九つの世界   作:鴉鍵

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始めまして、鴉鍵です。

ちなみに鴉鍵と書いてクロウキーと読みます。m(_ _)m

今回はオリジナル作品に挑戦して見ました。北欧神話に語られる九つの世界を舞台に語られるストーリーです。

この作品の特徴は九人の主人公の視点からなるそれぞれの思いです。人間らしく、時には人間の思想からかけ離れ、それがぶつかって行く感じの作品を作っていきたいと思います。

ただ、この作品は膨大な世界観から、もしかしたら登場人物がかなりの多さになると思います。

読んで頂ければ幸いです。よろしくお願いします。m(_ _)m

ちなみに、別作で、パソコンゲームfortissimoシリーズの二次創作も書いていますので、こちらもよろしくお願いします。


フレイ編①

 神々の世界アスガルド……僕らは神々は自分の世界をこう呼んでいる。

 

 ただ、神々と言っても万能の存在なんかじゃない。別に手を振りかざせば、生命が作れるというわけでもなく、飢えも渇きもする。

 

 ただ、本当の『神』に近いから神と名乗っているだけ。

 

 

「フレイ兄さん」

 

「っ!」

 

 突然声をかけられ、ハッと机に伏せていた顔と体を起き上がらせる。

 

「あ、フレイア」

 

 そこにいたのは僕と同じ亜麻色の髪を胸元まで伸ばした可憐な容姿の少女。

 

「どうしたんだい? フレイア」

 

「兄さん、なんだか辛そう」

 

 眉を八の字にして、心配そうにそのエメラルドのような瞳でフレイアの兄である僕の顔を覗き込んで来る。

 

「大丈夫、ここ最近仕事続きだから疲れただけ」

 

 と、ふんわりと笑顔を浮かべてみせる。客観的に見ればフレイは顔が整っており、優しい印象を受ける。

 

「あんまり無理しないでよ、倒れたら困るからね」

 

「はは、ありがと」

 

 フレイアは頬を赤く染め、プイッとそっぽを向ける。そんな可愛らしいフレイアの様子に兄であるフレイは笑みを抑えきれなかった。

 

「なによ……兄さん」

 

「はは、なんでもないよ」

 

 疲れきった顔をひたすら隠し、よろめく身体をなんとか抑えながら立ち上がる。そして、その手をフレイアの頭に乗せ、撫でる。

 

「ん…………」

 

 頭を撫でられ、心地よさそうにするフレイア。

 

「やー、フレっちにフレイアちゃん。仲良いねぇー」

 

「むっ……」

 

 突如、横から聞こえてきた声にフレイアはむすっと機嫌を悪くする。

 

「何の用? ロキ」

 

「やー、特にこれと言った用事はないよーー」

 

 黒いマントを羽織った長い黒髪の少年が悪戯っ子のような笑みを浮かばせながら現れた。

 

「やぁ、ロキ」

 

「うぃーっす、フレっち」

 

 フレイはロキと軽く挨拶を交わす。

 

 ロキは僕の親友でもあり、悪友でもある。おちゃらけた性格ではあるが、ああ見えて探求者だ。

 

「兄さん、なんでこんなやつと仲良くしてるのよ」

 

 だが、フレイアは僕がロキと仲良くしてるの事が気に食わないらしい。

 

「えー、ひどいなー」

 

 と、明らかに大袈裟な素振りで落胆するロキ。

 

「こら、フレイア」

 

「っ……兄さんの馬鹿!」

 

 フレイアはさらに不機嫌そうな顔で兄であるフレイにそう吐き捨てた後、そそくさに去って行った。

 

「あーあ、怒らせちゃったね。悪いことしちゃったかなー?」

 

 髪をわしゃわしゃとかきあげるロキ。しかし、そこに反省の色など全くない。寧ろ愉しんでいるように見える。

 

「そーいや、フレっち。なんかおでんがフレっちを呼んでたよ」

 

「え? オーディン様が?」

 

 ロキの言うおでんとはオーディンの事であり、この世界の頂点に立つ最高神でもある。

 

「そ、なんかフレっちだけじゃなくて、主格神族全員呼びかけてるって」

 

「つまり、ロキも呼ばれてるってこと?」

 

「せいかーい」

 

 ぺろを出し、ウィンクしながらオッケーサインを出すロキ。悪友ながらもフレイアがロキの事を嫌う理由が若干理解できる。

 

 そういう、緊迫感のない態度が神々の中で軽薄に見られて浮くんだよなぁロキは……

 

 だが、フレイは軽薄などしていない。寧ろ尊敬に近い感情を抱いていた。あれほど自由な性格はフレイではなかなか真似出来ない。

 

「でも、正直行きたくないんだよねぇー」

 

 と、心底嫌そうに顔を歪めるロキ。それもそうだろう。オーディン様が召集をかけた主格神族の中にはロキをよく思っていない輩もいる。

 

「そうだけど、行かないとダメだよ……行かなかったら行かなかったで、色々言われるんじゃない?」

 

「だよなぁ……」

 

 大きくため息をつくロキ。僕はそんなロキを慰めながらオーディンの元へ足を進める。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 謁見の間へたどり着き、普通のものより三倍は大きい金属の扉を開け、中へ入る。

 

「オーディン様、フレイ、ロキの両名参りました」

 

「ご苦労」

 

 中に入り、赤い絨毯を進み、段差の奥から見下ろす銀髪の威厳のある男性の前で、跪くフレイとロキ。

 

「して、我ら主格神族をここに呼び集めたのは何故で?」

 

 と、ロキが跪きながらオーディンに訊ねる。

 

「それについては、残りの二人が到着次第話す」

 

「はっ!」

 

 と、いつもはおちゃらけているロキではあるが、流石にオーディンの前では軽はずみな行動は控えるようだ。

 

「オーディン様、この私めより遅れて来る不届き者とは誰でしょうか?」

 

「口が過ぎるぞ、ロキ!」

 

 続けて質問したロキをオーディンの左に立っていた金髪の青年が眉間にシワを寄せ叱責する。

 

「別に構わん……」

 

 だが、オーディンは激昂する金髪の青年を片手で制する。

 

 悔しそうに顔を歪めながら、一歩後ろへ下がる金髪の青年。その視線は明らかに強い憎悪を抱きながら、ロキを捉えていた。

 

「トールとサーガだ」

 

「へぇ、サガちんはともかく、とおる君まで遅れるなんて珍しいね」

 

「トール殿を侮辱するな! トール殿は貴様のような暇神ではない!」

 

 すっかりいつもの調子に戻ったロキに再び激昂する金髪の青年。

 

「はいはい、暇神で悪かったね、さ、行こーぜフレっち」

 

「え? あ、うん」

 

 相手にしても疲れると踏んだロキは謁見の間に並べられてある椅子へと向かって足を進める。ロキに呼ばれた僕もいそいそと席へと向かう。

 

 空いてる空席の内、一番左端の椅子へロキが座り、その隣の椅子にフレイが座る。

 

「くっ……貴様……」

 

「ヘイムダル、抑えろ」

 

「っ……すみません」

 

 再度、オーディンに制され、大人しく引き下がる金髪の青年ヘイムダル。主格神族の中でも特にヘイムダルはロキを目の敵にしているらしく、なぜ目の敵にしているのか分からないが、大方そのお茶目な調子が気に食わないのだろう。

 

「すまん、遅れた」

 

 次の瞬間、勢い良く扉が開き、屈強な巨体の男性が地面を揺らしながら現れた。

 

「遅いぞ、トール!」

 

「すまない、ヘイムダル」

 

「だが、君のことだ。わざわざ遠いミッドガルドからここまで来てくれたんだろう?」

 

「はっ、さすがヘイムダル。分かっているな」

 

 現れた赤髪の巨躯は仲良さげにヘイムダルと会話を交わした後、オーディン様の右へ向かった。

 

 そう、トールもまたヘイムダルと同じ、オーディンの隣に立つことを許された存在。僕たちとは同じ主格神族であっても差がある。

 

 続けて、一匹の青い鳥が扉の隙間から現れ、最後の空席に飛び降りた。

 

「やはり、今回も来ないか……」

 

 オーディンはため息をつき、青い鳥が座した椅子を惜しげに眺める。本来ならそこにもう一人の主格神族であるサーガが座るはずなのだが、世界中を旅している彼女は滅多にここに帰ってこない。ある意味ロキ以上の自由っぷりだ。

 

「まぁ、召獣を遣わしたと言うことは聞く気はあるようだな」

 

 と、自分に言い聞かせるように呟くオーディン。

 

「さて、今回お前たちに集まってもらったのは他でもない……九つの世界についてだ」

 

 オーディンのその一言に場の空気に戦慄が走る。

 

 九つの世界……それは言葉通りここアスガルドを含めた全部で九つある世界。

 

「何者かが、九つの世界にアクセスし、封じられた九つの〈鍵〉を集めているらしい」

 

 またもや、謁見の間に戦慄が走る。各々の主格神族が汗を流し、ことの重大さを恐れている。

 

「既に、九つある三つの世界の〈鍵〉が失われた……」

 

「あの……」

 

 オーディンの話の最中に一人の主格神族が手を挙げる。

 

 それは、フレイの妹であるフレイアだった。

 

「お話中すみません、その、〈鍵〉って……なんですか?」

 

「フレイア、オーディン様が話されてる途中だぞ!」

 

「構わんよ、説明してやれヘイムダル」

 

「分かりましたオーディン様……まぁ、君は主格神族に就任したばかりだからね、知らないのも無理はないだろう」

 

 と、妙に優しいヘイムダル。いや、ロキにだけ態度が変わるのだろう……

 

「九つの〈鍵〉とは、各世界に一つずつ封印されている鍵だ。これと言った名称は無く、〈鍵と〉読んでいる。だがここで勘違いしないで欲しいのが、〈鍵〉そのものが危険なのでは無く、その〈鍵〉によって封印されているものが危険なのだ」

 

「その、封印されている物とは?」

 

 ごくりと生唾を飲み込むフレイア。場の空気から、それがこの世界を……否、九つの世界を脅かす危険なものだと言うことが理解できたからだろう……

 

「ソレはレーギャルンの匣(はこ)に封印されている。ソレはとある神が創り出した世界を滅ぼすであろう神具……その名はレーヴァテイン」

 

 それは禁じられた神具。最高神のオーディンですら危惧する魔の産物。そのような神具が邪な考えを持つ輩に渡ってしまえば……世界は終わりを迎える。

 

「それを阻止するため、オーディン様はここに皆を呼び集めたのだ」

 

 コクリと頷くフレイア。どうやら事の大きさが分かったようだ。

 

「では、オーディン様、話の続きをお願いします」

 

「ああ、説明ご苦労だった」

 

 憧れのオーディンに褒められ、頬を紅く染めるヘイムダル。

 

「さて、〈鍵〉が失われた話はしたな? そこで、お前たちに主格神族に頼みたい事がある」

 

 オーディンはその重い腰を上げ、悠々と立ち上がる。紅い双眸が僕たち主格神族に突き刺さる。

 

「各自、それぞれの世界に向かい〈鍵〉を奪った者の調査及び、〈鍵〉の無事を確認して欲しい。いいな?」

 

 その場にいるオーディンとサーガの召獣を覗いた全員が首を大きく縦にふる。

 

「では、話はここまでだ。各自の担当する世界は後ほどヘイムダルが伝える。以上」

 

 オーディンのその締めくくりで、最高神と主格神族の集会は解散となった。

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