憧憬の先に映る未来   作:宿木ミル

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1 『エンカウンター』

 ラグナロク女学院といった、有名な学園から離れた中央街と呼ばれる場所。

 そこにある『拠点』と呼ばれる場所で暮らしているのが私であった。

 住居としては、アパートというべきだろうか。部屋は横並びに二つ、お風呂なども完備。居心地そのものは悪くないと思っていた。

 

「君が生真面目っていうので噂のミストルティンね~」

 

 ……今日、やってきた怠惰な住人さえいなければ。

 

「貴女が怠惰なことで有名なピサールさんですね」

 

 ひとりでいた方が楽だと言うのに、チームを組むことになったのが感情的に受け入れられなかった。だからだろうか、少し皮肉っぽい言い方をしてしまった。

 

「棘のある言い方~」

 

 そんな私に対して、彼女は言われちゃったと言葉にするかのようにさらっと返答していた。

 

「……否定はしないんですね」

「まぁね~それで前のパートナーとは袂を分かっちゃったわけだし~」

「そうですか」

 

 流石にやってきたチームメイトに対して、お茶のひとつも出さないと礼儀に欠けると思い、氷を入れた麦茶を彼女の前のテーブルに出した。

 

「暑い日には麦茶だよね~、ありがと~」

 

 麦茶はどうやら喜んでもらえたらしい。

 8月の月初。なにもしていないと暑さが身を蝕む気候だ。

 

「……どうして、前の方とはうまくいかなかったんですか?」

 

 不安材料は事前に取り除くべき。

 そう思ってピサールに聞いてみる。

 

「わたしが怠惰だったからじゃない~?」

 

 麦茶を美味しそうに飲みながらの返答。もう実家のようにくつろいでいる。

 

「具体的には」

「ん~、面倒だと思ったらサボったりとか?」

「異族討伐もですか」

「まぁね~連携って結構疲れるし~」

 

 それについては同感したい気持ちはあったけれども、彼女のように怠惰だと思われたくなかったから言葉は繋げなかった。

 

「私生活は」

「お酒大好き~」

 

 一瞬、軽蔑の目を向けそうになってしまった。

 なんだか根本的に彼女とは相性が悪い気がする。

 

「お酒を呑む私生活ですか」

「厳密に言うと、葡萄酒が好きかな~」

 

 頭が痛くなってくる。

 

「……酒飲みだったから、解散になったのではないですか?」

「それもあるかもね~」

 

 ピサールはゆるく笑っている。

 その返答に私は、どうしようかと痛くなった頭をそのまま抱えそうだ。

 

「あぁでも、前のパートナーは家事をやれとか、掃除しろ―とか、食事作れーとか命令ばっかりだったから、わたしも嫌だったんだよね~」

「それは……厄介でしたね」

 

 言葉は選んだものの、これは本心で返答できた気がする。

 別に私も家事をしたりするのは嫌いではないし、手を動かせばいいだけだから楽ではある。けれども、命令されて行動するとなると失敗したら失望されてしまうだろうか、なんて考えたりしてしまうのもあって、不安が強くなる。

 

「あっ、それは頷いてくれるんだ」

「強制されるのは不安になりますからね」

「なるほどね~」

 

 うんうん、と彼女が頷く。相変わらずつかみどころがない。

 

「じゃあ、ミストルティンはそういうことはしない?」

「するつもりはありませんが、たまに料理などは作ってもらえるとありがたいです」

「それも面倒って言ったら?」

「……嫌な顔は向けると思います」

「う~ん、じゃあ頑張る」

 

 飲み終わった麦茶のおかわりを要求されたので、もう一回グラスに注いだ。

 

「この麦茶はミストルティンが作ったの?」

「はい、植物知識はいくつかあるので」

「お茶の葉っぱとかも意識してるんだ」

「そうなりますね」

「すご~い」

 

 ぱちぱちと拍手が送られる。

 本心かどうかわかりにくいものの、多分、嘘を付くようなタイプではないのかもしれない。彼女の仕草を見つめながらそう思う。

 

「ピサールさんは、家事はできるんですか?」

「料理とかは得意よ? 車とかも運転できるし、適当にやれることはできちゃうと思う」

「……羨ましいかぎりです」

 

 俗に言う天才肌というものなのだろう。面倒なことはやらないというものの、いざやる時は凄いという。

 ……やっぱり相性は良くない気がしてやまない。

 

「まぁ、対人関係は得意じゃないかも~?」

「どうしてですか?」

「ん~面倒だから」

「……それについては同感です」

「だよね」

 

 気が合うか合わないかはわからない。それでも、異族を討伐するチームとして二人で活動することになる以上、厄介なトラブルは起こしたくはない。

 どこかマイペースな彼女と動きが合わせられるように、連携は意識するべきか。やったこともないチーム活動には、漠然とした不安を感じていた。

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