二つ名がダサ過ぎたのでシンプルにしました。
太陽は雲に隠れ、木々は悲鳴をあげ薙ぎ倒されていく。地鳴りのような足音に鳥達は一斉に飛び立ち、小動物は地中へと隠れていく。
密林の木を薙ぎ倒しながら進んでいくのは黒く巨大な肉体。肥え、太っているのではない。その全身は分厚く強靭な筋肉と重厚な鱗で武装されている。強すぎる彼の筋肉は自らの皮膚すら押し退け、鱗を巻き込み外殻を作り上げる。胴は太く、その尾も太く。自重をものともせず恐るべき距離を跳躍する大砲のような脚。体の大きさに反比例するかのように手は小さく退化している。捕食することを優先するためか、頭を突き出す形で歩行する「それ」。
何と言っても特徴的なのはその顔である。口外へと進出し、顎や体表にまで無数に生えた牙。顔の倍以上にも開く口。呼気とともに漏れ出す赤い稲妻と黒い瘴気。
生物なら誰もが持っている生存本能。三大欲求のひとつである食欲に関しては、「それ」の欲求は他の追随を許さない。取り憑かれていたのだ、食欲という名の悪魔に。
イビル(邪悪な)ジョー(顎)と呼ばれるその怪物は、密林を踏破し遂に獲物を捕らえ、喰らい尽くして尚空腹に襲われていた。
健啖の悪魔とも呼ばれるイビルジョーは、その種族自体食欲がとても旺盛であり、同種族間は勿論、欠損した自らの肉体の一部ですら捕食してしまうほどの悪食でもある。
その中でも一際強い食欲を持つ個体がいた。飢餓個体と呼ばれるものの中でも飛び抜けて食欲が強く、戦闘能力も群を抜いていた。
彼は仲間の誰よりも大きく、誰よりも強く、そして誰よりも飢えていた。飢えを満たすために獲物を喰らい、仲間を喰らい、家族を喰らった。肉体はさらなる食事を求めて強く大きくなる。大きくなれば必要なエネルギーは増え、食事は必然的に多くなる。増えた食事はその分彼をさらに大きく強くした。際限なく強くなっていく身体の内側で、満たされない空腹のサイレンに苛まれ心をすり減らしていく。
無限に強くなる特性、自身の尾ですら捕食する様、尋常ではない生命力とその有り様から、健啖の悪魔、恐暴竜以外にもう一つ名がつけられることになった。
暴食竜《ウロボロス》 これが彼の二つ名である。
これはイビルジョーに転生した男が、愛も友情も涙もなく、ただただ空腹を満たす為だけに食い荒らす、人間だった竜の話。
尽きぬ食欲に動かされ、本能のままに全てを喰らい尽くして尚、彼は歩みを止めることはないのだろう。今日も食欲という推進力に終わりは見えない。