるが、隙があれば遠慮なく条約を破棄して侵略してくるでござろう。

 

忍者の歴史と文化とは、そういうものでござる故。

 

でござるのだが、今の木の葉に隙は無いのでござる、無いでござるので、岩やその他小国は隙を作るような裏工作を仕掛けてくるでござろうな。

 

差し当って、思い付くのは砂隠れの里でござる。

 

砂は砂漠という厳しい国土に加え、大名が軍縮を掲げている国という事もあって、経済的にも軍事力的にも、かなりの弱小国でござる。

 

故に木の葉と同盟を組んでくれている訳でござるが、同盟なら別に木の葉じゃなくて岩と組んでも良い筈でござる。

 

つまり、三里同盟を崩すなら砂に離間計を仕掛けるのが一番でござる。

 

幾ら砂が弱小とは言え、これがマズいことなのは子供でも分かる事でござるな。

 

砂の離反は木の葉に後顧の憂いを生むだけでなく、木の葉・雲同盟 対 岩・砂同盟という第四次忍界大戦すら誘発するでござろう。

 

少なくとも木の葉上層部はそのように考え、砂との同盟を強化していく方針を固めたのでござるな。

 

まあ、簡単に纏めると、これからやる事は砂への浮気防止対策って事でござるな。

 

雷の国と同様に食料の輸出が出来れば楽なのでござるが、砂隠れを有する風の国は貧乏な国でござるからなぁ……。

 

更に風の国は産業も乏しいでござる故、輸入出来るモノが乏しいのでござる、まあ砂金ぐらいでござろうか?

 

本当に厳しい国でござるなぁ……よく今まで滅ばなかったでござるな……。

 

領土を占領しても旨みが少ない事も関係しているのでござろうな……悲しいでござるなぁ……。

 

そんな訳で、砂とは軍事同盟で行くみたいでござる。

 

具体的には、今まで通りの戦力の相互貸し出しと……砂が頭を抱えている尾獣問題の解決協力でござるな。

 

砂は尾獣である一尾とその人柱力を有しているのでござるが、この封印式がガバガバで、事ある毎に一尾が暴走しているのでござる。

 

風影殿が出動すればすぐさま鎮圧出来るそうなのでござるが、それでも毎回死傷者や負傷者が出ているのだとか。

 

貧乏な里でござるから物損の被害も馬鹿に出来ないでござろうし、中々頭の痛い問題でござろうな。

 

そこで木の葉が封印式を再構築して、意図せぬ暴走を防いであげるのでござる。

 

ちなみに完全に封印しないのは、暴走も尾獣の大切なお仕事の一つだからでござるな。

 

という訳で、木の葉から封印術に長けた忍者を派遣する運びになったのでござるが……。

 

「ほほほ、砂漠の暑さは年寄りには堪えるのぅ!」

 

なんと三代目火影様が直々に足を運ぶ事になったのでござる。

 

確かに文句無しの最強封印術師でござるが……このタイミングで里を留守にするとは、中々出来る事ではないでござるよ。

 

ちなみに、護衛役としてはうちはイタチ殿とうちはシスイ殿、そしてカカシ隊長と拙者が来ているでござる。

 

うちはフガク殿に里を預けて、護衛にうちは二名を連れて他里に赴く。

 

完全にうちは一族を、そしてフガク殿を信頼していないと出来ない事でござるな。

 

……同時に、これはうちはと里との結束は固いという対外的なアピールなのでござろうな。

 

火影が直接行くと言うのは、砂に対しても木の葉の誠意を見せる良い方法でござる。

 

ただ同時に、砂からしても木の葉の最高戦力を懐に入れ、尾獣の封印式を弄らせるというのは大きな賭けでござろう。

 

この博打、失敗すれば両里は滅ぶでござるが、成功すれば向こう二十年の安寧が約束されるでござろうな。

 

◇ ◆ ◇

 

砂の里は木の葉とは気色が随分と違うでござるな。

 

木の葉は木造の建物が殆どでござるが、砂隠れは粘土や岩で出来た建物が多いでござるな。

 

この辺は国土と、それに付随した文化の違いでござろう、異文化は見ていて飽きぬでござるなぁ……。

 

さて、火影様がいるから国賓待遇でござるが、拙者のお仕事は護衛でござる故、気は抜けぬでござるな。

 

ちなみに今の拙者達は面を外しているでござる、これも誠意アピールの一環でござるな。

 

しばらく一緒に食事を楽しんだのち、風影殿自ら人柱力が控えている部屋に案内してくれたでござる。

 

狭くはないでござるが、広くもない、住みやすそうな部屋にいたのは、まだ幼い少年でござった。

 

「私の息子です、そして……一尾・守鶴の人柱力だ」

 

「初めまして、儂の名は猿飛ヒルゼンじゃ、お主の名を教えて貰っても良いかの?」

 

「……我愛羅」

 

少年の目線に火影様が顔を合わせ、微笑みかけているでござる。

 

火影様はアカデミーに顔をよく出しているでござるし、子供の扱いは得意なのでござろうな。

 

「儂等は我愛羅君の御父上から頼まれてここにいるんじゃ、少しお邪魔させて貰っても構わんかの?」

 

「何をするの……?」

 

我愛羅殿には若干の怯えが混じっているでござる。

 

無理もないでござるな、いきなり自室に大の大人が何人も押しかけて来たのでござるから。

 

「我愛羅君のお腹の中に住んでいる生き物が、気持ちよく眠れるようにサポートするのじゃよ」

 

「……殺すの?」

 

「殺しはせんよ、傷付けもせん、簡単には表に出て来れなくするだけじゃ、約束する」

 

「……分かった」

 

「では、始めようかの」

 

火影様が巻物を取り出し、儀式用の台座を口寄せする。

 

金の装飾に蝋燭が八本並びたてられたそれは、木の葉の人柱力であるナルト殿にも使われた四象封印の台座でござるな、ただこちらは我愛羅殿に合わせて少し大き目のサイズでござるが。

 

我愛羅殿に台座の上で横になってもらい、火影様が拙者達に目配せで合図を送る。

 

「水遁・睡眠霧の術!!」

 

「「「幻術・写輪眼!!」」」

 

我愛羅殿を火影様が術で強制的に眠らせ、出てきた尾獣人格をカカシ隊長とシスイ殿、イタチ殿の幻術で縛り上げる。

 

三対一で不意打ちとはいえ、尾獣にすら通用する写輪眼の幻術は恐ろしいでござるなぁ……。

 

「よしっ、ぱぱっと行くぞ! 二重四象封印!! 更に封印式・解!!」

 

火影様が我愛羅殿に元から刻まれていた封印式の上から二重の四象封印を重ね掛けし、最後に従来の封印式を解体。

 

超高等忍術のオンパレードをさらっとやるあたり、プロフェッサーの異名は伊達ではないでござるなぁ……。

 

やっている事の凄まじさを理解したのか、後ろで見守っていた風影殿やその護衛達の生唾を呑む音が聞こえるでござる。

 

四人が集中している間の護衛を務める拙者ですら、思わず見入ってしまいそうになる程でござるからなぁ……。

 

「ふぅっ、一先ずはこれで安心じゃの……あとは封印鍵を作るかの」

 

火影様が懐から巻物を取り出して開き、その表面に右手を押し付ける。

 

出来上がった封印鍵の巻物を紐で縛り、風影殿に手渡す火影様。

 

巻物を受け取る風影殿の手が、微かに震えているでござるな……。

 

「封印式は四象封印を二重に組み合わせた八卦の封印式。四代目火影が木の葉の人柱力に使用したものと同じ式です。封印鍵を利用すれば……意図的な暴走も可能です」

 

丁寧に説明している火影様の目が全く笑っていないでござるな……幼い子供を尾獣兵器にする事が気に食わないのでござろう。

 

暴走を念押しするのは、木の葉も同じ事が出来るって言いたいのでござろうな、裏切れば、お前の国で九尾を暴走させるぞ……と。

 

そうならないようにお祈りするでござるよ、平和が一番でござるからなぁ……。

 

……まあ、砂相手なら尾獣無しでも平押しで勝てそうでござるが。

 

弱小国は辛いでござるなぁ……。

 


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