真・ギョウカイ墓場篇 "End of world" and "Fearless world"   作:烊々

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 私たちは行く。

 手を取り合い、誓い合い。



Phase3. Beginning of end

 

 幽世の中心部。

 そこで、デルフィナスは封印されていた史書を顕現させる。

 

「これが……『史書』の私……」

「封印された際に肉体は失われ、今は一冊の本だけだがな。さて、鍵である汝を使い、史書を開くとしよう」

「させると思いますか?」

「汝の意思は関係ない。汝がここに来た時点で、史書の鍵は開く」

 

 デルフィナスの言葉通り、史書はイストワールの意思に関係なく、イストワールを感知すると起動した。

 

「これで、我が悲願も果たされる」

 

 そのままデルフィナスは起動した史書のページを開いていく。

 

「……む?」

 

 しかし、その手は途中で止まった。

 

「ふっ……奴め。我の知らぬうちに封印解除の条件を付け足していたとはな。これでは史書が半分しか開かず、世界を書き換えることができん」

「もう半分の条件とは?」

「どうやら、史書を完全に開くには現世の大国と同じ数のシェアクリスタルが必要らしい。となると、今は四つか」

 

 思い通りに物事が進まないことに、デルフィナスは戸惑いでも苛立ちでもなく、笑みを浮かべていた。

 まるで、長い時を超えた友人とのコミュニケーションを喜ぶかのように。

 

「……良いだろう、受けて立つ。此方に向かって来るあの女神たちを倒し、史書を完全に開くとしようか」

 

 そう言って顔を向けた先には、ちょうど守護女神たちが到着した。

 

「ようこそ。我が幽世、ギョウカイ墓場へ」

「こいつが……デルフィナス……」

「意外と綺麗な顔をしていますのね」

 

 あのネプテューヌを倒した存在だからどんな恐ろしいビジュアルなのか、と思っていた守護女神たちは意外そうな表情でデルフィナスを見つめる。

 

「……っ! 逃げてください! 彼女の狙いはあなたたちのシェアクリスタルなんです!」

 

 イストワールが声を振り絞り、逃走を促す。

 

「ごめんいーすん。わたしは逃げないよ」

「ネプテューヌさん……」

「ほぅ。身体ではなく心まで斬り砕いたつもりだったのだがな。まぁ良い」

「ねぇ、デルフィナス。あなたはどうしていーすんをさらったの? どうしてわたしたちのシェアクリスタルが必要なの?」

「……教祖イストワールにも話したし、汝らにも教えてやろう。我の目的、それは…………」

 

 

 

 

 候補生vs四天王。

 戦いを有利に進めていたのは候補生側だった。

 その理由とは、

 

「邪魔だトリック‼︎」

「邪魔なのは貴様だジャッジ!」

 

 四天王側の連携ができていないからである。

 ロムとラムばかりを狙おうとするトリックと、目の前の敵しか見えていないジャッジ。

 その中で冷静さを保てているマジックであるが、仲間の巨体に阻まれ思うように戦えない。

 

「ラムちゃん、お願い」

「おっけー!」

 

 そんな相手に油断することなく、候補生たちは少しずつ敵を削っていく。

 

「調子に乗るんじゃ、ねぇぇぇぇええええッ!」

 

 ジャッジ・ザ・ハードの怒りの叫び声が上がる。

 

「トリック! てめえは小せえやつだけを狙うのやめろ! 奴らは機動力の高いマジックに任せんだよ! てめえはそのタフさと無駄に多彩な能力を活かせ!」

「何ぃ?」

「ほぅ。我らも連携を取るということだな? 貴様らしからぬ良い作戦ではないか、ジャッジよ」

「てめえらに合わせんのは気に入らねえが、奴らに好き勝手されんのはもっと気に入らねえんだよ」

「それもそうだな」

「分断さえすりゃ、後はタイマンなら負けはしねえ」

「では、行くぞ」

 

 マジック・ザ・ハードがロムを目掛けて飛ぶ。

 

「させない!」

「おおっと、貴様の相手は吾輩だ」

 

 ネプギアがカバーに入ろうとするも、トリック・ザ・ハードに阻止される。

 

「吾輩の眼を見ろぉ〜?」

「……っ!」

 

 ネプギアはトリック・ザ・ハードの目から放たれる洗脳能力を知っており、咄嗟に目を逸らすことはできた。

 

(これじゃ、ロムちゃんを守りに行けない……っ!)

 

 しかし、トリックに足止めの役割を果たされることになる。

 

「ロムちゃんはわたしが守るわ!」

「あたしも!」

「行かせるかよぉっ!」

 

 ユニとラムの前にはジャッジ・ザ・ハードが立ち塞がる。

 

「さぁ、助けは来ないぞ? ルウィーの女神候補生よ」

「……っ」

 

 今までステータスで劣る候補生が有利に戦うことができたのは、連携が上手くいっていたからである。

 それに対して、四天王側も連携し、候補生を分断することに成功した。

 そうなると、戦いの利を握るのは……

 

「ふっ、貴様らの命運はここで尽きたということだ」

 

 マジック・ザ・ハードは小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「…………ということだ」

 

 デルフィナスがイストワールに話した『恐れのない世界』の内容をそっくりそのまま聞いた守護女神たち。

 

「そんなのただのディストピアよ……! 恐れだけじゃなくて、幸せもなくなるってことじゃない!」

 

 ノワールが、デルフィナスの思想をはっきりと拒絶する。

 

「汝らは人々の願いが込められた存在。幸福や善意といった感情を尊び、その裏にある不幸や悪意を真に理解することはできん。故に我々は分かり合えんさ」

「何よそれ……私たちには人の心がわからないって言うの⁉︎」

「真に理解できれば、歪な信仰により犯罪神なる存在が生まれることはない」

「……っ!」

 

 痛いところを突かれ、ノワールは黙り込む。

 

「これ以上言葉を交わす必要はないだろう。我々にはわかり合う必要はない。心を通わせる必要もない」

 

 そう言ってデルフィナスは剣を顕現させ、手に持つ。

 それに応じるように、守護女神たちは直接ネクストフォームへと変身し、うずめはオレンジハートへと女神化する。

 

「汝らを打ち砕き、今度こそ我が悲願を果たす」

「させはしないわ。今ここにある世界を私たちは守る!」

 

 正面からはネクストパープルとネクストホワイト、オレンジハートが、後方からはネクストブラックとネクストグリーンが。数の利を活かすために、五方向から攻撃を仕掛ける。

 

「甘い」

 

 デルフィナスはネクストパープルとネクストホワイトの攻撃を剣で受け止め、オレンジハートの拳を掌で受け止める。

 そして、展開された魔法陣が後方から攻撃を防ぐ。

 

「ちぃ……っ!」

 

 ネクストホワイトを超えるパワー、ネクストグリーンを超えるスピード、剣技の洗練さはネクストブラックを超え、太刀筋の鋭さはネクストパープルを超える。

 以前その身をもって体感したネクストパープル以外の守護女神たちは、これが『幽世の神デルフィナス』の力だと理解した。

 

「けど、そのためにうずめがいるんだよね〜!」

 

 オレンジハートは左腕を掲げ、シェアエネルギーを解放した。

 

「『シェアリングフィールド』、展開‼︎」

 

 フィールド展開後、先程と同じように守護女神たちは再び散開して攻撃を仕掛ける。

 

「何度来ても無駄だ」

 

 デルフィナスは、守護女神が一度通じなかった戦法を二度行うことに呆れた表情を見せるが、

 

「っらぁ!」

 

 ネクストホワイトの斧の一撃をデルフィナスは剣で受け止められず大きくよろけた。

 

「……何?」

 

 背後からの攻撃に魔法陣を展開して防御するも、その魔法陣を突き抜けて背中に攻撃が届く。

 

「ぐぅ……っ!」

 

(先程受け止められた攻撃を受け止められん……)

 

 デルフィナスは防御に徹するのは難しいと判断し、一度距離を取る。

 

(……それに、身体が重いな。なるほど、この領域が原因か……!)

 

「攻撃が通るようになったわね。流石うずめ」

「このまま一気に畳みかけるわよ!」

 

 守護女神たちはこの好機を逃すまいと、攻めの姿勢を崩さない。

 

「……守りができんなら、攻めに転じれば良いだけのこと」

 

 そう言ってデルフィナスが剣に魔力を込めると、刃が光り数十メートルに伸びる。

 そして、斬撃を横に薙ぎ払う。

 

「……跳ぶわよ!」

 

 守護女神たちは飛翔し、上に逃げる。

 

(今のも避けられるとは……我の速度が落ちていながらも、敵の速度も増しているようだな。厄介な領域だ)

 

 

 

 

「ははははッ! どうした⁉︎ その程度かぁ⁉︎」

 

 連携が阻まれた途端に形勢が不利になった候補生たちは追い込まれていた。

 

「はぁ……はぁ……」

「ぅぅ……」

 

 特に痛めつけられているのは、遠距離攻撃の得意なユニとロムとラム。

 

「みんな……!」

 

 ネプギアだけはかろうじて持ち堪えているが、押し切られるのも時間の問題だった。

 

「さぁてぇ? 先にこいつをぶっ殺してやるとするぜええええ!」

 

 ジャッジ・ザ・ハードの斧がユニに振り落とされる。

 

「…………っ!」

 

 だがその斧は、謎の光によって阻まれた。

 

「あぁ?」

「え……?」

 

 ジャッジはおろか、ユニも何が起こったかわからずに戸惑う。

 

『……間に合ったようだな』

「その声……もしかしてブレイブ⁉︎」

『そうだ』

「確かに……あんたはここにいてもおかしくないわね」

 

 『ブレイブ・ザ・ハード』。

 犯罪組織マジェコンヌ四天王の一人で、かつてユニと心を通わせ、自ら討たれたその男(ロボ)。

 何故か一人だけデルフィナスによって復活させられることはなく、その魂は幽世を彷徨っていた。

 

『ユニ、確かに俺はお前とわかり合うことができた。しかし、あの三人も俺の同志であったことに変わりはない。あの三人は、その魂をデルフィナスに利用されているだけなんだ』

「ブレイブ……」

『だからこそ、三人の魂を解放して、楽にしてやってくれ……! 俺も力を貸す!』

「わかったわ! 力を貸して!」

 

 ブレイブの意思がエクスマルチブラスターに宿り、ユニの力も増していく。

 

「何をする気かわからんが、妨害させてもらおう」

「終わりしてやるぜええええっ!」

「アククク! 悪あがきすらもさせんぞぉ〜!」

 

 四天王の狙いが一斉にユニへと向かう。

 

(ラムちゃん……!)

 

 ロムは、マジックが自分から離れたこの瞬間を狙い、言葉にして気づかれないようにラムにアイコンタクトを送る。

 

(ロムちゃん……? うん、わかった!)

 

 それだけで、ラムはロムの策を理解し、シェアエネルギーと魔力を身体中から振り絞る。

 

(わたしたちの全てを……!)

(この一撃に賭ける!)

 

「『エンドレスコキュートス』‼︎」

「『氷剣 アイスカリバー』ーーッ‼︎」

 

 ロムとラムの最強必殺技が放たれる。

 

「む? まだそんな力が……だが、そんなボロボロの身体で放つ魔法など、恐れるに足りん……!」

 

 トリックの言うことは正しく、万全の状態ならまだしも、満身創痍の状態で放つ魔法では四天王を倒すほどの威力はない。そんな魔法には目もくれず、マジックたちはユニを潰しに行く。

 

「……ぬぉっ⁉︎ 動けん!」

「ちぃ……! 狙いは足止めか……!」

「うおおおおっ! 動けええええっ!」

 

 ロムとラムの真の目的とは、ダメージを与えることではなく、氷の塊に相手を閉じ込めることであった。

 

「ユニちゃん! 今のうちに!」

 

 おそらく拘束できる時間は十秒も保たない。

 

「……っ」

 

 しかし肝心のユニに、エクスマルチブラスターを持ちながら技を放つほどの体力が残っていない。

 

「……ユニちゃん。私も支えるよ」

 

 ネプギアがユニを支えながら、手を取り、共にエクスマルチブラスターを構える。

 

「ネプギア……ありがとう。一緒に行きましょう」

 

 ネプギアとユニの想いが重なり、更にエネルギーが増していく。

 

「「いっけええええっ! ネプギア(ちゃん)! ユニちゃん!」」

 

 ラムだけでなくロムも、大声で親友に全てを託す。

 

「「はぁぁぁっ! 『ブレイブカノン』‼︎」」

 

 銃口から閃光が放たれた。

 そして、閃光は四天王たちを呑み込んだ。

 

「馬鹿な……我らが……こんな……ところ……で……」

 

 死闘の果ての決着。

 候補生たちは体力が尽きてその場に倒れ込む。

 今すぐにでも姉たちの加勢に行きたいが、身体がそれを許さない。

 

「少し……休みましょ」

「うん……」

「疲れたぁ……!」

「動けない……(くたくた)」

 

 仰向けになりながら、幽世の赫い空に向かって、

 

「あんたもありがとう、ブレイブ……」

 

 ユニはそう呟いた。

 

 

 

 

 現世の頂点、守護女神。

 幽世の頂点、デルフィナス。

 シェアリングフィールドの影響により、彼女たちの戦況は拮抗していた。

 拮抗、つまり数の利が大きく作用する。

 

「『シレットスピアー』!

「『レイシーズダンス』!」

「『テンツェリントロンペ』!」

 

 この機を逃すまいと、守護女神たちは攻撃を絶やさない。

 

「ほにゃぁぁぁっ…………!」

 

 うずめは戦闘に参加せず、シェアリングフィールドの維持と強化に尽力する。

 ダークメガミとは次元の違う強さをもつデルフィナスに確実なフィールドの影響を与えるためには、普段のフィールド展開より正確なシェアエネルギー操作技術が必要であるためだ。

 

「『ハードブレイク』!」

「『スパイラルブレイク』!」

 

 畳みかけるように、ネクストホワイトとネクストグリーンの必殺技が炸裂する。

 

「こんなもの……」

 

 デルフィナスは回避と反撃を織り交ぜ、的確に捌いていく。

 

「『インフィニットスラッシュ』!」

 

 すると、ネクストブラックが時間差で必殺技を仕掛ける。

 

「……ちぃっ」

 

 三人の女神による隙のない連撃。

 故にデルフィナスは、ネクストパープルが戦闘にいないことから意識が外れていた。

 

(……む? 待て、一人足りん)

 

 ネクストパープルは、他の守護女神によってデルフィナスの死角となる位置で、太刀を構えていた。

 ネクストパープルが構えるは、自身の最強必殺技『次元一閃』。

 

(……あれは!)

 

 デルフィナスの反応は遅れていた。

 

(く……間に合わん……!)

 

 その一瞬の隙を突き、

 

「『次元一閃』‼︎」

 

 誓いの刃がデルフィナスに炸裂する。

 

「ぐ……ぅ……」

 

 デルフィナスは、そのまま次元一閃後に発生するシェアエネルギーによる爆発に呑まれていった。

 

「やったねねぷっち!」

「ありがとううずめ。あなたの……いえ、みんなのおかげよ」

「そうだね!」

 

 その瞬間。どすり、と鈍い音が鳴る。

 

「何?」

 

 オレンジハートは自らの腹部に違和感を持ち、見下ろすと、

 

「……え?」

 

 剣に貫かれていた。

 

「か…………は…………っ」

 

 そしてその後ろには、何事もなかったかのようにデルフィナスが剣を持ち立っていた。

 剣が引き抜かれると、オレンジハートは変身が解除され意識を失いその場に倒れ込む。

 

「殺しはしていない。女神であれば死なぬ傷だ。しかし、其奴の能力は厄介故、少し眠っていてもらう」

 

 守護女神たちは、一瞬思考が固まった。

 うずめが戦闘不能にされたこともだが、それ以上にデルフィナスがそこに立っていたことに驚きを隠せなかった。

 ネプテューヌの次元一閃は確かに当たった。そして次元一閃をまともに食らえば無事で済むわけがない。

 

「良い一撃であった。我に『死』があれば、汝らの勝利であっただろう」

「死があれば……?」

「我は死の世界、幽世の神だぞ? 死の概念など存在しない。故に、初めから汝らに勝ちの目など存在しないのだ」

「何……ですって……」

「……っ、死なねえなら、負けを認めるまで倒し続けるだけだ!」

「そうですわ! たとえシェアリングフィールドがなくとも……!」

「その心意気は褒めてやろう。だが、それも不可能だ」

「やってみなければわからないわ」

 

 守護女神たちは武器を構え、再び戦闘態勢に入る。

 

「……汝らは強い。歴代の守護女神でも、その領域の強さを持つ者はいなかった。それに敬意を表し、我が真の力で相手をしよう」

「真の力……まだその上があるっていうの……?」

「何を驚く? 汝らと同じだ。汝らが女神化し戦闘力を増すように、我も同じように変身をして戦闘力を増すことができる。ただそれだけのこと」

 

 守護女神たちは言葉を失った。

 決死の戦いにてようやく打ち勝ったと思っていた相手は、微塵も本気を出していなかったのだ。

 

「そして、先程の戦闘の最中に行っていた、史書の力との融合も完了した。こちらは半分しか開いていない故、完全なものではないがな」

 

 そう言ってデルフィナスは闇に包まれ、変身する。

 容姿は変わらないが、プロセッサユニットのようなものが装備され、史書の力で更にエネルギーを高めていく。

 その様を見る守護女神たちは、今にも折れそうな心をなんとか繋ぎ止めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

          Phase3

 

       『Beginning of end』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 おそらく次でラストです。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
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