オリ主ガチャ   作:もぬ

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5. シリーズもの

 帰り道。

 ちょうど家が見えるところまでたどり着いたところで、例によってシャドウに襲われる。このごろ近所で襲われること多くないか?

 けれど問題はない。俺にはオリ主のみんながついているんだ。今回も、新しくガチャから呼び出した仲間によって助けられ、事なきを得た――。

 とは、ならなかった。

 いま、召喚したオリ主と一緒に、仲良くダバダバと走って逃げている。

 

「ちょっと! は、はやくあれをやっつけてくださいよ!! あんた“国家錬金術師”なんでしょ!?」

 

 かっこいい青い軍服を、だらしなく前を開けて着崩している青年。表情には余裕があってつわものっぽいのに、すたこらさっさと俺に肩を並べている。

 

「ハハハ、オレの二つ名を教えてやろうか少年。『百薬の錬金術師』だ。お薬つくるのが専門なの。バトルとか苦手なの。しかも酒に存在が負けてる」

 

 そんな軍服着ててガタイもいいのに! 全然インテリに見えないぞ!

 

「くそ……!!」

 

 後ろから迫ってくる影を見やる。相手は人型だけど、シルエットからして何か変わった格好をしている。

 鎧のような装甲を纏っていて、頭には独特な形のヘルメット。そして、必殺技のパンチやキックみたいなのを放ってくるたびに、やたらと体のあちこちがぴかぴか光り、テンションの高い電子音声みたいなのが聞こえてきてやかましい。おかげで攻撃を察知できている。

 あれは……、

 

「あれは“特撮ヒーローオリ主”ハメ。なぜかまだ始まったばかりの、あるいは始まってもいない番組のヒーローに変身することがあるハメ。不思議ハメね」

「くっ……能力がわからないのにどうやって……!」

 

 どうやって書けばいいんだ……!

 まちがい。

 どうやって勝てばいいんだ……!

 

「仕方ない。少年、これを投げつけろ」

 

 国家錬金術師の青年、アルバートさんは、懐から取り出した何かを俺に手渡してきた。

 液体の入ったフラスコだ。

 

「これは?」

「爆薬だよ」

「あああああああ!!」

 

 穏やかな声色で穏やかじゃないことを言われ、必死でうしろの仮面怪人にそれを投げつけた。

 ががん、と、音と光と衝撃に背中を押される。とんでもないものを手渡しするな! 味方が俺を殺そうとしてくる。

 爆発に敵がのみこまれた……はずなので、その隙に十字路の角を曲がり、壁に背を預けて身を隠す。

 目だけを出して、敵の様子を覗いてみると。

 そこには、爆煙を背に、かっこよくポーズを決めるシャドウの姿があった。

 特撮のワンシーンになっちゃってるじゃないかよ!

 

「爆破は効かないときたか。なら……そうだ」

 

 またしてもアルバートさんは、同様の薬液入りフラスコを手渡そうとしてきた。

 自分で投げてくださいよ! 危ないなあ。

 

「これは投げるんじゃないんだよ。飲むやつだ。君が」

「えっ」

「よっと」

 

 気が付くと、俺はアルバートさんによって地面にひっくり返されていた。こ、これは、話に聞く軍隊格闘とかそういうやつでは。

 いてて、身体を地面に打った。

 

「痛って……もごご!?」

 

 そのまま鼻をつままれて、口にやばいものを流し込まれる。いかにも食用ではない、市販の薬よりもさらに変な味がした。

 

「けほっ、げほ。……なに飲ませたんスか!!」

「いやあ、アメストリス人を実験体にしたら怒られるからさァ。その点君なら安心だ。今年のレポートのネタになってくれ、少年」

「人でなし系オリ主だった……!」

 

 身体が熱くなっていく。骨が、筋肉が、ぎちぎちと異常を訴えている。これやばいやつじゃないかと思っても、もう飲んだ後だ。

 

「あ、あがが」

 

 視点の位置が高くなっていく。意識がもうろうとする。ふっとうした血液が全身を駆け巡っているようだ。

 すぐそこにいる、妙に嬉しそうな顔のアルバートさんを見下ろす。一緒に視界に入った自分の身体は、腕やら脚やらが異常に太く、大きくなっていて、まるで自分の身体とは思えない。

 飛びそうになる意識をなんとかかき集め、たすけてくれ、と言おうとした。

 

「ウギギ……オレ、プロテイン、ノム」

「筋肉語で話すようになる、と……」

 

 何やら手帳にメモをしたためるアルバートさんの姿を見たあと、思考がどんどん、ぼやけていった。

 

 ▼

 

 部屋の天井をしばらく見つめ、ため息をつく。今は、掛け布団を自分の上からどかすことすら、億劫だった。

 

 あとでハメルンに聞いたところによると、あのシャドウオリ主は、筋肉ムキムキになった俺自身が、ボコボコに殴る蹴るなどして倒してしまったらしい。アルバートさんはそれをニヤニヤしながら眺めていたという。

 そしてその代償として、いま、全身のひどい筋肉痛と発熱で、自室のベッドから動けない。アルバートさんはそんな俺を、自身が消えるまでニヤニヤしながら眺めていたという。

 オリ主も良い人ばっかりじゃあないな。もうアルバートさんは呼び出してあげないもんね。

 

「うう」

 

 学校を休んで、いまはお昼を過ぎた頃だろうか。まだまだ動けそうにない。

 しかし腹が減った。食べなきゃ治るものも治らないと思うので、なにかお腹に入れたいのだが。

 こういうとき一人暮らし状態だとつらい。同居人として、ハメルンや、オリ主の誰かを数えられなくもないが……、ハメルンは病人を看てくれるような心のある生物ではないと思うし、オリ主のみんなを召喚するには体力(スタミナ)が必要だ。今は誰も呼べない。ランチを食いたければ、自分で用意するしかないのだ。

 意を決して、身体を起こしにかかる。

 のそり。

 

「いてててて」

 

 全身の筋肉と節々の痛み。じっと寝ていれば熱があること以外なんともないのだが、動くとこれが襲ってくる。当然、あたまもぼうっとするし、立ち上がるとさらにしんどい。

 まあ、怪しい薬を飲まされて大変な目に遭った割には、全然まっとうな後遺症な気もする。咳とかもないし。痛いのは動くときだけだし。

 菓子パンだかカップ麺だか冷凍食品でもお腹に入れて、またゆっくり休もう。

 ……このまま炊事場に辿り着けたらな!

 

「どぅへえっ」

 

 生まれたてのヤギくらいおぼつかない足取りでキッチンを目指すも、当然、すんなりいくことはなく。

 げ、と心中で鳴いたときには、自分の身体は前のめりに床に倒れようとしていた。

 訪れるだろう衝撃への覚悟で、ぐっと身体がこわばる。

 

「うう、飯食いたいだけなのになぜこんな目に……あれ?」

「大丈夫か? 千太郎くん」

 

 いつのまにか、俺は床に倒れこむことなく、誰かの腕によって支えられていた。

 助けてくれたのは……、

 白い雪の王女さまみたいな外見のひと。アカネさんである。

 

「はわわ……」

 

 こんなにも間近で顔を見せられたら、細やかな睫毛や瞳の中まで見えてしまいそうだ。めっちゃいい匂いもする。

 呼吸の剣士だけあって、男子高校生の身体なんて腕一本で平然と助け上げてくれた。見た目は王女さまだと思ったが、やったことは王子的だ。やだ、乙女になっちゃう……。

 

「あ、アカネさん。ていうか、あれっ、どうして?」

 

 ゆっくりと立ち上がらせてもらってから、ようやく、当然の疑問が頭に浮かんだ。

 アカネさんがこの家にいることは、俺がしょっちゅう呼び出してはアプローチしているので、珍しい光景ではない。けれど今日はオリ主アプリの機能を使う体力がなくて、呼び出していないはずだけど……?

 

「………。君のピンチに、その……オリ主のアプリ? が反応して、私を実体化させたんだろう。ほら、私は君の、お気に入りのようだからな」

「マジかよ……そんな神機能が」

「こうなったら病人の看護くらいはしてやるが、あまり勘違いはしてくれるなよ」

 

 アカネさんが俺の看病をしてくれるだと? この世に生まれてきてよかった。

 彼女はそっぽを向きながら話しているが、これはツンデレしぐさだろう。俺のことが異性として好きとみた。

 あ、まあ、アカネさんの中身は男だから、異性として好きって言い方はおかしいのか。おかしいのか?

 

 と、そこにいきなり、俺をとくに助けてはくれないがこの家には居着いているハメルンが、いつものように、認識外の領域から高速で眼前を通りすがった。シュッ。

 

「オリ主が勝手に出てくるのは中堅ユーザー向けの仕様ハメ。絆ポイントの高いオリ主ほど、君のピンチに自発的に出現する確率が上がるようになって」

 

 そこまで言うと、ハメルンはアカネさんのすらりと美しいおみ足に蹴り飛ばされ、家のどこかに姿を消した。

 いいな。俺も蹴られたい。

 

「……さ、お腹すいてるんだろう。居間に行こう。……ほら、杖の代わり」

 

 そっと白い手を差し出してくるアカネさん。表情をうかがうと、色白だからか、頬に朱がさしているように見える機会が多くて、かわいい。赤面体質……いや、あれはほんとうの赤面に違いないな。

 自分があなたを支えてあげると、彼女は照れながら言っているのだ。これは……もはや夫婦の営みでは?

 

「えへへ……えへへへへ!」

「気持ち悪いなあ」

 

 呆れ顔でそういうアカネさんの手は、雪属性らしく冷たい……と思いきや。やけにあたたかくて、なんともこちらをドギマギさせる温度なのだ。

 やはり俺のことが好き……なのでは?

 両想いだな!!!

 

 ▼

 

 アカネさんの手料理と手厚い看病により、気持ちだけは平時の5億倍くらい最高になった。とはいえ、それでいきなり完治、とはいかない。動くのがしんどいのは続いているので、じっと休むのを再開しようか。

 そう思いつつも、また部屋に戻るのはどうにもおっくうで、居間のソファで、熱っぽい頭でぼうっとしていると。

 俺のすぐそばに、アカネさんが腰かけてきた。いい匂いが鼻をくすぐる。

 

「どれ、どんなもんかな」

 

 そう言って、アカネさんは手で、俺の首やら額やらをぺたぺた触ってきた。

 おそらく手の甲をあてている。さっき繋いでもらった手は意外にあたたかかったけど、手の甲のほうはちょっとひんやりしていて、気持ちがよかった。

 ……ちょっと待って? 頭がぼやぼやしていてリアクションが遅れたが、いま俺は、すごいシチュエーションに身を置いているのでは?

 そこに気が付くと、顔面に、アカネさんの触れてくる部分に、熱血がじわっと集まってくる。目の奥があつい。

 

「あれ。熱が上がっているようだが」

「ア、アカネさん。けっこんしてくれ……」

「男はおことわり。というか、言ってる場合か。そろそろ横になりなさい」

「ウス」

 

 ちょうどソファにいるわけだから、あとは体を倒すだけだ。

 アカネさんの言葉に物理的に押されるみたいに、俺は体を傾けていった。

 

「あ、おい。部屋に戻り……はあ。仕方のないやつだ」

 

 目を閉じていると、誰かが、俺の身体をとんとんとリズムよく叩いてくれた。

 昼近くまで眠っていたのに、またすぐ横になっても、簡単に眠りに入れないのでは。そう思ってもいたけれど。

 子供のころ、母親にそうやって寝かしつけられたのと同じように、あっという間に。あの眠気がやってくるときの、気持ちいい海の中に、自分が沈んでいくような感覚がした。

 

 ▼

 

 ……。

 ………。

 

「ん? この気配は――」

 

 枕にしていたものが、みしり・びきびき、という音を出した。

 

「枕硬ッッ」

 

 同時に、やわらかくてずっしりしていい感じだったそれが、急にコンクリートブロックくらい硬くなって、夢心地が覚める。

 

「ん? ああ、ごめん、つい筋肉が臨戦態勢に」

「あれ、アカネさん……うおお!?」

 

 寝起きに見る景色は、謎の山影から()()()()()()()アカネさんの顔だった。それの意味するところに気付き、頭の下の硬すぎ枕から、ばっと離れる。つまりは起き上がる。

 このシチュエーションはまさかの……2回目の……。

 この人、なんでこんなに膝枕してくれるの? 男心を弄ぶのが趣味?

 

「………。まだ寝ていていいよ。私は、少し外を見てくるから」

「え?」

 

 アカネさんはラフな部屋着のまま、リビングを出ていく。その先は玄関くらいしか行くところはない。

 いててて、とうめきながら後を追うと、もう彼女は玄関のドアを出るところだった。

 ただし。

 いつの間にかその服装は、学ランみたいな黒い詰襟に変わっていた。

 そして、手には刀を携えて。

 ……戦いに行くのか。シャドウオリ主が近くにいるのか? 

 なら、いくら調子が悪いとはいえ、アカネさんの戦いを見届けないわけにはいかない。

 

 部屋からスマホを持ち出し、家の外へ出る。

 門扉から一歩踏み出そうとすると、人影が目の前を横切る。アカネさんが、既に刀を抜いて、何かを相手に動いていた。

 

「アカネさん!」

「!! 千太郎くん――」

 

 アカネさんの姿が、なにか、丸太のような太いものに遮られる。

 ……腕、だった。これは腕だ。舗装された道路に、叩きつけられたそれが、派手にヒビを入れている。

 自然、それを振るったものに、視線が行く。

 ……簡単に言えばそいつは、何かしらのアニメ・マンガで見たような、巨大なトカゲの化け物だった。体高は一階建ての家くらいあって、体長はもっとある。

 印象に残る特徴と言えば。顔が、硬そうな殻に覆われていて、お面をしているみたいだった。

 

 シャドウオリ主、ではなくない?

 まっとうなモンスターじゃん!

 

「うわわ……な、なんだよ、こいつ」

「あー、あれはその、物語のやられ役であってオリ主ではないハメ。オリ主の実体化に引っ張られて出てきたってところかねえ。……“エネミー”とでも呼ぶハメ、ソシャゲには付き物だし」

「シャドウより危険そうなんだが!」

「たしかに人とか無差別に襲いがちだけど、倒してもボクにはなんの得もないハメ。相手にするだけ無駄ハメ」

「こいつ……」

 

 間違いなく、倒しておかないといけないやつである。一気にハメルンの話のたちが悪くなったな。

 だが、どうみても人間の太刀打ちできる相手ではない。シャドウとの戦いに慣れてきたような気でいたが、今まで以上の恐れが、筋肉痛の身体をぷるぷると震わせてくる。いてて。

 

「“雪の呼吸”――」

 

 怪物の腕の影から、無事だったアカネさんが、弾丸みたいなスピードで飛び出す。そうだ、俺には助けてくれるみんなが、アカネさんがいるじゃないか。

 オリ主のみんななら、化け物退治だって!

 

「伍ノ型。『大雪山おろし』!!」

 

 出た! アカネさんの完全オリジナル技だ!

 大きく跳びあがった彼女が全身をひねって刀を振るうと、そこから小さな雪崩のようなイメージが巻き起こり、それを伴ったアカネさんが突っ込んでいくことで、白い波が敵を飲み込んでいった。

 実際のところ何が起こっているのかわからないが、とにかくすごいぜ! 雪崩とか吹雪くらいすごい密度の斬撃だった的なアレかな。

 こころなしか寒い気がする。本当に雪景色の中にいる錯覚を覚えるような、凄まじい剣の技だったが……。

 

「………。ダメだな」

 

 雪山のイメージから抜けだし、近くまで下がってきたアカネさんが、そうつぶやく。

 目をこすってからもう一度あちらを見ると。言葉通り、あのお面トカゲはピンピンとしていて、そう効いていないようなそぶりでいた。

 

「大した相手じゃないけれど……ただ、あれを斬るには日輪刀(このカタナ)じゃだめだ」

「むむ、一体どうしたら……」

「新しいオリ主を召喚するハメ!」

「私の“制限解除”をしてくれ、千太郎くん」

「制限解除を?」

「うん。それで勝てるよ」

 

 第三者の声を聞かなかったことにし、ポケットに入れていたスマホを掴む。

 そういえば、まだアカネさんの力はちゃんと解放していない。これまでする機会がなかったから、召喚したときのままだ。

 エゴストーンは……足りてる! しこたま低評価くらって、いくつか中くらいの評価をもらった分だ!

 巨大トカゲが、こちらにかかってこようと身体を沈めるのを見た。スマホを素早く操作する。

 アカネさん、頼む……!

 

「俺の愛を受け取ってくれーーっ!!」

「いや、お気持ちは結構ですので……」

 

 そうは言いつつ、たしかに、アカネさんは薄く、笑っていた。

 少し振り返って、流し目でこちらを見ている。

 そんな彼女の姿が、襲い来るエネミーを背景に、ゆっくりと変化していった。

 

 黒い詰襟とスカートが、黒い着物と袴へ。

 白い刀身に『悪鬼滅殺』と掘られた刀は、手の中から消えてしまい。代わりの一振りが腰元に。

 

「……の六十一。六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

 何事かぼそりと呟くと、怪物の胴に、囲むように光の刃がいくつも突き刺さり、巨体を空中に縫い留めた。

 その格好。剣士っぽくないその魔法みたいな技。もしかして、もしかして――

 雪の妖精みたいだった彼女は、しゃりん、と刀を抜き去り。

 まっすぐに切っ先を敵に向け、小さな声で唱えた。

 

「――()かせ。『灼薙(しゃくなぎ)』」

 

 ぶわ、とこちらに、()()がやってくる。

 アカネさんの持っていた刀は、じりじりと、見ている目が痛いくらいに、熱く熱く赤熱していて、夜の道をぼんやり照らしていた。

 彼女はゆっくりとエネミーに近づき、その鍛冶途中みたいな色の刀を、仮面の顔に押し付けた。

 

『ぎいいいいいぃいぃぃぃ』

「超痛そう……」

 

 それは切断というより、溶断だ。

 アカネさんの刀はじくじくとエネミーの身体に入り込み、熱し、溶かしていき。

 ………。巨大なモンスターは、身体を、ちょっと惨たらしく斬られ。死体は、光の粒になって消えていった。

 彼女は結果として、制限解除をしてから何十秒も経たないうちに、敵を倒してしまったということだ。

 

「すげえ。かっけえ。お洒落」

 

 冷めた刀を鞘に仕舞い、彼女がやってくる。

 さっきまでアカネさんは、なんとか隊の剣士だったはずなのに。今は、なんとか十三隊の剣士に姿が変わっている。一体、これは……。

 

「シリーズものオリ主ハメね。ひとりのオリ主を使いまわして、あちこち転生させるやつ」

「そんなのあるんだ」

 

 じゃあ、アカネさんは。

 少なくとも二回、死んで生まれ変わっていて。その間ずっと、バトルものの主人公やってる、ってことか。

 それって……。

 この人、見た目は俺と同級生くらいに見えるけど。本当は、何年くらい、生きてるんだろ。

 

「千太郎くん。体調は平気?」

「え? ああ、いやあ、おかげさまで、だいぶ」

「そう。それで……」

 

 話しながら、こちらへ。

 けっこう、いや、かなり近くまでやってきて、こっちの顔を覗き込んでくる。

 

「どうだったかな。(オレ)の活躍」

 

 それで、珍しく、何か期待したような質問を投げてきたものだから。

 

「それはもう。すっげえ格好良かったッス」

 

 と、素直に返してみると。

 アカネさんは、クール透明系美少女っぽい顔立ちで、

 悪戯が成功した男の子みたいに、眉を吊り上げて、いっと歯を見せて、嬉しそうに笑ったのだった。

 

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