憧憬の先に映る未来   作:宿木ミル

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プロローグ 『シンキング』

 平和のようだと思える世界であっても、トラブルがないというのはあり得ない。

 日常でも、人はすれ違いを起こし、厄介事を発生させる。対人関係で貯まった感情の苛立ちを、うまく発散することができる人はどれだけいるのだろうか。

 

(発散できないから、『私たち』という存在が必要になる……)

 

 感情の揺らぎによって発生する怪奇のひとつ、『異族』。

 とある学園では『マスター』と呼称されている人物が解決していたり、魔法の力を得た少女が異族撃退に励んでいると聞いたことがある。

 それでも、その人達がいつもいるわけではない。現実問題として、彼ら、彼女たちが知らないような地域で異族が発生している。

 放置すると感情の暴走や実体を伴った異族が破壊活動を行うのもあって、異族を刈り取る存在は不可欠だったのだ。

 

(私の代わりは、いくらでもいる……)

 

 私……ドリュアスの力を操るミストルティンという存在はひとつだけであっても、異族を撃退できる存在は数多くいる。それを考えると、不必要な存在として捉えられてしまうのは心配になってしまう。

 たとえ私が、異族を討伐して生活しているような立場であっても、だ。いつか用済みだと評価を下されたら今の立場ではいられなくなる。だから、評価をされないといけない。仕事を繰り返し成功させて、地位を安定させなければならない。

 

(……よくないですね)

 

 答えの出ない漠然とした不安は、異族発生のきっかけにもなってしまう。感情を爆発させるようなことをしてはいけない。それは、再三言われ続けたことだ。

 必要以上のことを考えないようにする。時に、自分の心を押し殺すような決断も下すべきだ。……私は、割り切り切れていない。

 

「今は、努力を重ねていくしかないです」

 

 異族を撃退して、お金を得る。

 安定した信頼を取得して、安静な暮らしを手に入れる。

 必要以上に褒められる必要もない。他人を助けたいという義務を持ってもやっていない。

 活動をしている人には、この異族を討伐する活動が、称賛されるべきだと言っている人もいた。けれども、私はそれを素直に受け止めることはできなかった。私は私の目的の為に、今の立ち位置にあり続けているだけなのだ。それが称賛されることならば、見返りもなくやっている人の方がずっと褒められるべきだろう。私は、褒められるべき存在ではない。

 

「……正義の味方なんて眩しすぎますから」

 

 私はただ、自分の目的の為に異族を討伐して、地位を守っているだけにすぎない。どこかのアニメでやっているような正義の為に戦うような存在には、なれない。

 

「だから、私は……」

 

 他人との必要以上のコミュニケーションはいらない。ただ、そこにあり続けるだけの存在でいい。私は、それでいいと、それだけでいいと思っていた。

 唐突にやってきた彼女とチームを組むまでは……

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