ひぐらしのなく頃に・絶 /小説Ver   作:soatok

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六月一九日 日曜日(3)

 祭具殿の入り口の辺りに富竹と圭一の姿を見つけ、私たちは競い合うようにそちらへ向かった。

 その場に鷹野の姿がないことが少し不思議だったが、彼女の行動はその時々により多少の変化を見せるので誤差の範囲だろう。祭具殿の中で眠る羽入が起きだしていない以上、彼らが不這(はいらず)の祭具殿に侵入したとも思えない。

 その時ふと、私は頭の中に何か引っかかるものを感じた。

 鷹野がおらず、圭一たちが祭具殿に侵入しない世界……それは以前にもあったような気がするけど、どれだったかしら……?

「圭一くーん! ごめんなさーい!」

 レナの声でこちらに気づいた圭一が手を振り返してくる。私は考えるのを中断した。

「おまえらどこ行ってたんだよ。この歳で迷子になったのかと泣きそうだったんだぞ!」

「悪ィ! すっかり話しこんじゃっててさ」

 魅音は手を合わせてみせたが、その顔は意地悪そうにニヒヒと笑っている。

「なんだよ、俺には内緒で女だけで何の話をしてたんだ?」

「オホホ、野暮なことを訊く男はモテませんことよ」

「圭一には秘密なのですよ。にぱー☆」

 不思議そうな顔をしている圭一には取り合わず、沙都子が獲物を見つけたようにキランと目を光らせた。

「富竹さんもご一緒でしたの。ちょうどよかったですわ。忘れていませんわよね? わたくしどもの部活では、敗者はそれはそれは怖ろしい罰を受けるのでございましてよ!」

「ええっ! まいったな……アハハ」

「そうそう。本日のメインイベントの敗者は、何も景品ゲットできなかった富竹氏に大決定だよっ。圭ちゃんに華をもたせたからだろうけど、うちの会則じゃ例外は認めないからねぇ。おめでとう! そして覚悟はいいかなぁ!?」

 その言葉を合図に、みんながいっせいに手にしたマジックペンの蓋をキュポッと抜いた音がした。そして私たちは、まるで予定調和のように富竹のシャツに寄せ書きを始めたのだった。

 先ほどの女四人だけの時に交わした一連の話を忘れてしまいたくて、私はこの楽しいはずの空間に必死に自分を同調させる。

 ……その時にはもう、運命の歯車は回り出していた。

 綿流しと一緒に楽しかった日々は終わりを告げ、悲劇が幕を開ける。

 私は富竹のシャツにこんな文字を刻んだ。

 

『次はがんばりましょうです りか』

 

 我ながらなんて陳腐(ちんぷ)な言葉……でも、とても意味深い言葉。

 さよなら、富竹。

 この世界であなたと逢うことはもうないでしょう。

 あなたと鷹野は今晩のうちに何者かによって殺される。それはもう決まっていること。

 その後に待ち受ける惨劇がどんなものかはまだわからないけれど、いずれ私も殺される。それももう決まっていること。

 でも哀しまないで――また次の世界で逢いましょう。

 だからこれはそれまでの、短いさよなら……

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